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年金の「繰り上げ、繰り下げ」判断 寿命○○歳の人は「繰り上げ」が有利?(写真=PIXTA)
年金の「繰り上げ、繰り下げ」判断 寿命○○歳の人は「繰り上げ」が有利?
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170605-00000022-zuuonline-bus_all
ZUU online 6/5(月) 20:30配信
国民年金からの老齢基礎年金や、厚生年金からの老齢厚生年金の受給開始年齢は現行制度では原則65歳である。しかし受け取り方法には他にも選択肢があり、受取年額を減らしてでも早く受け取る「繰り上げ受給」と、受給を送らせてでも受取年額を増やす「繰り下げ受給」がある。
どの受け取り方法を選ぶべきなのかは、60歳以降の働き方、将来への価値観等により答えは様々だ。選択時の参考にしていただけるよう、それぞれ受け取り方法の特徴や選択時の考え方について解説していこう。
■年金の「繰り上げ受給」とは?
「繰り上げ受給」を請求すると、老齢年金が65歳を待たず、60歳以降のタイミングで前倒しして受取ることができる。
[老齢基礎年金]
老齢基礎年金の受け取り開始年齢は原則65歳からですが、25年間の受給資格期間(2017年8月からは「10年」に変更)を満たしていることを要件に60歳から年金を受け取ることができる。
ただし早く受け取る分の年金額は少なくなり、受け取り開始を1か月早めるごとに本来の年金額から0.5%減額されていく。1年では0.5%の12ヶ月分で計算されるため6%、2年では12%の減額となる。最長繰り上げ期間は5年間となるため最大の減額率は0.5%×12か月×5年=30%となる。65歳からもらえる年間の年金額の0.7倍になるということだ。
[老齢厚生年金]
老齢厚生年金も繰り上げ返済は可能であるが、老齢厚生年金の繰り上げができる場合には、老齢基礎年金も同時に繰り上げなければならない。どちらか一方だけ、または期間をずらしての繰り上げ請求はできない。
老齢基礎年金と同様、繰り上げ期間1か月ごとの減額率は0.5%と同じだが、生年月日による「特別支給の老齢厚生年金」受給権の有無の違いにより減額期間が異なる。
[特別支給の老齢厚生年金]
特別支給の老齢厚生年金とは、1985年の法改正で公的年金の受給開始年齢が原則60歳から65歳へと引き上げられた際、一時的な対応として設けられたもの。本来65歳以降受け取ることができる老齢厚生年金とは別に、60歳から65歳になるまでの間に「特別」に受け取ることができる。「特別支給の老齢厚生年金」には、「定額部分(1階部分)」と「報酬比例部分(2階部分)」の2つがあり、生年月日と性別で支給開始年齢が変わり、以下の要件を満たす必要がある。
<特別支給の老齢厚生年金の要件>(参考:日本年金機構)
(1)男性の場合、昭和36年4月1日以前生まれ、女性の場合、昭和41年4月1日以前生まれ
(2)老齢基礎年金の受給資格期間(原則として25年)があること
(3)厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
(4)60歳以上であること
<特別支給の老齢厚生年金の支給対象者で、繰り上げ受給ができる人>
男性:1953年(昭和28年)4月2日~1961年(昭和36年)4月1日生まれ
女性:1958年(昭和33年)4月2日~1966年(昭和41年)4月1日生まれ
例えば1957年(昭和32年)8月生まれの場合、本来の特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢は63歳のため、60歳0か月で繰り上げをした場合の減額率は、老齢厚生年金は0.5%×36か月=18%、老齢基礎年金は0.5%×60か月=30%となる。
<特別支給の老齢厚生年金が支給されない人>
・1961年4月2日以降生まれの男性
・1966年4月2日以降生まれの女性
男性は1961年4月2日以降、女性は1966年4月2日以降生まれの場合、経過措置はなくなり全員、本来の受給開始年齢が65歳となる。よって、老齢基礎年金と老齢厚生年金の減額率による差はない。
繰り上げ返済は年金額の減額の他、その減額率は一生変わらないこと、障害年金が受けられなくなる等のデメリットがある。繰り上げ受給選択後は、取り消しができないことも十分理解して検討いただきたい。
■繰り下げ受給とは?
老齢基礎年金、老齢厚生年金とも、65歳から受け取ることのできる老齢年金を、希望すれば66歳以降に受給開始を遅らせることを「繰り下げ受給」という。なお、経過措置である60歳から64歳の特別支給の老齢厚生年金は繰り下げすることはできない。
先送りした分「繰り上げ受給」とは逆に、支給開始を1か月遅らせるごとに0.7%が本来の年金額に加算されます。1年では8.4%、2年では16.8%の増額となる。最長繰り下げ期間は5年間となり最大増額率は0.7%×12か月×5年=42%となる。つまり65歳からもらえる年間の年金額の1.42倍になるということだ。
70歳以降はさらに先延ばしにしたとしても増加率は42%で固定されてしまうので注意したい。
繰り下げ受給の場合、老齢基礎年金、老齢厚生年金それぞれに繰り下げ時期を選択でき、例えば、どちらか一方は65歳から、もう一方は繰り下げるという選択も可能である。どちらか一方を「繰り下げ」の場合には、65歳時に届く「年金請求書」の繰り下げ希望欄の該当箇所にチェックを入れる必要がある。両方繰り下げる場合は、繰り下げ時まで手続きの必要はない。
■寿命を77歳と仮定するなら「繰り上げ」が有利
いったい、どの受け取り方が得なのでしょうか。
繰り上げ受給では、60歳0か月で繰り上げ支給を請求した場合、76歳8か月までの受け取りは、65歳からの受け取りよりも受取年金総額は多くなるが、それ以上長生きすると65歳からの受け取りの総額が上回る。
繰り下げ受給では、70歳0か月で繰り下げ支給を申請した場合、81歳11か月を超えると65歳から受給よりも受取年金額が多くなる。参考までに、厚生労働省が5年ごとに公表している「完全生命表」によれば、2015年の日本人の平均寿命は、男性80.75歳、女性が86.99歳となっている。
金額面の損得だけで考えるならば、77歳くらいが寿命と仮定すると「繰り上げ」が有利、82歳以上長生きすると仮定するならば「繰り下げ」が有利といったところだろう。しかし、当然、人は何歳まで生きられるということは誰にも分からない。人生そう上手く割り切って考えられないところが難しいところだ。では判断が難しい中、年金の受取方法についてはどう考えていけばいいのか。
それは、今後の働き方や、健康面、現役時代の資産の積上げの目途の立て方がポイントになる。あくまでも一例ではあるが、健康に不安がある場合には、障害年金の保険機能を優先させる観点から65歳までは「繰り上げ」は様子見してみるのも良いかもしれない。また、60歳以降も健康なうちは働き続けたいと希望する場合、年金に手を付けない間は「繰り下げ」メリットを生かし増やすという選択肢もあるだろう。
以上、現行65歳受け取りを原則とする公的年金の受け取りについて話を進めたが、今後、65歳が先延ばしとなることも考えられる。どのような環境にも対応できるためには、年金だけではなく、収入や生活設計も考慮した上で、自身に適した受け取り方を探っていくといいだろう。
寺野 裕子
てらの・ファイナンシャルプランニングオフィス代表
CFPR・1級FP技能士、投資助言業
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料等は一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。FP Cafe登録パートナー
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