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給料地銀トップ!スルガ銀行「結果につなげる経営会議」はここが違う 地銀壊滅時代に5期連続の最高益更新
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52889
2017.09.22 週刊現代 :現代ビジネス
静岡県の地銀2番手ながら、全国区の知名度を誇る。その背景には社会の変化を見通す眼力と旺盛なチャレンジ、IT技術の活用があった。オーナーと経営陣が議論を重ねて進める異形の経営の本質。
会議で沈黙は許されない
スルガ銀行(静岡県沼津市)の経営方針を決める取締役会は、毎月1回、東京・日本橋にある東京支店の会議室で行われる。
会長、社長以下7名の取締役と3名の社外取締役が出席し、ここに監査役が加わる。毎回15名ほどの出席者で1時間程度、激論が交わされる。
経営トップの指示が言い渡されるだけの静かな会議ではない。幹部が粛々と報告するだけの儀礼的な会議でもない。会議室にあるのは、役員が侃々諤々と議論する喧騒だ。沈黙は許されない。
経営の機微に関わるため、詳細は記せないが、ある日の経営会議では社内システムを将来的に海外の業者に委託するか、その際のガイドラインについて議論が交わされた。
スルガ銀行のオーナー会長・岡野光喜氏(72歳)が口火を切る。
「社内システムのクラウド化(外部のサーバーに委託すること)とオンプレミス(自社で管理すること)の割合はどのくらいが妥当だろうか」
取締役が意見を言う。
「クラウド化を進めたほうが、コストを圧倒的に削減できます」
別の取締役も言う。
「いや、まだシステムを完全に外部に委託するのは時期尚早です。コストが下がったとしても、安全性に問題があります。一定のレベルまでのクラウド化に留めましょう」
一通り意見が出揃うと、岡野会長が決断をする。
同行で社外取締役を務める元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏が語る。
「取締役会では無駄な議論は一切ありません。一つの会議で20から30のテーマが話し合われますが、各役員から意見が出ると、岡野会長が『面白いよ、すぐやろう』、『それはまだ無理だ。考え直せ、はい次』と、どんどん進む。
最終ジャッジこそ岡野会長の役割ですが、すべての役員がアイデアを出し、それを実行に移そうとしています。
雰囲気はベンチャー企業の役員会議に近いですね。ざっくばらんで言いたいことを言い合える。初期のマイクロソフトの役員会議が、まさにこんな感じでした」
闊達に議論し、新しいことに挑戦するベンチャーのような経営――。これが地銀壊滅時代に、今期まで5年連続で過去最高益を叩き出し続けるスルガ銀行の「強み」だ。
同行が躍進したきっかけは、企業への法人融資から個人への融資に軸足を移したことにある。経営コンサルタントの加谷珪一氏が解説する。
「銀行の収益力を測る指標で最もわかりやすいのは、『預貸金利ざや』(貸出金利と預金金利の差)です。
この数字が高いほど効率的な経営をしていることになりますが、スルガ銀行は約2.4%です。一般的な地銀は0.3%程度だから、いかに突出しているかがわかります。
最大の理由は、法人向け融資を捨てて、住宅ローンなどの個人融資に特化した点にあります。スルガ銀行の融資のうち、約9割が個人向けになっており、これは独特の経営といえます」
スルガ銀行が個人向け金融に舵を切ったのは、岡野氏が頭取時代の'86年のこと。高度経済成長を終えた日本では、資金のニーズが企業から個人に移ると見抜いたのだ。
同行は一般の銀行では融資を受けにくい自営業者や勤続年数の浅い会社員に着目し、リスクを取って住宅ローンなどを貸すことで、高い金利を設定することに成功した。
「静岡には静岡銀行という大手地銀があり、地場の法人を押さえているからスルガ銀行は個人に特化したと思われがちですが、実態は逆です。
地方の法人は中小企業が中心ですが、業績不振ながら、行政の支援でなんとか生きながらえている『ゾンビ企業』が少なくない。
そういった企業に融資をしても儲かるはずがないと判断した岡野会長は、法人融資を減らして、個人向けを拡大してきたのです。
その結果、住宅ローンやアパートローン、個人向けローンで独特な商品をラインナップし、高い利益を上げることができています」(加谷氏)
立ったまま働く男
こういった経営を可能にしているのは、岡野会長独特の人間観だ。慶應大学で同期だった評論家の佐高信氏が言う。
「彼は幼稚舎から慶應だし、岡野家の御曹司なのですが、いわゆる二世経営者ではありません。人間をタテではなく、ヨコの感覚から見ている。上から目線で見るのではなく、あくまで対等に見ているということ。
スルガ銀行躍進のきっかけの一つに、女性向けローンに積極的に取り組んだことが挙げられますが、それも彼の性格がよく表れているのではないでしょうか。年配の経営者にありがちな、女性を一段下に見る視線の持ち主には生まれない発想でしょう。
女性にだって男性と同様に、資金のニーズはある。それを掘り起こしたことで業績拡大につながった」
スルガ銀行は岡野会長の曾祖父が1887年に創業し、今も岡野会長の資産管理会社が大株主に名を連ねる。しかし、オーナー企業にありがちなワンマン経営ではない。
前出の成毛氏が言う。
「地銀の創業一族と言えば、地元のお殿様のような人をイメージするかもしれませんが、彼はまったく違います。
会長室ではいつも立って仕事をしています。部屋のドアも開いていることが多く、社員が頻繁に出入りして岡野会長と話をしている。ここで即断即決の決裁を下しているのです」
女性向けローンに限らず、スルガ銀行にはユニークな取り組みが多い。ATMを搭載した移動式の「銀行窓口車」や足湯を併設した銀行窓口。ANAやリクルートと提携して、マイルやポイントが貯まりやすい支店も開設している。
これらはすべて、経営会議で提案され、議論の末に採用された施策の数々だ。
「スルガ銀行はソフトバンクと組んで、いち早くネットバンキングにも参入しました('07年に提携解消)。ネットを活用することで顧客は静岡県内だけではなくなり、もはや全国展開している銀行と言っていいほどです。
さらに行員のモチベーションを高めるためにメガバンク並みの給料を支給しています」(フィスコ情報配信部長・村瀬智一氏)
計画はどんどん変更する
ブルームバーグによると、スルガ銀行の平均年収は810万6000円で地銀トップ。金融機関全体で見ても、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行を上回り、三井住友銀行の814万8000円に次いで業界2位という。
金融機関関係者を驚かせたのが、'08年のゆうちょ銀行との住宅ローンでの提携だ。
民営化されたばかりで、巨額の資産量を抱えるゆうちょ銀行が個人融資に乗り出すことは当時、民間の金融機関にとって脅威以外の何物でもなかった。まさに「民業圧迫」。業界は黒船を追い払うべく、一致団結していた。
そこに風穴を開けたのが、スルガ銀行だった。ゆうちょ銀行の窓口で自行の住宅ローンの仲介をしてもらう代わりに、そのノウハウを譲る提携をしたのだ。もちろん、経営会議は紛糾した。
「社外役員として、あれには本当に驚きました。ある意味で抜け駆けですから、他行から何を言われるかわからない。『そんなことをして大丈夫ですか?』と聞いたくらいです。
しかし、岡野会長の答えは明快でした。『個人向けローンを積極的にやると決めた以上、静岡だけでやっていても未来はない。まずはゆうちょ銀行と提携して、全国に打って出るのが一番早い。やるしかない』と。
戦略的に正しいことは、抵抗があってもやるのが、スルガ銀行のスタイルです。実は岡野会長から、『これからのスルガ銀行をこうしたい』といった青写真を聞いたことはありません。無計画だからではない。ベンチャー的な考え方ですが、今できることで一番面白そうなことをやり続けるというのが彼の考え方なんです。
組織だから計画は立てますが、時代はどんどん変化するから、その通りになるはずがないし、今、最善と思ったことが5年後も最善とは限りません。その時々に最善と思えることに全力でチャレンジし、時代に応じて柔軟に変化していくことが、岡野会長と経営陣の経営哲学だと思います」(前出・成毛氏)
違和感こそが経営の本質
地銀の経営は危機的な状況に直面している。地方の衰退とともに、有望な貸出先は少なくなり、安定的な収益を上げることのできた国債は、マイナス金利政策で収益を産まなくなった。
一方で、テクノロジーの進化によって地方にいながら全国を相手にビジネスを展開することができるようになったのも事実だ。
スルガ銀行はいち早くネットバンキング業に進出し、全国の顧客を相手にしている。それを可能にしたのが、システムへの先行投資だった。
「地銀が新しく窓口を開設して全国展開するのなら莫大なコストがかかりますが、ネットで資金の出し入れをするシステムを開発するだけなら、そこまでかかりません。
スルガ銀行のシステム開発にかける覚悟が表れたのが、日本IBMとの訴訟です。同行は基幹システムの開発を日本IBMに依頼しますが、契約通りに開発できなかったとして'08年に損害賠償を求めて提訴しました。
これまで日本企業の多くはシステム会社に対して要求された額を唯々諾々と支払ってきましたが、スルガ銀行はその悪習にも風穴を開けたんです。
判決は、日本IBMがスルガ銀行に約42億円を支払えというものでした。これで他のシステム会社も、スルガ銀行には開発費をふっかけられないと思い知ったことでしょう。その結果、システム開発費は他行より安くなっているはずです」(前出・加谷氏)
もちろん、スルガ銀行の好業績がいつまでも続く保証はない。金融庁がカードローンやアパートローンの行き過ぎた貸し付けを問題視しており、個人向け融資の多いスルガ銀行の株価は目下、下落傾向だ。
しかし、スルガ銀行は今後も独特な経営で、業界の風雲児となり続けるに違いない。前出の佐高氏は、こう話す。
「岡野は社内の幹部が違和感を持つような施策こそが、世の中に広く訴えかけると考えている節があります。
'90年に行名を『駿河銀行』から『スルガ銀行』に改称したときもそうでした。今でこそカタカナやひらがなの銀行名は珍しくありませんが、当時はほとんどなかった。経営幹部は全員が反対したといいます。
しかし彼は、『みんなが反対するようなら、逆にこれでいいと思った』と言った。将来を見越した経営をするために、多くの人が違和感を持つことを率先してやる。
そういった奇抜な意見は若手から出てくることも多いので、彼は若手社員と肩書抜きで話す会を今も続けていると聞きます」
異形の経営の本質は、社内の意見を広く聞き、まずはチャレンジして、失敗と見たら撤退するフットワークの軽さにあった。
その上、失敗してもタダでは起きない強靭さも兼ね備えている。地方が混迷する時代に、スルガ銀行の一挙手一投足にますます注目が集まる。
「週刊現代」2017年9月23日・30日合併号より
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