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カルロス・ゴーン氏(ロイター/アフロ)
日産、経営支配狙う仏政府との対立先鋭化…ゴーンの超高額報酬が標的に
http://biz-journal.jp/2017/06/post_19352.html
2017.06.07 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
フランス大領領に投資銀行出身で39歳のエマニュエル・マクロン氏が就任したことに、ルノー・日産自動車グループが緊張感を高めている。マクロン大統領はルノー・日産のトップであるカルロス・ゴーン氏と少なからず因縁があるためだ。まずはルノーの株主総会における、ゴーン氏の高額報酬に対するフランス政府の動向が注目されそうだ。
「(マクロン氏が大統領に当選して)良かったと思っている。一昨年、フロランジュ法をめぐって議論したが(ルノー・日産の)アライアンスの狙いなどを結果的に理解してもらった」
日産自動車の西川廣人社長は5月11日、決算発表の記者会見で、マクロン大統領がルノー・日産への経営に関与を強めるとの見方を一蹴してみせた。
ルノー・日産とマクロン氏の対立が表面化したのは2015年。フランス政府は14年に株式を2年以上保有する株主の議決権を2倍にできるフロランジュ法を制定した。長期保有株主の議決権を倍増させないためには、株主総会で3分の2以上の株主の賛成が必要だ。当事、フランス政府はルノーに15%出資する大株主。ルノー経営陣は、議決権の倍増で政府が経営に関与することを避けるため、フロランジュ法を適用しないことを株主総会で提案。
これに対してフランス政府は、ルノーへの出資比率を約20%に引き上げて対抗、結果的に経営側の議案は否決されて、ルノーの長期株式保有者の議決権は倍増された。これを主導してきたのが当時、経済・産業・デジタル相だったマクロン氏だ。
マクロン氏は、フランス政府のルノーの議決権を約28%に高めた上で、今度はゴーン氏に業績好調だった日産とルノーの経営統合を迫った。出資関係ではルノーが上に立つものの、業績では日産がルノーを圧倒しており、フランス政府としても雇用政策などで「小粒なルノーより、グローバル展開している日産をうまく活用したいと考えた」(自動車ジャーナリスト)のは明白だ。
ルノーは日産に45%出資しており、日産もルノーに15%出資して持ち合っている。しかし、日産が保有するルノー株式にはフランスの法律によって議決権がない。フランス政府がルノーを通して日産の経営に関与してくれば、これを防ぐ手立てはないに等しい。
マクロン氏の強引なやり方に警戒感を強めたゴーン氏は、日産がルノーの株式を追加取得して出資比率を25%以上にすると、ルノーの保有する日産の株式の議決権がなくなるという日本の会社法を使うことで、フランス政府が求めるルノーと日産の経営統合を阻止することを検討。お互いが議決権を持たない自動車メーカーグループとなった場合、大きな混乱に陥ることを懸念したフランス政府は矛を収めることを決断した。15年12月にルノー、日産と交渉してフランス政府は日産の経営に関与しないことを約束、関与した場合は日産がルノー株式を買い増す権利を持つことを確認した。
■対決第2弾
ルノーと日産のフランス政府の対決第2弾は、そのすぐあとに訪れた。約725万ユーロとされたゴーン氏の報酬について、フランス政府は「高額過ぎる」と反対。16年4月の株主総会ではフランス政府をはじめ、他の株主も賛同して反対が54%と過半数を超えた。採決に拘束力がないものの、結局ゴーン氏の報酬は業績連動部分の20%減額を迫られた。
ゴーン氏はその後、フランス政府に対して、保有するルノー株式を売却するよう求めており、フランス政府がルノーから手を引けばルノー・日産グループは大きく発展するとの主張を繰り返してきた。ただ、マクロン大統領をトップに頂くフランス政府の誕生に、ルノー・日産グループは緊張感を高めている。
まず注目されるのが、今年のルノー株主総会における、ゴーン氏の報酬問題をめぐるフランス政府の対応だ。ゴーン氏は傘下に入れた三菱自動車工業会長に就任するとともに、役員報酬総額の上限枠を従来の3倍となる30億円に引き上げている。
「ルノーではフランス政府が介入して高額な報酬に批判が強いので、三菱自から得るつもりでは」(元日産役員)
マクロン大統領が、ルノーの経営への関与を強めた場合、ルノー・日産に三菱自も加えてグループガバナンス問題が再燃する可能性もあり、今後の動向が注目される。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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