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「退職金貧乏」まっしぐらな人の2つの大きな勘違い
http://diamond.jp/articles/-/129822
2017.5.30 大江英樹:経済コラムニスト ダイヤモンド・オンライン
まとまったお金は
実に危険な代物
最近は、「老後破綻」とか「老後貧乏」という言葉がメディアでも頻繁に取り上げられるようになった。
多くの人が、老後に対して漠然とした不安を抱いていることがその原因だろう。現役世代の人が不安に感じるのは無理ないが、実際に定年退職した人たちを多く見てきた私からすると、実はそれほど心配することはない。
老後の保障が必ずしも十分ではない自営業であればともかく、企業に勤めるサラリーマンであれば、それほど贅沢な暮らしさえしなければ老後破綻など、そう簡単にはしないものだ。
ただし、これを間違えると「老後破綻一直線」という大きな勘違いがある。それは退職金の使い方である。
私自身の経験からいって「退職金」というのは実に危険な代物なのだ。なにしろ普通のサラリーマンにとっては、恐らく生涯でただ一度受け取ることができるまとまったお金が「退職金」だからだ。心がウキウキしないわけがない。そんな高揚感から退職金の使い方を間違ってしまいがちなことがよくあるのだ。
さらにこの勘違いは、「気が付かないままでいる」と「極めて大きなリスクをはらんでいる」の大きく二つに分かれる。それはいったいどういう勘違いなのだろうか?
長年のご褒美でなく
本質的には給料の後払い
退職金について、多くの人は「長年働いてくれた社員に対して会社がくれるご褒美」のようなものだと感じている。
これは無理のない話。日本独自の制度とも言える退職金の歴史をさかのぼってみると、そのルーツは江戸時代における「のれん分け」にたどり着く。長年働いてくれた奉公人が独立する際に屋号を使用することを許し、いくばくかの金銭的援助を与え、場合によっては顧客を融通することもあったという。言わば、退職金の本来の性格は「功労報酬」の意味合いが強いものだったのだ。
ところが時を経て、現代に至る中で退職金の位置づけというものは大きく変化した。
現代において、企業年金や退職金という制度は、本質的には「給料の後払い」という性格を持っている。本来ならば給料に上乗せして支払ってしまってもいい(実際に退職金前払いという制度の会社もある)。だが、多くの人間にとっては自分自身で老後に備えてお金を準備しておくというのは、強い意志がなければ難しいこと。そのため、企業が社員に代わって積み立ててくれているものなのだ。
このように、企業が社員の老後の生活資金として、本来支払うべき給料の一部を積み立てているものが「退職給付制度」だ。この積み立てのことを「退職給付債務」と言うが、この言葉がまさしく退職金というものの本質を表している。間違いなく企業にとっては将来支払わなければならない債務、すなわち給料の後払いなのである。
そうした退職金を、長年働いたご褒美だと思ってパッと使ってしまうと大変なことになる。
時々見かけるのが「夫婦で豪華客船世界一周クルーズに出かける」というパターン。「長年、仕事で頑張ってきた自分に対するご褒美と、妻に対する感謝の気持ち」で、「一生に一度だから」と奮発してしまうのだろうが、実を言うとこれは大変危険な行為だ。
こういう豪華クルーズに使うお金は、何十万円という単位ではなく何百万円というレベル。仮に退職金が2000万円あったとして、その内の300万円を豪華クルーズに使ってしまうと、老後の生活資金である退職金がマイナス15%になってしまう。これでは、老後の生活に不安を抱えながらのスタートということになりかねない。
もちろん、豪勢な旅行に出かけることが悪いと言っているわけではない。だが、大金を手にしたときの「思いつき」ではやらない方がいい。退職を機に、豪華な旅行に出かけたいのであれば、現役時代からある程度計画的にお金を積み立てておけばいいのだ。
お金を使う際の大原則は、住宅ローンなどの例外を除くと、「貯めてから使う」ということ。大きな買い物をするときも同じだ。退職金というまとまったお金を手にして財布の紐が緩んでしまい、無用な買い物をしてしまわないように注意することが大切である。
「退職金は余裕資金」で
投資デビューの恐ろしさ
それでも、ついついたくさんの消費をしてしまうくらいであれば、まだマシな方だ。もっと恐ろしいのが「退職金投資デビュー」だ。
これは下手をすると、退職金の多くを一度に失ってしまいかねず、失敗すると「老後破綻へ一直線」という極めて危険な行為なのである。誰でも分かりそうなものなのだが、実際に退職金を投資につぎ込んでしまう人は意外に多い。
ではなぜ、退職金で投資を始めようという気になってしまうのか。
行動経済学の観点から見ると、この行動には「ヒューリスティック」という認知バイアスがあるようだ。これは、論理的にじっくり考えれば誰でも分かることでも、直感的に考えて経験則で解釈することから判断を間違えてしまうことをいう。
退職金に関するヒューリスティックは、「退職金は余裕資金」だと思ってしまうことだ。前述したように退職金は給料の後払いなのだから、老後の生活をまかなうための大切な資金であり、決して余裕資金というわけではない。
退職時に、何億円も金融資産を持っているという人なら余裕資金と言えるだろうが、そんな人はほとんどいないだろう。冷静に考えてみれば、これからの生活資金なのに、その多くを株式投資につぎ込むことが危険な行為であることは、すぐ分かるはずだ。
ところが、退職したばかりの人は、それまで毎月決まった日に給料が振り込まれ、そのお金で生活をしていたわけである。そこへもってきて、まとまったお金が振り込まれたわけだから、それを「余裕資金」だと勘違いしてしまうのも無理はない。そこで、「このお金はすぐに使わない余裕資金だから、株式投資で大きく増やそう」と考えてしまいがちになるわけだ。
しかしながら、給料は退職の翌月からもう振り込まれないのだから、大切に管理し、計画的に使っていかなければならないはずだ。
初心者であるほど
投資を甘く考えすぎ
加えて、それまでに投資の経験がまったくない人ほど、投資を甘く考えているところがある。
「株で儲けたお金なんか不労所得だ」と思っている人は意外に多い。そういう人はしっかりと勉強も準備もせずに投資を始めてしまうので、短期的にはうまくいくことがあったとしても、必ずどこかで大きな失敗をすることになる。
特に、アベノミクス効果によって株式市場が右肩上がりのトレンドを続けてしまうと、安易に「儲かる」と勘違いしてしまう人が多く出ても不思議ではない。しかし、暴落する日はどこかでやってくる。だからこそ、株式投資を甘く考えてはいけないし、一度に多くの資金をつぎ込むこともやるべきではない。
もちろん、退職者が投資すべきではないというつもりはない。むしろ将来やって来るかもしれないインフレに備えて、自分の持つ資産の“購買力”をある程度維持するためには、株式や投資信託といった資産を一定割合持つことは有益だと言える。
筆者自身も退職者の一人だが、グローバルに分散投資できる投資信託を毎月少しずつ定額での購入を続けている。問題は、十分な理解や経験のないままに一度の多額の金額を投資することの危険性にあるのだ。
多くのサラリーマンにとって、生涯唯一とも言うべき多額の資金を手にするのが退職金。しかしながら、それは「ご褒美」でもなければ「余裕資金」でもない。この点を勘違いしてしまうと、あなたは「退職金貧乏」になってしまうかもしれない。
(経済コラムニスト 大江英樹)
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