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マイホーム購入は2019年「以前」と「以降」で大差がつく あと2年、待てませんか…?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51972
2017.06.14 山下 和之 現代ビジネス
タイムリミットはあと2年
2019年10月の消費税増税を意識して、増税前にマイホームを取得したほうがいいのではないかと考える人が増えている。
リクルート住まいカンパニーの調査によると、住宅の取得を検討している人のうち、44.6%が「いまが買い時」と考えているが、その理由のトップが「消費税率の引き上げが予定されているから」の21.8%という結果となっている。
昨年の同調査では、超低金利を反映して「お金が借りやすいから」がトップだったが、今回は20.2%で2位にとどまっている。住宅の場合、契約から引渡しまで長い時間がかかることを念頭において、消費税増税前に、早めに動き出したほうがいいと考える人が増えつつあるわけだ。
それもそのはず。買物の金額が大きいだけに、税率の引き上げ幅は2%といっても影響は決して小さくない。マンションは、土地代金分には消費税がかからないため影響はそれほどでもないが、注文住宅だと建築費全額に消費税がかかってくる。3000万円の家を建てるとすれば、8%なら240万円ですむのが、10%になれば300万円で、差し引き60万円の負担増だから、焦りを感じる人がいるのも頷ける。
マンションでも高額物件では建物部分だけで2000万円前後からそれ以上になる物件が多く、その場合には2%の増税は40万円以上の負担増になるのだから、決して無視できない。
税率8%のラストチャンスは……
消費税の10%への増税はこれまでに2度も延期されてきただけに、よほどのことがない限り、次は予定通りに実施される可能性が高いとはいえ、増税は19年10月だからそれまでには2年以上ある。まだまだ先のこと――と思っている人もいるかもしれないが、住宅についてはそうそうノンビリ構えているわけにはいかない。
たとえば、注文住宅を例にとると、当初の相談開始から何度かのやりとり経て設計が決まり、建築請負契約を締結できるまでには数か月から1年程度かかるもの。めでたく着工の運びになっても、完成・引渡しまでにはさらに半年から場合によっては1年近くかかる。いまからスタートしても、実際に建物が完成して入居できるのは19年10月以降で、税率は10%になっていたということもないとはいえない。
建築請負契約についてはこうした点を考慮して、19年3月末までに契約を締結しておけば、引渡しが10月以降になっても税率8%が適用されるという経過措置が実施される。それを考慮しても、19年3月までには契約する必要があるわけで、もう2年を切っていて、さほど時間に余裕があるわけではない。
大規模な新築マンションの場合には、現在販売中の物件でも、引渡しが19年10月以降というケースがみられるようになっている。この場合も、仕様変更などのために建築請負契約を締結すれば、19年3月までの契約については税率8%が適用されることになっている。それまでに決着をつけておこうとするのはまっとうな考え方かもしれない。
4年で2000万円も下がった
しかし、ほんとうに消費税の増税前にマイホームを購入することは合理的なのだろうか。むしろ、増税後に取得するほうが得策という見方もできる。
まず、住宅市場についてはこんな変化が想定されるからだ。
・増税によって買手が減少、売手市場から買手市場になる
・買手が減少すれば、競合相手が減って選択肢が広がる
・買手不在で価格が下落し、値引き交渉が可能になる
実際、89年の消費税創設時、そして97年、2014年の税率引上げ時には、増税前に駆け込み需要が発生し、増税後は反動減に陥った。
新設住宅着工戸数にそれが如実に反映されている。図表1にあるように、89年の消費税導入時は、バブルのピーク時であり、すぐに影響は出なかったが92年度から急激に減少、その後なかなか立ち直れなかった。
97年の5%への増税時には、96年度の年間着工戸数約163万戸に対して、97年度には約134万戸に、98年度には約118万戸まで減少した。2年で3割近くも減ってしまった計算だ。また14年の8%増税時にも前年に比べて1割以上減少し、回復に2年ほどかかっている。
こんなに市場が縮小すれば、当然ながら価格にも影響が出てくる。89年の消費税導入後の首都圏新築マンションの価格の推移を不動産経済研究所の調査からみると、90年のバブルピーク時には6123万円だったのが、91年から下がり始め、94年には4148万円に、4年で2000万円近くも下がった。
また、97年の増税時には、97年の4374万円が翌98年には4158万円に下がり、その後も02年には4003万円まで下落、4000万円割れ寸前まで下がったのだ。
値引き交渉も有利に進められる
14年の8%への増税時には先に触れたように新設住宅着工は大幅にダウンしたものの、おりから都心を中心したミニバブル傾向のなかで、マンション価格が下がることはなかった。これはこれまでの経緯からみれば、かなり特異な現象といわざるを得ない。
しかし、そのときに下がらなかった分、16年に入って高くなり過ぎた価格の下落が始まり、17年に入ってもその傾向が続いている。この状態で消費税の増税といった事態に直面すれば、消費税導入時や5%への増税時などに起こった価格下落ではおさまらないような値下がりが始まる可能性がある。
マイホームの取得においては、価格の動向もさることながら、選択肢が豊富かどうかも重要。いくら価格が手頃になっても、買手が多いとなかなか希望の物件が手に入らない。しかし、増税後には恐らく一時的にしろ、住宅展示場やマンションのモデルルームには客足がバッタリと途絶える。そこにやってきた客は諸手を挙げて歓迎され、物件はより取り見取り、多少の値引き交渉も当然――といった環境が期待できるはずだ。
いちばん得するのは「年収500万円台」
しかも、増税後には「すまい給付金」が増額されることになっている。
図表2にあるように消費税8%時には、給付額は最大30万円で、給付対象となる年収も510万円以下に限られている。それが、10%になると、給付額は最大50万円に増額され、対象となる年収も710万円まで広げられる。特に、影響が大きいのが年収500万円台の人。たとえば、年収520万円だと、税率8%時には給付金の対象にならない、つまり給付額ゼロだが、税率10%時には40万円の給付金がもらえるようになるのだ。
また、両親や祖父母などから多額の資金贈与を期待できる人も、増税後がチャンスになる。通常、年間110万円を超える贈与があった場合、たとえ親子の間とはいえ贈与税の対象になるが、住宅取得資金としての贈与には一定の非課税枠が設けられている。
その非課税枠、現在は図表3にあるように、耐震性や省エネ性などに優れた「質の高い住宅」であれば、1200万円だが、これが19年4月以降の契約で、税率10%になる物件を取得する場合には、最高3000万円まで非課税枠が拡充される。
非課税枠が1200万円の現在、3000万円の贈与を受けた場合の贈与税を計算すると――3000万円から基礎控除の110万円と非課税枠1200万円を引いた1590万円が課税対象になる。税率は45%で、控除額が265万円なので、1590万円×0.45−265万円で450.5万円の贈与税がかかる計算。それが増税後に取得すれば、非課税枠は3000万円になるので、3000万円の贈与を受けても全額非課税になり、税額はゼロになる。
仮に、それに自己資金1000万円を加えて4000万円の注文住宅を建てるとすれば、消費税額は320万円から400万円に、80万円の増額だが、450.5万円の贈与税がゼロになるのだから、税負担は消費税の400万円だけですむ。それに対して、消費税が上がる前にと急いで建てると、消費税は320万円ですむものの、450.5万円の贈与税を支払わなければならず税負担は合計800万円近くに増えてしまう。親などから多額の贈与を期待できるなら、やはり消費税増税まで待ったほうがいいことになる。
あと2年は貯金に励もう
それだけに、これから19年10月の消費税増税に向けてマイホームの取得の準備を進めてはどうだろうか。2年あれば、月5万円でも120万円、頑張って10万円貯蓄すれば240万円になる。それだけ頭金を増やせれば、その分住宅ローンの借入額が減って、新居での生活にもゆとりができる。しかも、頭金が多くなれば、適用される住宅ローンの金利が低くなるメリットがあるのだ。
住宅金融支援機構と民間提携のフラット35は、自己資金が1割以上あれば、返済期間35年の金利は1.09%だが、1割未満だと1.53%になる。図表4にあるように、3000万円のローン35年返済、金利153%で組むと毎月返済額は9万2296円だが、頭金を増やして借入額を2700万円に減らすことができれば、適用金利は1.09%に下がり、毎月返済額は7万7354円に減る。
月々約1万5000円、年間にすれば18万円近い減額だから、何かと物入りな引越し直後の生活にも余裕ができる。民間ローンも同様で、頭金が2割以上あれば最優遇金利が適用されるものの、2割未満だとそれに0.20%上乗せといったケースが少なくない。
「増税前の今が買い時ですよ」という業者のイメージ戦略などは無視して、これから2年間ジックリと準備をすることで、より満足度の高い住まいを手に入れる。それが賢い消費者行動というものだ。
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