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ドルは108円に…?北朝鮮情勢で動く金融市場を読み解く 米株式市場の下落が変動のサインだ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52575
2017.08.14 真壁 昭夫 信州大学経済学部教授 現代ビジネス
■米朝の緊張に多くの投資家が反応
8月に入り、米国と北朝鮮の間での緊張感が高まっている。
これを受けて外国為替市場では、円やスイス・フランが米ドルに対して上昇した。多くの投資家が低金利通貨で資金を調達し、高金利通貨などで運用するキャリートレードのポジションを手じまったとみられる。
アジア通貨の中では、朝鮮半島情勢の先行き懸念から韓国ウォンの下落が顕著だ。今後、北朝鮮問題が燻ぶり続けるようだと、神経質な相場環境が続く可能性がある。
今後の北朝鮮問題の焦点は、米国トランプ大統領の出方だ。同氏がこれまでのような強気一辺倒の対応をしていると、人々の心理状況を一段と悪化させることも懸念される。対話政策を模索してきた韓国が、日米など国際社会との連携を強化する姿勢を明示できるかも重要なポイントだ。
■リスクオフの動きを押しとどめた米株のバブル
8月9日のアジア時間早朝、北朝鮮がグアムへの攻撃を示唆したことを受けて、外国為替市場ではリスクオフが顕著に進んだ。ドルが売られ円買いが進む中、質への逃避から金先物や米国債の価格が上昇し、日経平均株価などは下落した。世界の投資家が北朝鮮と米国が一触即発の状況に陥ることを懸念し、状況がどうなるかを見極めようとした。
今後、北朝鮮問題がどのように推移するかには様々な見方がある。朝鮮半島で有事が発生するという最悪のシナリオは避けられるとの見方が多い。確かに、そうした展開が現実のものとなれば、世界は深刻な状況に直面する。中国が国連の対北朝鮮制裁に表向きの理解を示したことも、米中の足並みの乱れが修正されるとの見方につながっているようだ。
9日のニューヨーク市場では、徐々にリスクオフの動きは後退した。米国の株式市場でバブルが絶頂期を迎えているとの見方は多い。その中で、先行きを慎重に考える投資家はいるものの、いまだ多くの市場参加者は強気な相場が続くと考えているようだ。それが引けにかけてのニューヨークの株式市場の戻りにつながったのではないか。
世界的にも株式市場は史上最高値圏で推移している。しかし、北朝鮮問題に加え米国のトランプ政権への不安、FRBのバランスシート縮小や年内の利上げの可能性など、相場の調整につながる要因は少なくない。それがドル円の戻りを抑え、緩やかな円高バイアスにつながっていると考えられる。金融市場の先行きは慎重に考えたほうが良さそうだ。
■円ドル108円にもなり得る今後の展開
歴史的に朝鮮半島は米・中・ロの大国がにらみ合う、地政学的な要所となってきた。中国は北朝鮮の暴走を抑えつつ、できるだけ穏便に金独裁政権の温存を図りたい。そうでなければ、中国は米国と直に対峙しエネルギーを消耗せざるを得なくなる。今後も、中国は北朝鮮との対話を重視し、水面下での支援を続けるだろう。この中国の本心が、北朝鮮の脅威にさらされてきた韓国の政策に影響している。
文政権の発足以来、韓国は北朝鮮との融和を重視して外交政策を進めた。その背景には、中国との関係を強化することで財閥企業の業績拡大を支え、経済の安定を図る目的があったと見られる。また一方で、安全保障の維持の観点から、日米が韓国との関係強化を重視するという発想もあったはずだ。
ただ、既に北朝鮮との対話を優先する韓国の政策は限界を迎えたといえる。韓国は米国のミサイル防衛システムの配備を増強する方針を示した。今後、文政権が中国優先の政策を修正できるか否かは、朝鮮半島情勢の安定を考えるポイントの一つとなろう。
短期間で政策の修正が進むかは不透明だ。当面、朝鮮半島をめぐる緊張は続きやすい。それを受けて、金融市場では神経質な展開が続く可能性がある。
6月から7月にかけて、米国の株価上昇に乗るかのようにして投機筋は円のショート(空売り)ポジションを積み増した。円が買い戻される余地はありそうだ。朝鮮半島情勢への懸念などから米株式市場に下落圧力が掛れば、ドル円が108円台に入る展開も排除できないだろう。
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