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日本の「食糧自給率」、実はそんなに深刻ではなかった 日本が輸入に頼るのにはワケがある
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52734
2017.09.11 ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
■実はそれほど低くない
日本の食料自給率が、23年ぶりの低水準に落ち込んでいる。
農林水産省が発表したところによると、'16年度の食料自給率は38%だった。'15年度まで6年連続で39%にとどまっていたが、冷害で37%に落ち込んだ'93年度に近づく数値を叩き出した。一方で政府は、'25年までに食料自給率を45%まで高める目標を掲げている。
アメリカがTPP(環太平洋パートナーシップ協定)離脱を表明して以降、食料の輸出入に関する報道がどことなく下火になっていたが、このような現状をどのように捉えればいいのだろうか。
まず、農水省が重要視している食料自給率は「カロリーベース」と呼ばれるもので、国内で生産され、1人1日当たりに供給される熱量(913キロカロリー)を、国民が1人1日当たりに消費する熱量(2429キロカロリー)で割って38%となっている。
これとは別に「生産額ベース」で食料自給率を求める方法がある。食料の国内生産額(10・9兆円)を、国内で消費された金額(16・0兆円)で割るが、この計算だと'16年度の食料自給率は68%となる。
農水省が強調するのは、カロリーベースの数字である。農水省は独自の計算で他国のカロリーベースを割り出し、それらと比較して日本の自給率は低いと主張する。ちなみに農水省が公表している'13年の数値でカナダ264%、オーストラリア223%、アメリカ130%、フランス127%、ドイツ95%、イギリス63%となっている。
これを'09年の生産額ベースで見てみる。カナダ121%、オーストラリア128%、アメリカ92%、フランス83%、ドイツ70%、イギリス58%となっている。単純比較はできないにしても、68%の日本はそれほど低くないことがわかるはずだ。
■食糧自給率よりも深刻な問題
実は、この食料自給率という数字は、国際社会ではあまり使われない。食料自給率を公表している国は、日本のほかには、イギリス、スイス、ノルウェー、韓国と台湾くらい。先に見てきた数字は、農水省がわざわざ独自に計算しているほどだ。
このことを考えると、国際社会では食料自給率という指標がさほど重要視されていないことがわかる。国内でも、食料自給率にはこれまで多くの批判が上がった。たとえば、近代農業では、農耕機やビニールハウスなどでガソリンやガスなどのエネルギーが不可欠だ。
そのエネルギーの自給率は、日本では6%程度と圧倒的に低く、食料自給率だけをとやかく言うことに意味がないといった具合だ。仮に戦争などの有事を考えても、輸入が制限されるのは食料よりエネルギーが先で、そちらを先に何とかするべきだとする向きも多い。
そもそも食料の輸入が増えているのは、政府が自由貿易の枠組みを拡げようとしているからだ。にもかかわらず、食料自給率の上昇を掲げているのは矛盾している。政府が農業協同組合の顔色を窺っているからだろうか。
農水省がカロリーベースで食料自給率を発表するのは「第二次世界大戦後の飢餓を忘れないため」と言われることがある。たしかにそれは大事だが、悪く言えば国民を「だましやすい」数値であり、農水省としても予算獲得の方便として使っている可能性は否定できない。
『週刊現代』2017年9月9日号より
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