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自治体や企業が実施している健康ポイント(週刊朝日 2017年9月15日号より)
歩くだけで3千円のギフト券 急増するお得な「健康ボーナス」とは〈週刊朝日〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170908-00000007-sasahi-life
週刊朝日 2017年9月15日号
運動など健康維持の努力をした人に、商品や金券を渡す。そんな取り組みが、企業や自治体に広がる。歩いて“稼ぐ”ことができ、健康が“お金”になる時代。こんなうれしいしくみが広がるわけは……。
横浜市で、約24万5千人も参加する健康づくりの取り組みがある。
「よこはまウォーキングポイント事業」で、専用の歩数計を携えて歩くとポイントがたまる。一定のポイントに達すると、3カ月に1回の抽選で500人に3千円分のJCBギフト券などがあたる。参加者は健康づくりをしながら賞品ももらえ、一挙両得のしくみだ。
歩数計は、横浜市が無料で用意(送料のみ自己負担)。参加者は市内の店舗など約1千カ所にある専用リーダーに歩数計をかざすと、ポイントがたまる。
2014年秋に始まった事業で、参加資格は当初40歳以上だった。しかし、「年齢で区切らずに職場一体で取り組みたい」との声が市内の事業所から多く寄せられ、昨年6月から18歳以上に広げた。個人だけでなく事業所単位でも参加可能で、事業所内や事業所間の歩数ランキングが専用ホームページに表示される。企業は従業員の健康づくりに生かせ、職場の一致団結などの副次的な効果も見込めるため、好評という。
市がまとめた報告書によると、利用者の3分の2以上が、参加を機に「一日の歩数が増えた」と回答。自らを「健康でない」と感じていた人の多くが、参加を機に「健康である」と意識が変わる効果もみられた。
こうした健康ポイント事業が今、各地の自治体や企業に広がる。費用をかけて動機付けまで用意して住民の運動を促す自治体や、従業員の健康づくりに積極的に取り組む「健康経営」を掲げる企業が増えた。
健康経営の具体的な取り組みは、スポーツイベントや階段使用の推奨などで体力増進▽社員食堂での健康メニュー提供など食事・生活習慣病対策▽禁煙やがん検診受診の啓発、などさまざまある。ただ、どんな取り組みにしても、個人の意識が高まらないと長続きしない。やる気を高める工夫として、ポイント制を採り入れる企業が多い。
他社に先駆けて健康経営に取り組む花王は、健康保険組合と協力して健康づくりの数値目標などを定めている。目標達成のツールの一つが「健康マイレージ」。柳内佳子・健保組合常務理事は「健康づくりに意欲的に取り組む人にインセンティブを与え、より健康になってほしい」と話す。
健保組合は従業員の治療費負担だけでなく、保険料を健康な人にも多く使うことになる。「治療から予防へ」の意識の転換だ。
従業員は自らの目標を立てると300ポイント、ウェブ上に体重などを記録すると毎日5ポイントといった具合にためる。健康関連グッズやレジャー用品などと交換できる。
花王によると、16年度は1325人が交換。積極的な人は年7千〜8千ポイントをためる。体温計や体重・体組成計などが人気で、「高額商品ねらいでためる人と、少額ポイント商品で交換を楽しむ人とに分かれる」(広報部)という。
意識の高まりもあって、会社全体で取り組むウォーキングイベントは参加者が年々増加。参加者の4割近くは体重が減り、9割近くは歩くことが習慣化した。
大和証券グループ本社は、08年のメタボ健診(特定健診・特定保健指導)義務付けを機に、健康経営に本格的に取り組み始めた。10年にウォーキングと禁煙チャレンジ、11年に腹八分目キャンペーンなどイベントを次々に展開し、従業員の意識を高めた。
全社員を対象に昨年11月から「KA・RA・DAいきいきプロジェクト」を始め、健康リテラシー講座などを新たに設けた。社員の参加状況に応じてポイントをつけ、健康飲料やグッズなどと交換できる。安藤宣弘・健康経営推進課長は「若年層などの『健康無関心層』を取り込み、グループ全体でより健康意識の向上を図りたい」という。
同社は45歳以上の社員向けの教育・評価プログラムにも、健康の要素を採り入れている。
プログラムでは、ファイナンシャルプランナーや証券アナリストといった、仕事に役立つ資格取得などの自己研鑽を促している。取り組みに応じてポイントを与え、一定数に達すると55歳以降の給与に反映される。業務に関する自己研鑽に加え、腹八分目・ウォーキングなど健康の項目もある。健康づくりの努力が将来の給与アップにつながる要素の一つというわけだ。
従業員の健康づくりは新ビジネスにもなっている。
ベネフィットワン・ヘルスケア社は約7500の会員企業・団体向けに、健診事業や健康ポイント事業を運営している。各社が自前でやると煩雑なポイント管理や商品交換などを、一括して対応するビジネスだ。
同社によれば、健康ポイント導入は、無関心層への効果が大きいという。
河原章取締役は「個人が無理なく行える環境づくりが大切です。一人だと続かなくても、グループ単位だと取り組みやすい。交換できる商品が魅力的ならば、モチベーション持続にもつながる。商品選びのイニシアチブは奥さんが握っているとも聞きます」と話す。
こうした動きが広がるのは、増え続ける医療費を官民挙げて抑える必要があるためだ。団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」も間近に迫る。河原氏は「国を挙げて健康づくりを支援する流れがある。生涯現役社会をつくるためにも、健康の維持が経営課題になった」と指摘する。
自治体、経済団体、医療団体などでつくる「日本健康会議」は、「健康なまち・職場づくり宣言2020」を定めた。8項目の一つに「予防・健康づくりについて、一般住民を対象としたインセンティブを推進する自治体を800市町村以上とする」とある。すでに300超の市町村が取り組む。企業や自治体の健康ポイント導入の流れは、今後も加速しそうだ。
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