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瀕死の東芝より先に死にかねない、監査法人の「危うい体質」 「限定付き適正」意見は自殺行為では…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52593
2017.08.15 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■伝統ある大企業に甘い日本社会
東芝は8月10日、PwCあらた監査法人の「限定付き適正」という監査意見(但し書き)を付加することで、1ヵ月半遅れながら、金融庁に有価証券報告書を提出した。
週末の新聞やテレビは一斉に、「有価証券報告書を提出できないことに伴う上場廃止の危機を回避した」「2017年3月期の連結最終損失額が日本メーカーとして過去最大の9656億円になった」「連結ベースの債務超過額が5529億円と巨大で、深刻な経営危機があらためて裏づけられた」などと報じた。
だが、それらは、いずれも真実の一片をとらえたものに過ぎない。筆者はそうした側面よりも、2016年10〜12月期四半期報告書の「意見不表明」に続き、今回も「限定付き適正」意見が監査報告書についた事実そのものに注目すべきと考えている。
なぜならば、この2つの意見は、2015年9月の決算修正と、経営陣の刷新を招いた粉飾決算に続いて、東芝がまたしても同じような不祥事を引き起こしたという事実を、裏づけるものにほかならないからだ。
日本の経済社会は、概して伝統のある大企業に甘い。東芝の新たな粉飾疑惑について、これ以上の追及が行われる可能性は非常に低く、問題はうやむやになりかねない。
しかし、この問題を契機に、刷新したはずの東芝経営陣は再び信頼を失い、日本の会計監査制度そのものが瓦解の危機に瀕しているのである。これを見逃していいのだろうか。
■「無限定適正」ではないことの意味
よほどホッとしたのだろう。東芝の綱川智社長は記者会見で、「決算は正常化し、経営課題の一つが解決した」と胸を張ったという。監査報告書で「適正」意見を取得できず、有価証券報告書を提出できなければ、即座に上場廃止になり、破たんしてもおかしくない状況に追い込まれていたからだ。
もちろん、マスメディアが競って報じたように、これで東芝の危機が去ったわけではない。来年3月までに巨額の債務超過を解消できなければ、上場廃止や金融支援の打ち切りは避けられない。
東芝が債務超過脱却の切り札としている半導体子会社「東芝メモリ」の売却も、従来の提携相手である米ウエスタンデジタル(WD)が猛反対して係争に発展しており、一向に実現のめどが立たない状態である。
新聞やテレビの重要な使命の一つは、「What's new?」を追うことにある。筆者は新聞記者出身だから、上場廃止の行方や東芝メモリの売却といった目先の話を追いかけるマスメディアの立場もよくわかる。
しかし、最も重要なのは、提出された報告書の信頼性と中身である。
有価証券報告書はそもそも、株式や社債を発行している企業が、投資家に適切な投資判断をしてもらうために、経営実態を包み隠さず正確に公表するための書類だ。そのことは法律でも明確に義務づけられている。
そして、監査法人の役割は、有価証券報告書に記載される財務諸表が公正妥当な基準に従って、虚偽なく記載されているかをチェックすることである。財務諸表に一点の曇りもないときにだけ、監査法人は「無限定適正」意見をつけることになっている。
ところが、公表期限を1ヵ月半余りも遅らせて監査法人と協議を重ねたにもかかわらず、東芝は今回、その「無限定適正」を取得できなかった。そのことを問題としなかったら、会計監査の意義が根本から揺らぐのではあるまいか。
■監査証明書は「不適切」と言っている
それにしても、「限定付き適正」という低い評価にとどまった理由は、いったい何だろうか。
有価証券報告書の末尾に添付された監査証明書には、その理由が赤裸々に綴られている。以下に、連結決算の該当部分を抜粋して紹介しよう。
「会社は、特定の工事契約に関連する損失652,267百万円を、当連結年度の連結損益計算書に(略)計上した。しかし、(この処理は米国において一般に)公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していない」
「会社の連結子会社であったウェスチングハウスエレクトリックカンパニー社は、2015年12月31日にCB&Iストーン・アンド・ウェブスター社を取得したため、会社は2016年3月31日現在の連結財務諸表を作成するにあたり(略)、取得した識別可能な資産及び引き受けた負債を取得日の公正価値で測定し、取得金額を配分する必要があった」
「会社は、2016年3月31日現在の工事損失引当金の暫定的な見積もりに、すべての利用可能な情報に基づく合理的な仮定を使用していなかった。(それをしていれば)当連結会計年度の連結損益計算書に計上された652,267百万円のうちの相当程度ないしすべての金額は、前連結会計年度に計上されるべきであった」
「これらの損失は、前連結会計年度及び当連結会計年度の経営成績に質的及び量的に重要な影響を与えるものである」
監査証明書の意味するところは明らかだろう。2017年3月期に計上した損失のうちの相当程度ないしすべての金額は、前連結会計年度に計上すべきであったのに、それがなされなかった。つまり、2016年3月期に粉飾ないしは不適切な決算があったと広言しているのである。
また、監査報告書の「質的及び量的に重要な影響を与えるもの」という記述も、大きなポイントである。
なぜならば、東芝は、2016年3月期に計上すべき損失を記載せず、“損失隠し”を行うことで、この期末が3388億円の資産超過であったかのようにみせかけたからだ。もし損失が適正に計上されていれば、この期にすでに債務超過に陥っていたことになる。
■東芝が決算修正を拒み続けた理由
マスメディアは総じて、この問題の重要性に目を向けず、東芝が債務超過に陥ったのは2017年3月期だという前提に立って、「2期連続で債務超過になれば上場廃止になる」ことから、(喫緊の危機は去り)焦点は今年度末の財産状況に移ったと報じている。
しかし、2016年3月期に債務超過に陥っていたという監査報告書の視点を前提とすれば、東芝はすでに2期連続で債務超過が続いていることになる。言い換えれば、すでに上場廃止になっているはずである。
上場廃止を待つまでもなく、そもそも、前回の粉飾決算騒動の混乱が冷めやらぬ2016年3月期に債務超過に転落していれば、その段階で経営破たんしてもおかしくはなかったのだ。
今年8月に記者会見した東芝・綱川智社長 photo by gettyimages
こうして見てくると、PwCあらた監査法人が2016年3月期決算の修正を迫り続けたのに対し、綱川社長ら東芝経営陣が最後までこれを拒み続けた理由が容易に推測できる。
要するに、刷新したはずの東芝の経営陣が、2015年9月に修正した過去6年半分の決算に続き、2度目の“粉飾”に手を染めたことが露見するのを何としても避けたかったのだろう。
だがこうした姿勢は、東芝の経営陣がガバナンスを改善できず、いまだに信用に値しないことを明らかにしただけ、と言わざるを得ない。
■「事なかれ主義に陥って譲歩した」
さらに深刻なのは、2016年10〜12月期四半期報告書で「意見不表明」としていたPwCあらた監査法人が、今回は「限定付き」ながら、「適正」という意見を与えて譲歩したことである。
この背景として、2016年3月期決算に“お墨つき”を与えていた前監査人(新日本監査法人)を含めた公認会計士業界全体が、「(監査で)高額報酬を得ているのに意見を表明しないのはおかしい」と、「意見不表明」を行ったPwCあらた監査法人批判の大合唱をしていたことを指摘しなければならない。
当時の監査法人の判断が問われることで、またしても不祥事の糾弾がくり返されることを会計士業界が嫌い、それが一種の力として働いたことは明らかだ。
そうしたなかで、最終的に「限定付き」ながらも「適正意見」がついたことについて、
「(PwCあらた監査法人の親会社に相当する米国側の)プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、『意見不表明』から『不適正』に踏み込むよう指示したものの、日本サイドが国内の空気に配慮して日本的な事なかれ主義に陥って譲歩した」(事情通の公認会計士)
といった見方が絶えない。
しかし、監査法人や会計士が甘い監査を批判されることを嫌がったり、他者の不適切な監査を覆すことを逡巡するような業界体質では、投資家が適正な判断を下すための拠りどころとなる公正な財務諸表の公表は覚束ない。
東芝も、PwCあらた監査法人を含む公認会計士業界も、それぞれの社会的な使命に照らして、存在の意義が問われていることを真摯に自覚すべきである。さもないと、日本の資本市場やビジネス社会が世界の“異端児”扱いを受ける日が、遠からずやって来ることになるだろう。
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