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アパレル市場の"3分の1"が消滅した理由 もはや服を買う必要がなくなった
http://president.jp/articles/-/22867
2017.8.23 ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前 研一 PRESIDENT 2017年9月4日号
市場は縮小しても、供給は増える一方
国内アパレルの不振が続いている。販売不振で大手アパレルメーカーでもブランドの廃止やリストラ、大量閉店を余儀なくされ、百貨店の撤退も相次いでいる。国内アパレルの市場規模は1990年代には15兆円を超えていたが、今や10兆円を割り込んでいる。
市場が3分の2に縮んだにもかかわらず、供給される衣料品の点数は増え続ける一方なのだから、「売れない」のは当たり前。バーゲンやセールを乱発し、アウトレットに回してディスカウントしても売れ残るうえに、正規の値段では売れなくなる悪循環。最後には一山いくらの中古衣料として海外に流すしかないのだ。
売れない商品を量産する業界構造も問題だが、アパレルの凋落は消費トレンドの変化と深く関係している。私がヴィーナスフォート(東京都江東区青海にある商業施設。99年開業)を友人と構想・設計していた頃、伊勢丹新宿店の2階3階は「おばけフロア」と言われて、アパレル売り場に女性客が殺到していた。
また当時、若い女性の憧れの海外旅行先はミラノで、あっちで買い物したほうがお得なくらいの内外価格差もあった。そこで、伊勢丹のおばけフロアを参考に、わざわざイタリアに行かなくても町並みの雰囲気を味わえるようなファサードをつくろうと考えたのだ。
しかしスタートアップに関わった10年間で、若い女性のライフスタイルは大きく様変わりした。当初のアンケート調査では、デートの際、女性は通勤着を駅のロッカーに入れて、トイレでデート着に着替えるのが一般的だった。だからヴィーナスフォートに90穴(90便座)という、ギネスに申請できそうな巨大女子トイレまでつくったのである。
「デート着」というカテゴリーが消えた
ところが10年後には、そんなものは用なしになった。通勤着からデート着に着替える習慣がなくなった、というよりデート着という「おめかし」カテゴリーが消滅したのだ。
ジーンズにハイヒールのようなカジュアルな出で立ちで会社に行って、そのままデートも楽しむ。友達の結婚式に着ていくようなドレスや晴れ着はレンタルで十分だし、普段着は近くのユニクロやしまむらで買う――。
そんなライフスタイルに変わってきて、我々がデート着と想定していたブランドはまったく売れなくなってしまった。やむなく入り口近辺の店舗を通勤着にも使えるカジュアルなブランドに入れ替えた。女性用アパレルのカテゴリーが丸々一つ無くなった、ということだ。
ブランドの崩壊は世界的な現象だが、一番苦戦しているのは高級ブランドと手頃なファストファッションに挟まれたセグメントだ。
いわゆる「スペシャリティストア」と呼ばれるブランドで、国産アパレルメーカーもこれをつくって押し出してきたが、今や軒並み業績を落としている。ハイブランドほどの付加価値を与えられず、かといってファストファッションほどの値頃感もないこのカテゴリーは、消費トレンドから完全にはじかれてしまったのだ。
アパレル凋落の大きな原因になった消費トレンドの変化がもう一つある。ネット(Eコマース)と物流(宅配)の進化によって、消費行動がリアルからサイバーにシフトしてきたことだ。
ゾゾタウンの一人勝ち状態だが…
たとえばアパレルのオンラインショッピングサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」。EC化率が低いアパレルにあって2004年開設のゾゾタウンは右肩上がりで業績を伸ばしてきた。最大の強みはブランドの豊富さ。取り扱いブランド数は今では3900以上で、人気ブランドも数多く集まっている。
一頃スペシャリティストアがこぞって地方都市に進出した時期があったが、リアル店舗の出店には自ずと限界がある。しかしECならば全国一斉、しかもフルラインアップで展開できる。近くに実売店がない地方のユーザーだって、スマホからゾゾタウンのサイトにアクセスして、豊富なブランドからワンストップでお気に入りのブランドの最新アイテムが買えるわけだ。
ファッションECのウィークポイントは「試着ができない」ことだが、着用したイメージが湧きやすいようにサイトの使い勝手を非常に工夫しているし、サイズが合わなかったり気に入らなかったりしたら、無料で返品できる仕組みもある。ゾゾタウンに出店しているショップのスタッフがコーディネート例を提案したり、「公認ユーザー」によるオリジナルコーディネートを発表したりといったユーザー目線のサービスも一役買っている。
いわばカリスマ店員がいるショップが手元にあるようなもので、スマホからの買い物に慣れ親しんだ若い世代からすれば、リアル店舗に行くよりよほど快適にショッピングできる。かくしてゾゾタウンに顧客が集まり、顧客が集まるから出店希望のブランドが集まるという好循環。リアル店舗が次々と消えていくアパレル業界で、ゾゾタウンの一人勝ち状態が続いている。
メルカリの安心・安全な売買システム
他方、タンスやクローゼットにしまい込まれた中古衣料に光を当てて急成長しているECサイトがある。フリマ(フリーマーケット)アプリ最大手の「メルカリ」だ。
スマホを使って衣料品や雑貨などの個人の持ち物を売買するのがフリマアプリ。売りたいものをスマホで撮影して、フリーマーケットのように自分で値段をつけて出品するだけ。出品も購入もボタン一つで簡単にできる。メルカリは登録も出品も無料で、売買が成立した場合に販売価格の10%が販売手数料として徴収される。
金銭のやり取りが当事者同士にまかされている(ゆえにトラブルも起きやすい)オークションサイトなどとは違って、メルカリの場合、お金のやり取りをメルカリが仲介する。購入者が届いた商品に納得したら出品者に代金が振り込まれるという安心・安全なエスクロー(売り手と買い手を仲介する第三者)を介した売買システムを採用しているのだ。この手軽さと信頼性が支持されて、日本でのダウンロード数は5000万を突破、アメリカでも2500万を超えている。
これまでは要らなくなった衣類を古着店に持っていっても、二束三文でしか買い取ってもらえなかった。10万円で買ったブランド品だって買い取り価格は1000円がいいところだ。しかしメルカリでは自分で売値を設定できる。もちろん、売れなければ値を下げるしかないのだが、それでも元値の3分の1ぐらいで売れるという。3万円で買った服が1万円で売れるわけだ。メルカリを利用すれば高く売れるということでありとあらゆる品物が出品されて、その数は1日約100万件。そのうち約半数は24時間以内に捌けるというから驚きだ。
もはや服を買う必要すらなくなった
メルカリで服を買う人はゾゾタウンでは買わないし、ましてやアパレルのリアル店舗にも行かないだろう。ゾゾタウンやリアル店舗で3カ月前に「新着」で売っていた商品がメルカリに出品されるかもしれないからだ。それも3分の1の値段で。昔の人が神田の古書店をあさるような感覚で、今時の若者はメルカリをあさり、要らなくなったモノを出品する。不要品を二束三文で買い叩いてきた既存の古着店はじめリユース業者は、もはや商売上がったりである。
インターネットで洋服が借りられるファッションレンタルサービス、エアークローゼット。(写真=時事通信フォト)
アイドル(空いているもの)の活用という意味では、寺田倉庫が出資・参画しているオンラインのファッションレンタル事業、「airCloset(エアークローゼット)」も先進的だ。
倉庫業のしゃれた事業と言えばセキュリティと湿温度管理の行き届いた倉庫に美術品やワインなどを預かる管理事業がよく知られているが、実はアパレルの商品を預かるケースも多い。寺田倉庫は預かった絵画や美術品を貸し出す運用事業に乗り出していて、そのアパレル版が「エアークローゼット」だ。
会員になると月額6800円(ライトプラン)でプロのスタイリストが選んだ服が月に3着1セットで届く。返却期限はなく、気に入らなかったらすぐに送り返してもいいし、気に入った服は買い取りもできる。返送料は無料だし、クリーニングの必要もない。すべて込み込みの月額だ。感想をフィードバックすれば、さらに似合う(であろう)服を見繕ってくれる。
おしゃれが苦手な女性や服選びに迷う女性、仕事や子育てで服を買いに行く時間が限られている女性にとっては福音のようなサービスだろう。実際大繁盛で、15年のサービス開始で会員数は10万人を突破、参画ブランドは300以上もあるという。
メルカリのビジネスモデルはC to C(消費者間取引)ではなく企業(Business)を間に挟んだ
「C to B to C」、エアークローゼットは「B to B to C」である。こうした新しいビジネスモデルが生まれて、ファッションの世界では日本は世界よりも一歩先に進んでしまったのだ。
すでにメルカリはヨーロッパ開拓にも乗り出している。彼らのような新しいプレーヤーが国内アパレルの変革をリードしていくことになると従来の百貨店やブランドショップの起死回生はそう簡単ではないことがわかるだろう。
(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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