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アベノミクス、未曽有の異常な「停滞状況」突入…一斉に投資意欲喪失
http://biz-journal.jp/2017/06/post_19294.html
2017.06.01 文=島野清志/評論家 Business Journal
「買っていいのか、売り時なのか、さっぱりわからない」
投資歴数十年の東海圏在住の個人投資家のぼやきは、多くの市場参加者に共通するところだろう。今年に入ってからの東京株式市場は、いっそう膠着感を強めている。平均株価は2万円を目前にしており、指標だけを見れば堅調に映るが、日々の変動率は小さく、値幅を取るのは容易ではない。
このような時、ひと昔前ならば、低位株、材料株が乱舞するような局面がよくみられたものだが、その気配はない。市場のIT化と監視の強化によって、「仕手株」「仕手筋」が死語になりかけているからだろう。知人のデイトレーダーは「スリリングな展開になるまでは休養」という。なるほど、格言通りに「休むも相場」で処するのが正解なのかもしれない。
ただ、平均株価が2万円の大台を目前にしていることに焦点を当ててみると、今後の相場を占う上で、興味深い事実が浮かび上がってくる。
市場では平均株価が1000円ごとに、その水準を超えていくことを台替わりと呼ぶ。1万円は大台替わりになるわけだ。ベテランの証券関係者ならば、数字の0をドタと呼び、吉数として好んだ記憶があるのではないか。個別銘柄でも3桁から4桁へ、4桁から5桁へと、台が替わることで、株価の水準そのものが上方修正されやすいためであろう。
これを利用して相場の地合いや、今後の方向性を予測する手法がある。チャートやPER(株価収益率)のようにポピュラーなものではないが、1990年代初頭のバブル相場の崩落を予想して名を馳せた吉見俊彦氏(当時山一證券)が活用していたものだ。
■国内最強の買い本尊
バブルの崩壊以降、現在までに日経平均株価が2万円の大台を回復したことは3回ある。
最初はバブル以降の最高値を記録した1995年から翌年にかけて、2度目はITバブルのピークだった2000年の春、そしてアベノミクス相場の第一波である15年央だ。それぞれ1万8000円台に乗せた日を起点に1万9000円、そして2万円と大台替わりまでに要した日数を調べてみると、立会日ベースで56日、78日、46日だった。過去3回は1万8000円台に乗せてから、概ね3カ月以内に大台越えを果たしたことになる。
これに対して、アベノミクス第二波といえる今回の動きは、いささか異質だ。1万8000〜9000円台に留まっている期間は5月17日時点で119日にもなり、すでに過去3回を大きく上回っている。特に大台替わり直前の1万9000円台の滞留日数は突出している。
上昇相場と呼ぶよりも、爪先上がりの、さらに言えば退屈な往来相場が延々と続いているわけで、先に紹介した練達の市場参加者の困惑や、投資意欲の喪失もうなずけるところだ。
本来振幅の大きさが持ち味である株式市場の不自然な状況を助長している要因としては、日本銀行による株式の大量購入が挙げられるだろう。昨年7月末に日銀が決定した、ETF(株価指数連動型上場投資信託)の3兆円から6兆円への購入増額は、市場に備わっている価格調整機能に枷をかけていることは間違いあるまい。すべてを日銀の操縦とするのは無理があるにしても、昨今まま見られる、懸念材料が出て朝安で始まった相場が深押しすることなく、引けてみれば大過なし、というパターンは、国内最強の買い本尊が控えている影響が大きいはずだ。
大台に乗せた後も、懸念すべき事柄は多い。2万円を目前にした、かつてない長い足踏みは、大台越えによる心理的な達成感から利益確定の大量の売り物を生み出しやすく、執拗に相場の頭を押さえつける公算はある。
そして過去二十余年、東京市場にとって平均株価の大台替わりが大きな壁になっている点も気になるところだ。バブルの残り香が漂っていた1996年でさえ2万2000円台、その後の2回は次の台替わりを果たすことなく、天井を打っている。
(文=島野清志/評論家)
【平均株価2万円回復までの台替わり日数】
・バブル後の戻り高値(平均株価最高値2万2666円・1996年6月)1万8000円台41日、1万9000円台15日
・ITバブル(同2万833円・2000年4月)1万8000円台64日、1万9000円台14日
・アベノミクス第1波(同2万868円・2015年6月)1万8000円台18日、1万9000円台28日
・アベノミクス第2波(同)1万8000円台41日、1万9000円台78日(ただし2017年5月17日時点)
※各数値は終値ベース。
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