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ビールにガソリン…政府主導の「値上げ強制」にイオンが反旗! 官民「物価戦争」のゆくえ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51747
2017.05.18 加谷 珪一 現代ビジネス
コンビニやスーパーで値下げの動きが相次いでいる。
イオンの岡田元也社長は「脱デフレは大いなるイリュージョン」と政府の脱デフレ政策を痛烈に批判しているが、一方で政府の期待通り、値上がりする商品もある。ガソリン価格はここ1年上昇が続いているほか、ビールの店頭価格も軒並み上がっている。
消費者にとっては、物価がどのように動いているのか分からず混乱するばかりだが、注意深く観察すると、一連の価格変動にはひとつの図式が透けて見える。
それは国策による値上げと、それに対抗する民間の値下げである。
アベノミクスはスタートから5年目を迎えているが、脱デフレをめぐる官と民の争いは最終段階を迎えている。
コンビニが値下げしたワケ
イオンは、傘下のスーパー400店舗において、4月から最大で254品目の値下げに踏み切った。
値下げ幅は平均すると10%程度になる。特にPB(プライベート・ブランド)の値下げ幅は大きく、例えば「トップバリュ天然微炭酸の水(485ml)」は138円(税抜き)から98円に、「トップバリュベストプライスキャノーラ油(1kg)」は258円から198円になった。
NB(ナショナル・ブランド:メーカーのブランドのこと)の商品についてもPBほどではないが、思い切った価格が設定されている。
コンビニ最大手のセブン−イレブンもほぼ同じ時期に61品目の値下げを実施している。店舗運営にコストがかかるコンビニは、これまで商品の値下げに対しては消極的であった。だが今回のセブンの値下げは、PBだけにとどまらずNB商品も対象となっている。これまでにない思い切った決断に業界関係者は驚いている。
スーパーやコンビニが相次いで商品の値下げに踏み切ったのは、消費者の節約志向が極めて強く、消費低迷が深刻になっているからだ。
総務省が発表した2月の家計調査によると、2人以上の世帯における実質消費支出は前年同月比3.8%減と大幅なマイナスとなった。続く3月も1.3%のマイナスとなっており、消費支出が前年を下回るのはこれで13ヵ月連続である。
家計の状況は店舗の売上げを直撃している。
イオングループの中核企業であるイオンリテールの通期(2017年2月期)既存店売上高は前年比2.3%のマイナスだった。全社的な決算はギリギリで横ばいを維持したが、薄氷の決算だったことは間違いない。
3月に入っても状況は変わっておらず、同社の既存店売上高は前年同月比で3.4%のマイナスとなっている。この傾向は当分続く可能性が高い。
官主導の値上げ強制
イオンは、顧客が求める商品を顧客に代わって調達し、安く提供することを「小売店の使命」と位置付けており、今回の値下げには社会的意義があることを強調している。
冒頭にも述べたように、岡田氏は政府の脱デフレ政策を痛烈に批判するとともに、「これまでの3年は、政府からの値上げ圧力に屈してしまった」と発言するなど、今後は政策の方向性にかかわらず価格を追求する方針を明確にしている。
もともとイオンは「流通革命」を強く掲げてきた企業だけに、岡田氏のスタンスにそれほどの違和感はない。だが、ここまで政府を批判することについては少々ワケがあると考えた方がよさそうだ。
おそらくそれは、官主導の半ば強制的な値上げが水面下で進んでおり、これがさらなる消費の停滞をもたらす可能性があることと深く関係している。
官主導による値上げ強制の代表例はビールである。
一部の読者の方はすで気付いているかもしれないが、このところビールの店頭価格が急激に上昇している。
ビール業界は、大手5社の出荷量が前年割れするなど不振が続いており、本来なら値下げしてでも販売数量を稼ぎたいところだ。そのような中で、まったく逆の動きになっているのは、政府が価格規制を強化しているからである。
昨年5月、「酒税法」と「酒類業組合法」が改正されたが、これはビールの安値販売を事実上、禁止するための措置と考えてよい。
酒類販売の業界には、メーカー側が小売店に対して「リベート」と呼ばれる多額の販売奨励金を支払う慣行があり、これが安値販売の原資となっていた。
ところが改正法では安値販売そのものが事実上禁止されたほか、リベートの支払いについても基準が厳格化されることになった。適用になるのは今年の6月からだが、メーカー側は適用後を見越してリベートの条件を厳しくしている。
このため小売店は大胆な安値販売ができず、店頭価格が上昇しているのだ。
今回の法改正は、小規模な酒屋などが強く実現を求めてきたとされる。確かにそのような政治的側面があるのかもしれないが、背後では政府の意向が強く働いているとみた方が自然である。
ガソリン値上げの「政府の思惑」
官製インフレはビールだけではない。ガソリン価格の高騰も政府による施策のひとつと考えることができる。
2016年の前半には1リットルあたり100円程度だったレギュラーガソリンの価格は一本調子で上がっており、今年の4月には125円を突破する状況となっている。ちなみに同じ期間における原油価格は1割程度しか上がっていないので、ガソリン価格の高騰は際立っている。
ガソリン価格だけが上がっているのは、政府主導で石油業界の寡占化が進み、供給量が減ったことが主な原因である。
日本国内の石油精製施設は設備過剰の状態が続いており、再編やリストラが必至といわれてきた。しかし石油業界は現状維持に固執し、設備過剰の状態をダラダラと続けてきた。
この状況に業を煮やした経済産業省は「エネルギー供給構造高度化法」に基づき、製油所の再編を強く要請。上からの構造改革が進むことになった。
経産省の強い意向を受け、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油は経営統合を実施(統合後の新会社であるJXTGホールディングスが4月に発足)。出光興産と昭和シェル石油も合併に向けた協議を続けている。経産省としては、最終的に大手2社の寡占体制とすることで石油の需給を引き締めたい意向だ。
石油業界が従来の業界慣行に甘んじ、構造改革を先送りしてきたのは事実だが、企業の経営に政府が露骨に介入することについては批判の声も大きい。出光と昭和シェルの合併については、出光の創業家が強く反対していることから協議が難航しているが、これも政府による過度な介入が大きく影響した結果とも言える。
出光と昭和シェルの合併は進んでいないものの、JXTG単体でも国内シェアはすでに5割を越えており、流通価格に対する影響力は絶大だ。政府の思惑通りガソリン価格は順調に「高騰」を続けている。
官民「物価戦争」の行方は…
消費者の節約志向は確実に高まっており、現時点でインフレを前向きに受け止められる人は少数派だろう。だが、物価下落が続くようであれば、脱デフレを旗印にしてきたアベノミクスそのものが頓挫してしまう。
その意味で、今回の値上げと値下げの衝突は、脱デフレを何としても進めたい政府と、それに抵抗する民との間で勃発した物価戦争ともいえる。
筆者は政府による企業活動への介入には原則として反対する立場だが、今回の争いについては政府側に有利な展開となりそうだ。国内の人手不足が深刻になっており、日本経済はすでに供給制限によるインフレになりつつあるというのがその理由である。
イオンやセブンは企業体力があるので、値下げを継続することも不可能ではないが、他の企業がこの動きに追随できるのかは何ともいえない。
消費が低迷する中、人手不足によって企業の供給力に大きな制限が加わった場合、企業は利益を確保するため、生産量を犠牲にしても値上げに踏み切る可能性がある。そうなると中身が変わらないままモノやサービスの値段だけが上がり、消費者の購買力を低下させてしまう。
こうした動きが、さらなる消費の低迷を招くという悪循環をもたらした場合、日本経済がスタグフレーション(景気低迷と物価上昇が併存する状態)に陥る可能性もゼロではない。
物価をめぐる争いが今後どのように推移するのか、とりあえずは各社の販売数量に着目する必要があるだろう。小売店が積極的に値下げを行っても、それに見合った販売数量の増加を実現できない場合、じわじわと物価は上昇することになる。
一方、値下げに反応して数量が大きく伸びるようであれば、一定の均衡市場が維持されるかもしれない。結果が分かるまでにはそれほど時間はかからないはずだ。
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