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結局、管理組合は高い買い物になる…(AERA 2017年5月29日号より)
被害2億円も!修繕積立金トラブルの実際 悪質コンサルに巻き上げられる〈AERA〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170522-00000044-sasahi-soci
AERA 2017年5月29日号
住民でつくる管理組合は、専門知識を持たない。大規模修繕の際は、設計事務所などコンサルタントに頼る。ところが悪質コンサルが跋扈している。
* * *
マンション改修の悪質コンサルタントは、深く、静かに侵入する。住民が気づいたときには、コツコツ貯めた修繕積立金がごっそり巻き上げられている。
京都市右京区の団地型分譲マンションは、3年前に実施した大規模修繕をめぐって激しく揺れている。当時の管理組合理事長は、引っ越してきたばかりだった。管理会社の紹介で大手設計事務所をコンサルに選び、大規模修繕への手続きを進めた。マンションの戸数は400、築後40年で3度目の大規模修繕だった。理事長はコンサルから「3億円程度で可能」と聞き、施工会社4社を集めて修繕工事の入札を行った。
そして、住民環視の集会で、公正を期して同時に入札書を開き、理事長は動転する。最低の工事費でさえ「5億2千万円」だったのだ。理事長は、話が違う、とコンサルに書簡を出すが、3億円と確約した覚えはない、とはね返された。着工間近、時間がないと押し切られる。修繕積立金だけでは足りず、管理組合は何と1億5千万円の借金をして大規模修繕を行った。
この間、多数の住民は「専門家に任せておけばいい」と看過した。昨年、管理組合の理事が一新され、40代の女性新理事がNPO法人京滋マンション管理対策協議会(京滋管対協)に相談を寄せ、コンサルの悪質さが再確認された。女性理事が言う。
「事前に他のマンションと情報交換をしていたら、2億円もドブに捨てはしなかった。悔しい。理事長のなり手がなくて、事情にうとい人に任せた結果です。管理組合が目覚めないと何も変わりません」。新理事10人のうち9人が女性になった。
工事費は、どう流れたのか。京滋管対協の谷垣千秋代表幹事が推測する。
「その設計事務所は京都の一等地に会社を構えていますが、過去にトラブルを起こしています。設計や監理(チェック)のコンサル料を安くして管理組合に近づき、施工会社に高い工事費で請け負わせ、リベートを取る。結局、管理組合には高い買い物になるのです。あの設計事務所の仕事はしないと宣言した業者もいます」
昨夏、管理組合と施工会社は共同で大規模修繕後の建物点検をした。すると、あちこちで不具合が見つかる。とくに屋上の防水がずさんで、施工者はすべてやり直した。費用は業者持ちだ。これでコンサルが監理をしたといえるのか。
目覚めた管理組合は再調査を進め、コンサルの設計事務所、日常管理を委ねる管理会社と、責任を問う交渉を重ねている。
●改修分野になだれ込む
いま、マンションの改修分野でコンサルを務める設計事務所は「野放し」状態だ。本来なら修繕工事の適正な仕様書を作り、それに基づいて管理組合が施工者を選ぶ支援をしなくてはならない。工事中は現場で検査などを通して施工者を指導し、竣工図書類を確認する。
まっとうなコンサルもいるが、改修に携わる設計事務所の職能団体はなく、業務の質はバラバラ、倫理規定もない。
そもそもマンション改修は、新築しか関心のない建設業界のニッチ産業だった。1980年代に外壁の大規模修繕が始まったころは管理組合が施工業者を決めていた。バブル崩壊後、新築の着工が激減し、1級建築士がコンサルとして改修分野になだれ込んだ。
●管理組合の理事と結託
問題はコンサルだけではない。首都圏でも「場所代」と称して管理会社が大規模修繕に関わる業者の上前をはねているという。一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS)の中野谷昌司常務理事が施工業者の心情を代弁する。
「リベートを払わなかったら、今後、うちの管理物件で仕事させないと言われたら、業者は泣く泣く払います。ひと口に管理会社といっても、さまざま。会社ぐるみ、支店単位、あるいはフロントマンや技術系社員が個人で要求するケースもあります」
リベート問題でやっかいなのは、コンサルが管理組合の理事と結託した場合だ。密室でことは進み、修繕積立金が吸い取られる。リベートはコンサル経由で理事にも……と疑念が生じる。
京都市左京区の90戸・築後40年のマンションが、このケースに当てはまる。もともと自治意識が高く管理会社を置かず、住民が「自主管理」を続けてきた。
ところが、3年前に1級建築士がコンサルに選ばれて事態は悪化する。営々と積み立てた修繕資金が、必要性の乏しい塗装工事で食いつぶされた。地震に備えて耐震補強に使うはずの費用が消し飛んだ。
不審に思った住民のAさんが誰の紹介でコンサルが入ったのかと理事長にただすと「京滋管対協です」。Aさんが京滋管対協に確認をとると「そんな人は紹介していません」と返答された。じつは、ある理事の親族がこの1級建築士と仕事上の関係があり、引き入れたのだった。Aさんが言う。
「嘘はいけない。考えたくないけど裏があるのでは、と。うちは新耐震基準を満たしていないので耐震補強をしないと資産価値も下がる。ことの重大さにやっと理事会も気づきました」
●国土交通省が動く
悪質コンサルのリベート問題は根が深い。改修業界の競争の激しさとマンション住民の関心の薄さとのギャップが、根底に横たわる。リベートが住民に損失を与えるのは明らかだが、業界のグレーゾーン、ときには「共存共栄の必要悪」と言われて長年、放置されてきた。
流れが変わったのは昨年11月、一般社団法人マンションリフォーム技術協会が「不適切コンサルタント問題への提言」を会員誌に掲載してからだ。この提言は、悪質コンサルが通常の半額から3分の1の委託料で請け負っても「工事費の3%のバックマージンがあれば十分おつりが来る」と記す。このままでは「マンション改修業界全体の信用が失われる」と警鐘を鳴らした。
提言の後、国土交通省は前例がないほどすばやく動いた。今年の1月27日、関係団体へ「設計コンサルタントを活用した大規模修繕工事の発注」に関する通達を出す。国交省は悪質コンサルの事例を明記し、管理組合に公的な相談窓口(公益財団法人マンション管理センターなど)を活用するよう呼びかけた。
関係諸団体もMKSに事務局を置き、横断的な協議会を発足させ、4月25日に第1回の会合を開いた。MKSの中野谷常務理事は、こう述べる。
「大規模修繕に関する業務と報酬の適正な基準が必要でしょう。基準を示せば、管理組合の方々も発注しやすくなる。改修分野の設計事務所には団体を設立して襟を正していただきたい」
現状でリベートの発生を防ぐ手立てについて、マンション問題に詳しい松田弘弁護士は、法的にこう指摘する。
「コンサルは管理組合の側に立って、誠実に委託契約の内容を履行する義務を負っている。それなのに、管理組合に内緒で施工会社を決めてリベートを取れば、民法上の委託契約の債務不履行に当たる。管理組合は損害賠償を請求できます」
コンサルのなかには、業者のリベートに「保証料」や「営業委託料」の名目で堂々と領収書を出しているところもある。
「どんな領収書を出そうが、管理組合と結んだ契約で認めていなければ債務不履行です」
●情報の透明性を保つ
大規模修繕を控えた管理組合がリベートを排除する策はないか。松田弁護士が私見を語る。
「契約書で『リベートは取らない』と約定すべき。リベートを取ったら、その2倍の違約金を払うなど特約条項を入れればいい。まじめなコンサルは痛くもかゆくもない。怒るコンサルはやましいからでしょう」
リベートを根本から断つには、管理組合が情報の透明性を保ったうえで施工業者に直接、発注すればいい。「自分の財産は自分で守る」原点回帰である。
大阪府枚方市の「労住まきのハイツ」(380戸)は、築後41年が過ぎた。現在、3度目の大規模修繕を、1戸当たり70万円の低コストで行っている。管理組合が工事仕様書の作成をリードし、コンサルを入れず、施工会社に発注しているからだ。修繕委員の尾崎孝光さんは言う。
「2回目の大規模修繕の際、コンサルがゼロから素人の私らにも教えてくれた。メーカーや資材の選定、現場対応など徹底的に勉強しました。そのときの仕様書がベースにある。もちろん、プラスアルファの工事も必要。だから施工会社には現場代理人(監督)の他に1級建築士のアドバイザーも派遣してもらっています。決してうぬぼれているわけではありません。信頼できるプロと二人三脚でやっています」
尾崎さんは「ここを終のすみかにしたいから」と言い添えた。
ニッチ産業で出発したマンション改修も、大規模修繕の市場規模が6千億円に達した。この10年で1.5倍の伸びである。市場はさらに広がる見通しだ。悪質コンサルの跋扈を防ぐことが、マンションの明日を決める。(ノンフィクション作家・山岡淳一郎)
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