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「利上げ→ドル高」という市場の漠然とした予想を鵜呑みにしないほうがいい。筆者は年末にしっかり上昇するのは金価格だと予想する(写真 : f9photos / PIXTA)
これから上昇するのはドルではなく金価格だ イエレンFRB議長の発言を真に受けるな
http://toyokeizai.net/articles/-/181146
2017年07月22日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
市場では、7月25〜26日のFOMC(米国連邦公開市場委員会)の開催もあり、引き続き米国の金利動向に注目が集まっている。米国連邦準備制度理事会(FRB)が6月13〜14日に開催したFOMCでは、ジャネット・イエレンFRB議長が記者会見で、「継続的な金融引き締めが適切」との認識を示したことは記憶に新しい。
また、FOMC参加者16人の経済・金利見通しでは、今年の利上げ想定は計3回であり、「年内にあと1回の利上げ」を想定していることが判明した。さらにイエレン議長は、「インフレ率は中期的に2%の目標に回帰する」と言明し、原油安に伴うインフレ率の低下は一時的との認識を示している。
■FOMC参加者から相次ぐ「タカ派的発言」
原油などのコモディティ市場をウォッチしている筆者からすれば、これには正直驚いたというのが本音である。イエレン議長はその根拠を示しているわけではないため、想像するしかないのだが、近い将来に原油価格が大きく上昇することがわかっているのだろうか。
いずれにしても、前々回のFOMC以降、FRB関係者からは、極めて「タカ派的な発言」が繰り出されている。前回6月の利上げに賛成したウィリアム・ダドリーNY連邦銀行(以下、連銀)総裁は、「いま引き締めサイクルを停止すれば、経済を危険にさらす」とし、「失業率が4.3%に低下し、インフレ率が1.5%程度で推移する現在の状況は極めて良好」とした。
そのうえで、「労働市場の改善による賃金上昇を背景に、足元は低水準にあるインフレ率は加速する」としている。また、今年のFOMCで投票権を持たないエリック・ローゼングレン・ボストン連銀総裁は、「米国を含め、世界で実施されている低金利政策は金融安定を脅かすおそれがある」とし、「中銀関係者は政策決定でこうした懸念を勘案すべき」としている。また、同様に投票権のないクリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁も「このところのインフレ低迷は一時的な公算が大きく、FRBは利上げを遅らせてはならない」との認識を示している。
しかし、これらの発言には相当の違和感がある。前述のように、インフレ率の低迷が一時的なものであると考える根拠が明らかにあいまいである。米国の消費者物価指数(CPI)が低調な背景には、原油価格の下落があることは何度も解説したとおりだが、この基調は変わっていない。やはりというべきか、6月のCPI(消費者物価指数)の前年比は5月の同1.9%上昇から1.6%に低下した。
■継続的な利上げは難しいと考えるのが妥当
このような状況では、イエレン議長が指摘するような継続的な利上げは難しいと考えるのが妥当だ。インフレが低水準にとどまるとの観測から長期債が買われ、長短金利差が約10年ぶりの低水準で推移している。この結果、市場ではイールドカーブのフラット化が進行している。一方でFRBが利上げを示唆していることで、連動性が高い短期金利は高止まりしており、これが短中期債の圧迫要因になっている。
市場は、「来年2月でのイエレンFRB議長の退任が濃厚であるため、FRBはできるだけ早く金融政策の正常化を進めようとしている」と考えている。しかし、実態はかなり異なるだろう。つまり、「9月のFOMCでの利上げありき」で事が進んでいると考えるのは誤りではないか。6月のFOMCで利上げに賛成したダラス連銀のロバート・カプラン総裁やエバンズ・シカゴ連銀総裁は、利上げに慎重な姿勢を見せている。
とりわけ、前々回のFOMCで利上げに賛成したカプラン総裁は、「FRBは追加利上げに慎重に臨む必要がある」とし、「われわれは慎重に金利を引き上げる必要があり、忍耐強く、そして注意深くあるべき」としている。さらに「足元で鈍化しているインフレの改善を確認する必要がある」とし、「自信を持って追加利上げを行うには、インフレが目標に向かって進展しているとの一段の証拠をみたい」としている。
また、同様に利上げに賛成したチャールズ・エバンズ総裁も、「足元のインフレ指標の弱含みを不安視しており、2%のインフレ目標を達成できるか懸念を強めている」としている。このように、早期利上げに懸念を示すFRB関係者も少なくない。
やはり筆者には、来年2月のイエレンFRB議長の退任が近づいているからだろうが、FRBが利上げと資産圧縮を急いでいるように見える。また、多くのFRB関係者が、FRBが保有する資産の圧縮に関する具体的な方法に言及し、利上げを必死に市場に織り込ませようとしているように見える。
しかし、これまで株価の下落を避ける政策を続けてきたイエレン議長が、退任が視野に入ってから急に利上げと資産圧縮を急ぐとは考えにくい。以前には、自身の強気発言で株価が急落し、それに悩んで体調を壊し、一時的に表舞台から身を隠したような状態になったとされる繊細な人間である。
このように考えると、いまのFRB関係者の強気発言を、そのまま真に受けてはいけない。また、昨年の夏を思い出してほしい。やはり、当時もイエレン議長を含め、多くのFRB関係者が利上げに関して声高にその可能性を示唆した。しかし、市場での利上げ確率は一向に上昇せず、結果的にFRBがもくろんだ9月のFOMCでの利上げは、見送らざるをえなかった。
このように、現在のFRB関係者の利上げに関する言及は、利上げありきではなく、あくまで市場に利上げしてよいかを問いかけているにすぎない。その結果、市場での利上げ確率が上がらなければ、結果的に利上げを見送るだけのことである。
■金価格は、インフレリスクが意識されても上昇する
無理に利上げをして、株価が下げてしまえば、景気悪化への道に進むリスクも高まる。これは、米国にとって最悪のシナリオである。原油安を背景に、インフレが上がってこない中で利上げを市場に織り込ませることはかなり難しい。
こう考えれば、FRBによる穏やかな、無理のない利上げと資産圧縮は、リスク資産の価値向上に相応の寄与をするものと思われる。本欄でも以前指摘したように、筆者はリスク資産が2019年ごろまで堅調に推移するとみているが、その背景のひとつにFRBの金融政策による下支えがある。米国にとっては、ドル安ぎみの為替相場の状態が好ましく、さらに原油相場が適度に上昇するのであれば、さらによいと考えているはずである。
その場合には、金相場は下値が支えられながら、堅調な推移を続けるだろう。一方、原油価格が急激な上昇に転じた場合には、今度はインフレリスクが意識され、金はヘッジとして買われる可能性がある。
このように、金は相場としてみるのではなく、あくまで資産の一部としてとらえておくと、その保有する必要性が理解できるだろう。重要なことは、上記のように金融政策の方向性が不透明な状態のときこそ、金を保有しておくことを検討すべきということである。
金は相場としては強い動きが続くとみており、現在1トロイオンス=1240〜1250ドルで推移している金価格は、年末には10%程度上昇、1375ドルを付けるとの見方もまったく変わらない。金相場は、夏場から秋口にかけて下値切り上げの動きが顕著になり、さらに年末にかけて大相場を形成することになりそうである。
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