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マンションの管理組合は機能しているのか。(写真=時事通信フォト)
“2020年問題”東京のマンションが危ない 2025年、東京も人口減少へ
http://president.jp/articles/-/22672
ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前 研一 PRESIDENT 2017年8月14日号
管理不全でマンションが朽ちていく
東京オリンピック終了後、マンション価格が暴落するのではないかという「2020年問題」が不動産業界から聞こえてくる。東京での五輪開催が決定した13年以降、都心のマンション販売は盛況で、優良な収益物件には海外からの投資も集まった。しかし祭りの後は投資も萎む。キャピタルゲイン狙いで投資物件が20年までに大量売却されれば、需給バランスは一気に崩れる。一方で東京都の人口は25年にピークを迎えて、首都東京でさえ人口減時代に突入する。人口減によって住宅需要が落ち込んでいく課題はもちろんのこと、人口減に高齢化が相まって強く懸念されているのは「管理不全マンション」が増えることだ。
管理不全マンションとは管理組合がなかったり、管理組合が機能しないために、維持・管理や修繕が行き届かないマンションのことをいう。管理組合とは分譲マンションを購入した住民(区分所有者)で構成される団体だ。マンション内のルールを決めたり、管理費や修繕費を徴収したりしてエントランス、廊下、エレベーター、外壁、配管など共用部分を管理維持し、修繕や改修のタイミングを適宜決めていく。ところが昨今は管理組合がないマンションや住民の高齢化によって役員のなり手不足に悩む管理組合が非常に多い。また住民の高齢化や空室の増加は管理費や修繕積立金の滞納、修繕資金不足という事態も招く。結果、組合が機能しないために老朽化しても修繕が適切になされず、共有スペースのメンテナンスもままならない管理不全マンションが全国で増加しているのだ。管理不全マンションは経年劣化による老朽化が著しく、スラム化につながりかねない。スラム化して治安や環境衛生が悪化すれば、マンションの資産価値はさらに下落する。マンション2020年問題は単にポストオリンピックの問題ではない。高齢化、人口減時代に突入した日本に突きつけられた課題の一端として捉えるべきだろう。
住民の高齢化や空室増が管理組合の機能不全を引き起こすのは前述の通りだが、管理組合という組織自体が抱えている問題もある。管理組合そのものに意思決定する仕掛けがないのだ。08年の建築基準法改正で竣工・外壁改修等から10年を経たごとにマンションの外壁の全面打診検査が義務づけられたが、外壁塗装などのマンションの大規模修繕は一定の周期で必要になる。築年数によっては耐震基準に満たない、などの理由で建て替えを要する場合も出てくる。住民の当事者意識が高く、管理組合が機能しているマンションなら話は比較的スムーズに運ぶ。しかし管理組合がいくら修繕や建て替えを呼びかけても、意思決定機関である総会で反対派が多数を占めたり、総会に出席する人数がまばらだったりして、合意が得られないケースは少なくない。修繕積立金の不足分の徴収など、お金の段になると反対や文句を言い出す人もいて、なかなか前に進まない。
建て替えともなるともっと大変で、建て替え決議を可決するには区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要になる。「今さら大金をかけて建て替えなくても、このまま静かに暮らしたい」と高齢の住民が考えるのも無理ないわけで、住民の高齢化は今後さらに重くのしかかってくる。日本ではマンションの建て替えは遅遅として進まず、大地震で崩れるのを待つしかないような状況なのだ。
外部経済で建て替え費用をまかなえる
これはマンションの管理組合だけの問題ではない。日本には「組合」と名の付く団体は数あるが、ほとんどが組合員の総意に近い「合意」に基づく意思決定の仕組みしか持っていない。それゆえに時代環境に適応する思い切った方策も打てず、自ら組織変革もできずに、古臭い共同事業体として時代に取り残されてしまっている。たとえば駅前商店街の振興組合。今や日本全国、寂れた商店街ばかりになって、どこもシャッター街と化している。有志が商店街の改革に立ち上がっても、「ウチはこのままでいいよ」とか「どうせオレの代で店は終わり。もう店と一緒に死ぬだけだから」という組合員ばかりで何一つ動かないのが現実だ。
組合を意思決定ができる組織に変えるにはどうすればいいか。一番手っ取り早いのは商法上の意思決定の仕組みを取り入れることだ。つまり、株式会社化である。株式会社であれば50%超の議決権で意思決定できるから、物事が前に進む。マンションの管理組合を株式会社化して私が社長になったら、たとえば「建て替えて倍の規模のマンションにしましょう」と提案する。今時、都心部のマンションなら容積率は建てた当時の倍になっている。7階建てのマンションなら14階建てにできるのだ。当然、地下も大きく取って、非常用電源や食料備蓄庫なども完備する。
容積率が倍の近代的なマンションに建て替えれば、新しい住人やテナントが大挙して入ってくる。つまり外部経済を取り込むことで、建て替え費用をまかなうことも可能だ。「建て替え費用を負担する必要はない。建て替え期間中の仮住まいの費用も後で精算する」などと説明できれば株主である住民の賛同も得やすい。それで意思決定できるわけだ。何なら隣近所のマンションと話し合って一緒に建て替えしようということになれば、街のブロック単位の大規模開発にもなりうる。新しい容積率にするとどれくらいユニットが増えて、分譲価格はいくらぐらいになるのか、建設会社にボリュームスタディ(建築規模の検討)をやらせて、綿密な事業計画を策定する。得体の知れない組合では誰も金を貸してくれないが、事業戦略や抵当に取れる会社資産が明確な株式会社であれば金融機関だって融資しやすい。
駅前商店街が生まれ変わる画期的な方法
駅前商店街の活性化にしても、運営主体が振興組合である限り、どんなにいいアイデアが出てきても実現するのは難しい。振興組合を株式会社化して、意思決定できるようにすることが先決だ。株式会社化したうえで何を意思決定するか。商店街の運営はイオンやセブン&アイ・ホールディングスのような大資本に委託すべきだと私は考える。今さら個人商店が寄り合っても、集客力は取り戻せない。仕入れ能力やマーケティング能力、テナントを呼び込む力のある大資本に運営を任せるのが現実的だ。駅前商店街といえば大体は一等地にある。郊外でのアウトレットモール事業を続ける大資本にとっても、駅前モールの運営は新たな優良事業だろう。株式会社化した振興組合なら手を組みやすい。合弁会社をつくって株式を発行して、組合の会員はそれぞれが株を持つ。株の配当で安定した収入を得てもいいし、提携相手に一株いくらで買い取ってもらってもいい。
商店街は複層階のモールに建て替える。駅前商店街には不足がちな駐車場も地下にガッチリ造る。商店街は2階建てで、空中権(未利用の容積率分)が余っているところが多い。これを有効活用しない手はない。下層階は商店街のテナントや居住用に使って、上層階は分譲や賃貸用の収益物件にするのだ。ホテルを導入してもいいし、民泊物件としてAirbnbに登録してもいい。駅前に便利な宿泊施設があれば集客効果も高い。商店街を抜けて駅から歩いて15分とか20分のところに住んでいる人たちを呼び寄せるのも一案だ。「○○地区の皆さんは、現在、お住まいの土地と等価交換で6階の物件を優先的に分譲します」などとアナウンスして、一つの地区の住民をフロア単位で集める。寂れたシャッター商店街を抜けて駅から15分もかかった自宅と、駅近に建て替えられたモール上層階の最新物件が等価交換なら悪い話ではない。住民の合意を得てまとまって移住できる地区を優先して呼び込む。空いた土地はそれこそインバウンドの観光客が大型バスで大挙してやってくるようなショッピングモールとして再開発してもいい。
株式会社化すれば、これぐらいの事業プランは次々に湧いて出てくる。そうした事業戦略に対して金融機関がお金を貸してくれたり、投資が集まったりする。うまくいけば商店街KK(株式会社)として上場することも十分に可能だ。組合を株式会社化することは、日本の再起動に欠かせない仕掛けだと私は思っている。すでに農業協同組合(農協)は農協法の改正で、株式会社に移行することが可能になった。農協の株式会社化は日本の農業にとって非常にアップサイドがある。マンションの管理組合や商店街の振興組合の株式会社化はさらにアップサイドが大きい。日本中、信じられないような建設ブームが起こって、2020年問題も乗り越えられるはずだ。
(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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