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老後の「下流」転落防ぐ 夫婦で無理なくできる対策は 終活見聞録(11)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO19999800V10C17A8000000
2017/8/18 NIKKEI STYLE
「下流老人」「老後貧乏」「老後破産」。そんな言葉をタイトルにした書籍や雑誌を書店などでよく見かける。様々な要因から悲惨な老後を送る人が増えており、その状況を反映したものだ。これらは現役時代に安定した収入を得ていた人でも、一歩間違えば下流に転落する可能性を示唆している。自分らしい老後に備えて準備するのが「終活」であるなら、元気なうちからこうした状況に陥らない術を考えておくのもその活動の一つだろう。
■夫婦仲良く、経済的にメリット
下流転落を防ぐ最初の手立ては、ありきたりだが「夫婦仲良く」だ。長年生活を共にしてきた配偶者とは夫婦関係を維持することが重要だ。DV(ドメスティックバイオレンス)などの被害があれば別だが、基本は離婚しないこと。「離婚すると多くのケースで男女ともそれ以前より生活水準が下がる」と指摘するのは、離婚問題に詳しい行政書士の藤原文氏。
近年はともにフルタイムで働く夫婦は増えているが、中高年世代では妻が専業主婦やパート主婦というケースも少なくないだろう。別れたからといって生活費が半分になるわけではなく、水道・光熱費などはそれぞれかかるのでコストは割高になる。「特に女性にとっては経済的なデメリットは大きく、生活保護などの公的援助がないと生活していけないケースもある」と藤原氏は続ける。
一般に離婚の際の金銭的な取り決め事項は、(1)財産分与、(2)慰謝料、(3)養育費、(4)年金分割――の4つ。財産分与は結婚期間中に築き上げた財産を分配する。(2)の慰謝料は離婚理由で最も多い「性格の不一致」などでは通常発生しない。(3)は子どもが小さければきちんと決める。
問題は(4)の年金分割。配偶者の年金すべてを折半してもらえると勘違いしている人が多い。だが分割されるのは厚生年金のみ。国民年金や企業年金は対象外なので、ずっと自営業で会社勤めをしたことがない配偶者などには分割する年金がない。しかも分けるのは全体のうちの婚姻期間の部分だけ。厚生労働省の統計では年金分割でもらった額の平均は月に約2万7000円。当てにしていた人にとっては決して多くない金額だろう。
厚生労働省「人口動態調査」 ※同居期間不詳を除く
■会話を通じて関係の再構築を
第一生命経済研究所が60歳以上79歳以下の男女600人に、「現在の配偶者と離婚したいと思ったことがあるか」をたずねたところ、男性では60.4%が「考えたことはない」と答えたが、女性では29.4%にとどまり、7割以上の女性が離婚を考えたことがあるという結果になった。男性にとってはショッキングなデータだろう。
第一生命経済研究所
また、「配偶者を信頼しているか」との問いに対して「信頼している」と答えた人の割合が、男性では68.4%に上ったが、女性では39.2%にとどまり、30ポイント近い開きがあった。このギャップについて同研究所の小谷みどり主席研究員は「夫婦間のコミュニケーション不足が原因」と分析する。夫婦仲良くを維持するためには、会話を通じた関係の再構築が必要になってきそうだ。
第一生命経済研究所
行政書士の藤原氏は「熟年世代ではモラルハラスメントが離婚理由になることもよくある。夫から妻に対するケースが多い」と話す。モラルハラスメントは言葉や態度などで相手を傷つける精神的な暴力や虐待をいう。「稼ぎもないくせに」「何もできないくせに」「俺の言うことを聞いていればいいんだ」などが典型例。料理について「まずくて食えない」とか、相手がミスした際にする舌打ちも該当するという。
ちなみに妻から夫へは「稼ぎが少ない」「私の人生こんなはずじゃなかった」など。言い返せずに心を病んでしまう人もいる。会話の体をなしていないので、心当たりのある人は注意したい。一般に女性に比べて孤独に弱く、コミュニティーをつくるのが苦手とされる男性にとっては、夫婦仲良くは精神面でも効果が大きい。
その一方で、夫婦には適度な距離感も必要になる。現役時代に家事全般を妻に頼っていた夫は身の回りのことを自分でできるようにすることも必要だろう。年をとれば円満夫婦もいずれは1人になるときがやって来る。核家族化が進んだ今は、夫婦2人だけの世帯が多く、どちらかが亡くなれば1人ぼっちになってしまう。一般に男性の方が先に亡くなる傾向があるが、もちろん逆のパターンもある。どちらにしても生活力がなければ下流に転落してしまうリスクがある。周囲には、助けてもらったり、相談したりできる人間関係を築いておきたい。「老後は『金持ちよりも人持ち』になることが必要」と第一生命経済研究所の小谷氏は話す。
■長く働くために健康面にも配慮
2つ目は「長く働く」ことだ。夫も妻も、フルタイムでもパートタイムでも仕事を持っているなら、長く働くことが経済的な安定につながる。「フルタイムの場合、現在は60歳で定年という勤め先が多いだろうが、60歳以降も雇用延長や再就職で働き続けたい」とファイナンシャルプランナー(FP)の八ツ井慶子氏は話す。
厚生労働省の「高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」(2012年)では、何歳まで働きたいかについて、「65歳まで」とする人が男性で28.8%、女性で25.9%と最も多く、次いで男性は「70歳まで」(21.4%)、女性は「60歳まで」(21.6%)となっている。老後に必要な蓄えは2000万円とも3000万円ともいわれるが、長く働いて収入を得ることで、この蓄えの取り崩しの額やスピードを減らすことができる。さらに勤め先の厚生年金に加入して働くことができれば、年金の受取額を増やせるほか、会社の健康保険にも加入することになり、様々なメリットを受けることができる。
厚生労働省「高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」
「長く働くにはまずは健康が重要」と話すのはエッセイストの岸本葉子氏。健康や老後の問題をはじめ、日常生活の様々なテーマで文章を綴る岸本氏は40歳でがんを患ってから、生活習慣の改善に取り組んだ。食生活では肉や脂ものを減らし、魚や野菜中心に切り替えた。食材選びでは添加物にも注意する。「購入する際は表示を見て、カタカナやアルファベットが多いものは選ばない。表示が多く長いものも避ける。産地もチェックして国産を選ぶようにしている」と言う。これまで摂ってしまった食べ物については仕方ないが、これからでも食生活には気を配りたい。運動も適宜必要だろう。こうした生活習慣の改善で将来、認知症や要介護状態になるリスクを減らしたい。
■子どもには早めの独立を促す
長寿は喜ばしいが、健康であってこそ。将来の健康悪化のリスクを減らしておきたい
そして3つ目は「子どもを早く独立させること」。子どもがいる場合、成人してもニートや就職難民などで家にいて親のすねをかじり続けると、夫婦の老後の資産形成の足を引っ張りかねない。
家計やマネーの専門家たちが言うには、人生にはお金のためどきは3回ある。最初が独身時代から夫婦のみの時期、次が子どもの幼少期、そして3回目は子どもが独立したあとだ。最初の2回は主に子どもの教育資金の備えに、そして最後が夫婦の老後資金を蓄える時期とされる。「子どもがなかなか独立しないと、この最後の貯めどきがなくなってしまう」とFPの八ツ井氏は懸念する。リタイア後なら、夫婦でもらう年金を子どもが食いつぶしてしまう可能性もある。子どもには早い時期から自立を促し、ひとり暮らしを経験させたり、就職後には親元を離れて自分の給料で生活させたりして、早めに生活力を身につけさせることが重要だろう。
ワンポイント:見逃せない親の長寿リスク
パラサイト化するのは子どもだけではない。近年では共働き夫婦の増加に伴って、孫の面倒を見る祖父母が増えている。孫に愛情を注ぐのは老後の生きがいにもつながるが、度が過ぎるとストレスがたまり、健康面での不安や経済的な負担も増す。適度な距離感が必要だろう。
そしてもう一つ見逃せないのが、高齢の親の問題だ。人口動態調査によれば、15年前の2000年には男性の死亡者のうち80歳を過ぎて死ぬ人は3人に1人だったが、15年には2人に1人に増えた。女性の死亡者で見ると00年には90歳を過ぎて死ぬ人は5人のうち1人だったが、15年には3人に1人に増えている。
厚生労働省「人口動態調査」
長寿は喜ばしいが、それも健康であってこそ。一方で要介護状態になったり、認知症を患ったりするリスクは増す。自分たち夫婦もやがて老境に差し掛かり、リタイアして定期的な収入は減る。そんな中で親の介護費用まで負担すると、自らの老後の蓄えを吐き出してしまう可能性がある。親が元気なうちに自立した生活ができなくなったらどうするか、お金の面も含めて話し合っておきたい。それが親の「終活」でもあり、自分の「終活」でもある。
(マネー報道部 土井誠司)
[日経回廊の記事を再構成]
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