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アマゾンとIBM、株主のためにキャッシュを使っているのはどちらか
http://diamond.jp/articles/-/131384
2017.6.10 週刊ダイヤモンド編集部
業種は違えど共に世界的巨大企業のアマゾンとIBM。欧米の論理で言えば、「会社は株主のもの」であるはずだがアマゾンは……。キャッシュフロー(CF)から透ける両社の戦略の違いを紹介する。
今や誰もが知っているインターネット通販大手、米アマゾン。1994年創業のアマゾンは電子書籍サービスなどを展開して成長著しく、2007年12月期と16年12月期の損益計算書(PL)を比較すると、売上高で約7倍(16年12月期は約1360億ドル)と業績を右肩上がりで急拡大させている。
最近では東京都内の一部で生鮮食品の配達も始めるなど、書籍業界はもちろん、小売業界全般で恐れられる存在だ。
意外なのはその純利益率で、実は赤字すれすれかやや赤字の状態が続いている。
考えられる理由は二つある。(1)ネット通販は店舗型とは異なり配送コストが掛かって薄利であること、(2)「地球上で最もお客さまを大事にする企業」を標榜するアマゾンはそもそも短期の利益を追っていない(『財務3表図解分析法』〈國貞克則著〉より)ということだ。
(2)が上図左のようにキャッシュフローにも表れており、過去6年間の営業CFが合計約488億ドルなのだが、そのキャッシュの多くを投資CFに向けていることが分かる。このようなキャッシュの使い方は日本の優良企業の典型的なパターンで、例えばトヨタ自動車がそうだ。
常に最新の設備を導入し続けなければ競争優位性が失われる。そのため営業CFの多くを投資CFに回すキャッシュの使い方が「当たり前なのではないか」と思われるかもしれない。
が、前ページ図右のように、例えば米IBMは投資CFより、財務CFに力を入れていることが分かる。6年間の合計で見ると、営業CFの約4割を投資CFへ、それ以上の約6割を財務CFに回している。
この財務CFの内訳を見ると、大半は配当金の支払いと自己株式の取得のためだ。これこそが「会社は株主のもの。経営者は株主の方を向いて経営するもの」という、「欧米流のキャッシュの使い方の典型」(國貞氏)なのだ。
一方アマゾンは米国本社の企業だが、短期的な株主へのリターンを重視していないように見える。
アマゾンは自らのDNAとして、「より迅速に、またより改善され、かつコスト効率の優れた新しいイノベーションを導入するよう努めています」とうたっている。
最近では米国内で、書籍の実店舗「アマゾン・ブックス」を拡大中。ネット通販の顧客データを生かして、売れ筋や人気商品の品ぞろえにこだわった店舗だ。バーチャルからリアルワールドに乗り込んできたわけだ。
アマゾンは長期戦略を持った恐ろしい会社なのだ。
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