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上昌広氏と成毛眞氏の対談は、4月下旬、都内で行われた。医療のほか、歴史・経済まで、話題は多岐にわたった(撮影/加藤夏子)
病院が東京から破綻していく理由 上昌広VS成毛眞対談〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170606-00000051-sasahi-soci
AERA 2017年6月12日号
少子高齢化が進み、非成長社会に突入した日本。いつまでも「先進国」のつもりでいるが、いたるところに綻びが生じている。医療破綻をテーマに、日本の未来を上昌広氏と成毛眞氏が話し合った。
* * *
成毛:『病院は東京から破綻する』とは、衝撃的なタイトルですね。東京は日本中から人が集まっていて、医療面も安心感があるじゃないですか。ぼくの住んでいる地域は病院だらけで、ひとつの通りにコンビニより病院が多いくらいですよ。それが、東京から破綻していく、という。
上:そうなんです。誰もが、日本は先進国で、その中心の東京なら安心と思っている。ところが、医療の現状は全く違います。
診療報酬の話をしますと、たとえば、風邪の患者を一人診ると、4千〜5千円くらいです。診療時間は3分くらいでしょうか。ところが、心臓麻痺の患者に30分、心臓マッサージを施しても2500円です。
成毛:30分も心臓マッサージをして、そんなに安いんですか。風邪の患者を診ていたほうが、よほどお金がいいわけですね。
上:ええ、不均衡ですよね。診療報酬は全国均一に国が定めているんです。額面に差もあるので、儲かる診療、儲からない診療が出てきます。さらに、公定価格ということは、ビジネスモデルが工場と同様です。土地や人件費、固定費が高い都心部が不利になります。つまり、東京がいちばん不利なんです。
社会保障費抑制のため、政府は診療報酬を引き下げましたが、固定費の高い病院にとっては痛手でした。固定費が幅広くかかる総合病院は特にシビアです。都内で財務状況がよいところは、がん研有明病院や榊原記念病院などの、専門病院がほとんどです。
●東京脱出する医師たち
成毛:著書内で言及されていた、「東京から医師が出ていく」ということにも驚きました。東京に日本中の医師が集まってきていると思っていましたから。
上:自己投資を考える優秀な若い医師は、すでに地方の人材に投資してくれる病院で働いています。大学病院は医師数が多く、飽和しているんです。思うように臨床経験も積めない。しかも、人件費を切り詰めているので、給与も決して高くありません。
一方、地方の意欲ある病院は給与面も恵まれている。臨床経験も多く積むことができる。患者数を医師数で割ると、東京のある大学病院は、仙台厚生病院の10分の1以下でした。
平日は主に地方で働き、週末だけ東京で生活する若い医師も増えています。
成毛:医師不足や医師自体の高齢化も指摘されていましたね。患者側で病院や医師を賢く選んでいこう、もしもの時に人脈のある主治医を持っておこうという提案はもっともだと思います。
ただ、現役世代には、病院に足繁く通う時間はないでしょう。ぼく自身、家族が心配するので2年に1回、人間ドックを受けている程度です。仕事柄、弁護士はたくさん知っているんですが(笑)、残念ながら臨床医の知り合いはそういません。医師はとにかく忙しいでしょう。
●超高齢者が都市で急増
上:そのとおりですね。ただし、やはり健康リスクが上がるのは、高齢者ですから。
けれども、病院に通わないと医療が受けられない、という時代は終わると思いますよ。固定費のかかる大きな病院を建てても、もはやいいことは何ひとつないからです。今後は遠隔診療がメインになっていき、スマホひとつで診察を受けられる時代も近づいていると思います。医師にとっても患者にとっても、よいことだと思います。
成毛:それでも、日本の医療の未来は暗いんですか?
上:この5年で、75歳以上の人口が急激に増えているんです。樋口朝霞さんという若い研究者が、2040年までの高齢者人口の地域格差を調べています。それによると、75歳以上人口は25年までに急速に都市部で増加すると予想されます。愛知県西尾市は、99%の増加です。
そこで、認知症の問題がますます深刻になる。現在ですら、家族も医療も到底ケアしきれる状況にありません。
成毛:シビアな問題ですね。日本国内ではとても人手が足りないわけですから、やはり、カギになるのは、移民政策ですよね。
上:出生率が2を切っているのに、50年まで人口が減る先進国がほとんどないのは、移民を受け入れているからです。「ネイチャー」や「サイエンス」などの科学誌は、「正規移民と不法移民の犯罪率の違い」「移民研究者のキャリアパス」など、移民に関する特集を毎週組んでいますよ。本来なら、日本も移民政策に積極的に打って出るべきです。
成毛:しかし、「こんな技能を持った人に来てほしい」などと、日本が移民の条件を細かく選択できる側だった時代はもう終わっているでしょう。移民にとって、日本は魅力的な環境でしょうか。ぼくが移民の立場で選ぶとしたら、間違いなく中国を選びます。
日本人は中国を下に見る傾向がありますが、中国は上流階層が全体の10%の1億3千万人。つまり日本の人口と同じくらいの人数が、日本の数倍はリッチです。
●東欧で学ぶ日本人
上:おっしゃる通りです。フィリピンの国立大学卒の看護師の月給は、本国では約6万円で、都内なら初任給で30万円弱。医療関係者の注目度は高く、超高齢社会での目玉になるはずでした。しかし、昨年のドゥテルテ大統領の訪中以来、中国に行く看護師が増えているようです。
成毛:言葉の壁もありますね。日本語は英語圏の人からしたらなじみにくいでしょう。
上:コストが安いところで養成された専門家が先進国に流れるという動きは、実は医学教育でも起こっています。現在、東欧で日本の医学生が400人も学んでいます。学費が安く、しかも、EU共通免許が取れる。専門家となる人材は、日本からも流出しようとしています。
成毛:すでに、日本を出た人たちも多いでしょう。自宅の周りは、画廊や画家、芸術家が多く住んでいますが、その子息は8割がた、海外で学んでいます。
上:私の周囲も同様です。日本でトップレベルといわれる学校と、海外のそれとでは、天地の開きがあると聞いています。
成毛:流出していく人を止める手立てはない。国として、沈没しかけていますよね。少子高齢化の影響が大きすぎて、グローバルには全くついていけなくなっていく。圧倒的な差が開きつつあることに気づいていないのは、日本だけでしょう。
先日、引っ越しで家具を買い替えたんですが、家電製品は国産を選びませんでした。製品の概念が進化していく中、日本企業はそうした開発力を失ったと考えるからです。電気自動車ですら、日本はあと3年で中国に追い抜かれると見ています。
●情報量が格差を生む
上:世界との格差が広がりつつありますね。
成毛:その格差は、貧富の差ではなく、情報量と知識量の差だと思います。IT社会において、さらに加速していくでしょう。
1割の特権階級に9割が戦いを挑む、という図式は過去のもので、情報を得ている少数が多数を圧倒している。日本だけではなく、アメリカやヨーロッパ、中国、シンガポール、全世界で起こっていることと思います。
上:医師にも同様の図式が出来上がりつつあります。医療では、この10年でマーケットが拡大するのは、アジアと言われています。「ランセット」などの医学誌は、「グローバルヘルス」「プラネタリーヘルス」を打ち出して、フィリピンやベトナム、インドネシアを狙っています。論文もそれらの国の医師を筆頭にする。効率的に売り込みたいからです。
けれども、情報に国境はなくなりつつある。流れさえ読んでいれば、一気に世界に打って出ることはできる。考えようによってはいい時代だと思います。
(構成/編集部・熊澤志保)
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