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節税が裏目に出るケースも
相続税対策での素人アパート経営 大きな落とし穴も
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170807-00000010-pseven-bus_all
週刊ポスト2017年8月18・25日号
〈増税で資産3600万円以上の人は相続税を払わなくてはいけなくなった〉
〈相続税の最高税率は55%に引き上げられた〉
2015年1月から施行された相続税法改正の内容である。それまで財産総額6000万円以上の人にしかかからなかった相続税が、基礎控除の引き下げで3600万円以上の人まで課税対象となった(法定相続人が1人の場合)。最高税率も50%から55%に引き上げられた。
退職金による預貯金に加えて都心部に持ち家があれば、財産が3600万円を超えるケースは少なくない。
「それだけに、不動産業界や保険業界などを中心に対策が必要だと喧伝していますが、そうした“対策”にこそリスクがあることは、あまり知られていません」
そう語るのは、『やってはいけない相続対策』(小学館新書)の著者で、元国税調査官の大村大次郎氏だ。
「特に注意すべきは不動産投資による対策です。節税したつもりが、逆に大きく資産を減らしてしまうこともあるのです」(大村氏)
◆何もしないほうがよかった
大村氏がまず注意すべき相続税対策として挙げるのが「アパート経営」だ。土地を持っている場合、更地のまま妻子に残すのではなく、そこに賃貸住宅を建ててから相続させれば、土地の資産評価額は50%減額される。さらにローンを組んで建物を建てていればそれが負債にカウントされるので、相続資産の額を減らせる──という節税術だが、大村氏は「大きな落とし穴がある」と指摘する。
「まず、不動産の売買には多額のコストがかかります。手数料だけで3%取られるのが相場で、消費税も相当な額になる。しかも、建物は購入した瞬間から市場での資産価値が減じる。節税分が吹き飛ぶような損失を被ってしまう場合もある」
大村氏によると次のようなケースもあるという。元大手商社マン・O氏は現役時代にコツコツと蓄えた約1億円の預貯金があった。相続税増税への不安もあり、不動産業者の勧めるアパート経営を決断。業者の推奨に従って5000万円で土地を購入し、4000万円で建物を建てたという。
「ところが建設から数年経っても、入居率は50%を割ったまま。建てたワンルーム6部屋のアパートが駅から距離のある場所で、ターゲットの学生に敬遠される物件になってしまった。
建物のローン返済に、不動産業者へ払う手数料、固定資産税もかかるし、修繕積立金も考えなくてはならない。建物を売ろうにも、業者から“売るなら3000万円程度がいいところ”といわれ、買った時から1000万円以上値が下がってしまっていた」(同前)
結果的にアパートを手放した上に、建物のローンだけが残り、最終的に自己破産する「相続破産」のようなケースもあるという。
大村氏は、「重要なのは自らの相続税のシミュレーション」と強調する。このO氏の場合でも、「1億円の預貯金」と聞くと、相当な資産家で多額の相続税を納めなければならないように思えてしまうが、決してそんなこともない。
「まず妻に100%相続させれば、1億6000万円まで相続税は無税です。妻から子への二次相続では相続税がかかってきますが、O氏の場合、子供は2人でした。1億円をそのまま均等に分割し、全く節税をしなかったとしても1人あたり385万円(2人で770万円)で済みます」(大村氏)
アパート経営に手を出したO氏は5000万円の土地と4000万円の建物の購入にかかった手数料3%が270万円。4000万円の建物に対する消費税(土地は非課税)が320万円。さらに建物の資産価値は購入から数年で1000万円も下がった。大村氏が続ける。
「きちんとシミュレーションができていれば、“アパート経営で大きな儲けを出せるノウハウがなければ赤字になる”とわかったはずです。『3600万円以上は相続税がかかる』『最高税率は55%』というフレーズばかりが先行していますが、実際には財産が1億円あったとしても相続で10%持っていかれるようなケースはほとんどありません。
孫の教育資金のための生前贈与であれば1500万円まで非課税、といった各種制度をうまく使えば、財産が1億円あっても相続税をゼロにするのは難しくない」
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