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金融庁が入居する中央合同庁舎第7号館(「Wikipedia」より/Rs1421)
銀行、新たな不良債権リスク拡大の兆候…金融庁が一斉調査へ
http://biz-journal.jp/2017/07/post_19827.html
2017.07.18 文=森岡英樹/ジャーナリスト Business Journal
メガバンクなど大手銀行の収益が、為替の動向によって大きく上下にふれるリスクが高まっている。最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループでは、米ドルに対して1円の為替変動が、本業での儲けを示す業務純益に与えるインパクトは55億円。「2円の円高で100億円を超す減益になる」(メガバンク幹部)格好だ。逆に円安にふれればその分増益となるわけだが、「中長期的には円高基調にあり、減収要因となりかねない」(同)と懸念されている。
「銀行の収益構造が自動車会社化しつつあるということでしょう」
メガバンクの幹部は、海外部門の全体に占める割合が高くなっている現状をこう憂慮する。モルガン・スタンレーへの1兆円の出資はじめ海外での買収を積極的に展開する三菱UFJの場合、海外部門収益は全体の4割を超え、収益の約半分は海外が叩き出す。特に海外企業に対して、現地通貨(外貨)建てによる融資に力を入れていることもあり、決算時に円転する際に為替による変動幅が拡大している。
同様に三井住友フィナンシャルグループでは米ドルに対して1円の為替変動で32億円、みずほフィナンシャルグループは17億円も収益が上下する。
「トヨタでは1円の円高で400億円、ホンダでは120億円の収益が吹き飛ぶことに比べればまだましだが、銀行も為替に翻弄されかねないセクター化しつつある。銀行=内需株という見方を変えなければならないだろう」(大手証券幹部)
■地銀に浮上する中国・新興国リスク
このように収益が海外部門に依存する割合が高くなっているのは、大手銀行に限ったことではない。金融庁が地銀など地域金融機関の中国・新興国向け与信について注視しているのはその象徴だ。
「国内ではマイナス金利政策で貸し出し収益は大きく圧迫されており、利ざやの縮小が止まらない。その分、海外への融資に活路を見いだそうとしている地域金融機関も少なくない。与信先は日系現地法人向けのみならず、非日系現地法人にも拡大している。また、日本の本社と現地子会社間の親子ローンも目配せする必要があろう」(金融庁関係者)
金融庁では、こうした中国・新興国に拠点を有するメインの大口与信先に関する調査を2月に実施したばかりだ。
地域金融機関の取引先のなかには、国内市場の縮小を受け、海外に活路を見いだそうと中国・新興国に進出する企業が増加している。これら取引先は地域の中核企業であるケースが少なくなく、地域金融機関がメインバンクとなっている。その一方で、急速なメイン取引先の海外進出に十分に対応できずに、与信管理が後手に回っている地域金融機関もあるのではないかとみられている。その実態把握に乗り出したわけだ。
金融庁は中国・新興国向け与信について、カントリーリミットを設定した上で、現地法人、親会社の状況等を定期的にモニタリングして経営陣に報告している銀行がある半面、リスクは限定的であるとして新興国の経済減速の影響を踏まえたストレステストを行っていない銀行もあるのではないかという問題意識を持っている。
調査の結果、中国・新興国に拠点を有する大口メイン先であるにもかかわらず、メイン先の中国・新興国関連の売上高や、メイン先の現地法人等の債権(保証や売掛債権等)を把握していないケースが見られたほか、そもそも大口メイン先が新興国にどのような拠点を設置しているのか、その有無すら把握していないケースもあった。
このため、大口与信先のうち、中国・新興国に拠点を有する債務者への与信額が大きい、もしくは中国・新興国向け与信比率の高いいくつかの地域金融機関を対象に、さらに突っ込んだ個別のヒアリングを実施した。
その結果、「メイン先かつ大口与信先であっても、海外子会社の決算書等の詳細な情報を入手しておらず、グループ全体の財務分析に改善の余地がある」「中国・新興国の著しい経済減速を想定していない、または与信先に中国・新興国への売上依存度が高い先は少ないという認識から分析を行っていない」などの課題が浮き彫りになった。
メガバンクは為替の変動に収益が左右されるリスク、地域金融機関は中国・新興国向け融資の不良債権化リスクという厄介な難題を抱えつつある。
(文=森岡英樹/ジャーナリスト)
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