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「基礎収支8兆円赤字」でも、バラマキしかしない安倍政権が痛々しい もうあまり多くを期待していないけれど
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52391
2017.07.25 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■楽観シナリオでも8.2兆円の赤字
20年間にわたってくり返し挑戦してきた甲斐もなく、またしても、日本は国家目標の「財政健全化」に失敗しそうだ。
7月18日、内閣府が経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に示した「2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)」の見通しが、最も楽観的なシナリオでさえ、目標だった黒字に遠くおよばず、8.2兆円の赤字になるという惨憺たる内容になった。
事態は深刻である。本来なら、長期国債市場の動きが、こうした局面で経済の先行きに警鐘を鳴らすバロメーターとなるはずだ。ところが、日銀による異例の金融緩和策の長期化により、国債市場が機能不全に陥っており、何ら反応しなかった。
一方、米国では経済が力強く成長しており、FRB(米連邦準備制度理事会)はハイペースの利上げを継続する構えだ。そうなれば、ドル金利に引きずられて円金利が急騰したり、為替相場が混乱するリスクが、いつ現実になっても不思議はない。もちろん、そうした事態になれば、国民生活や企業活動に大きな影響が出るだろう。
どこの家庭も無限に借金を増やせないように、国の借金にも限界がある。しかし、過去20年間をふり返ると、日本は財政が破たんし、未曾有の苦境にでも直面しない限り、本気で財政健全化に取り組むことも、財政再建が実現することもないように思われる。
■性急過ぎた橋本政権の失敗
PBは、財政の健全性を測る指標の一つだ。具体的には、社会保障、公共事業、教育など政策に必要な経費を、どの程度、その年の税収によって賄えているか示すものである。
日本の場合、バブル期に税収の自然増が大きくなり、一時的(1986〜91年度)に黒字化したことがある。
が、1992年度以降は、バブル崩壊後の相次ぐ景気対策に加えて、少子高齢化に伴う社会保障費の増大によって歳出が膨らみ、財政赤字が拡大し、PBの赤字も恒常化してしまった。
もちろん、財政赤字が膨らむなかで、政府も無策でいたわけではなく、PBの黒字化や財政健全化にくり返しチャレンジしてきた。
最初の試みは、橋本龍太郎政権による「財政構造改革法」(1997年)の制定だ。法律で縛りをかけて財政健全化を目指すという発想は、当時の日本としては画期的なものだった。
橋本龍太郎元首相(故人、左)と小泉純一郎元首相(右) photo by gettyimages
同法は、特例(赤字)国債に依存する体質からの脱却と、国と地方の財政収支赤字をGDP比で3%以下にすることを目標に掲げた。1997年4月の消費税増税(税率3%から5%への引き上げ)も、橋本政権が実施したものである。
だが、この財政再建は性急過ぎた。消費税増税、所得税増税、社会保障負担増大、公共事業削減を一挙に行い、トータル13兆円に達する緊縮政策を採ったことで、日本経済そのものがマイナス成長に転落し、金融機関の不良債権問題を顕在化させてしまったのだ。
1997年秋から翌年にかけて、三洋証券、山一証券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行と、金融機関が相次いで破綻した。
■具体策を欠いた民主党政権の失敗
2度目の試みは、小泉純一郎政権が2001年から2007年にかけて策定した、一連の「骨太の方針」による改革だ。
小泉政権は、任期中の消費増税を封印。その一方で、公共事業費と社会保障費の削減という歳出抑制を軸に、「国債発行額を30兆円以下に抑えること」(2001年版)や「2011年度までに国・地方のPBを黒字化すること」(2006年版)といった目標を掲げた。
しかし、国債発行額を30兆円以下に抑えることができたのは、実際には2001年度と06年度の2回だけだった。2011年度の実現をうたったPBの黒字化も、2008年にリーマン・ショックに見舞われて実現せず、目標として有名無実化した。
3度目は2010年6月、菅直人政権が閣議決定した「財政運営戦略」だ。白紙状態になっていた財政健全化の取り組みを国家の重要課題として据え直し、PBについては「2015年までに財政赤字をGDP比で半減させ、2020年度までに黒字化する」との目標を打ち出した。
もっとも、このときは実現のための具体策がまったく用意されていなかった。菅首相は戦略決定に先立つ国会答弁で、「(消費税、所得税、法人税を含む税制改革について)そう遠くない時期に一つの方向性を示す」と述べただけで、当初から実現性に疑問符がついた。
財政黒字の削減について記者会見で語る菅直人元首相 photo by gettyimages
4度目は、民主党の野田佳彦政権が2012年6月に、自民・公明との3党合意でまとめた「社会保障と税の一体改革」だ。社会保障制度を充実するだけでなく、持続可能なものとするため、消費税率を10%に引き上げて財源を確保しつつ、並行して財政再建も成し遂げようというものだ。
この3党合意を受けた総選挙で政権を奪還した安倍晋三政権は、これまでのところ財政再建に熱心だったとは言いがたい。安倍政権は消費税率の5%から8%への引き上げは実施したものの、巧みに世論を味方につけて、8%から10%への引き上げを2度にわたって先送りしてきた。
■財政再建の意欲すらない安倍政権
安倍政権発足以来の口先だけの改革の結果、筆者がかねて警鐘を鳴らしてきた通り、冒頭で記した2020年度までのPBの黒字転換という国家目標は実現しそうにない。
内閣府が経済財政諮問会議に示したシナリオには、「楽観シナリオ」と「慎重シナリオ」の2つがある。
このうち楽観シナリオは、実質2%以上、名目3%以上という、現状よりも1%程度高い経済成長率の達成を前提条件にしている。加えて、生産性についても、過去のバブル期並みの高さに回復する、とかなり現実離れした前提条件を置いた。
それほど楽観的な前提条件のもとでも、これまで政府が掲げてきた目標の達成どころか、国と地方で8.2兆円もの赤字が残るという深刻な見通しになったのである。
シナリオ公表を受けて、安倍首相は記者会見で、「財政健全化のためには歳出改革の確実な推進とともに持続的な経済成長が不可欠」と強調した。しかし、経済成長だけでは目標は達成できない。もし楽観シナリオが実現したとしても、PBの黒字化達成は5年先の2025年度になる。
一方で、慎重シナリオが前提条件にした経済成長率は実質0%、名目1%程度。こちらのシナリオだと、2020年度のPBは10.7兆円の赤字で、なおかつ赤字が拡大し続け、2025年度には14.2兆円まで膨らむ見通しとされた。
これほど厳しい見通しが示されたにもかかわらず、安倍政権に財政再建に取り組む意欲はみられない。それどころか、7月19日付の産経ニュースによると、政府は早くも、PBの黒字化目標の達成時期を3年ほど先のばしする検討を始めたそうだ。
■またバラマキがくり返される
安倍政権は、財政規律の強化にも関心を示していない。
現行目標の達成が困難という見通しの発表に先立ち、安倍政権は6月に決定した今年度版の「骨太の方針」で、これまで明記してきた消費増税の断行方針を削除した。その代わりに、PBの黒字化と並ぶ重点目標として「債務残高のGDP比の安定的な引き下げ」を掲げた。
この新目標には、カラクリがある。
じつは、内閣府が示した楽観シナリオで進んだ場合、債務残高のGDP比は190%(2016年度)から163%(2025年度)へと、自動的に低下する。従来の厳しいPB目標と違って、この新目標は、経済成長さえ続けば簡単に実現できるのである。安倍政権は、バラマキ財政を続けるのに都合のよい目標を設定したわけだ。
バラマキ財政と言えば、政府が20日に閣議了解した来年度予算の概算要求基準の問題もある。
昨年度、7年ぶりの税収減で赤字国債の追加発行を余儀なくされた現実を直視せず、引き続き経済成長による税収増をあて込んで、5年連続で歳出総額の上限を定めなかったのだ。
その一方で、新たな成長戦略と称して、4兆円程度の特別枠を設けて「人づくり革命」の関連策に重点的に配分するという。
また、「貿易自由化の程度は、すでに対策を打ったTPP(環太平洋経済連携協定)と同程度だ」と国民に説明したはずなのに、安倍首相は、先に大枠合意した日欧EPAに関連して、新たに農業に手厚く予算を割く考えを表明している。
つまり、「人づくり」とか「日欧EPA」という羊頭狗肉の看板をかけただけで、バラマキがくり返されることが確実なのだ。
■財界人たちから批判が集中
安倍政権の姿勢には、財界人たちも懐疑的だという。
経済同友会は7月13日、長野県軽井沢町で夏季セミナーを開いたが、この場で、政府が6月に決めた「骨太の方針」への批判が噴出したのだ。
日本経済新聞によると、政府が新たな目標に加えた、GDPに対する債務残高の比率について、「GDPが増えれば借金を増やしてよいという言い訳に使われる恐ろしい指標」(商船三井・武藤光一会長)、「(新財政目標を)悪用すれば、財政支出でGDPを上げることもできる。本末転倒だ」(アサヒグループホールディングス・泉谷直木会長兼CEO)といった批判が相次いだ。
また、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げに関し、今回の骨太に明記されなかったことから、「骨太とは言えない」(ANAホールディングス・片野坂真哉社長)との苦言も聞かれたという。
政府・自民党はこれまで、財政再建を骨抜きにする際に、「成長なくして、財政再建なし」というロジックを掲げてきた。安倍政権が、「社会保障と税の一体改革」を「経済・財政一体改革」と言い換えてしまったことも、そうした景気優先・財政再建軽視の裏返しだろう。
■アベノミクスの本質は「時間稼ぎ」
すでに述べた橋本政権の失敗からも明らかなように、財政再建を性急に実現しようとすると、財政支出削減に伴う需要不足、消費増税に伴う消費意欲の減退、設備投資マインドの冷え込みなどを招き、経済成長を損ねるリスクがあるのは事実だ。
しかし、だからと言って、経済成長を理由に、野放図な財政出動と過度な国債の増発をくり返していては、財政再建を実現できるわけがない。財政再建には、長期的視野に立って、バランスを取りながら、粘り強く取り組む姿勢が不可欠なのだ。
安倍首相は、常に経済優先を掲げながら、アベノミクス「3本の矢」を推進してきた。しかし、その中身はと言えば、財政バラマキと異例の金融緩和という時間稼ぎ策だけだ。
経済の潜在成長力の回復に不可欠だった成長戦略(第3の矢、岩盤規制の見直しなど)はほとんど実質的な成果をあげられず、逆に森友学園や家計学園のスキャンダルを招いて、議論の時間を無駄に費やしただけだ。
いまとなっては、政権基盤が瓦解しかねない安倍政権に多くを期待するのは難しい。消費税などの増税を断行できる強固な後継政権を期待することも困難だ。やはり、実際に財政が破たんしないと、スタート台に立つことすら難しいのが、本格的な財政再建の道なのかもしれない。
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