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トヨタグループは物流分野にも乗り出している
トヨタが狙う「自動倉庫」でも世界トップ、相次ぐ買収に見せる本気度
http://www.sbbit.jp/article/cont1/34033#image47898
2017年09月15日 ビジネス+IT
大都市の富裕層から南極大陸の観測隊まで、「TOYOTA」ブランドの自動車は今や世界の隅々まで浸透しているが、今年「自動倉庫(物流ソリューション)」のビジネスでも、トヨタは大型M&Aを駆使して世界有数のベンダーに躍り出た。トヨタグループの総本家で、フォークリフト世界トップシェアの豊田自動織機が、アメリカとオランダの物流システム企業を続けざまに買収。一気に事実上の世界シェア4位につけて「トヨタは本気だ」と思わせた。上位にはドイツのシェーファーとデマティック、トップに君臨する日本のダイフクがいるが、「TOYOTA」のブランド、グループ力を活かしながら、アマゾンなどeコマースの発展とともに成長する自動倉庫の世界市場をどう攻略していくかに注目だ。
執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳
■総本家、豊田自動織機が「自動倉庫」有力ベンダーを買収
豊田自動織機(Toyota Industries/本社:愛知県刈谷市)は、発明家にしてトヨタの創始者、豊田佐吉氏が1926年(大正15年)に創業したグループの「総本家」である。
現在のトヨタ自動車は同社の自動車部門が1937年に「分家」して設立された。社名の由来の繊維機械は2017年3月期では売上高比で2.9%にすぎない。主要製品は世界トップシェアの「TOYOTA L&F」ブランドのフォークリフトや、カーエアコン用コンプレッサー、ディーゼルエンジンなどで、「RAV4」や「ヴィッツ」の完成車を受託生産する「トヨタ系車体メーカー」としての顔も持っている。
前期の売上高は1兆6751億円、営業利益は1273億円、最終利益は1313億円。グループではトヨタ自動車、愛知製鋼、ジェイテクト(旧・豊田工機)とともに戦前派の名門であり、デンソー、アイシン精機とともに「トヨタグループ御三家」と呼ばれている。
そんな名門企業でも、守りに入ることなく新事業分野の開拓、拡大にアグレッシブに挑戦する姿勢をみせる。その一つが産業車両部門(トヨタ・ロジスティックス&フォークリフト)に属し、1986年に参入した「物流ソリューション」の領域である。
物流ソリューションは英語で「マテリアル・ハンドリング」略して「マテハン」という。顧客の物流の課題を解決するシステムを構築するので「ソリューション」だが、現在のコア・プロダクトは、物流センターの入出庫や在庫管理を完全自動化して省人化、コスト削減を図る「自動倉庫」である。
搬送機器を用いて荷物を機械的に出し入れし、保管するメカトロニクス「フリートマネジメント」だけではない。受・発注のオペレーションと結びついたオンライン化、タグをつけた荷物1個1個のIoT化、さらにAIも活用して倉庫内の荷物や各作業を「見える化」「最適化」したり、システム障害の予防保全を行うなど、物流関連のテクノロジーはどんどん高度化している。
ロボットによる作業の自動化、無人化も進んでいる。ICTも盛んに活用され、生産計画や販売と連係した総合的なシステムもあって「スマート・ロジスティクス」と呼ばれている。
そんな物流システムの構築・提供を担っているのが「物流システムサプライヤー」と呼ばれる業態だ。現在、世界シェアでトップの座についているのが自動倉庫システムで躍進した日本のダイフク(本社・大阪市西淀川区)である。2位はドイツの自動搬送機メーカーのシェーファー(Scheaefer)グループ(フランスのBIC傘下のアメリカの万年筆メーカー、シェーファーとは無関係)。3位は同じくドイツ企業で、シーメンスが最初に設立したデマティック(Dematic)社。4位には日本の村田機械(本社・京都市伏見区)が入っている。5位はオランダのファンダーランデ(Vanderlande)社である(2016年暦年の売上高ランキング)。
世界の物流システムサプライヤーの売上高ランキング
豊田自動織機は今年2月にランキング16位のアメリカのバスティアン社、3月に5位のファンダーランデ社の買収を、続けざまに発表した。
その売上高を合計すると13億8700万ドルで、豊田自動織機がもともと有していた売上約330億円(およそ3億米ドル)を加えると16億8700万米ドルになり、12億6000米ドルの村田機械を抜いて4位に浮上する。首位のダイフクはその1.7倍もあるが、3位のデマティック社との差は3億2900万米ドルで背後の村田機械との差よりも小さく、その背中は、見えている。
参入以来30年間はほぼ国内オンリーで、世界シェアはごく小さかった豊田自動織機は今年、積極的なM&A攻勢により一気に世界で5本の指に入るほどのプレイヤーに、のし上がったのである。
■2社とも売上高を2ケタ伸ばした急成長企業
しかも買収先は、成長力を秘めている。
物流ソリューションのビジネス自体も成長力が大きい。その主役がアマゾン・ドットコムに代表される「eコマース(ネット通販)」で、市場規模(全世界)は2012年から2017年までの5年間で2.2倍になると予測されている。伸び率は2012年の22.2%から徐々に下がっているが、それでも2017年は14.8%で、2ケタ成長が見込まれている。
世界のeコマース(B2C)の市場規模の推移(単位:10億米ドル/%)
(出典:eMarketer B2C E-Commerce Sales Worldwide, 2012-2017)
豊田自動織機によると北米のeコマース市場は日本円換算で2014年の53兆円から2018年の79兆円へ、4年で約1.5倍に成長する見込み。アマゾン・ドットコムのような有力プレイヤーは競うように自動倉庫を建てている。
個別に見ても、バスティアン社もファンダランデ社も、急成長企業である。2016年の前年比売上高伸び率は、バスティアン社が+11.3%、ファンダランデ社は+18.4%もあった。ランキング上位では、ダイフクは+7.3%だがシェーファー社は+1.3%で、デマティック社は−8%、村田機械も−8%のマイナス成長に甘んじていた。
「豊田自動織機+バスティアン+ファンダランデ」陣営が、もし2017年に10%成長すれば世界売上高は18億5500万米ドルに増え、デマティック社がもし前年並みの−8%だったら、わずかに追い抜いて3位に浮上できる計算。デマティック社も昨年、親会社が代わったので立て直しを図るはずだが、それでも肉迫できそうだ。
■フォークリフトのライバルが火をつけた?
世界シェア3位のデマティック社は2016年、ドイツのキオン・グループが21億米ドルで買収したが、このキオンは実は、豊田自動織機のフォークリフトの世界トップシェアの座を脅かすような最大のライバルである。国内のシェア争いでは2位のニチユ三菱フォークリフトに百分比でダブルスコアの大差をつけているが、世界シェアのほうは2位キオンとの差が小さく、2013年にわずか2ポイント差まで詰め寄られたこともあった。
その最大のライバルが物流ソリューションでシェア3位の企業を買収したのだから、豊田自動織機の社内に「機器単品からシステムへ、流れが変わっている」「今のままでは世界トップシェアの座も危うい」と、危機感が充満したことは想像に難くない。キオンに、物流ソリューションの提案と合わせて、自動倉庫であっても出荷作業で使われるフォークリフトを売り込まれたら、なし崩し的に自社のシェアを奪われる恐れがある。
その切迫した危機感が、それまで国内中心で控えめにやっていた物流ソリューションのビジネスを、一気に世界シェア4位まで押し上げるような積極的なM&Aに火をつけた、と言えそうだ。ひとたび本気を出せばそこまでやってしまえるのが、トヨタ。M&Aで得た自動倉庫など物流ソリューションの新しい販路に主力製品のフォークリフトを乗せれば、そっちでも新規顧客を開拓できるだろう。
■ファンダランデもバスティアンも「いい買物」
ファンダランデ社の売上構成(2016年)(出典:豊田自動織機の決算資料より)
バスティアン社の顧客別売上構成(2016年)(出典:豊田自動織機の決算資料より)
買収したオランダのファンダランデ社は1949年の設立。物流機器やソフトウェアを自社開発・生産しているのでスケールが大きく、全世界50ヵ所の拠点で約4500人の従業員を雇用しているグローバル企業である。売上構成を見ると物流倉庫が35%を占め、デンマークの「レゴ」やアマゾン・ドットコムも顧客。17%を占める宅配・郵便にはDHL、フェデックス、UPS、TNTなど大手の顧客が並んでいる。
そして特徴的なのが空港手荷物を処理するハンドリング業務が27%を占めている点。スキポール空港(アムステルダム)、ヒースロー空港(ロンドン)、チャンギ国際空港(シンガポール)、ロサンゼルス国際空港など、世界のハブ空港の重要なインフラを手がけている。その実績はシステムの公共性、大型案件にスピーディーに対応できる能力、信頼性といった点で、大きなアピールポイントになっている。
1952年設立のアメリカのバスティアン社の顧客も、ホーム・デポ、モルソン・クアーズ、GM、ボッシュ、ボーイング、ジョンソン&ジョンソンなど欧米の有名企業が並んでいる。業種の幅が広くバランスがとれているのが特徴。北米市場のシェアは約4%だ。
バスティアン社は機器の生産はほとんど行っていないが、物流システムの基本設計から機器の調達、施工、保守までを一貫して行えるインテグレーターだ。特に倉庫内の物流機器の制御や管理を行うソフトウェアの開発力に優れている。大型案件に強いファンダランデ社と組ませれば、想定した以上のシナジー効果を発揮できるかもしれない。
豊田自動織機がこの両社の買収に費やした金額は、バスティアン社は約290億円、ファンダランデ社は約1400億円で同社にとって過去最大の買収だった。今年5月までに両社の全株式の取得を完了している。
直近2ケタ成長の成長性もさることながら、eコマースに限らず成長性のある分野と安定性のある分野、民間部門と公共部門、各業種の優良顧客をバランスよく抱えている。技術面だけでなく営業基盤という点でも「いい買物をした」と言ってよさそうだ。
■TOYOTAの物流ソリューション世界戦略が本格始動
豊田自動織機の物流ソリューション事業の中・長期のグローバル戦略は、5月に発表された2017年3月期決算発表時に公表された決算資料で明らかになっている。
それによると、M&A前はほぼ国内に限られていた同事業で「ヨーロッパ、北米、アジア・オセアニアのグローバル三極連携体制」を確立。これをフォークリフトに次ぐ主力事業、収益の柱に育てていくという。
ヨーロッパでは、ファンダランデ、バスティアン両社の拠点と、豊田自動織機が築いてきたフォークリフトの販売拠点との連携を強化し、成長市場の取り込みを推進する。北米では、バスティアン社のシステム構築力とファンダランデ社の大型案件対応力のシナジーで事業を拡大。アジア・オセアニアでは、豊田自動織機とファンダランデ社の連携を図る。
国内はダイフクや村田機械、IHIグループ、JFEグループ、住友重機械工業など有力なライバルがひしめき、前期の事業売上高は約330億円と見劣りしていたが、買収した2社のリソースを活かし、倉庫内の物流から顧客の物流全体の「トータル・ソリューション」への進出、売上規模の拡大を積極的に図っていく。
どんな業界でも物流センターではいま、大型化、人が介在しない自動化、ICT化が急速に進んでいる。自動倉庫など物流ソリューションに関する顧客の課題は効率化や低コスト化だけでなく、パレット単位からケース単位さらにユニット単位への小口化、それに伴う配送頻度・個数の増加、荷姿の多様化への対応、通過荷量の増加、処理スピードの高速化、リードタイムの圧縮などますます複雑化、高速化、高度化の様相をみせている。課題が存在する限り、そこにはビジネスチャンスがある。しかし競争は厳しい。
豊田自動織機の物流ソリューション部門の売上高は、買収した2社分を合わせると今年度、連結ベースで2000億円以上と前年度の4倍以上に増加する見込み。7月に発表された第1四半期決算の段階では今期の決算見通しを変えていないが、順調なら今期中に買収効果が連結決算に反映されて、業績予想が上方修正されることだろう。
物流ソリューション、自動車ならぬ自動倉庫でも、果敢なM&Aを行って「TOYOTA」は世界のトップを目指す態勢を整えた。トヨタのブランド力とグループの総合力も味方につけながら、どこまで伸びていくのか、お楽しみはこれからだ。
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