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2015年の相続税法改正で課税対象者が1.8倍に増加。少子化で相続人が減った影響もあり、養子縁組で相続税対策を行う人が増えているという(写真部・片山菜緒子)
“争続”の原因で圧倒的に多いのは… 税理士座談会〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170705-00000034-sasahi-life
AERA 2017年7月10日号
課税対象者が大幅に増えた相続税。流行の節税対策や税理士業界の裏事情、“争続”が起こりやすいケースなど、普段は聞けないことをズバリ聞いてみた。
──2015年の相続税法改正で基礎控除額が引き下げられた(従来の「5千万円+相続人数×1千万円」から「3千万円+相続人数×600万円」に)ことで、課税対象者が大幅に増えたと言われています。相続税申告を行う税理士はさぞかし儲かっているのでは……?
福留:15年に相続税の課税対象となった人は10万人を超え、税制改正前に比べて1.8倍に増えたと言われています。その影響で相続税申告の依頼や相続対策の相談件数が増えたのは事実です。うちの事務所で言うと、昨年の相続税申告件数は706件でしたが、今年は1千件を超えそうな勢い。今、税理士業界では資産税を扱う事務所が急速に伸びており、人材の採用が追いついていない状況です。
高原:ただ、昨年の中ごろまでは相続対策の依頼が引きも切らない状況でした。生前贈与花盛りだったんです。
●「相続税が得意です」
──贈与の相手1人につき年110万円の非課税枠を利用して、子や孫に贈与する人が多かったということですか?
高原:それももちろんありますが、教育資金の一括贈与(受贈者1人につき1500万円まで非課税)や住宅取得等資金贈与(省エネ等住宅ならば最大1200万円まで非課税)の申告件数が増加傾向にあったんです。ところが、昨年6月に消費税10%への引き上げが延期されて、住宅の駆け込み需要が急激に減ってしまい、その影響で住宅取得等資金贈与の件数も減りました。この贈与の非課税枠は年々減っていく予定(21年4月には省エネ等住宅の非課税枠は800万円に減額予定)なので、まだまだ利用される人はいるかなと思っていたのですが、昨年ガクッと減ったきり増えていないように感じます。
寺町:「相続に強い」とアピールする税理士事務所は急激に増えましたよね。年間の相続税申告件数は10万件ほどなので、全国で税理士登録されている7万6千人で割ると、年間で1人あたり1件ちょっとの申告書を作成できる計算になります。しかし実際には相続を得意とする税理士事務所に案件が集中しますので、年間に1件も相続税申告書を作成しない税理士のほうが多数です。ところが、15年の相続税法改正で課税対象者が増えるのがわかった途端、「相続税が得意です」とHPに掲げる税理士事務所が増えました。相続絡みの仕事の取り合いになっている印象を受けます。
高原:その影響か、“相続税還付”の依頼も増えています。
──相続税還付は過払い請求みたいなものですか?
高原:相続税は自己申告制度なので明らかな過払いとは言い切れませんが、払い過ぎていた相続税を取り戻すという意味では似ています。昨年の実績でいうと、10件中7件くらいの割合で、還付の可能性が出ています。相続税の経験が少なくても、顧客から依頼されれば税理士も引き受けざるを得ず、慣れない申告の中で土地の評価額を高く計算しすぎているケースが多々ある。正直、税務署OBの税理士さんでも、土地評価をはじめ相続のことを完全に把握している方は少ない。だいたい、不動産絡みの相続案件はかなりの確率で還付が受けられます。私たちが担当した例で言いますと、5億円の相続税を納付したのち、2億4千万円の還付を受けた方がいました。その方は、アパートが立っている大きな土地を持っていたのですが、当初の申告では、その土地の広大地評価(三大都市圏の市街化区域内なら500平方メートル以上の土地で、開発時に道路などの潰れ地が生じる際に最大で土地の評価が65%下がる)の適用を断念していました。しかし、様々な調査をふまえて再検討し、不動産鑑定士の評価意見書を提出することで広大地評価が認められたんです。
福留:うちも還付の案件は増えていますね。最近も1億円以上の還付を受けられた方がいました。もちろん、相続税申告を担当された税理士さんの経験不足もあるかと思いますが、土地の評価や名義預金の判定などは、相続税の申告を専門としている税理士すら悩むことが多いんです。メインの業務が法人顧問というような一般的な税理士事務所じゃ、申告に不備が生じてしまうのも仕方ないかもしれませんね。だから、セカンドオピニオン的に相続の中でも土地の処理に関してのみ、うちを頼る税理士さんも増えました。
●区分所有オフィスを販売
──では、最近の旬な節税対策などはあるでしょうか? 昨年は“タワマン節税”が脚光を浴びました。
寺町:タワマン節税は、旬は過ぎていないと思います。タワマンは、実際に取引されている価格に対し、相続税評価額が著しく低いため、これを生前に購入すれば相続税の節税効果があります。この相続税の節税効果は高層階の物件であるほど顕著になりますので、そこに目を付けた富裕層の方々がタワマンの高層階の物件を生前に購入して相続税の節税対策をしています。この“抜け穴“が問題視されて、節税封じの税制改正が行われると思ったのですが、結局、高層階の固定資産税は引き上げられるようになったものの、相続税は今までのままです(笑)。規制が入るというイメージが先行して、相続税対策で買おうと思っている人は、これまでよりは減った印象ですが、節税効果はまだまだ高いです。
福留:旬と言えるのかわかりませんが、相続税対策を謳って、区分所有のオフィスを販売する業者が増えましたよね。相続税を算定する際の基準となる相続税路線価は住宅地ですと、東京都内の高級住宅街でも1平方メートルあたり30万〜50万円ですけど、都心部のオフィス街ですと1平方メートル数百万〜1千万円以上というのもザラ。建物は時価の50%前後で評価され、第三者に貸している場合は評価額の30%の控除が可能になるうえに、さらに土地について200平方メートル以下の場合は小規模宅地等の特例が受けられて評価額が半分になります。億単位の現金資産を持っている資産家は、アパートを建てるよりも高額の節税対策ができるとして、区分所有のオフィスを買っているケースは少なくありません。それでも、やっぱりアパートを建てるのが、相続税対策の常套手段ではありますが。
●相続税をゼロにも
──アパートに関しては、相続税対策で建てる人が増えすぎて、供給過剰になる可能性を内閣府も指摘しています。それでも、建てる人は減らない?
福留:簡単に言ってしまうと、相続税対策には大きく三つのパターンしかありません。生前贈与と保険(相続人数×500万円まで非課税)とアパート建設です。そのなかで、生前贈与が1人につき年間110万円、保険が1人につき500万円という枠なのに対して、アパートはまとまった金額を節税できてしまう。1億円の現金があったら、そのまま課税されてしまいますが、土地なら評価額は80%になり、アパート建設の資金を融資してもらったら、その残債は相続税評価額から差し引けて、賃貸物件なら建物価格の評価は70%に減額されます。乱暴に言うと、借金を増やして収益性の高いアパートを建てれば、相続税をゼロにできてしまうケースも少なくありません。ただ、相続後に賃貸経営がうまくいくかは別の話ですが……。
●息子の嫁や孫を養子に
寺町:おっしゃるとおり、アパートを建てるだけで相続税は大幅に減額できますが、その後の経営を考えていない方は多いですよね。地方だと先祖代々受け継がれている土地が多く、相続人が被相続人から生前に「この土地を守っていってくれ」と頼まれて、何とか土地を手放さなくて済むようにとアパートを建てて相続税を引き下げているケースも少なくありません。けれど、郊外の“駅遠”物件だと、客付けがうまくいかず、結局、借り入れの返済ができなくなり、土地も手放さざるをえなくなったというケースはよく聞きます。
高原:旬でいうと、最近、養子縁組をされる方が増えた印象はないですか?
寺町:それはありますね。数年前まで、「おれは絶対に養子縁組などしない!」と言っていた資産家の方が、今年になって「やっぱり養子縁組することにしたよ」と言ってきたんです。
──なぜ、養子縁組が増えているんですか?
高原:もちろん、相続対策です。相続税の基礎控除額は「3千万円+相続人数×600万円」。ほかにも保険の非課税枠が増えるうえに、相続人1人当たりの法定相続分が減少するため、超過累進税率である相続税の税率(1千万円以下10%で順次上昇、6億円超で55%)が低くなって、相続税総額を減らすことができるんです。息子の嫁、ないし孫を1人養子にするだけで数千万円単位の相続税を節税できるケースも少なくありません。ただ、以前は敬遠される方が多かった。相続税の2割加算はあるにせよ、孫を養子にしてしまえば、父から子、子から孫という相続を1代飛ばせるじゃないですか? しかし、養子縁組すると「戸籍が汚れる」と考えて敬遠する人が多かったんです。でも、少子高齢化で相続人が減り、今年1月には最高裁で相続税の節税目的の養子縁組も有効であるという判決が出たことが影響しているのか、抵抗のない人が増えましたね。
●ヘルパーさんに数億円
福留:“争族”の原因で圧倒的に多いのは、親の介護絡みです。「何で、私が一番お父さんの面倒を見たのに、法定相続分しかもらえないの?」と。
寺町:遺産相続で揉めないように、しっかり遺言書を残していたのに、自分が要介護状態になる前に書いた遺言書だったから、一番面倒を見てくれた子どもに配慮した遺産分割になっていなくて、「私はもっと取り分を増やせませんか?」といった相談も少なくありません。メディアでは相続トラブルを避けるためにも遺言書を残しておくようにと頻繁に特集していますが、実際には遺言書を用意するだけですべてのトラブルが解消されるほど簡単でないことも多いです。一方で、うまくやったなと思った事例もあります。旦那さんが亡くなって遺言書どおり、遺産はすべてその奥さんが相続したのですが、実は1億円近い死亡保険金を一番面倒を見てくれた次女が受け取るようにしていました。遺言書にその保険金のことを書いていなくても次女が取得できますし、次女を除く子どもたちは全部の遺産を母親が相続したと思っています。相続税申告書も奥さんと次女にしか送付しませんので、次女以外の子どもたちは次女が保険金を取得していると気づかないわけです。
高原:私が担当した例でいうと、亡くなった方が「ヘルパーの△△さんにすべての遺産を譲る」という遺言書を残していて、実の息子さんから「何とかなりませんか?」と相談を受けたケースがありましたね。亡くなった方は都心にかなりの不動産を持っていた大地主で、ヘルパーさんは6億〜8億円近くの資産を取得して、すぐにそれを売却して田舎に引っ込んでしまっていました。最終的にはヘルパーさんに遺留分の減殺請求を行って、2億円ほど取り返すことができたんですけど、息子さんは不満でいっぱいでした。そのヘルパーさんがいなければ、8億円程度の資産を相続できていたはずですからね。結局、息子さんが親の介護をせず、単身赴任で働いていたことで、被相続人は「ヘルパーさんにあげたい」となったようです。
(構成/ジャーナリスト・田茂井治)
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