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9月に世界的な経済・金融危機が予想される理由
http://diamond.jp/articles/-/139412
2017.8.23 宿輪純一:経済学博士・エコノミスト ダイヤモンド・オンライン
経済、とくに金融の分野は、机上の理論的な分析だけでは不十分で、金融市場取引の現場を経験していないと分からない部分が多い。分析予想をするときには、そうした現場の知識も踏まえ、様々な情報を組み合わせて積み上げていく必要がある。
そういった観点から見ても、この9月は経済・金融危機が発生する可能性がある。今年の世界経済は米国と中国が牽引してきたといっても過言ではないが、その2つの国の経済の転換点になりそうなのが9月なのである。
2017年の世界経済の課題については、本連載『2017年の世界経済はこの「4大課題」に左右される』にも書いたが、トランプノミクスの実現(米国)、EU離脱の行方(英国)、黄信号の経済(中国)、限界の金融政策(日本)の4つがある。その中で、今回は米国、中国、日本について、さらに解説する。
中国経済については、本連載『中国経済は9月以降が危ない』に詳しく書いたのでご参照願いたいが、要は、中国は現在、5年に一度の共産党大会のために、かなり“無理な”経済安定化政策を採用している。党大会で人事が終わったら、その無理な経済安定化政策を転換する可能性が高いからである。
米「債務上限」が今年も9月末に
米国経済については、9月“末”が一つの山だ。米国の連邦予算は10月から新年度に入るが、米国は財政赤字に関しては日本とは違い、“法律で”連邦債務(国債発行額)上限を規定している。そのため9月末までに上限を上げる法案を通さなければならない。以前は「財政の崖」ともいっていたが、米国はこの法案が通らないと補正予算などは立てずに、官庁を閉めてしまう。
トランプの看板公約に、オバマケアの見直し、法人税の大幅(20%)減税、1兆ドルのインフラ投資がある。オマバケアに関しては微妙だが、減税やインフラ投資には予算を使うので、財政的に問題になる。つまり、9月末までの財政議論の中に織り込まなければならない。当初の計画では、この3つの案件はこの順番で昨年末までに法案を通す予定だったが大幅に遅れている。9月末までに議論をまとめるのは大変な困難が予想される。それが米国経済・金融市場の混乱要因になることは十分予想される。
さらに9月には19〜20日でFRBのFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される。FOMCは年に8回開催され、そのうち金融政策の変更は3月・6月・9月・12月にしか実施されない。この時は議長の記者会見がセットされており、自ら説明をするからだ。
金融政策を司る中央銀行は、基本的には常に正常なレベルの金利を維持=「正常化」したいという強い意思を持っている。それは、経済(景気)は波であり、再度、経済が悪化した時に、金利を下げて刺激できる余地を持っておかなければならないからだ。FRBは2015年に1回、2016年に1回、そして2017年には連続2回(2016年12月からは連続3回)金利を0.25%ずつ上げている。
現在の金融政策は金利と資金量の2つの視点を持っている。金利と資金量の操作の違いは、金利についてはオーバーナイトなどの短期金利がメインの対象であり、資金量についてはその対価として国債などの長期金利に影響を与えるので、両者は意味合いと重さが違う。かつてバーナンキ前議長がFRB保有資産の縮小(テーパリング)について話をしただけで、金融市場は大きく荒れた。それだけ資産の縮小はデリケートであり、影響が大きいのである。
そのため、満を持してこの9月に議論し、資産の縮小を開始する。リーマンショックの対応のために拡大を始めた当時約9000億ドルのFRBの資産は、現在、約4.5兆ドルと約5倍にもなっている。しかも、引き締めは株価が上がっている時しか実施しにくいのが実情だ。その後、12月には0.25%の利上げを行うであろう。FRBは株価が上がっているうちに正常化をしたいので、ある意味、焦っているのである。
つまり、9月19〜20日のFOMCの影響が金融市場に出る可能性は高い。付け加えるならば、昨年12月に米国が利上げを実施した際に中国人民元が下落を始めたように、米国が金融正常化(引き締め)、とくに影響の大きい資産の縮小を始めると、新興国通貨が下落を始める可能性がある。かつてのアジア通貨危機をはじめ、そのきっかけは米国など先進国の利上げであることが多い。
さらにいえば、資産の裏打ちがないビットコインなどの仮想通貨は、そもそも相場物のように乱高下する性質を持つが、通貨危機のような状況の時にはもっとも下落する可能性が高い(ただし、まだ誤解が多いが、仮想通貨は法的にも“通貨”ではない。仮想貨幣などと表現を変えた方がいいだろう)。
さて日本は今、金利のコントロールに主眼に置きながらも、資産の縮小に取り組み始めている可能性が高い(本連載『日銀の「出口戦略」は実はもう始まっている』参照)。年80兆円の国債買取金額も約60兆円程度になりそうである。この舵取りは非常に難しく、日本については9月が転換点とはいいにくい。ただ、欧州(EU)、英国、スウェーデン、カナダ、豪州がすでに正常化に向かうと宣言しており、カナダなどから実施が始まっている。日本も、こうした先進国の正常化(引き締め)の流れに同調しようとしているのである。
このように9月は月末にかけて経済・金融の“山”が重なるので注意が必要だ。いずれも下落方向なので“谷”といってもいいかもしれない。なおかつ経済・金融の世界では、対応の動きが早めに出ることが多いので、それも意識しておく必要がある。
(経済学博士・エコノミスト 宿輪純一)
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