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「オープンロジ HP」より
物流業界を疲弊させる「再配達地獄」、撲滅計画始動…関係業界が一丸の共同システム
http://biz-journal.jp/2017/08/post_20315.html
2017.08.25 文=編集部 Business Journal
2014年12月に国土交通省が実施した調査によると、宅配便で1回目完配、つまり1回の訪問で配達が完了し再配達が生じない割合は全体の80.4%、不在配達1回の完配率は15.7%、2回は同2.6%、3回以上は同0.9%だという。国交省は、1年間の不在配達に約1.8億時間が費やされ、1日の平均労働時間を8時間、年間労働日数を250日と設定した場合、年間9万人の労働力に相当すると試算している。
インターネット通販などのECの拡大、ドライバーの人手不足、夫婦共稼ぎ世帯の増加――。これらが再配達問題を表面化させたのだが、遠因は宅配便の仕組みに潜んでいる。ECを例にとると、宅配便の流通過程は主にEC事業者→物流会社→届け先で構成されている。配達を阻害する要素があると、このフローがスムーズに流れない。
2500のEC事業者と十数社の物流会社をインターネット上でマッチングするプラットフォーム運営会社、オープンロジ社長の伊藤秀嗣氏は、次のように説明する。
「再配達の問題がクローズアップされているが、それは宅配便の課題の一部であると認識している。荷物に記入された届け先の郵便番号が間違っていると、物流会社の集荷ベースの仕分けによって異なる営業所に配達されてしまったり、他の管轄エリアに回され越境発送となったりする。また、集荷された後にEC事業者から発送キャンセルが入ったり、届け先の住所の部屋番号が抜けていたり、届け先が長期不在という場合や、商品が汚破損されて返品されるとか、その都度、EC事業者と物流会社とのやりとりでFAXや電話などのオペレーションコストがかかる。そういう非効率を解決していかないと、宅配便にかかるコストは個数に比例して上昇するばかりだ」
さらにEC店舗の仕組みにも問題があるという。
「多くの店舗の画面で注文確定のレイアウト位置がコンバージョンを優先したかたちになっていて、ユーザーが商品の受取場所や受取日時を指定してから、注文確定をクリックするという構成になっていない。また、郵便番号と住所が不一致のまま注文確定をクリックして、返品につながっている場合も一定の確率で起こる」(同)
こうした実態を踏まえて、まず問われるのはEC事業者と物流会社の連携である。届け先に関する情報はEC事業者が入手するので、両者が情報を一元管理する仕組みが構築されれば、再配達を削減する有効な手段となる。
オープンロジは宅配便の課題の解消に向けて、EC事業者と物流企業の効率的な運用をサポートする仕組みを開発する方針である。今年7月には、世界有数の資産運用会社フィデリティの資金を運用するエイト・ローズ・ベンチャーズやSMBCベンチャーキャピタルなどベンチャーキャピタル4社から計7億3000万円を調達。米国オレゴン州での倉庫確保など既存事業への投資に加え、オムニチャネル物流など新規事業の立ち上げ資金にも充当する。
■新たな物流システムの確立
オープンロジが構想するオムニチャネル物流は、こんなイメージだ。顧客がインターネット上で商品を購入すると、EC事業者は倉庫に発送指示を出すこともできるし、実店舗に取置指示を出すこともできる。倉庫と実店舗は在庫データが一元化され、実店舗で在庫がなくても在庫がある倉庫に発送指示を出したり、倉庫は実店舗に対して在庫を自動補充したりする。EC事業者、倉庫、実店舗はオープンロジのシステムで一元化され連携される。
この物流システムを確立するうえでは、在庫データの一元化と実店舗の拠点化のオペレーションの簡易化、POSレジなどの外部サービスとの連携が必要だという。伊藤氏は「これまでは倉庫のオペレーションにおいて培った業務運用ノウハウが店舗の拠点化にも生かせる。中小事業者にとってオムニチャネルに取り組む上でハードルだったものを、すべて下げていきたい」という。
国土交通省も2015年に再配達の削減策として以下の4つを示した。
(1)消費者と宅配事業者・通販事業者との間のコミュニケーションの強化
(2)消費者の受取への積極的参加の推進のための環境整備
(3)受取方法のさらなる多様化・利便性向上等の新たな取組の促進
(4)既存の枠組みを超えた関係者間の連携の促進
(1)では配達時間の確認・通知の徹底、(2)では社会的損失の理解促進・ポイント制度などのメリット付与、(3)ではコンビニ・鉄道駅の活用、宅配ボックスの普及、(4)では緩やかなコンソーシアムの活用などが挙げられるという。
すでに宅配事業者の間では、再配達問題の解消策として早朝・夜間の配達や宅配ロッカーの設置などが試行されているが、関係する事業者が連携するかたちでの「仕組みの変革」が始まりつつある。
(文=編集部)
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