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トヨタ車を扱うディーラーの一例(「Wikipedia」より/S-8500)
トヨタ、ディーラーが反旗か…禁断の「販売店住み分け」崩壊、1車種・全販売店販売の激震
http://biz-journal.jp/2017/07/post_19943.html
2017.07.27 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
「全チャネル併売車が増えているが、4チャネル制を見直す考えはない」(トヨタ自動車で国内営業部門担当の村上秀一常務役員)
トヨタが国内販売で併売モデルを増やしている。国内新車市場の先細りが見込まれるなかで、シェアトップのトヨタでさえチャネル専売モデルの開発が重荷になっているからだ。ただ、販売会社(ディーラー)は、トヨタ販売店同士で顧客の奪い合いになることを懸念、「国内軽視」とトヨタを批判する声も表面化している。
トヨタのカムリはこれまで、「カローラ」チャネルの専売モデルだったが、7月10日に発売した新型車から「トヨペット」「ネッツ」の2チャネルでも販売する併売車種となった。東京都内では「トヨタ」系列でも販売する。これによって国内のトヨタ系列ディーラー280社、約5000店舗のうち、8割に当たる約4000店舗で販売することになった。
トヨタブランドは現在、国内販売店を4チャネル展開、それぞれの客層を考慮したモデルを取り扱っている。高級車のクラウンなどを販売する「トヨタ」、ハリアーやアルファードなどの上級ミニバンやSUVの販売に強い「トヨペット」、主に大衆車を取り扱う「カローラ」、若者向け小型モデルの取り扱いが中心の「ネッツ」だ。以前は「ビスタ」チャネルも展開していたが、「ネッツ」の顧客が重複することから上級ブランド「レクサス」を国内で展開するのを機に、「ビスタ」を「ネッツ」に統合した。
チャネル政策は、同じトヨタブランドでも、それぞれのチャネルの特色に合わせたモデルを取り揃え、それに応じたマーケティング戦略を展開することで固定客を増やすことに有効だ。トヨタに限らず、かつては国内自動車各社がチャネル政策を展開してきた。日産とマツダは最大で5系列、ホンダは3系列、三菱自動車も2系列それぞれチャネル展開してきた。
チャネル制度を維持するためには、顧客層の特色に合わせたモデルを開発・投入しなければならない。しかし、国内新車市場が低迷すると、専売モデルを開発しても思うように販売台数を伸ばせず収益率が悪化、メーカーの新車開発負担は重くなる。このため、チャネルの差別化が薄まるものの、販売台数の上積みが期待できる併売車種を増やすことになる。これが進行すると次第にチャネルは意味をなさなくなり、最終的にチャネルは解消されてきた。現在、国内の自動車メーカーでチャネル展開しているのはトヨタだけだ。
しかし、少子高齢化や若者のクルマ離れで国内市場の大きな成長が見込めないなか、トヨタでさえチャネル専売モデルを取り揃え、チャネルを維持する力がなくなっている。ただ、トヨタ系販売会社は、トヨタの資本の入っていないオーナー系の販売会社が多く「チャネル解消」に対する反発は強く、トヨタにとっては“アンタッチャブル”の領域だった。
■プリウスの成功体験
トヨタのチャネル解消に向けた試金石となったのが、2009年に市場投入されたハイブリッドカーの3代目プリウスだ。トヨタはこれを国内全系列併売にした。この戦略は成功し、全販売店で取り扱いとなった効果からプリウスの販売は好調に推移、これまでプリウスを販売していなかったチャネルの販売会社にとっても、新車市場が厳しいなかでプリウスの販売に救われたからだ。
この成功に味をしめたトヨタはその後、併売モデルを増やしてきた。現在はアクアやC-HRなど代表的な車種を中心に、6モデルが全系列併売となっている。トヨタでは、今回のカムリのように専売モデルの併売モデル化や全系列併売化を加速、専売モデルは減らしていく方針だ。実際、新型車からカムリを取り扱うことになった「トヨペット」では専売モデルだったマークXの生産を取り止める。
■顧客の奪い合いの幕開け
トヨタは併売モデルを増やしていることについて、「顧客対応やサービス技術を磨き上げて、ここで買いたいという店にしてほしい」とする一方で「過疎化の問題もある。(トヨタ系販売店同士が)手を組んで協業していく取り組みも必要になってくる」(村上常務役員)と、緩やかな販売チャネル解消に向けた動きを匂わせる。
「併売モデルを増やすと、トヨタ系販売店同士で値引き合戦となり、体力のない販売店は退場を迫られる。チャネル解消による販売会社の反発をかわしつつ、自然減で国内販売網を縮小する政策だ」(自動車専門誌記者)
併売モデルが増えて、事実上チャネルの差別化が困難になっている一部のトヨタ系販売会社では不満が高まっている。販売の現場では、全系列併売モデルで「隣のネッツ店が50万円の値引きを提示している」など、顧客の奪い合いを危惧する声もあがっている。
トヨタとしては縮小傾向が鮮明な国内より、高い成長が見込まれる海外市場にヒトもカネ(投資)も集中するのは当然だ。ただ、厳しい時もトヨタを支えて長年苦労を共にしてきたオーナー系販売会社からの反発を恐れて、表面上は「母国市場は最も重要」(トヨタ)と繰り返すばかり。併売モデルの増加で収益悪化に直面したトヨタ系販売会社が、トヨタに反旗を翻す日はそう遠くないかもしれない。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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