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カルロス・ゴーン氏退任後の日産は「大躍進間違いナシ」 ゴーン・ウォッチャーが解説
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51935
2017.06.09 国沢 光宏 現代ビジネス
ゴーン氏が日産社長を退任。こんな驚きのニュースが流れたのが2017年2月23日。強烈なカリスマ社長が去った日産はこれからどうなるのか。ゴーンウォッチャーを自認する自動車評論家、国沢光宏氏が、ゴーン氏の功績と日産のこれからを分析する。
取材・構成/平原悟
カルロス・ゴーンの「正体」
ゴーンさんが日産の社長になったのが2000年。今から17年前になる。当時のゴーンさんと言えば「コストカッター」と恐れられ、ドライなイメージしかなかった。実際、不採算部門をバッサバッサと処分した。村山工場を手始めに座間工場、荻窪工場も売却。売れるものは残らず売ったと言っていいだろう。
当時の日産は莫大な有利子負債を抱える一方で、多くの資産も保有していたのだが、日産自身ではそれらを手放すことは難しい状態だった。
ゴーンさんとしては資産を売却すると共に有利子負債を減らすことで、一日も早く健全な企業にしたかったのだ。結果的に驚くほど短期間で負債の削減に成功したわけで、まさにコストカッターの面目躍如と言うことか。
でも、ゴーンさんがやったことはそれだけではない。コストカットと同時にユーザーが楽しめるクルマ作りにも着手する。その代表が「新型フェアレディーZ」の開発であり、「GT-R」に対しても、糸目を付けずに開発予算を付けた。モータースポーツもやめなかったばかりか、徐々に拡大する。
カルロス・ゴーン氏 Photo by GettyImages
うまでもなく自動車はイヤイヤ買うものじゃない。クルマを買うときは誰もが嬉しいし、選ぶ基準は、なるべく楽しくていいクルマである。そのことをゴーンさんは誰よりもよく知っていたのだ。
そこは、なんでもかんでも削った三菱自動車の益子修社長とは根本的に違う。三菱の場合、極端に言えば、クルマそのものまでが無駄と考えていた節がある。数が出ないスポーツモデルをやめ、モータースポーツからも撤退した。結果、なんのおもしろみもない会社に成り果てた。
当然、売れ行きが落ちる。慌てて燃費など実用性能で勝負しようと考えたが、それも一朝一夕でできるものじゃない。最終的には不正を働き、ドツボにはまってしまった。クルマを愛さない人が経営するとこうなる、という見本である。
あまりにも守りすぎた
話を日産に戻そう。
ゴーンさんの登場で息を吹き返した日産だが、2000年代の終盤には再び停滞期を迎える。リーマンショック以降の国内市場の責任者が、縮小均衡の人だったからだ。自動車作りに10割バッターはあり得ない。空振りもあれば三振もある。
野球と同じで3割打てば合格、4割なら歴史に名前が残るのが自動車業界なのだが、当時の国内経営陣は、空振りは許さない、まして三振など言語道断という考えだった。
当然、現場はどんどん萎縮する。球が来てもバットを振らなくなってしまった。振らなければヒットは出ないが、空振りもないからいいでしょう、というわけだ。
国内市場に投入する車種を絞り、開発コストはどんどん削られる。モデルチェンジと言っても既存のクルマにちょっとお化粧直ししたものばかり。
月の販売台数を200台に限定販売したスカイラインはその典型だ。200台という数字はこの業界では異様に少ない。
200台しか売らないため多額の資金は投入できないから、ほとんど米国仕様のまま国内に投入する。当然、人気は出ないが、元々200台しか作らないから怪我も最小限で済む。「あぁよかったね」と考えるのが、当時の国内トップ連中だったのである。こんなことを繰り返していればクルマがどんどん売れなくなくなるのは誰が考えても明らかだ。
怒らせてしまった
ゴーンさんがこうした異変に気づいたのが2015年。それまでは国内は日本人に任せていいと考えていたようだが、国内の業績を見て唖然とし、再び自ら陣頭指揮を執ることになった。
問題を徹底的に洗い出し、解決策をその分野の専門とともに見いだしていった。
ちょうどその頃、私はゴーンさんにインタビューしたことがあるが、同席したもう一人のジャーナリストが気に触る質問をしてしまったため、激怒してしまった。
と言っても感情をあらわにするような怒り方ではない。なぜあなたはそう考えるのか、と議論たたみかけてくる。おそらく、社内でも同じ感じだったのだろう。要するに縮こまっていく怒り方ではなく、話が広がっていく怒り方と言えばいいだろうか。
こうした激論を積み重ねたことで昨年末から日産に活気が出てきた。新しいメカニズムのハイブリッドを搭載した「ノート」や、日産が「プロパイロット」と呼ぶ自動運転機能を搭載した「セレナ」はその象徴だろう。
月間販売台数で「ノート」が1位を獲得。なんと2017年1月には1位「ノート」2位「セレナ」と上位を独占してしまう。ワンツーフィニッシュはなんと32年以上ぶりの快挙だ。
日産「ノート」と「セレナ」 Photo by GettyImages
念のために言っておくと、プロパイロットはあくまで簡易型自動運転である。矢沢永吉を起用したCMを見て世界初だと思った人もいるかもしれないが、既にベンツやボルボで実用化されている。
広告もよく見ると「国産ミニバンではじめて」と書いてある。「ノート」のハイブリッドも、三菱「アウトランダーPHV」やホンダ「アコード」にも同じ仕組みが使われている。あくまで「あのクラスで初めて」だ。決して嘘はついていないし、これは立派なイメージ戦略の勝利。褒めるべきだろう。
逆に言えば、こうしたイメージ戦略だけで企業は大きく変われるわけで、それこそがゴーンさんの経営者としてのセンスと言っていいだろう。
欲しいクルマがない
実は、これらの最近の日産のヒット商品にはある共通点がある。「ノート」も「セレナ」も国内専売車なのだ。「セレナ」で言えば、ミニバンなのに全長4700mm 横幅1700mm未満で、5ナンバー枠に収まっている。
また、ノートはこのクラスではかなりの高額だが、その分付加価値のある仕様にしている。ここが消費者に受けている理由だろう。
確かに世界市場を相手にした方が当たれば大きい。世界で通用して、日本でも売れるクルマを作れればベストだが、それは容易ではない。だとすれば、日本という大きな市場があるのだから、そこで確実に売れるクルマを作るべきだ。ゴーンさんはそう考えたのだろう。
自動車に限らず日本のメーカー経営者はもっとここを突き詰めて考えてもいいのではないだろうか。
日本仕様を増やすのが難しければ、日本仕様をベースにしながら世界で売れるクルマを作ることを考えてもいい。日本向けの使い勝手の良さを喜んでくれる国は世界にはけっこうあるはずだ。
日本で自動車が売れないのは若者が「買わなくなった」からというよりも、「欲しいクルマが少なくなった」からかもしれない。
実はアメリカで売っている日産車と国内の日産車はほとんどかぶっていない。アメリカはアメリカ用、日本は日本用と、作り分けをしている。部品の共通化でコストを下げるところは下げながら、お金をかける部分には惜しまない。このバランスがいい。それこそゴーンさんの戦略であり、力量と言っていいだろう。
三菱のクルマが、いい
さて、最後にこれからの日産だが、ゴーンさんが引退したと思われがちだが、ぜんぜんそうじゃない。形式的には一歩引いたように見えるが、社長から大社長になっただけだ。ますますパワーを増して日産・ルノーグループの舵取りをするだろう。
生涯かけて使い切れないほどの財を持つお金持ちなのだが、まだまだ仕事への情熱もメラメラと燃えている。
ゴーンさんはだめな会社を再生させることをライフワークだと思っているような節がある。その意味で、事実上傘下にした三菱自動車が面白くて仕方ないのではないか。
三菱に注力するためにも、日産の社長という肩書きが重荷になった。それが今回の人事の理由だと思う。
既に経営陣の三分の一程度は日産から送り込まれたから、これからはフルに立て直し作戦が始まるだろう。4月の後半にゴーンさんは三菱自動車タイ工場視察している。ゴーンさんが三菱のロゴマーク、スリーダイヤの帽子を被った姿は、なんとも感慨深いものがある。
日産のカルロス・ゴーン氏と三菱自動車の益子修氏 Photo by GettyImages
おそらく2年もすると三菱自動車のイメージは今とずいぶん違っていると思う。三菱というと死に体と思われがちだがイメージが、悪いのは国内だけで、海外ではまったく印象が違う。
パリ・ダカールやWRCといったモータースポーツイベントで活躍していたことで、特に東南アジアや中東ではタフなクルマメーカーというブランドイメージが定着している。
実際、悪路での使用に耐える車作りには一日の長があり、日本ではあまり人気がないが、「アウトランダーPHV」などすごくいいクルマだ。日産が経営に参加することで、ちゃんとした会社になったということが世間に伝われば、こうしたクルマも売れるようになるはず。
日産同様、三菱にもファンがいる。こんな状況でも三菱のクルマを買う人がゼロではないのがその証拠だが、だからこそ彼らが具体的に行動できる雰囲気を作ることが必要になる。
そして三菱の復活は、日産グループの未来を握っていると言ってもいい。日産が一番苦手としているのは新興国市場なのだが、そこを三菱がカバーすることができるからだ。
ゴーンさんは日産、ルノー、三菱をそれぞれ単体でどうするかではなく、グループ全体としてどうアライアンスを組み、シナジー効果を高め、結果としてグループ全体の販売台数を増やすか。それを考えているはずだ。
三菱を立て直すことが出来れば2000万台グループに入ることが出来る。2000年時点で日産とルノー合わせてもたいしたことはなかったのが、今では三菱も合わせればトヨタ、VWに迫り、GMは抜いている。そう考えてもゴーンさんの業績がいかにすごいかがわかる。
ただ、ゴーンさんも現在62才。いつまでも第一線にいるわけではない。三菱を再生させれば満足して完全に身を引くかもしれない。その後の日産と三菱自動車を誰が舵取りをするのかはわからないけれど、相当難しいことは間違いない。
本当の意味での日産グループにとっての試練は、ゴーンさんが完全引退した時に訪れるのだろう。
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