http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/710.html
Tweet |
「日本の電機全滅」はなぜ起きたか 本当の要因 これは、避けては通れない道だった
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51791
2017.05.20 大西 康之 ジャーナリスト 現代ビジネス
東芝倒産の危機をはじめ、日本の白物家電業界が絶滅の危機に追い込まれている。かつて世界市場を席巻した日本の電気産業は、なぜここまで凋落してしまったのか? 根本的な原因を探った時、浮かび上がるのが二つの超巨大企業の存在だった…。
記者として長年電気業界を取材し続けてきた大西康之氏が、その要因を著書『東東芝解体 電気メーカーが消える日』で明かした。
凋落の原因はなにか?
名門東芝が経営破綻の危機に瀕している。
粉飾決算(東芝自身は「不適切な会計」と呼んでいる)が発覚したのが2015年の春。そこから、あれよという間に白物家電や半導体メモリー事業を売却するという、事実上の解体に追い込まれた。メディカル事業はキヤノンが、白物家電は中国の美的集団(マイディア)が買収。半導体メモリーの買い手はまだ決まっていないが外資になる見通しだ。
それでも原発事業で発生した損失を埋めきれる保証はない。米原発子会社のウェスチングハウス(WH)は米連邦破産法第11章(チャプターイレブン)の適用を申請して、事実上、倒産したが、それでも東芝が2006年以降に続けた無謀な原発関連投資のリスクは遮断しきれておらず、このままでは東芝本体が法的整理(事実上の倒産)に追い込まれる可能性が高い。
東芝より一足早く経営危機を迎えたのがシャープだ。液晶テレビ「アクオス」の大ヒットで世界一の「液晶帝国」となった同社は、液晶パネル工場への過剰投資が仇となり、リーマン・ショックを境に一気に坂道を転げ落ちた。2016年夏には台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った。
もう少し前には半導体、液晶パネルで身の丈を超えた投資をした三洋電機が経営危機に陥り、白物家電事業を中国の海爾集団(ハイアール)に売却。本体はパナソニックの傘下に入った。
かつて電機産業は自動車と並ぶ日本の中核産業だった。国内で生産されるラジオ、テレビ、ビデオレコーダーや半導体は世界市場を席巻し、輸出立国の礎となった。しかしリーマン・ショックを境に二つの産業は明暗をくっきり分けた。
自動車はさらなるリストラと海外展開を加速。トヨタ自動車は一時、米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて販売台数で世界一に躍り出た。マツダ、スバル(旧富士重工業)といった中堅メーカーも元気だ。
ところが電機は海外市場で韓国サムスン電子や中国メーカーに押され、スマートフォンやパソコンといったデジタル機器でも白物家電でも半導体でも、さっぱり稼げなくなってしまった。
原因はどこにあるのか。個々の企業に個別の判断ミスがあったのは事実だが、ここまで連敗が続く背景には構造的な問題があるはずだ。その点を徹底して分析したのが拙著『東芝解体 電機メーカーが消える日』(講談社現代新書)である。
連合国 vs 日本軍と同じ構図
東芝、日立製作所といった日本の電機大手は「総合電機」と呼ばれる業態を採る。原子炉、ミサイルからヘアドライヤーまで、電気に関わるありとあらゆる製品を手がけるコングロマリット経営である。一つの会社の中で様々な事業を抱えるため、業績が見通しにくく、株価が上がらない状況は「コングロマリット・ディスカウント」とも呼ばれた。
しかしインターネットの普及を境にコングロマリットが維持できなくなった。デジタル技術の革新が進み、テレビ、ビデオレコーダー、ステレオ、デジカメ、パソコン等、日本メーカーが得意としてきたデジタル家電の機能はポケットにすっぽり収まるスマホに集約された。
しかも利益の源泉はデバイス(ハードウエア)ではなく、プラットフォーム(ソフトウエア)に替わり、アップル、グーグル、フェイスブックといったプラットフォーム企業が主役になった。
だが日本からはそうしたプラットフォーム企業が登場せず、総合電機がアップル、グーグル、フェイスブックに対峙した。空母と爆撃機とレーダーを駆使した連合国に、古色蒼然の大艦巨砲で立ち向かおうとした日本軍と全く同じ構図である。
日本の構造転換を遅らせた要因は何か。
それを考えた時、筆者は一つの答えに行き当たった。東京電力とNTTである。戦後の復興期から、東電と電電公社の設備投資は国家予算に匹敵し、その恩恵に浴して電機産業が育った。
つまり日本の電機メーカーは東電とNTTの下請けであり、国民が支払う電気・電話料金で成り立つ東電・NTTとその下請けである総合電機が構成する経済は、資本主義の皮を被った社会主義だったのだ。
いま我々が目の当たりにする「電機全滅」は、冷戦崩壊から30年遅れてやってきた社会主義の崩壊なのだ。痛みは伴うが、日本が真っ当な資本主義国になるためには避けては通れない道である。
読書人の雑誌「本」2017年6月号より
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民121掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。