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地価が急上昇していても、「バブル」と呼ぶにはまだ早い理由 25年前の水準回復、というけれど…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52199
2017.06.05 磯山 友幸経済ジャーナリスト 現代ビジネス
銀座地価、バブル期を超える
国税庁は7月3日、相続税や贈与税の算定基準となる2017年分の「路線価(1月1日時点)」を公表した。全国の平均では前年比0.4%のプラスと、2年連続で上昇した。東京・銀座の鳩居堂前は1平方メートル当たり4032万円と、バブル末期の1992年に付けた3650万円を25年ぶりに更新。前年比の上昇率も26.0%とトップになった。
エコノミストなどの一部からは「不動産バブル」を懸念する声が上がっている。本当に東京の不動産は実態価値以上の価格が付いた「バブル」なのだろうか。
日本銀行が2016年2月に導入した「マイナス金利政策」がジワリと効果を発揮しているのは間違いなさそうだ。金融機関による不動産向け融資の伸びがバブル期を上回ったと報じられたが、実際に不動産向け融資は増えている。
日本銀行が集計した業種別貸出金残高によると、マイナス金利政策は始まる前の2015年12月末には65兆7692億円だった不動産向け融資は、直近の2016年3月末には72兆1572億円に1年3カ月で9.7%も増えた。マイナス金利を嫌った金融機関が不動産投資や再開発向けの資金を積極的に貸し出したとみられる。
銀座など都市部の一等地での不動産の再開発は、必ずしもカネ余りによる投機とは言い難い。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて訪日外国人客が急増することを見込んだ店舗やホテルなどの「実需」の増加が背景にある。銀座や日比谷、八重洲、日本橋周辺は、急速に再開発が進んでおり、地価の上昇に拍車をかけている。
銀座・鳩居堂前の地価が「バブル期を上回った」とニュースになっているが、逆に言えば、やっと25年前の地価に戻ったということでもある。
ブームだが過熱感はナシ
バブル期の不動産価格は、カネ余りによって巨額の融資が不動産に流れ込んだ結果、転売を狙った不動産投機などが全国的に広がった。東京など大都市圏では開発による不動産価値の上昇が喧伝されたが、実際には地上げの段階でバブルがはじけ、開発されずに空き地のまま放置されたケースが多い。
ところが最近の東京駅周辺では、再開発が進行、新しいビルや複合商業施設が次々にオープンしている。不動産開発ブームが起きているが、不動産バブルというほどの過熱感はないと言える。
金融機関所属のエコノミストなどはマイナス金利の弊害としての不動産バブルが起きつつあると強調する。これはマイナス金利政策に反対しているためで、このまま政策を継続するとバブルが起きると声高に叫んでいる感が強い。
個人が遊休地に借金してアパートを建てるなど、バブル期に流行した不動産の有効活用策が復活しているのは事実だ。日銀統計の「個人による貸家業」向けの融資は1年3カ月で6.2%増えている。しかし、全体の不動産業向け融資の伸び率と比べると低い。つまり、貸家業向けが突出して増えているわけではない。
国土交通省が6月30日に発表した住宅着工統計によると、5月の新設住宅着工戸数は7万8481戸で、前年同月比で0.3%の減少となった。
住宅着工はマイナス金利政策が始まった2016年2月ごろから、消費税率が8%に引き上げられる前の駆け込み需要が盛り上がった2013年度の月間戸数を上回るケースが目立った。2016年度は97万4137戸と、2013年度の98万7254戸に迫った。4月から始まった2017年度が2013年度の戸数を上回ることができるかどうかが注目点だ。
4月は前年を上回ったが、5月はわずかなところで及ばなかった。大きな要因は分譲マンションが減少したこと。大規模なマンション開発などが一段落しつつある影響も出ている。また、新築マンションの発売価格がかなり上昇したことも響いている、という見方もある。
経済好循環まではまだまだ
今後も土地の価格が上昇し続けるかどうかは、都市再開発やマンション建設などの需要が増えるかどうかにかかっている。地価が上昇すれば、それによってマンションや一戸建て住宅に買い替え需要が出て来る効果もある。
個人消費の低迷が続いているが、消費の起爆剤が見つからない状況が続いている。そうした中で、新設住宅の増加は、消費の追い風になる。住宅を新築すれば、家具やインテリア用品、家電製品といった耐久消費財の需要が高まるのは間違いない。新設住宅着工の増加傾向が鮮明になって1年余りが経過し、こうした住宅付随消費に資金が回り始める可能性もある。
安倍晋三首相がアベノミクスで言い続けている「経済の好循環」がなかなか実現していないのが実状だ。確かに雇用情勢は大きく改善し、失業率も歴史的な低水準にある。首相自らが財界人に呼びかけたベースアップなどの賃上げもわずかながらも進んでいる。後は、それが消費に回り始めれば経済の好循環が動き出すと見ることもできそうだ。
それだけに、今後の不動産投資や住宅建設の行方、地価の動向が、経済を大きく左右しそうだ。まだまだ日本経済には「火が付いた」とは言えない状況だ。「バブル」というのは気の早い話だろう。
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