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市場が円高を警戒するなか、「ドル円レート」はどう動くか 株価を当てるのと同じくらい難しいが…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52081
2017.06.22 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス
日米の金融政策と為替の動き
リーマンショック直後の2009年頃から、日本の株価指数(日経平均株価やTOPIX)と為替レート(ドル円レート)との相関性は極めて高い。
日銀による積極的なETF購入によって、従来と比較すると、株価指数の水準は現在の為替レート水準との比較ではやや高いところに位置しているようにみえるため、「真の株価水準が見えにくい」という批判もあるが、為替レートと株価の相関は現在も生きており、直近で日経平均株価が2万円を超えたのも、円安がきっかけであった。
ところで、将来の株価を当てるのも将来の為替レートを当てるのも同じくらい難しいが、為替レートの方が、マクロ経済の動向、特に経済政策の動向を反映する度合いが強いと思われるため、トップダウン・アプローチ(マクロ経済動向から将来の価格を予想する)を行う場合には、為替レートの将来予想の方がイメージがわきやすい。
この場合、マクロ経済動向の中でも特に為替レート(ドル円レート)の動きに強い影響を与えるのが、日米の金融政策である。
例えば、2012年終盤から2013年前半にかけての円安は、日本の政権交代とそれによる「リフレーション政策」遂行の気運が高まったためであったが、特に、日銀による「量的質的金融緩和政策」が大幅な円安をもたらしたことは記憶に新しい。
しかも、この「量的質的金融緩和政策」の続く中、短期の政策金利ばかりか、10年物国債利回りといった長期金利までもがゼロパーセント近傍で推移しているため、為替レートの変動に日本の金利が影響を与える余地はかなり小さくなっている。
例えば、よく、メディアでは、「日米2年物国債利回り格差が開いたので今後は円高になる可能性が高い」というようなコメントが出るが、日米の2年物国債がともにゼロパーセント近傍で推移している中、両者の金利差はほとんど「ミクロの世界」であり、その「ミクロ」の金利差をとるために為替レートが時にして2ケタ台の変動をするというのはあまりに滑稽である。
そこで、金利に代わってドル円レートに強い影響を及ぼしてきたのが、お金(日本で言えば「円」)の「量」、特に、日銀が供給する「マネタリーベース」と呼ばれるものである。
米国経済の好調を支えたもの
「お金の量が為替レートに影響を与えるなどおかしい(そもそもこの量が金融政策の指標ということ自体もおかしい)」という見方もあるが、実際には、日銀による「量的質的緩和」でマネタリーベースが急拡大したことが円安をもたらしたと考えるほうがわかりやすい。
仕事上、為替レートの動向を尋ねられることが多い筆者の見方はコンセンサスとは逆方向になることが多いが、それほど外れたという印象はない。もっとも、「当たった外れた」は印象論という側面が強いので、金利差とお金の量の格差のどちらが為替レートを考えるのに適しているかの判断は読者の自由である。
だが、日本の「マネタリーベース」も、最近は、その拡大ペースが鈍化しつつあるし、今後もさらに鈍化するのではないかと言われている。
理由は、既に市場で取引されうる新規発行の国債のほとんどを日銀が購入してしまっており、これ以上、日銀が国債の購入量を増加させることで「マネタリーベース」の供給量を拡大させていくことが困難になりつつあるためだ。
逆に、最近では、日銀が表明している「年間80兆円」ペースでのマネタリーベースの供給ができなくなり、日銀は、「事実上のテーパリング(量的緩和の段階的な規模の縮小)」を余儀なくされるのではないかとも言われている。
日本のマネタリーベースの供給が減少するということは、世の中に新たに供給される「円」の量が減少していくことを意味する。これは、為替市場からみれば、「円」が他国の通貨に比べ、希少になることを意味するため、円高要因となる。
しかも、為替市場は、実際に日本のマネタリーベースの供給量が減る前に、そうなる可能性が高いと市場参加者の多くが予想した段階で、円高になることが多い。
そのように考えると、年初、多くの市場参加者が円安ドル高を予想していたが(だいたい1ドル=125円程度の予想が多かった)、年央にさしかかった現時点で、1ドル=110円前後と、意外と円高水準で推移しているのは、日銀によるマネタリーベース供給が予想よりも少なくなることを市場参加者が懸念し始めているからかもしれない。
ところで、もう1つの円高ドル安要因は、米国FRBによる予想外のマネタリーベース供給増であった。FRBは、現在、「出口政策」を粛々と進めている最中だが、普通に考えれば、利上げと同時にマネタリーベースも減少させていくはずである。実際、昨年は少なくとも前半は、緩やかな利上げを実施しながら、マネタリーベースもピークから10%程度減少させてきた。
だが、昨年終盤に状況は一変した。株式市場は、予想外の「トランプ相場」の実現で活況を呈したが、それと同時に為替市場では、円安ドル高が実現した。この円安ドル高も「トランプ相場」の一環であるかもしれないが、実はその背後で、FRBはドルの供給量を増やしていた。
そして、このFRBによるドル供給の増加は今年に入ってからも継続し、米国のマネタリーベースの供給残高は、昨年初めの水準にまで回復した。
この昨年終盤から今年前半にかけての米国FRBによるマネタリーベースの供給拡大によって、対主要国通貨でみても、大統領選近辺から年末まで続いてきたドル高が止まった。そして、これが、米国の輸出を拡大させ、製造業の景況観の改善を通じて、米国経済は底堅く推移することになった。
以上を踏まえて、今後のドル円レートの動向をマネタリーベースの動向から考えてみたい。
リスクは円高方向にある?
日銀は、「イールドカーブコントロール」という新しい「金利政策」を採用して以来、「量(マネタリーベース)」の拡大には必ずしもこだわらない姿勢を明確にしている。現在の国債購入ペースを考えると、年間のマネタリーベース拡大は、目標の80兆円を下回り、50〜60兆円程度に減額される可能性が高まっている。これは、円高要因であり、年初に予想された1ドル=120年を超える円安の可能性を低下させるだろう。
一方、米国FRBの方も、いよいよマネタリーベースの本格的な縮小に乗り出す公算が強まっている。
FRBは、6月14日のFOMC後のプレスリリースで「Addendum to the Policy Normalization Principles and Plans」というものを発表した。これは、近い将来(具体的な時期については言及していない模様)に、FRBが過去の量的緩和政策で拡大させてきたFRBのバランスシート(もしくはマネタリーベース)をどのようなペースで縮小させていく計画であるかを示したものである。
FRBは、実際にマネタリーベースを減少させていくというプロセスを本格化させる前に、その減少ペースを事前にアナウンスすることによって、市場参加者の混乱を抑える目的があると思われる。
FRBによるマネタリーベースの減少は本来であれば、ドル高円安要因である。だが、これまでのところ、為替レートにそれほど大きな変化はみられていない。これは、実際にマネタリーベースの減額が実施される時期がまだ不確定であるためだろう。その意味では、まだ、FRBによる将来のマネタリーベース縮小は為替レートに織り込まれておらず、今後のFRBの金融政策は、為替レートを大きく動かしえる。
ひるがえってみれば、米国景気は次第にピークアウトの兆候を強めてきている。そのためか、これまた年初は3.5%程度まで上昇することが予想されていた米国の10年物国債利回りも2%台前半の低水準で推移している。さらに、予想インフレ率(ブレークイーブンインフレ率)も上昇の兆しがみえない(むしろ低下気味で推移している)。
今後、仮に米国の経済成長率が2%を下回り、減速を強めていく中、FRBが粛々とマネタリーベースの縮小を進めていくとすると、為替レートに対しては、ドル高、ドル安両方の要因が混在することになるので、「ボラティリティ(変動性)」が高くなっていくだろう。このとき、マネタリーベースの縮小が米国の株価の急落などにつながれば、マーケットは「リスクオフ」モードとなり、一転、円高リスクとなりうる。
マイナス金利政策採用時の顛末を考えると、次の円高局面で、日本の通貨当局が迅速かつ有効な手立てを打つとは考えにくい。そのため、普通に考えれば、リスクは円高方向にあるという結論になってしまう。
数少ない救いは、多くの為替アナリストが、将来の円高リスクに警戒的な発言を行っている点である。
筆者の経験では、実際の為替市場は為替アナリストのコンセンサス(というよりも、不思議なことに、圧倒的大多数の為替アナリストの意見は一致することが多い)とは逆に動くことが多い。そう考えると、円高局面は、来そうでなかなか来ないということになるのだろうが、円安進行シナリオが考えにくいのも現実である。
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