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注文住宅高騰…基本性能向上を「理由」に過去5年で2割上昇、安い中小メーカーで十分?
http://biz-journal.jp/2017/05/post_19235.html
2017.05.28 文=山下和之/住宅ジャーナリスト Business Journal
大手住宅メーカーの注文住宅は5年前に比べて2割近く高くなった今、本当に自分たちに必要な住まいを考え直してみよう。
大手住宅メーカーの注文住宅の1棟単価が上がり続けています。3000万円台後半から4000万円に達しつつありますが、その背景にあるのが住宅の基本性能の引上げによる中堅・中小との差別化戦略。そうした価格引上げのために付加された性能が本当に必要なのかどうか、自分たちのライフスタイルやライフステージ、将来設計などに応じてチェックしておいたほうがよさそうです。
■中堅以下は下がっているのに大手だけ突出
このところ、大手住宅メーカーの1棟単価が急上昇しています。決算資料から上位企業の例をみると、積水ハウスは2011年には3311万円だったのが、16年は3729万円。5年間で12.6%の上昇です。三井ホームは、12年上期には3460万円だったのが、16年上期は3960万円ですから、こちらは4年間で14.5%のアップです。また、大和ハウス工業は13年度には3110万円だったものが、15年度には3370万円ですから、2年間で8.4%の上昇です。
いずれも年率数%のアップです。消費者物価、賃金などの伸びが停滞しているなか、大手住宅メーカーの注文住宅の上昇率だけが突出した観があります。
それに対しては、「建築費が上がっているのだから仕方ない」という声が聞こえてきそうです。でも、本当にそうでしょうか。
図表1にあるように、国土交通省の「建設工事費デフレーター」によると、実はこの5年間ほどの建設工事費上昇率はせいぜい3、4%程度にすぎません。3年ほどに限定すれば、ほぼ横ばいといっていい状態です。確かに、一時期は10%ほど上がった時期もありましたが、最近では鎮静化しています。この程度なら、企業努力によって吸収可能な範囲といってもいいでしょう。
実際、中堅住宅メーカーの1棟単価はほとんど上がっていません。むしろ、2、3年前に比べて価格引下げを実現しているメーカーもあります。代表的な例としてタマホームの例をやはり決算資料からみると、16年5月期の平均が1784万円に対して、17年5月期は1745万円。2.2%とはいえ、1棟単価は下がっているのです。
■大手の1棟単価はいよいよ4000万円台に
しかも、大手住宅メーカーの単価引上げ傾向、今後はさらに拍車がかかりそうな情勢なのです。
17年に入ってから大手住宅メーカーでは、フラッグシップとしての高額商品の発表が相次いでいます。主なところをピックアップしてみましょう。
・大和ハウス――『プレミアムグランウッド』として、脱プレハブ住宅の木造フルオーダー商品を発表。坪単価100万円からで、1棟単価5000万円以上を目指す。
・積水ハウス――鉄骨高級住宅『イズ・シリーズ』に新構法「ダイナミックフレーム・システム」を投入、最高級ブランド『イズ・ステージ』で坪単価80万円以上の販売に注力。
・ミサワホーム――木質パネルのモノコック構造の『センチュリープリモア』を坪単価100万円前後で販促。
・パナホーム――制震鉄骨の『カサートプレミアム』の新商品を投入、坪単価98万円から。
先にみたように、大手の1棟単価はおおむね3000万円台の後半ですが、こうした商品の投入により17年度には4000万円台に乗るのは間違いなさそうな情勢です。
■高断熱・高気密、耐震性などが上昇要因
大手各社は、こうした単価の上昇の要因として、住宅の基本性能の向上を挙げています。特に、16年4月の熊本地震では、2000年以降に新耐震基準で建てられた住宅の全壊事例も複数みられたことから、各社とも耐震性の強化に一段と力を入れています。
その象徴的な例が、三井ホームの「震度7に60回耐えた家」というキャッチコピーの広告。実物大の住まいで60回の震度7の揺れを与えても、ほとんど損傷することなく、継続して住み続けられる状態であることが証明されています。それを繰り返し、全国紙の一面を使って宣伝しています。
他の各社も独自の制震装置の開発などによって、大幅に地震の揺れを抑制し、より安全・安心であることを売り物にしています。その安心料として、多少高くなるのは仕方がないということなのでしょうか。
もうひとつの要素が、地球環境問題に対応した住まいの高断熱・高気密化です。全館空調で、冬場でも常にすべての部屋を一定以上に保ち、省エネとともに、ヒートショックやぜん息、花粉症などのアレルギーを抑制する住まいになります。
たとえば、平らな屋根が多く、大容量の太陽光発電設備を設置しやすいセキスイハイム(積水化学工業)で家を建てた人に対する調査によると、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を建てた場合、年間の光熱費の収支が17.6万円のプラスになったそうです。古い住宅に住んでいるときには、年間20万円以上の光熱費を負担していたとすれば、それがなくなって反対に17.6万円のプラスですから、実質的に年間40万円近く収入が増えたといってもいいかもしれません。
■本当に自分たちにとって必要な性能なのか
これだけ住宅の性能が向上しているのだから、住宅価格が高くなるのは仕方がないと考える人も少なくないようです。図表2にあるように、多くの人が多少コストアップになっても、断熱性能の高い住まいに住みたいと考えていますし、そのコストアップの範囲も5%、10%程度なら仕方がない、許容範囲という人が少なくありません。図表3にある通りです。これは、耐震性についても同じような傾向がみられます。生命・財産を守るためには、多少予算が高くつくのも仕方がないということでしょう。
しかし、生命・財産や地球環境などを人質に取られて、値上げを認めざるを得なくなっている――。そんな気にもなってしまいます。
たしかに、震度7に60回耐えられれば安心でしょうが、現実には2回か3回耐えられれば十分かもしれません。高断熱・高気密だって年間光熱費が17.6万円ものプラスにならなくても、プラスマイナスゼロ程度でもいいという人もいるでしょう。
中堅以下のメーカーでも最近はがんばって、大手に近い基本性能の高い住宅を提供できるようになりつつあります。最先端レベルでなくても、一定の安全・安心、快適さを確保できれば問題ないというのなら、1棟単価4000万円の大手でなくても、2000万円以下で可能な中堅でもいいでしょう。
■手の家に住むというプライドでどこまで?
そう考えると、性能アップによる価格の引上げに、どれくらいのユーザーがついてくるのか、ついていけるのか不安を禁じ得ません。
大手には、先に触れたような住宅の基本性能への安心感のほか、大手が建てた家に住むという満足感、大手だからこその経営やメンテナンスなどへの信頼感などがあります。多少高くても、「〇〇が建てた住宅」と人に誇ることができ、またそれなりの安心感や充足感があるのは間違いありません。
でもそのプライドや満足感だけで、2000万円、3000万円の価格差を無視していいものでしょうか。そんな見栄やプライドを捨てれば、2000万円の住まいでも十分という人もけっこう多いはずです。いや、むしろ現在のような先行き不透明感の強い時期であれば、そう考える人が多くなって当然です。
そこで気になるのが、首都圏の新築マンション市場の動向です。10年度には平均4600万円台だったのが、15年度には5617万円まで上がりました。16年度には5541万円に下がったとはいえ、東京都や神奈川県では年収の10倍以上出さないと新築マンションが買えないのは変わりません。
このため、契約率は好不調のボーダーラインといわれる70%を切って68.5%に落ち込んでいます。都心の便利な場所で、最高品質のマンションなのだから、高くても当然というのが分譲サイドの論理でしょうが、それについていけるユーザーは限られています。今後は、よほど思い切った価格の引下げや税制などの支援先がない限り、急速な回復は難しいでしょう。
大手の注文住宅もこれと同じような道を歩んでいないでしょうか。ユーザーの多くがついていけなくなるのではないでしょうか。今後の一戸建て住宅市場動向が気になるところです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)
●山下和之
住宅ジャーナリスト。各種新聞・雑誌、ポータルサイトなどの取材・原稿制作のほか、単行本執筆、各種セミナー講師、メディア出演など多方面で活動。『山下和之のよい家選び』も好評。主な著書に『よくわかる不動産業界』(日本実業出版社)、『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)など。
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