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米国への輸出2割なのに、日本で注目度が最高の理由
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9836
2017年7月3日 塚崎公義 (久留米大学商学部教授) WEDGE Infinity
日本の景気を考える時、海外の景気は極めて重要です。日本の輸出はGDPの13%程度しかありませんが、日本経済は内需が弱いので、輸出が落ち込むと容易に国内景気が落ち込んでしまうのです。実際、リーマン・ショックは記憶にあたらしいですが、これに限らずバブル崩壊後の日本の景気後退の多くは海外景気の後退に起因するものでした。
従って、日本の景気を見ている人々は、海外の景気にも関心を持っています。そこで不思議なのは、中国や欧州の景気に比べて、圧倒的に米国の景気に対する注目度が高いのです。ちなみに、日本の輸出に占める米国のウエイトは20%、中国(プラス香港)のウエイトは23%、EUのウエイトは11%です。なぜなのでしょうか?
■日本の対米輸出は米国景気で大きく増減
米国の景気が悪化して米国の消費者が節約をする時、中古の車を新車に買い換えるのは我慢しますが、故障した自動車の修理は我慢しません。修理工は米国内の米国人で、新車を売っているのは世界中の自動車メーカーです。従って、米国人が倹約をすると、米国人よりも外国人の方が失業しやすかったりします。
米国人の中にも、自動車を買う人が少しはいますが、彼らは「高品質高価格」の日本車ではなく、「低品質低価格」のメキシコ車を買いますから、諸外国の中でも日本製品の輸出は落ち込みます。
■日本の対中輸出等も米国景気の影響が大
米国は、圧倒的に世界最大の輸入国です。米国の景気が悪化すると、世界中の国が対米輸出の減少により打撃を受けます。それにより世界経済が減速したりすれば、日本の対世界輸出が減少してしまいます。
それだけではありません。米国が中国等から輸入している物の中には、日本製の部品や素材が大量に使われています。心臓部の部品や重要な素材は日本から輸入し、それ以外は中国国内で調達して製品を作って米国に輸出する、という中国企業が多いからです。
米国の中国からの洋服の輸入が減ると、日本から中国への洋服製造機の輸出が減ります。これは結構ドラスチックな変化です。10台の洋服製造機が中国で洋服を作っていて、10年に1台ずつ壊れるので日本から輸入しているとします。中国の対米洋服輸出が1割減ると、中国内で必要な洋服製造機が9台になりますから、毎年1台ずつ日本から買っている機械を今年は買わずに済んでしまいます。対日輸入は10割減るのです。
■米国が不況だとドル安円高に
米国が不況になると、FRB(米国の中央銀行)が金融を緩和します。すると、ドル安円高になります。それは、日本人が米国債を買わなくなるからです。
米国債を買うためには円をドルに替える必要があります。そうなると、為替差損を被る(ドル安円高になった時に保有しているドルに値下がり損が出る)リスクがあります。金利差が大きければ、「多少リスクはあっても、儲かりそうだから投資しよう」という投資家が大勢いますが、金利差が小さくなると「リスクを取ってまで米国債に投資したくない」と考える日本人投資家が増えてくるので、ドル買需要が減ってドル安円高になるのです。
ドルは基軸通貨で、世界各国との貿易に使われているので、ドル安円高になると対米輸出のみならず対世界輸出が減ることになります。これは打撃です。
なお、米ドルは世界の資金の貸し借りにも使われていますので、米国がインフレになると金融が引き締められて、借金国には負担となる場合があります。これが借金国の債務危機を招いたりすると、国際金融市場の混乱に伴って為替相場や株価が動く場合がありますので、米国のインフレには注意が必要です。
■米国の株価が日本株にも影響
景気の話とは直接関係ありませんが、日本の株価が米国の株価に大きく影響されることも、米国関連の経済ニュースが多い理由の一つです。株価は美人投票の世界なので、人々が「米国の株価が下がると日本の株価も下がる」と考えている以上、「米国の株価が下がっているから、日本の株価も下がるだろう。今のうちに売っておこう」という注文が増えて、実際に日本の株価も下がるのです。
たとえば、米国には石油関係の巨大企業が数多くあるため、原油価格が下がると、米国の株価が下がります。そうなると、日本の株価も下がります。日本は原油をほぼ全量輸入しているので、原油安が株安になる理由は全くないのですが、美人投票の世界では、原油が下がると日本株も値下がりするのです。
■中国の景気も日本に影響するが、限定的
中国の景気が悪化しても、上記からわかるように、米国の中国からの輸入が減らなければ、日本の対中部品輸出、洋服製造機輸出などは減りません。日本から中国に部品を輸出して、中国で組み立てて日本に輸入している製品も多いため、そうした部品輸出も減りません。
もちろん、中国人が使う日本製品については、中国人が不況で節約すると対日輸入が減りますから、日本にとってマイナスになる事は間違いありませんが、米国の不況と比べれば、影響は遥かに軽微です。
中国が不況になって中国の中央銀行が利下げをしても、それによって人民元の対ドルレートが安くなったとしても、日本の貿易への影響はほとんどありません。これが米国の景気との決定的な違いです。
今ひとつ、中国は大量の資源を輸入していますから、中国が不況になると世界の資源の需給関係が変化して、資源価格が値下がりします。これは、同じく資源を大量に輸入している日本にとっては、景気にプラスに働く要因です。中国の景気悪化は、日本にとってマイナスなことばかりではないのです。
■欧州との貿易関係は希薄
欧州は、経済規模は大きいのですが、日本との貿易はそれほど多くありません。一つには距離が遠いことですし、日米関係と比べて政治的にも歴史的にもそれほど親しいわけではありません。今ひとつは、日本と欧州は、得意分野が似ているため、貿易するインセンティブが小さいのです。たとえば日本とドイツは自動車が得意ですから、お互いに貿易をしなくても良いのです。そうしたことから、欧州の景気は、あまり日本の景気に影響しないので、米国の景気と比べると、遥かに注目度が小さくなっているわけです。
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