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農産物の輸入自由化が難しい理由(WEDGE)
http://www.asyura2.com/17/hasan122/msg/602.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 7 月 18 日 15:05:45: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

農産物の輸入自由化が難しい理由
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/10111
2017年7月18日 塚崎公義 (久留米大学商学部教授) WEDGE Infinity


 日欧の経済連携協定(一種の自由貿易協定)が大筋で合意しました。自由貿易を目指したものが合意されたのは、基本的に好ましいことです。特にトランプ政権誕生やBrexitなど保護主義の蔓延が懸念されるなか、事実上崩壊したTPPの穴を埋める、希望の光だと言うと言い過ぎかもしれませんが(笑)。

 しかし、中身を見ると、チーズの輸入が自由化されたのではなく、輸入枠を設けて15年かけて無税にするなど、到底「自由な貿易を実現しよう」といった意気込みが感じられるものではありません。そもそも、今まで協定が結ばれず、今回もこのような限定的な合意にとどまったのは、自由貿易が政治的に困難だからです。今回は、自由貿易の困難さについて考えてみましょう。

■済学者は自由貿易が大好き……初心者向け解説

 経済学者は、自由貿易が大好きです。お互いの国が得意な物を大量に作って交換すれば、各国が不得意な物まで自分で作るよりも豊かに暮らせるからです。日本は土地が狭いので、農業に向いていませんが、技術力があるので工業製品は得意です。そこで、工業製品を輸出して外貨を獲得し、それを用いて外国から農産物を輸入すれば、今より豊かに暮らせるはずなのです。

 農産物の輸入自由化は、日本にとってマイナスだと考えている人も多いでしょうが、農家にとってマイナスである一方、消費者は安い農産物が手に入るので、消費者にとってはプラスです。経済学的には、消費者へのプラスの方が農家へのマイナスより大きいので、輸入自由化は積極的に推進すべきだ、ということになるのです。

 加えて、交換条件として相手国に「日本からの工業製品輸入の関税を引き下げろ」と言えるので、日本の製造業にとって輸出が増えるメリットも見込まれます。それなら、自由貿易協定を締結するしかない、というのが経済学者たちの主張なのです。

■政治家は、農家の失業を気にして消極的

 一方、政治家は、自由貿易協定に積極的ではありません。一つは、農家が失業してしまうからです。農家は「来年から製造業で働け」とか「来年から外国の農場で日本向け輸出作物を作れ」と言われても、困りますから。政治家にとっては、失業のない経済を作ることが重要なのです。一方で、主流派経済学は失業の問題を気にしません。「失業の問題は、神の見えざる手が解決するから、気にすることはない」と考えているのです。まさに「失業した農業関係者は製造業で働くだろうから、心配無用」といった感じです。だから、政治家から見ると「経済学者の主張は却下」なのです。

■農家の方が発言力が大きい

 今ひとつの理由は、政治的な発言力の問題です。農家にとっては、農産物の輸入自由化は死活問題ですから、必死に反対するのは当然ですね。一方の消費者は、「農産物が安くなったら嬉しい」とは思いますが、「農産物の輸入を自由化しろ」といったデモに参加したりしません。消費者全体として受けるメリットは大きいのですが、消費者は人数が多いので、一人当たりのメリットが小さく、わざわざデモに参加しようというインセンティブがないのです。

 製造業者は、「自分がどの程度のメリットを受けられるか」が定かでありません。相手国が関税を下げても、どの程度輸出が増えるのか、事前には予想が難しいからです。相手に攻め込まれる農業が被害を予想できる一方、攻め込む方の製造業は、戦果の予想が難しいのです。

 こうして、農家は少数であるがゆえに政治的な発言力を持つ、という不思議なことが起きるわけです。政治家としては、「農産物輸入を自由化すれば、農民票は必ず減るが、都市での得票が増える保証はない」と考えるので、自由貿易協定には積極的になれないのです。

■もらう満足より奪われる不満の方が大きいという心理学的問題も

 人間は、100円儲けた喜びより100円損した悔しさのほうを大きく感じるようにできているそうです。まして、政府の政策によって100円利益を得る満足よりも、政府の政策によって100円不利益を被る不満足の方が大きいことは、容易に想像がつくでしょう。自分で株で損したわけではなく、恨むべき相手が目の前にいるからです。

 そうなると、上に「農家にとっては死活問題だから」必死で反対すると記しましたが、それだけではなく、「稼ぐ権利を政府に奪われる怒り」も加わると考えるべきでしょう。したがって、一層真剣に反対運動を繰り広げるわけです。

 そうなると、世論としても「農家が可哀想だ」という方向に傾く可能性も出てくるでしょう。そうなると、輸入自由化を推進した政治家は「血も涙もない」といった眼でみられかねないわけです。そんなリスクまで負いたくありませんよね。

■日本の場合、「一票の格差」の問題も

 日本の場合には、高度成長期に大量の若者が都会に出てきましたから、農村地域と都会の人口比が大きく変化しましたが、選挙における議席数の増減は、それほどでもありませんでした。議席を減らされそうな農村地域出身議員が必死で反対したからです。そこで、農業関係者の投票が国政に反映されやすい構造になっているのです。

 加えて、農業関係者は多くが選挙に行きますが、都会の住民は投票率が必ずしも高くないですし、農産物自由化に関心が薄い有権者が圧倒的多数なので、都会選出の議員は農産物の輸入自由化に熱意を持つインセンティブがないのです。

■農家への支出は当然としても、「割増退職金」を検討すべき

 政府としては、消費者と製造業のために農家に犠牲になってもらうわけですから、農家に対して税金を投入すべきことは当然でしょう。農家の持つ強烈な不満を考えると、説得するためにはある程度の「バラマキ」も仕方のないことなのかもしれません。

 問題は、投入の仕方です。競争力のある農家に対しては、「迷惑料」として補助金を支払うべきでしょうが、競争力が乏しい農家に対しては、「割増退職金」的な補助金の出し方をして、離農を促すべきです。

 上で「農業関係者が失業してしまう」と記しましたが、幸か不幸か日本の農家の多くは高齢で、引退を考えても悪くない年齢です。それなら、「離農してくれたら、年金は2倍払う」といった離農奨励策を採るほうが良いでしょう。高齢で零細な農家は競争力が乏しいので、これを補助金で支えようとすると多額の補助金が必要になりますから。

 その際には、「現在利用している土地や設備を、若い農家に売るか貸すかして、彼らが大規模な農業で効率的に作業できるように協力すること」を条件としても良いかもしれませんね。

 

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