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なぜジワリと原油価格は上がりだしたのか? 年末までには一段の上昇も?(写真:alexlmx / PIXTA)
原油相場がジワリ上昇している2つの理由 OPEC等供給側だけを見ていてはわからない
http://toyokeizai.net/articles/-/182282
2017年07月28日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
原油相場が反発の兆しを見せ始めている。NY原油先物(期近物)の価格は1バレル=49ドル前後まで上昇した。6月後半には42ドル台にまで下落するなど、極めて軟調な動きだったが、急速に値を戻した背景は主に2つある。1つはOPEC加盟国による追加的な供給削減策への思惑、もう1つは米国のシェールオイル増産ペースへの疑念がある。
■減産で足並みそろえる石油産油国
前者に関しては、OPEC加盟国と非加盟の主要産油国が足並みをそろえていることにある。すなわち、7月24日にロシアのサンクトペテルブルクでは、減産合意の順守状況を監視する共同閣僚級監視委員会(JMMC)会合を開催、減産合意の適用を免除されているナイジェリアの産油量に上限を設けることで合意。それとともに、一部の産油国に対し減産合意の一段と厳格な順守を求めたことがポイントである。
OPEC加盟・非加盟国は2017年1月から2018年3月末まで産油量を合計で日量180万バレル削減することで合意したが、ナイジェリアとリビアは内戦などの事情を抱えていたことから、減産合意の適用を免除されていた。実際、この歴史的な協調減産により、WTI原油は今年1月には58ドルを上回る水準を回復した。だが、世界的な原油在庫の縮小に時間がかかったことに加え、米国産シェールオイルの増産、ナイジェリアとリビアの増産などにより、原油価格は50ドル以下で低迷していた。
このような状況の中で開催された今回の会合では、ナイジェリアが産油量を現在の日量約180万バレルから増加させないことに加え、将来的に減産を行うことで合意した。ただし、期限は設けずにナイジェリアの産油状況を向こう数週間見守るとした。
一方、監視委員会はリビアについては、産油量の制限は見送った。リビアの産油量は当面は日量100万バレルを超えず、2011年の内戦勃発前の生産能力である日量140万〜160万バレルを回復する公算は小さいためとしている。リビアについては仕方がない部分もあるが、これまで原油相場の上値を抑えていたナイジェリアの増産に関して一定の歯止めをかける姿勢が示された点は、大きな意義があるといえる。
また、サウジアラビアのハリド・ファリハ・エネルギー相が、サウジの8月の原油輸出が日量660万バレルと、前年を約100万バレル下回る水準に減少するとの見通しを示したことも大きなインパクトがあった。さらに同エネルギー相は、「OPECおよび非OPEC加盟国は、必要であれば協調減産の期限を2018年3月から延長することを支持する」と表明した。これも極めて大きな意味を持つ発言であったといえる。
また、減産を終了する際には市場に衝撃を与えないよう、円滑な減産解除を目指す方針も示している。世界の原油在庫は、減産により9000万バレル減少したものの、先進国では5年平均をなお約2億5000万バレル上回っている。
一部のOPEC加盟国の減産合意の順守が十分でないことや、OPEC全体としての輸出が増加したことが需給改善を遅らせ、原油価格の下落につながっている。そのため、監視委員会は順守が十分でない国と協議を行い、「順守率の引き上げの確約を得た」としており、今後は厳格な減産枠以下の生産の順守を求めることになる。順守率がさらに高まれば、供給が減少することで、原油在庫の調整は確実に進むことになろう。
■シェール増産観測が緩和される可能性も
一方、後者の米国のシェールオイルに関しては、ややネガティブな見通しが示されている。
米大手石油サービス会社のハリバートンは、米国の石油掘削リグ(掘削機)稼働数が年内は1000基を上回るものの、中期的には約800から900基が持続可能な水準との見通しを示し、リグ稼働数に頭打ちの兆候が見られるとしている。この発言は、シェールオイル掘削ブームの後退を示している可能性がある。これまで強気一辺倒だったシェールオイルの増産観測が緩和される可能性が高まっていることは、これまでの見方を一変させるものであり、要注意といえるだろう。
世界の石油需要は、2018年には前年比で日量140万〜160万バレル増加するとの見通しである。JMMCの議長国であるクウェートは、市場で再均衡化の動きが見られない場合、減産合意を2018年3月以降も延期する可能性を検討するとしている。
このような見解は、これまで原油相場の下値を売ってきた投機筋の追加的な売りを躊躇させるのに十分な材料だろう。
また、中国の動向にも注目しておきたい。中国の6月の全体の原油輸入量は3611万トン(日量879万バレル)で、2カ月連続で世界最大の原油輸入国だった。特に最近はロシアからの輸入を増やしており、ロシア産原油の輸入量は前年同月比27%増の日量127万バレルで、4カ月連続で最大の原油輸入相手国となり、これは過去最長となっている。
ロシア産原油の輸入量そのものは、過去最高だった5月の日量135万バレルからは減少したが、それでも高水準であることに変わりない。また、サウジアラビアからの輸入量は減少を続けており、6月は15.8%減の日量93万6607バレルだった。サウジの輸出削減の動きと、ロシア産を積極的に輸入する方針の結果といえるだろう。
■中国が年間の原油輸入で初の世界首位へ
一方、中国の国有石油大手である中国石油化工集団(シノペック)の張海潮・副社長は、2017年の中国の原油輸入量が4億トンを上回るとの見通しを示している。原油価格が安いことや中国内の原油生産量が減少していることを理由に挙げる。2018年の原油輸入量は2ケタの伸びになるとみているという。張氏の予想では、今年の中国の原油輸入は日量40万バレル前後増加することになり、中国は年間の原油輸入量で初めて世界首位に立つとみられている。中国の今年1〜6月の原油輸入量は2億1200万トン(日量855万バレル)と、前年同期を14%上回っている。中国国内の燃料製品は供給過剰の状態にあることから、国有石油大手各社は7〜9月に製油所の精製能力を10%削減する見通しだが、それでも年末まで原油の輸入需要は堅調に推移するとみられている。そうなれば、需給面において相応のインパクトがあるだろう。
市場は供給面ばかり見ているようだが、需要面も加味したうえで上記のような全体の需給動向を見渡せば、市場の現状認識が必ずしも正しくないことがわかるだろう。
そもそも、主要産油国が持続的な生産を継続できない現状の原油価格の水準が今後も続くと考えることに無理がある。
以前からも指摘しているように、原油価格は生産者の意向で形成されるものだが、それが投機筋の売りなどで歪んでおり、現状の水準では採算が取れない状況が長期化している。しかし、こうした状況は、生産者による減産が進むことで需給バランスが改善し、原油価格は反転に向かうことになる。いずれそのような動きになるのは見えているが、そうなるにはまだまだ道のりは長く、遠い。しかし、それは時間が解決してくれるだろう。
市場の大勢は依然として弱気だが、目先の材料だけを見ているにすぎない。また、主要金融機関も原油価格見通しを大幅に下方修正している。このような市場見通しの下方修正の動きは、底値を付けるときに見られる現象である。そろそろ反転・上昇に向かってもまったく不思議ではない。WTI原油は55〜60ドルが中立的水準であり、最終的には70ドルから75ドル程度にまで上昇してもおかしくない。問題は、それが起きるかどうかではなく、いつ起きるかであると筆者は考えている。
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