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北朝鮮が発射した弾道ミサイルは、日本列島を越えた (「労働新聞」より)
北ミサイル発射後の円高は「円は安全資産」が理由ではない
http://diamond.jp/articles/-/140464
2017.8.31 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
地政学的リスクが高まったのに
円が「安全資産」はおかしい
日本時間8月29日早朝、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、日本の上空を通過した。これを受けて国際金融市場では緊張感が高まり、109円25銭前後で推移していた円相場は、一気に108円50銭前後にまで円高となった。
国際金融市場が緊張すると、円高になるケースが多く、「安全資産である円が買われた」との解説がなされることが多い。今回も、そうした解説が散見された。しかし、今回は日本の上空をミサイルが通過したわけで、世界の地政学的リスクの中で最も悪化したのは日本なのである。一方、ドルは世界最強の軍事大国の通貨。円がドルに対して強くなった理由が、「安全資産だから」というのは到底納得できない。
「安全資産だから円が買われた」という説明は、リーマンショック以降、広く定着したと記憶している。リーマンショック時は、欧米の金融システムに激震が走る一方で、日本は金融システムが比較的安定していたので、「ドルもユーロも買えないから、消去法で円を買った」という話が随所で聞かれ、「確かに円は安全資産だ。だから危機が深刻化すると円が買われるのは当然だ」と納得したものである。
しかし、その後、米国の金融システムが回復して米国経済が再び世界最強となったのに対し、日本経済は相変わらず長期低迷から抜け出せていない。にもかかわらず、こうした説明は使われ続けた。あたかも「枕詞」のように、誰も深く考えずに使っているようだ。しかし、明らかに聞き手を誤解させる(混乱させる)説明は、いい加減にしてほしいと考える。
円高に振れた“犯人”は
日本の経常黒字
ではなぜ、国際金融市場が緊張すると円高になるのであろうか。結論を先に記せば、過去の日本の経常収支黒字が投資家たちの「ポジション」となっており、国際金融市場が緊張すると、ポジションを解消しようとする投資家たちがドルを売るからなのである。以下、背景から説明していきたい。
日本は経常収支が黒字である。輸出企業などが外国からドルを持ち帰って売りに出すと、輸入企業などが買うわけであるが、売りの方が多いので、ドルが余ってしまう。それを買っているのが投資家だ。
投資家としては、ドルを持っているとドル安で損をするリスクがあるので、本当は持ちたくないのだが、ドルを買って米国債で運用すると、日本国債で運用するよりも利回りが高いので、「ドルを持つのはリスクだが、あえてリスクを取って米国債の高金利を受け取ろう」と考えるわけである。
このように、為替リスクを負っている状態を「ポジション」と呼ぶ。
日本は、過去から長期にわたって経常収支黒字を稼いできたため、投資家たちが過去に購入して持っている米国債は巨額だ。つまり、投資家は大きなポジションを持っているわけである。
こうしたポジションを持っている投資家は、気が大きくなっている時(リスクオンと呼ぶ)には、「多少のリスクは構わないから積極的に米国債を購入し、利益を追求しよう」と考えるためドルを買う。
だが、リスクに敏感になっている時(リスクオフと呼ぶ)には、「とにかくリスクは嫌だ。儲からなくてもいいからリスクを減らそう」と考える。ポジションを減らすためには、米国債を売り、受け取ったドルを売り、黙って円を持って嵐が通り過ぎるのを待つのである。
何が起きるか分からないから
ポジション閉じた投資家がドル売り
今回、ミサイル発射で国際金融市場の緊張が高まり、投資家たちは「何が起きるか分からないから、とにかくポジションを閉じてジッとしていよう」と考えた。そこで、投資家たちはドルを売ったのである。日本人投資家は、未明なので寝ていた人も多いが、米国人に夜間の運用を委託している投資家も多いから、瞬時に売れたのである。
また、米国人にもポジションを持った投資家がいる。低い金利で円を借りてドルに替え、米国債を保有して高い金利を享受している米国人投資家は、いつかはドルを売って円の借金を返さなくてはならない。米国人がドルを持っているとはいえ、日本人投資家の米国債投資同様に、ポジションを持っているわけである。彼らはリスクオフになるとドルを売って借金を返すことになる。
投機家たちも、「ポジションを持っている投資家たちがドルを売るだろうから、ドル安になるだろう。先回りしてドルを売っておこう」と考えてドルを売る。こうした動きが一瞬で生じたので、一気にドル安、つまり円高になったというわけである。
地政学上のリスクが増大したにもかかわらず、円高になったメカニズムは以上であるが、今回は、もうひとつ考えることがある。実際に日本が被害にあいかねない、ということである。
万が一そうなった時には、今度は大幅ドル高、つまり大幅円安になるはずだ。したがって、投資家たちが日本の被害を予想しているならば、今からドルを買うであろう。しかし、市場は円高になっている。ということは、現時点で投資家たちは、そうした事態は起きないだろうと予想しているということ。筆者も、そう願っている。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
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