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有明本社ショールーム(「Wikipedia」より/Ryoma35988)
大塚家具、「中古家具店に成り下がり」…リユース&大安売り押し出しでブランドイメージ失墜
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20531.html
2017.09.10 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
「リユース」と聞いて、どのようなイメージを抱くだろうか。
リユースとは、言わずもがな「再利用」という意味だ。一度使用された製品を再利用することで無駄な廃棄を減らし、循環型社会を形成するために、近年その重要性が高まっている。そういう意味でリユースが重要であることは間違いない。
企業でいえば、本を中古販売する「ブックオフ」やリサイクルショップを運営する「コメ兵」、フリマアプリのサービスを提供する「メルカリ」などがリユース業を行っている。もちろん、他人が一度使ったものでも使用したい人は一定数いるので、そういった人たちにリユース品を販売することで収益を上げることができる。
確かにリユース市場は有望だ。中古・リユースビジネスに関する総合ニュースサイト「リサイクル通信」によると、2015年のリユース市場の市場規模は前年比3.5%増の1兆6517億円で、調査対象とした09年以降、6年連続で拡大しているという。
リユースして製品を売ることは意義があることだ。そして、リユース市場が成長市場であることは疑いようもない。一方、“ブランドイメージ”という観点からリユースを見た場合はどうだろうか。
新品と比べ、リユース品は下に見られてしまうのではないだろうか。アンティークということで価値が高まる場合もあるが、一般的には価値は低く見られてしまうだろう。「他人が一度使っている」「古めかしい」といったマイナスのイメージがどうしても付きまとってしまう。少なくとも、「リユース」という言葉を掲げてハイブランドとしてイメージが高まることはないだろう。
■大塚家具のリユース戦略
そういった認識を共有した上で、家具やインテリアを販売する大塚家具の経営を見てみたい。大塚家具はこのところ、リユース事業に力を入れている。15年7月に参入を表明。16年9月に本格始動し、同10月にはリユース品を販売する新たな大型拠点「IDC OTSUKAアウトレット&リユース大阪南港」をオープンした。その後、横浜や有明、新宿などにリユース品を扱う店舗を設け、事業を拡大している。
リユース事業を推し進めるために大々的に宣伝を行っている。参入表明後には、不要になった家具を最大10万円で下取りする「のりかえ特割」と称したキャンペーンを実施した。他社製品を含めて下取りすることで、買い替えで新たに家具を買ってもらうことと、リユース品の確保を目的としたキャンペーンだ。
最近では、8月27日まで下取りと買い取りを行うキャンペーンを実施した。買い替え需要を掘り起こすことに加え、下取りや買い取りした状態の良い家具をリユース品として販売する狙いがある。店頭ではもちろん、ホームページのトップで大々的にキャンペーンの宣伝を行っていた。「一律1万円で下取り」といった言葉がいたるところで踊っていた。
リユース事業を軌道に乗せるためには、宣伝は欠かせないだろう。認知されなければ始まらないことは確かだ。ただ、リユース事業の大々的な宣伝は諸刃の剣といえるだろう。店頭では「リユース」「店頭展示品限り30%OFF」「数量限定お買い得品 40%OFF」といったプライスカードが並んでいたが、こうした打ち出しにより、ブランドイメージを低下させている感が否めない。大塚家具が「中古家具店に成り下がった」と感じる消費者は少なくないのではないか。
とはいえ、宣伝に力を入れていることもあり、大塚家具のリユース品の売上高は増加している。17年1〜6月期のリユース品売上高は2億円程度とみられ、前年同期と比べれば大幅に増加している。ただ、その規模は全体の1%程度にすぎない。今後の増加が見込めるだろうが、ブランドイメージが低下して既存の家具が売れなくなってしまったら元も子もないだろう。
「リユース」という言葉がブランドイメージを低下させていることを意識してか、大塚家具はリユース家具の新名称を公募している。名称はまだ決まってないようだが、イメージの良い名称に変えればマイナスイメージをある程度抑えることはできるだろう。
業種や状況は異なるが、マクドナルドが新商品の名称を公募して話題となったことがある。500万件を超える応募があり、公募の中から選ばれた名称で販売し、売れ行きは上々だったという。業績が悪化していた同社の復活のひとつのきっかけになったことは間違いない。このように、名称の公募はタイミングと状況が良ければ売り上げとイメージの向上につながる施策となり得ることは確かだ。
大塚家具がマクドナルドの事例を参考にしたかどうかはわからない。いずれにしても、名称の公募を業績回復のきっかけにしたいところなのだろう。ただ、マクドナルドのケースと違うのは、大塚家具の場合、「リユース」というマイナスイメージを隠したいという負の意図が感じられることだ。言葉でごまかそうとしている感が否めない。しかし、名称が変わっても本質はなんら変わらないので、その効果は限定的ではないか。誰かが一度使った家具を販売することには変わりはない。
■ブランドイメージが失墜した大塚家具
大塚家具の目下の業績は深刻な状況だ。同社の17年1〜6月期決算は売上高が前年同期比11.3%減の213億円、営業損益は27億円の赤字(前年同期は19億円の赤字)、純損益は45億円の赤字(同24億円の赤字)だ。大幅な減収で、赤字幅は大きく拡大している。
大塚家具の業績が悪化しているのは、現社長の大塚久美子氏と、前会長で久美子氏の実父である大塚勝久氏との確執により生じた一連のお家騒動が主たる原因であることは間違いない。その後に乱発したセールにより、安売りのイメージがついたことも大きいだろう。さらにリユース事業を大々的に打ち出したことで、ブランドイメージがより一層低下していることも、業績悪化につながっていると筆者は考えている。
大塚家具は業績が悪化した理由として、低価格路線にシフトしたと消費者に誤解されたことを挙げている。そして、その誤解を解きたいという。しかし、そのように考える一方で、低価格を訴求したリユース事業を大々的に打ち出しているのは矛盾するのではないだろうか。これでは、低価格路線にシフトしたままと消費者が認知しても致し方ないだろう。
リユース事業は有望かもしれないが、堕ちたブランドイメージを回復させなければならない状況の大塚家具が大々的に行うべき事業ではないのではないか。既存の事業を立て直してから行うか、行うにしてもブランドイメージを低下させない程度の規模にするべきではないだろうか。または、大塚家具とは切り離して、別ブランド・別業態で行うべきなのかもしれない。業績悪化が止まらない現状がそのことを物語っているようでならない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
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