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記者会見で決算発表再延期を陳謝する東芝の綱川智社長(ロイター/アフロ)
東芝、なくなる可能性…ガバナンス先進企業・東芝、まったくガバナンス効かず
http://biz-journal.jp/2017/06/post_19332.html
2017.06.05 文=真壁昭夫/法政大学大学院教授 Business Journal
東芝の経営再建が迷走している。2017年3月期決算も「監査意見なし」という異例の状況で発表された。監査意見なしとは、監査人がその企業の決算内容が適切と考えるか否かに関する見解を示すことができない状況を示す。これは経営の失敗にほかならない。
現在、金融市場の関係者が、東芝の経営再建の実現性を客観的に評価することは困難だ。状況が改善しないと、東芝の上場廃止は一段と現実味を帯びてくるだろう。そうした展開を避けるためには、速やかな事業の売却だけでなく、これまでにはなかった組織の整備など、一から企業を立ち上げるほどの取り組みが必要だ。それができないと、最悪の場合、東芝が経営を立て直し、“東芝ブランド”の下でビジネスを行うことは難しくなるかもしれない。
数年ほど前まで、東芝は日本を代表する優良・名門企業とみなされていた。契約内容に関する認識の甘さを原因として、その企業の経営不安が日に日に高まっている。言い換えれば、経営判断を誤ってしまうと取り返しがつかなくなるほど、今日の経済環境は目まぐるしく変化している。現在、徐々に世界経済の先行き不透明感も高まるとみられるなか、各企業は東芝の教訓を生かして今後の成長戦略を策定していく必要がある。
■契約への認識の甘さが招いた東芝の経営危機
東芝が5400億円もの債務超過に陥り、経営危機に直面している主な原因は、2006年の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)の買収にある。この買収に関しては6,210億円(1ドル=115円換算)の買収額が高すぎるなど、さまざまな指摘があった。
もっとも重要なことは、東芝がWHの買収パートナーとして選んだ企業に、購入した株式を一定の価格で売る権利を付与したことだ。WHの買収時、東芝は米国エンジニアリング企業であるショーグループをパートナーに選び、ショーグループはWHの20%の株式を取得した。同時に、東芝は株式の買い取り請求権(オプション)をショーに与えたのである。
当時、東芝の経営陣にはショーグループが権利(オプション)を行使することはないとの思い込みがあった。また、WHの77%の株式を確保したため、万が一、権利が行使されても大きな問題にはならないとの見方もあっただろう。
しかし、東日本大震災を受けてショーグループは原子力発電事業からの撤退を決めた。契約に則り、同社はオプション(権利)を行使し、保有するWH株を1,250億円で東芝に買い取らせた。傘下のWHがストーンアンドウェブスター社(S&W)を買収した際も、東芝は潜在的なリスクを十分に確認しなかった。この結果、経営陣にとって“想定外”の損失が相次ぎ、債務超過が発生するほどに財務内容が悪化した。
海外企業の買収にあたって、同社がより詳細にリスクを洗い出し、その潜在的なインパクトを客観的に評価できていれば、今日の状況は防ぐことができたかもしれない。少なくとも影響を食い止めることは可能だっただろう。それができていなかったことが、同社の経営危機を招いた。半導体事業の売却に関して、工場の共同運営パートナーである米ウエスタンデジタル社との意見が対立したことを見ても、東芝の契約管理のあり方には不安な部分が多い。
■なぜ契約内容を精査できなかったか
契約に基づいて、保有する権利を行使するのは当然だ。しかし東芝は、当たり前の内容を正確に理解し、その影響に備えることができなかった。最大の原因は、一部の権力者の行動に待ったをかけることができなかったことだ。これは、ガバナンス(企業統治)の以前の問題だ。
長らく日本では新卒一括採用、年功序列の雇用慣行が続いてきた。実力はさることながら、人事評価上、それ以外の要素が重要なことも多い。そのひとつが“社内政治”だ。
たとえば、新規のプロジェクトを進める際など、部門間の調整に手間取ることは多い。そのとき、影響力がある役員などとの関係が良好だと、スムーズに物事が進みやすい。この人間関係は昇進などにも有利に働くことがある。
日本では、プロパー社員のなかから経営者が選ばれることが多い。プロの経営者を登用するケースも増えてはいるが、いまだに伝統的なスタイルを重視する企業が多い。どうしても無意識のうちに、影響力のある人の意見に従う行動様式は選択されやすいといえる。その結果、「中興の祖である、あの方の決定だから、従うしかない」との心理が強くなってしまいやすい。そこに、客観的なリスクの精査が必要という認識を介在させるのは、かなり難しいだろう。
東芝は企業統治に積極的に取り組んできたことで有名だった。その企業が一部経営者の過度なリスクテイクを止められなかったことは、多くの企業が生かすべき教訓だ。組織を変えるためには、その行動を無意識のうちに支え、時に正当化してきた考え方を変革しなければならない。
これまでにも、かなりの時間と労力をかけてそうした議論が進められてきた。しかし、東芝の例を見る限り、長らく指摘されてきたことが実務に浸透しているとは言い難い。専門職の登用や実力ベースでの人事評価など、企業には当たり前といわれてきた取り組みを粛々と進める姿勢が求められる。
■企業に求められるゴーイング・コンサーンの意識
東芝は、上場廃止を回避するために自己資本を増強しなければならない。そのためには、事業売却、人員削減などは不可避だ。リストラによって一時的に資金は確保できるだろう。問題は、事業の切り売りが続くと、東芝の競争力そのものが失われることだ。それは、東芝という企業がなくなってしまうことと言い換えられる。
企業は永続的な事業体=ゴーイング・コンサーンだ。途切れることなく、事業を運営して付加価値を創造することが求められている。一方、東芝の経営陣は収益を過度に追い求めすぎたあまり、海外買収で想定以上のリスクを負担するなど、近視眼的に行動してしまった。
経営者として、成長を追い求めることは正しい。問題は、適切な時間軸とリスク感覚の下で成長戦略を議論できているか否かだ。特に、海外でのビジネスには日本の“常識”が通用しないことも多い。企業経営者は、成長戦略に対する耳の痛い諫言、指摘を虚心坦懐に受け入れ、経営基盤の増強に向けた議論を進めることができているか、一度、そのスタンスを確認すべきかもしれない。
今年度内に半導体事業の売却交渉がまとまるかは定かではなく、東芝の上場廃止が回避できるかは不透明だ。原子力発電事業からの追加的な損失発生のリスクも排除し切れず、会計監査人との意見対立が続く恐れもある。
東芝の経営再建が困難との見方が広がれば、日本の株式市場にはそれなりのショックが広がるだろう。その結果、株式市場の混乱が家計や企業の心理を圧迫する展開も想定される。加えて、米国の政治動向や北朝鮮問題など、世界経済の先行きに関する不透明感も徐々に増している。少子高齢化によって国内市場の先細りが見込まれるなか、いかにして経営の持続性を高めるか、多くの企業は今後の経営戦略を見直すべき時を迎えている。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
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