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北朝鮮危機のなかでニッポンが悩まされる「円高リスク」 あまりに不透明な情勢下で
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52779
2017.09.04 真壁 昭夫 信州大学経済学部教授 現代ビジネス
8月29日、北朝鮮によるミサイル発射を受けて、東京時間早朝の外国為替市場では、ドル/円の為替レートが108円30銭台まで1円程度急落(ドル安・円高が進行)する場面があった。
その後、ニューヨーク時間に入るとドル/円は反発し、8月末には110円台半ばを回復した。市場参加者は北朝鮮問題を軽視していたが、楽観はできないことがここにきてあらためて明らかになった。
9月3日には6回目の核実験が強行されたが、北朝鮮の軍事挑発は今後も続くだろう。トランプ政権の迷走もあり、北朝鮮問題への緊張感は高まりやすい。加えて、米国の政治先行きへの懸念も高まっている。
リスクテイクが難しい中では円キャリートレードのポジションも増えづらいだろう。そのため、ドルの買い戻しは一時的なものに留まり、円はじり高の展開を辿る可能性がある。
■米国が軍事的な行動を選択する可能性も
8月上旬、トランプ大統領が北朝鮮に対して炎と怒りに直面するとの警告を発したことなどを受け、世界の金融市場では北朝鮮問題への緊張感が高まる場面があった。その後、緊張感が低下する中でも、北朝鮮の建国記念日である9月9日にミサイル発射などの挑発があると考える投資家は多かったようだ。
しかし、北朝鮮の行動は予見が難しい。そもそも、短期間で金正恩政権と米国の関係が改善に向かうとも考えづらかったわけだが、ここにきての核実験である。国際社会はこれまで制裁を強化しつつ外交交渉を経て北朝鮮問題を解決しようとしてきたが、肝心のトランプ大統領はこの考えに否定的だった。
忘れてはならないことは、米国の軍事的な行動の最終決定権はトランプ大統領にあることだ。同氏はビジネスと外交の交渉を区別できないまま、思った通りの展開が進まない場合には相手に一段の圧力をかけ、要求を突き通そうとするだろう。この姿勢が修正されるとは考えづらい。
このところ、北朝鮮の姿勢には若干の変化が見られ、外交交渉を受け入れる可能性を仄めかしていた。本来であれば米国はその機を逃さず、圧力と対話を駆使して北朝鮮問題の鎮静化を目指すべきだった。
だが、トランプ大統領にそうした取り組みへの準備があったとは考えづらい。今後も米国と北朝鮮の関係はこじれ、ミサイル発射など軍事的な挑発が続くと考えるべきだ。
■米国の政治不安も円高圧力につながる可能性
北朝鮮問題に加えて気がかりなのが、米国の政治動向だ。トランプ大統領はメキシコ国境に壁を建設する予算が確保できない場合には、政府機関の閉鎖も辞さないとの考えを示した。すでに、米国の景気は成熟期に差し掛かり、一段の景気回復が続くか否か、慎重な見極めが必要な時期を迎えつつあると考えられる。
議会、共和党との関係が悪化する中、税制改革など経済の底上げにつながる政策を期待するのは難しい。もし、10月以降の予算案に合意することができない場合、米国の政府機関は一時閉鎖に追い込まれる恐れがある。
債務上限の引き上げどのように議論されるかも不透明だ。ハリケーン・ハービーによる経済への影響も懸念される中で、予算などを巡る議論が難航すると、米国経済への期待は大きく損なわれるだろう。
政府機関の閉鎖に関しては、様々な見方がある。これまでの経緯を振り返ると、状況が悪化した時にトランプ大統領がリーダーシップを発揮し、利害の調整を促す場面は見られなかった。
むしろ、同氏は状況が悪化した原因は共和党の指導部などにあると批判し、状況の悪化に拍車をかけてきた。今回も、同氏が火に油を注ぐような言動を取らないか、気がかりだ。
状況次第では、米国国内での政治不安が一段と高まり、さらに先行きが見通しづらくなる展開が現実のものとなる恐れがある。その場合、年内の追加利上げは難しくなるだろう。
日銀による金融緩和が難しい中で、日米間の金利格差は拡大しづらい。むしろ、先行き不透明感から金利差が縮小する可能性の方が高いかもしれない。このため、ドルの買い戻しは続きづらく、円が買われやすい展開を見込まれる。
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