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北海道・富良野。雄大な自然に中国人もあこがれる (写真はすべて著者の友人男性の提供)
中国人観光客「成熟層」はここまでマニアックに日本を楽しんでいる
http://diamond.jp/articles/-/145529
2017.10.13 中島 恵:フリージャーナリスト ダイヤモンド・オンライン
中国の大型連休、国慶節が終了した。しかし、大型連休以外に、ゆっくり日本を楽しむプチ富裕層が増えている。彼らは日本が大好きで、旅先では日本人以上に詳しい知識や蘊蓄をSNSで披露している。(ジャーナリスト 中島 恵)
大型連休を外して
ゆっくりと旅を楽しむプチ富裕層
「もうすぐ京都と東京に遊びに行く予定なんです。東京では『星のや東京』に泊まって、根津美術館の展示を見たり、友人が事前に予約しておいてくれたフラワーアレンジメントの1日教室に通って、銀座に懐石料理を食べに行く予定です。もし時間があったら高尾山にも登ってみようかな」
中国の大型連休、国慶節(今年は10月1日〜8日)には約7万人の中国人が海外旅行に繰り出し、日本はタイに続き人気ナンバー2だったという。だが、連休が終わった翌日、北京在住のOLの友人からこんなメッセージが送られてきた。わざわざ連休後を狙って、ゆっくりと日本を旅しようという中国人のプチ富裕層が増えている――。
このような現象は、以前の記事(「中国人訪日客の「春節の爆買い」が減った意外な理由」)でも紹介した通りで、その傾向はますます広がり、分散化、多様化、成熟化の傾向に拍車がかかっている。
だから、こんなメッセージがきても最近はちっとも驚かなくなったが、それだけではない。昨今では旅の質がグンとアップし、日本について日本人でも知らないような「蘊蓄(うんちく)」を語り、強いこだわりを持つ「旅の達人」が急速に増えてきたのだ。
いわゆるカリスマブロガーのような、旅することを半分仕事にしていたり、何かを宣伝したりする有名人ではない。ごく普通の中国人だ。その知識量の多さと探求心の旺盛さに、日本人の私でさえもびっくりしている。
旅の記録をSNSに投稿
知識やうんちくがとにかく凄い!
「この知識量は凄い……」
上海出身の男性(39歳)がSNSに旅の記録をアップするたびに、私は夢中になって読むようになった。彼は昨年9月から1年間、仕事のため日本に滞在していたが、その間の旅行は3泊以上のやや長めの旅行だけでなんと19回。彼が日本全国を歩いて書いたSNSの旅日記には、こだわりや蘊蓄が散りばめられていたからだ。
小津安二郎が愛した「茅ヶ崎館」
「小津安二郎が定宿にしていた旅館『茅ヶ崎館』。趣のある部屋を見せてもらい感動した。まるで古い日本映画のワンシーンにタイムスリップしたかのようだ」
日本映画の巨匠、小津安二郎が名作『晩春』や『東京物語』の脚本を執筆したといわれるお気に入りの部屋や旅館の調度品などを撮影し、SNSにコメントをつけていた。一見すると地味な投稿だが、さりげなく蘊蓄も披露されている。
例えば、小津はよくスタッフや俳優たちにお手製のすき焼きをふるまったそうだが、何度も同じ部屋ですき焼きをしたせいで、天井には黒い油染みがついている。その貴重な写真も添えて説明をしているのだ。
思わず「へぇ〜」と唸らされる。
広島の車両倉庫
広島を訪れた時には路面電車の車庫に入ってみた時の様子を詳細に紹介している。「ちょっとした鉄ちゃん」を自認する彼。中国では車庫の見学はできないので、ワクワクしたそうだ。車両に愛着を持って呼びかけたり、引退する車両に労いの言葉を掛けたりするのは日本人ならでは。
だから、車庫で整然と並ぶ車両に興奮したそうだ。こんなところはまるで日本人のようだが、北海道でも鉄道の旅を楽しんだ。各地を旅してみて初めて、日本には廃線になったり、廃線の危機に喘いでいる鉄道が多いことを知り、「少し寂しい気持ちになった」と心情も吐露している。
『北の国から』の大ファンで
「泥のついた1万円札」のエピソードも披露
京都の舞鶴から船で北海道に渡り、ほぼ全土を回った。夫婦ともども日本のテレビドラマ『北の国から』の大ファンで、富良野では有名な花畑や観光スポットだけでなく、ドラマのロケ地巡りをしたり、キタキツネの写真もアップした。
北海道・富良野の花畑。ドラマのロケ地としても人気がある
これらの富良野の美しい風景写真や動画を載せつつ、ドラマの中で俳優の吉岡秀隆が演じる主人公の黒板純が、田中邦衛演じる父親の黒板五郎からもらった泥のついた1万円札の説明も詳しく書いている。日本人ならかなり多くの人に通じる「感動的なドラマのエピソード」の一つだが、そのワンシーンに中国人も同じように熱い涙を流している。「日本通」ぶりも、ついにここまできているのか、と驚かされた。
しかし、そんなマニアックな情報を語るかと思えば、東京・神保町の古書街を訪れたときには、中国とゆかりがある内山書店の看板を撮影し、内山書店と中国との歴史もSNSで発信していた(内山書店は日本人の内山完造が1917年に上海で開いた書店。日中文化人のサロン的存在だった。現在は中国関連書籍の専門店として神保町に店を構えている)。
神戸の孫文記念館「移情閣」を訪れる中国人も多い
また、神戸では孫文記念館である「移情閣」に中国から旅行に来ていた家族とともに訪れ、孫文と日本人との交流に「中国人として感動した」とも綴っている。
実はこの男性以外にも、日本旅行の際、中国と関わりが深い場所(例えば、魯迅が通った東北大学のキャンパスや、鑑真が建てた奈良の唐招提寺、横浜・長崎の中華街など)をわざわざ訪れる中国人は少なくない。団体ツアーで二度、三度と日本を訪れるうちに、中国との歴史的なつながりを探訪したり、歴史を研究してみたくなる中国人が多いようだ。
だが、そこでさらに一歩踏み込み、日本人も驚くような「蘊蓄」を語れる人はそう多くはない。単にその場所を訪れたというだけでなく、事前に本を読んだり、作品を鑑賞したり、広い視野を持って多角的に情報を網羅していなければできないことだからだ。私の上海の友人は間違いなく、そんな知識人であり洗練された「旅の達人」のひとりだ。
「一体どこから、こんなに豊富な知識や蘊蓄が?」と驚くが、彼によれば、妻が日本のツイッターなどから情報を仕入れているという。中国では基本的に日本のツイッターは見られないが、日本滞在中はそれらのSNSを見て最新の情報を仕入れていた。
彼自身も学者で、日本語もわかるから、情報の精度が上がるのは理解できるとしても、ここまで旅に関する文化レベルが高くなっていることに私は舌を巻き、自分の認識の古さを改めた。
日本食が大好きで
日本料理の味を極めたい
一方、私が知る別の女性の友人も、やはり驚くほど深い知識を持ち合わせている。彼女の場合は料理や食材についてだ。杭州出身の女性(42歳)は会社経営者。レストランやセレクトショップなどを経営しているため、欧米にもよく買い付けなども兼ねて出かけるが、何よりも日本食が大好きで、旅行の際、日本料理の味を極めたいのだという。
彼女がこだわるのは出汁(だし)だ。日本料理にはかつおや昆布などの出汁が欠かせないが、本格的な出汁を求めて、東京や大阪、京都などの老舗日本料理店を食べ歩いているという。
彼女によれば、「有名店でなくても、出汁にこだわり、最高の出汁を使った丁寧な日本料理を出している店が日本にはごまんとある。稼ぐことが目的ではなく、お客様に喜んでもらうことが目的の小さな店…。目立たないところで丁寧な仕事をする日本人はすばらしい」と言う。
醤油や味噌にもこだわりがあり、岐阜の飛騨高山の味噌専門店を訪れて買い求めたり、醤油もわざわざ福井まで買いに出かけたという。
東京のスーパーでは「成城石井」や「紀ノ国屋」がお気に入りだ。食品の場合、中国に持って帰れないものがあるが、ミニサイズを自分用に買い、日本に住む中国人の家で実際に調理してみるというほどのこだわり派。薬味にもこだわっていて、ネギ、ミョウガ、大葉など日本の薬味を北京の自宅のベランダで栽培し、日本で栽培するのと味の違いを比べてみたりしているという。
日本の器にも凝り出し
産地を回る
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2017.10.13
中国人観光客「成熟層」はここまでマニアックに日本を楽しんでいる
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醤油や味噌にもこだわりがあり、岐阜の飛騨高山の味噌専門店を訪れて買い求めたり、醤油もわざわざ福井まで買いに出かけたという。
東京のスーパーでは「成城石井」や「紀ノ国屋」がお気に入りだ。食品の場合、中国に持って帰れないものがあるが、ミニサイズを自分用に買い、日本に住む中国人の家で実際に調理してみるというほどのこだわり派。薬味にもこだわっていて、ネギ、ミョウガ、大葉など日本の薬味を北京の自宅のベランダで栽培し、日本で栽培するのと味の違いを比べてみたりしているという。
日本の器にも凝り出し
産地を回る
最近では日本の器にも凝りだした。中華料理は大皿に盛りつけることが多い。おしゃれな店では小皿に取り分けてくれることが増え、皿にも凝るようになったものの、日本料理のように、料理の種類に合わせて皿の色柄やサイズなどを細かく分けることまでは行わない。だから、日本に来て「小鉢とか、焼き魚用のお皿とか、こんなにお皿の種類が多いことにびっくりした」と彼女は言う。
「どんな皿にどんな料理を盛りつけるか。どんな料理にはどんな皿が合うか、中国人はそんな繊細なことは考えてみたこともない。器の産地を回る旅だけでも、日本旅行には十分な価値があると思う」
そんなことを言う彼女に、逆にこちらのほうが驚かされるが、中国人の旅行はすでにこんなに高いレベルにまで到達していることを思い知らされた。
中国人の旅行といえば、日本では今も銀座を闊歩する団体旅行客を思い浮かべる人が多い。爆買いブームですっかり「ステレオタイプ化された中国人」が脳裏に焼きついているかもしれない。
むろん、まだそうした中国人もいるのだが、成熟層は私たちが知らない間に、こんな旅を楽しんでいる。私たち日本人が思い浮かべる「中国人像」は皆一様で、なかなか変わらないが、現実は大きく異なっている。旅行ひとつとっても、その流れはもう止められないほど変わってきているのだ。
『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社) 、中島恵著、定価850円(税別)
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