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『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(鈴木貴博/講談社)
20年後、本当に頭脳労働は消滅し、肉体労働は残るかもしれない…AIと原子爆弾
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20415.html
2017.09.02 文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役 Business Journal
人類の仕事は2045年に向けて段階的に消滅していくと予測されている。この分野の議論は盛んで、「人類の仕事の47%は20年以内に人工知能(AI)とロボットに置き換わる可能性がある」という英オックスフォード大学の予測を中心に、仕事の大半が消滅するという意見から、多くの仕事は最後までなくならないという意見まで議論は百出の状態だ。
もし人類の仕事が本当に消滅したら、大変なことになる。仮にそのようなことが起きたときに何が起こるのかをまとめたのが私の近著『仕事消滅』(講談社)なのだが、私の周囲で盛んなのはその前の議論、つまり「20年後に仕事消滅は起きるのか?」という話題のほうに焦点が当たっている。
AIの発展、機械がインターネットに全部つながるIoT(インターネット・オブ・シングズ)の普及、それにともないこれから先、想像もできないほどの産業イノベーションが起きるといわれている。それにより新たな仕事が生まれる仕事創造と、そのことが破壊する仕事消滅のスピードのどちらのペースが速いかによって、未来は異なるというわけだ。
そして現時点の意見としては「仕事はなくならないだろう」という考えのほうが多数派だ。多数派である理由は、「そうなってほしいと思う人のほうが多いから」である。でも現実には不安な要素は山ほどある。これからお話しする不気味な符合から、人類は逃げられるのだろうか?
一度完成したら後戻りできない
まず指摘したいのは、AIによる仕事消滅の問題は、原子爆弾の開発と似ているということだ。
今、先進国の大企業が直面しているのは、いかに人を減らすかという経営課題である。少子高齢化が進む日本では、特に「人が採用できない」問題によって事業拡大ができない会社が少なくないが、欧米では「人をマネジするコストが高い」ことや「人を減らすことが生産性を上げる鍵である」ことから、人を機械やコンピュータに置き換えることに力を入れてきた。
しかし、システムの導入効果には限界がある。実際、いろいろな企業が「生産性を上げる」という目的でIT化を進めてきたが、それでも人は一向に減らず、生産性も十分には上がっていない。これが過去30年間に起きてきたことで、ここまでは「ITが人類の仕事を消滅させるなど絵空事だ」という意見は正しかった。
一方で、もっと強力なITを開発しようという力が働いてきた。そのトレンドから誕生したのが「深層学習能力を持つAI」である。
この流れが、1945年に投下された原子爆弾の開発と似ているという意見がある。戦争に使われる武器が強力化しても、それでもまだパワーが足りないというときに、物理学者たちが「もっと強力な武器」として発明したのが原子爆弾だった。開発するまでは「もっと強力な武器が必要だ」と言われてつくったのだが、いざ完成してみたら強力すぎて、これでは人類が根絶やしにされてしまうことが、あとから問題になった。
ここでの本当の問題は、原子爆弾が一度完成したら後戻りできないということだ。国家間の競争がある以上、それでも開発を続けなければならない。その結果、大国には数万発の核兵器が使われないまま配備されている。
汎用的な人工知能の誕生
AIも同じ問題を抱えている。企業間の競争で、より強力なAIが必要だという認識から開発競争がエスカレートしている。アマゾンやアップルのようなIT企業は、覇権を確保するために数千億円レベルの研究開発投資をこの分野につぎこんでいる。自動車会社各社は無人で運転する自動車を先に開発した者が勝者になるという意識から、未来カーの投資はAIに集中している。投資銀行や機関投資家は運用成績で抜きん出るには、他社よりも優れたAIの開発しかないとしのぎを削っている。
情報科学者が「深層学習」を発明してしまったことで、このAIの開発競争が2012年をターニングポイントに大きくシフトアップした。それは通常兵器と核兵器ぐらいのギャップがあるシフトアップである。
囲碁のように閉じたルールの世界を思考するAIはすでに人類の能力を超えている。開発者のロードマップを見る限り、次は「自分の行動の影響をフィードバックして対応できるAI」が25年頃には出現するだろう。その時点でAIによる金融商品の売買プログラムは、人間のファンドマネジャーの能力を完全に超える。
その次の段階で、AIは人間の言語を自分で学習できるようになる。30年から35年ぐらいには教えなくても人間が何を話しているのかを人工知能が学習するようになる。これが「汎用的な人工知能の誕生」である。
こうなると人類は後戻りができなくなる。会議で議論する、メールでやりとりする、上司から依頼を受けた知的なタスクを処理するといった仕事は、AIで置き換わるようになる。要は、「頭脳労働者は機械に置き換えたほうが安上がり」という状況が成立してしまうのだ。
多くの有力科学者が「この段階に到達する前に、人工知能の開発を止めたほうがいい」とアドバイスしている。にもかかわらず開発競争が止まらない事情は何か?
そう、1940年代の武器開発競争と状況はまったく符合している。グローバル企業同士の経済戦争が始まってしまったから、未来は止められないのだ。
しかし、もし発明がなされなければ仕事消滅は起きない。起きないという意見の多くは「汎用型のAIをあと20年ないしは30年で完成させることなどできない」という観測を論拠にしている。私は、その楽観論が心配である。
なぜなら、汎用型のAIを開発するために年間数千億円の投資を継続的に行っている会社のことをよく知っているからだ。それがグーグルである。グーグルの開発能力を知っているがゆえに、年間予算数百万円の大学の研究者が専門知識をベースに「そんなことは起きない」と言うことに、納得はできないのだ。
念のために、話をもとの議論に戻しておく。汎用型AIが20年以内に完成するか完成しないかは五分五分の議論かもしれない。しかし、仮にグーグルがそれを完成してしまったら? そうなると、頭脳労働のほうが先に消滅し、肉体労働の仕事だけが残る未来がやってくる。そのことに備えておいたほうがいいというのが『仕事消滅』に書かれている主張である。
さて、同書は現在発売中だ。自動運転車が登場し、AIトレーダーが全盛となり、人型ロボットが職場で活躍するようになる時代ももうすぐ来るとしたら。イノベーションで産業が発展することを喜べず失業が気になる人にとっては、必読の本である。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)
●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストン・コンサルティング・グループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『ぼくらの戦略思考研究部』(朝日新聞出版)、『戦略思考トレーニング 経済クイズ王』(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
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