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仮装通貨ビットコインの硬貨。(c)AFP/Karen BLEIER〔AFPBB News〕
「ビットコイン取引一時停止」の真相に迫る 対立する利害・投機筋から攻撃を受けたフィンテックのアキレス腱
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50583
2017.7.21 伊東 乾 JBpress
多くの方が日頃、目にしないような報道が前回のコラムがリリースされた7月18日の夕方、ネット上を駆け巡りました。
「ビットコイン取引、一時停止=来月1日−システム分離懸念」
日本国内でビットコインを扱う13の事業者は、8月1日の午前0時(現実には7月31日の夜)からしばらくの間、コインの引き出し・預け入れを停止する、と発表したのです。
これはよく考えると大変なことで、仮にリアルな「銀行の引き落とし停止」などということがあれば経済恐慌が発生しかねませんし、そのまえに「取り付け騒ぎ」が起こるリスクすら懸念される。
1929年の金融大恐慌はその後にファシズムの成立と第2次世界大戦の惨禍を巻き起こしました。
幸い現時点でビットコインまわりの「取り付け騒ぎ」は起きていないように見えますが、実は私もビットコイナーで、取引所からは「下落」「上昇」など値動きの通知メールがさっきから頻々入っています。
現在進行形の生き馬の目を抜くフィンテック戦争(Fintech wars)の最前線ですが、今回はフィンテックの1の1として、そこに至る入口の基礎を簡単に整理整頓しておきたいと思います。
そもそも「システム分離」とは何なのか?
もし金融システムが2つに分裂などすれば、当然混乱を来たして不思議ではありませんが、いったいそれはどういう経緯で起きるのか?
なぜデジタル通貨は「分離」「分裂」の危機などというものをはらんでいるのか?
■「トラストレス」「ブロックチェーン」「暗号通貨」
すでに人口に膾炙したビットコイン、デジタル通貨ですが、定義の曖昧な言葉を使っての混乱を避けるのが賢明でしょう。
実は今学期は大学院のゼミで、ビットコインの背景技術であるブロックチェーンを扱っているので、ここではごく簡潔にいったいどういう「通貨」で、どういう問題があるのかを「トラストレス」「ブロックチェーン」「暗号通貨」のキーワードでおさらいしてみます。
ビットコインは「PtoP(ピア・トゥー・ピア、同僚から同僚へ)」型の電子通貨で、「払い手」と「受け手」が公開の場で数理暗号を用いて直接やり取りします。このお金のやり取りを「トランザクション」と言います。
普通、クレジットカードなどで買い物するときにはビザとかマスターとか信販会社が仲立ちしますし、ATMは銀行の預金残高を遠隔で操作しますが、こういう「仲介者」が存在しません。
そのため早急な決済が可能で、ムダな仲介料コストもかからない。これを「信用仲介無用の直接通貨」とう言うことから「トラストレス」と呼ぶことがあります。
この「取引記録」はネット上に分散公開された「元帳」に記録され、10分ごとに「正規の元帳」のブロックが確定され、これが鎖のようにつながって行くので、基幹技術はブロックチェーンと呼ばれています。
ビットコインの取引、トランザクションの素データはネット上で公開共有されますが、それを整理して10分ごとのブロック台帳を確定する作業は「速い者勝ち」の計算競争で争われ、実際には専用機システムを用いた莫大な暗号計算を短時間で競い合います。このため、ビットコインは「暗号通貨」と呼ばれます。
この競争に勝った者は報酬として新たなビットコインを手にするので、いわば「金の採掘」に似た行為として「マイナー=採掘者」(メジャー・マイナーのマイナーではありません)と呼ばれます。
この計算に要する、バカにならない電子計算機の消費する電気料金が、ビットコインの貨幣としての一背景をなしています。
ブロックチェーンの開発者側は、おりおりのマイナーの計算能力を見ながら、この「暗号問題」の難易度をコントロールして、ちょうど10分内外でブロックが決定して行くようにコントロールしつつ「ビットコイン」を発行していきます。
「システム開発者」は出題者、いわば先生で、「マイナー」は解答者、いわば生徒のような形で巨大な電子計算機で愚直な問題を解き、それに要する設備投資や電気料金に相当する程度の「報酬」を「マイナー」同士が競い合いながら、唯一の信用機関がコントロールするのでない、ネット上での開かれた取引が可能になる。
サトシ・ナカモトという日本名を名乗る人物が2008年にネットワーク暗号数理のゲームのような論文を発表しました。それを実装したシステムが2009年に発表されて、ビットコインは急速に世界に広まっていきます。
■二重払い、PoW、スケーラビリティ論争
信用機関を経由せず、払い手と受け手が直接やり取り(P2P)するビットコインは低コスト流通が可能など多くの美点を持ちますが、悪意あるユーザがおかしな行動を取ると、混乱を引き起こす危険性があります。
ビットコインの持ち主は暗号の鍵を用いて送金しますが、同じ鍵を立て続けに複数回用いることを原理的に防げません。
この状態を「二重払い(Double spending)」と言います。これを阻止するため、何が正しい決済であるか、を決定する「コンセンサス形成」が必要になります。
この取引を認証するためのシステムとしてビットコインではプルーフ・オブ・ワーク(PoW)=「仕事の証明」と呼ばれる暗号解読計算競争が設定されています。
ここで、1つのブロックに過去の取引の情報が含まれ、鎖のようにつながっているというのがブロックチェーンの特徴になっています。
この種の基礎の解説は成書やネット上も大量に存在しますので、以下ではいま問題になっている「分裂」や「分離」が言われるのかを見て行きましょう。
この問題の背景には「スケーラビリティ論争」と呼ばれるリスクの指摘が存在します。
スケーラビリティ(スケール可能性)とは、スケールが大きくなったとき、「元来の小スケールと同様の性質が保たれるか?」を問うもので、ここでは要するに、最初はゼロから出発し、小規模に運営されていたビットコインが、やがて大規模に運営されるようになったとき、当初と同様の性質、特に「安全性」が担保されるかがポイントになります。
次第に大規模化するビットコイン、多くのユーザが利用するようになれば処理すべき情報量はものによって指数的に増大しても不思議ではありません。
このため、乱暴に言うと「ビットコインは従来通りのシステムで大丈夫だ」という、いわば守旧派と「大規模対応できるようにシステムを変える必要がある」とする、バージョンアップ派とが対立、これはまた「システム開発者」と「マイナー」つまり出題者と解答者の間の対立に発展し、現状はきわめて複雑な緊張関係となっている様子です。
新システムを導入するとき、以前からのシステムと連続性のある、「ソフト」なバージョンアップもあり得ますが、かなり抜本的な改革、つまり旧バージョンと互換性のない「ハード」なバージョンアップもあり得ます。
ワープロや表計算など日常的なソフトで「ハード」なバージョンアップをされると、以前の文書が使えなくなるなど、様々な不都合が生じることになります。
電子暗号通貨システムの変更で、旧版と互換性のないバージョンアップは「ハード・フォーク」と呼ばれています(互換性のある変更は「ソフト・フォーク」)。
このようなバージョン変更があった場合、新旧両バージョンが両立することとなって、結果的に「コインが分裂」する可能性がある。
「ビットコイン分裂の危機」「ユーザの資産を保全するため8月1日午前0時から取引停止」といった見出しだけでは分かり難い背景に少し踏み込んだうえで、改めて現状を確認してみましょう。
■「デジタル不渡り」をどう防止するか?
ビットコインのご利益を一番感じるのは海外への送金です。私は欧州との往復の多い生活ですが、ちょっとした送金を銀行経由で行うと、簡単に5桁に近い手数料(8500円とか9600円とか)を取られてしまう。
一番ひどい目に遭ったのは、かつてアフリカ、ルワンダ共和国に入り、キガリ空港併設の両替カウンターで換金しようとしたところ、運悪くドルやユーロが少なく円からの両替を申し込むこととなり、
窓口:これは何か?
私:日本円だ。
窓口:ここでは誰もこんなものを知らない。だから使わない。よって両替はできない。
という、非常にアフリカらしいやり取り、クレジットカードが使える所は良かったのですが、ローカルな社会はルワンダフランしか受け付けません。
そこで「ウエスタン・ユニオン」を通じて送金してもらったのですが、30%くらいの手数料を取られてしまいました。
こんな状態でしたから、実質的な手数料が0に近いビットコインは国境をまたぐ送金で瞬時に普及しました。しかし、こうなると投機筋などが放っておきません。
短期間に莫大な量のトランザクションを電子発生させるなどの手口で、システムに攻撃を仕かけ、決済に遅延を起こすといった「敵対的取引」が仕かけられると、これは紛うことなく決済の遅延ですから「デジタル不渡り」といったリスクが懸念されることになります。
そこで、アルゴリズムを抜本的に変化させて、高速取引を可能にするシステム提案がなされますが、ことは「お金」に関わること、システムの変更は利害関係者に様々な直接影響を及ぼすため、のっぴきならないことになっています。
念のため申し添えますが、私は電子商取引ビジネスの最先端にいるわけではなく、ブロックチェーン演算で仮定される、例えばポアソン分布と呼ばれる確率的な分布挙動が、悪意あるトランザクション放出でどう擾乱を受けるか、など、もっぱら原理的な話題からフィンテックの基礎を洗い直す、東京大学・米ハーバード大学などのチームの観点からしか事態を観察できません。
善くも悪しくもこのコラムを読んで儲かることはあまりないと思います。
しかし、ここで改めて実物の情報、例えば「bitFlyer」が7月19日付で出した告知(https://bitflyer.jp/pub/announcement-regarding-august-fork.pdf)を見てみると、何が書いてあるかよく分かるかと思います。
その中の1つにとりわけ強調して「お客様の資産は守られます」という告知があります。
また、これととともに記された「分岐が発生した場合、分岐前にビットコインを当社で保有されていたお客様には分岐後の2つ(以上)のそれぞれのチェーンでできたコインを付与します(*2)」という注意書きの意味も、クリアに了解されるかと思います。
さらにこの注意書き末尾に記された「*2」がポイントで おしまいの方に目立ちませんが、「*2 当社が恒久的に持続可能ではないと判断したチェーンのコインは付与しない場合があります。その場合は一切の損害について当社は保証いたしません」としっかり記されているのを見落としてはならないでしょう。
何を意味するかは、本稿を通読された方には一目瞭然ですね。よろず用心するに越したことなし、と言うべきでしょう。
ブラックボックス的投機で損する予防には、基礎的な理解が役立ちます。予断を許さないビットコイン事情、推移を見つつ続報も記したいと思います。
(つづく)
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