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「弁護士になりたい若者激減」が示す、日本の明るくない未来 受験者、合格者ともに減・減
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52886
2017.09.13 磯山 友幸 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■制度改革前の水準まで合格者減少
司法試験合格者数を「抑制」する流れが鮮明になった。法務省は9月12日に2017年の司法試験合格者を発表したが、合格者数は1543人と、新司法試験制度が本格導入された2007年以降で、最少となった。
合格者は2007年から2013年までの7年間、毎年2000人を超えていた。
規制改革などと並行して進められた司法制度改革で、弁護士・検察官・裁判官の「法曹人口」の大幅な増加が掲げられたが、その後、弁護士数が急増したことで、「質が低下した」「資格を取っても食べていけない弁護士が増えた」といった批判が弁護士会内部から噴出。これを受ける形で、合格者数の「抑制」が進められた。
2014年は1810人、2015年は1850人と2000人を下回ったが、2016年にはさらに抑制され1583人となった。今年はそれをさらに40人下回った。
当初、法曹への多様な人材の登用を目指して、法科大学院が新設された。さまざまな学部の卒業者が法科大学院で法律を学び、法科大学院修了者は大半が新司法試験に合格させる方針で始まったが、合格者の抑制もあり、法科大学院を出ても試験に合格できない人が急増した。このため、法科大学院人気が一気に陰りを見せ、全国の大学が設置した法科大学院が閉鎖に追い込まれるところも出ている。
旧司法試験最後の年だった2005年の合格者は1464人で、来年もさらに「抑制」が進めば、旧試験時代とほとんど変わらない合格者数に逆戻りすることになりかねない。
■参入障壁が高い
弁護士業界が新参者を「抑制」する姿勢を取り続ける中で、深刻な事態が進んでいる。司法試験受験者が激減しているのだ。2011年には8765人が受験していたが、2016年には6899人に減少、今年はさらに932人も減って5967人となった。皮肉な事に、受験者が減ったために、合格者が減っても合格率は25.8%と前年の22.9%よりも高くなった。
少子化に加えて、人手不足から企業が採用を大幅に増やしていることで、司法試験を受けようという学生が減っている。法曹界にとっては優秀な人材を採用できない事態に直面しているのだ。
一方で、企業法務では、会社法や知的財産権、独占禁止法といった分野の仕事が大きく増えており、専門弁護士へのニーズは高い。大手の弁護士事務所などは「優秀な弁護士はいくらでも欲しい繁忙状態」だと言う。
また、企業自身が社員として弁護士資格保有者を採用するケースも増えている。さらに、企業以外でも弁護士が活躍できる場は増えている。霞が関に期限付き公務員として採用されている弁護士も少なくない。
一方で、競争が生じたことで、なかなか食べていくのが大変だという弁護士が増えているのも事実。弁護士自身が専門性を磨き、独自の分野で勝負できないと、一般的な訴訟などを奪い合うことになる。過払い金訴訟や離婚、相続といった分野では「弁護士余り」だという声も聞く。
さらに、法科大学院を修了しなくても受験資格が得られる「予備試験」経由の合格者が年比55人増の290人と過去最多を更新した。司法制度改革の目玉だった法科大学院が骨抜きになりかねない流れが一段と強まっているわけだ。全国に74ある法科大学院を修了した合格者は1253人で昨年より95人減った。
■何のための改革だったのか
難関な試験を突破して資格を取得する弁護士や公認会計士、税理士などでは、2000年代の規制緩和の流れの中で、合格者を大幅に増やす試験制度改革が行われた。
役所が行政指導によって不正や紛争を防いでいた「事前規制型」のスタイルから、問題を起こした企業を処罰する「事後規制型」へと転換していく中で、専門人材の大幅な拡充が不可欠になるという判断だった。とくに、弁護士の数が圧倒的に足らないという認識が司法制度改革の根幹にあった。
その後、資格保有者が急増したことへの批判が業界内部から高まり、弁護士だけでなく、公認会計士でも合格者の「抑制」が行われた。その結果、試験が再び「難関化」するとのイメージが広がり、受験者が司法試験でも公認会計士試験でも激減する事態になっている。
景気の好転で、公認会計士は再び人手不足が問題になっており、受験者の減少が会計士業界の大きな難題になっている。
弁護士業界には、合格者を再び増やせという意見もあるが、そうした声は一部で、競争相手が増えると自らの仕事が減るとして反発する声の方が大きい。
一方で、長期的には少子化が改善する見通しはなく、このまま受験者が減り続ければ、法曹界に優秀な若者が来なくなるという危機感を抱く人たちもいる。
来年以降も司法試験合格者の減少が続き、旧司法試験時代と変わらない1500人未満の合格者数になっていくのか。あるいは将来の法曹人口の増加に向けて合格者を増やすべきだという議論が再び活発になるのか。
法曹のあり方は日本社会の今後のあり方にも大きく影響するだけに、司法試験の行方に注目すべきだろう。
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