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カルロス・ゴーン氏に代わって、日産社長に就任した西川廣人氏
日産、世界ビッグ3入り目前で「魔の1千万台の壁」…破綻危機から18年で脱ゴーン依存
http://biz-journal.jp/2017/05/post_19063.html
2017.05.13 文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家 Business Journal
■日産に課せられた新たな役割
日産自動車の“顔”が交代した。カルロス・ゴーン氏に代わって、日産を引っ張っていくのは、社長に就任した西川廣人氏である。横浜の日産グローバル本社で4月3日に開かれた社長就任会見の席上、「これまであまり申し上げてこなかったことですが」と、前置きして、西川氏は次のように語った。
「アライアンスの三番目のパートナーとして三菱自動車が入りました。アライアンスが進化、成長していくなかで、日産はその中核として、アライアンスを引っ張る存在でありたい」
西川氏は05年より購買部門副社長を務め、北米、欧州、中国などで事業軸の責任者を経験した。14年チーフ・コンペティティブ・オフィサーに就任し、研究・開発、生産、SCM、購買、TCSX(トータル・カスタマー・サティスファクション・ファンクション)を担当した。ゴーン氏が取締役会長に退くのを受けて、日産の社長兼最高経営責任者(CEO)を務めることになったのだ。
ゴーン氏の経営戦略を確実に実行し、結果を出してきた西川氏は、実務家タイプといえる。しぶとく、ときにしつこいほどの熱心さで物事を進める。ブレない経営者といっていい。
■1000万台の罠
では、ゴーン氏はなぜ今回、西川氏にバトンタッチしたのか。
「私どもには、世界トップ3に入る実力があります」
ゴーン氏は2016年5月12日に開かれた三菱自動車との資本業務提携に関する共同記者会見の席上、いつも以上に自信に満ちた強い調子でそう語った。日産が三菱自動車への34%の出資を完了させ、同社を傘下に収めたことにより、16年のルノー・日産アライアンスの販売台数は996万台と限りなく1000万台に近づいた。内訳は、日産556万台、ルノー318万台、三菱自動車93万台だ。
つまり、世界で販売される車の9台に1台以上がルノー・日産アライアンスの車という計算になる。トヨタ自動車、独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の上位3位グループに匹敵する規模だ。
ただし、ビッグ3の一角に食い込んだとはいえ、“1000万台の壁”はとてつもなく厚い。というのは、自動車業界には販売台数が1000万台に近づくと、経営がつまずくというジンクスがある。GMは小型車軽視が致命傷となり、08年、1000万台を目前につまずいた。トヨタもまた09年、1000万台を目前にして品質問題に見舞われ、窮地に陥った。VWは15年上半期、トヨタを抜いて世界一の座を手に入れた途端、排ガス不正が発覚した。
この“1000万台の壁”を、ゴーン氏は十分に意識している。ゴーン氏が日産の代表取締役会長に退いたのは、1000万台規模の自動車グループの舵取りの困難さを深く認識しているからにほかならない。つまり、日産トップの権限を西川氏に委譲して負担を減らし、自らはルノー・日産・三菱自動車のアライアンス経営に力を注ごうとしているのだ。
「アライアンスの戦略面および事業上の進化により多くの時間と労力をかけ、アライアンスの持つ規模による競争優位性をパートナー各社に享受させることができる」
こうゴーン氏は述べ、アライアンスにより注力する考えを示したのだ。
■日産はアライアンスを牽引できるか
ルノー・日産・三菱自動車の巨大アライアンスは、果たしてうまくいくのか。その意味で、西川氏に課せられた責務は重いといわなければならない。なぜなら、アライアンスにおける日産の役割は、これまでと大きく変わるからだ。
振り返ってみれば、1999年に2兆円もの有利子負債を抱えた日産は、ルノーに救済されるかたちで経営の立て直しを図った。大赤字だった日産は、アライアンスの“お荷物”でしかなかった。
ところが、18年後の今日、日産の役割は様変わりした。日産は3社のなかで販売台数がもっとも多い。世界展開のエリアも広い。いまやアライアンスのなかで“兄貴分”だ。
「自分たちがアライアンスを牽引していくんだという自覚がないと、1000万台規模の図体をさらに発展、進化させることは難しいと思います。これまでは、文字通りゴーンさんの牽引力でやってきたわけですが、ここからは自覚をもって日産の実力を上げ、自分たちが引っ張っていかないと、アライアンスの発展はない」
西川氏は、このように“覚悟”を語った。まず、そのために成すべきは、国内市場のパイが増えないなかで、販売台数を伸ばし、足元をしっかり固めることである。
「私の最初のミッションは、日産をスローダウンさせないこと。継続的に、着実に進化させ、成長させることが一番です」(西川氏)
日産の16年度の国内における登録車販売台数は前年度11.1%増の41万7404台である。ブランド別順位で、3年ぶりにホンダを抜いて2位に浮上した。牽引役はミニバン「セレナ」とシリーズ式ハイブリッド車「ノートeパワー」だ。
「私が意識しているのは、時代が激変するなかで“変化”こそチャンスだということです。今後、新技術を商品に入れ、新しいブランドイメージの構築を強力に進めていきたい」(同)
■三菱自動車の再生
日産はさしあたって、経営傘下に入った三菱自動車との協業関係をどのように築き、いかにシナジー効果を生み出し、三菱自動車再生の道をつけるのか。
日産は、三菱自動車の立て直しにあたり、日産副社長で技術顧問の山下光彦氏を副社長として、日産のチーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)で日産の世界6地域を統括するトレバー・マン氏を最高執行責任者(COO)として、さらに、川口均氏、軽部博氏を取締役として送り込んだ。
三菱自動車で陣頭指揮を執る山下氏が注力したのは、不正の「再発防止策の実施」と「業績向上活動」の推進を柱とする社内改革だ。例えば、業界初となる走行試験データの自動計測システムの導入や技術者向け法規教育の制度化などを行った。
「業績向上活動」でもっとも期待されるのは、共同購買、工場共用、共通のプラットフォーム、技術の共有、成熟市場および新興市場の協業、物流の統合――などによるシナジー効果の最大化である。
「提携による初年度のシナジー効果は、三菱自動車が250億円、日産は240億円を見込んでいる。来年度には、営業利益ベースで三菱自動車が400億円、日産は600億円相当の効果が得られるだろう」
これは、10月20日の三菱自動車との資本提携の記者会見の席上でのゴーン氏の言葉である。現にインドネシアの新工場で三菱自動車が生産する新型ミニバンを、OEM(相手先のブランド生産)で日産に供給することが予定されている。また、タイで工場から販売店までの車の輸送を日産と三菱自動車の両社で統合するなど、東南アジアでの物流統合、輸送コストの削減への取り組みも進められている。
このほか、軽自動車の企画、開発、生産について、日産と三菱自動車のリソースや技術、ノウハウを最大限に活用する「NMKVモデル」は存続の方針だ。その際、これまで三菱自動車が行っていた開発を日産が担い、生産については前回と同様に三菱自動車の水島製作所が行う。そして、18年に発売予定の軽は、これまで通りそれぞれのブランドで発売するという。
■西川氏の使命
ゴーン氏は強烈なリーダーシップで日産の経営を立て直し、ルノーとともに類いまれなるアライアンスをつくりあげた。前述したように、そのゴーン氏の近くで15年にわたり一緒に仕事をしてきた西川氏は、ゴーン氏の経営スタイルやその強みは熟知している。
「ゴーン氏が築いたダイバーシティ(多様性)を引き継ぎ、ゆるぎない強みとして日産に植え付けていきたい。それが私の使命だろうと思っています」
こう西川氏は決意を語る。ダイバーシティは、企業の競争力を決定づける重要な経営戦略の一つだ。グローバル戦略、あるいは働き方改革において、多くの日本企業は、ダイバーシティの推進に取り組む。ダイバーシティの定着には、日産は一日の長がある。
西川氏はゴーン氏が築いた強みを引き継ぎつつ、日産の新たな“顔”として、いかに日産を進化させるのか。加えて、アライアンスの牽引役としての“顔”をどうつくっていくのか。西川氏の力量が問われるところだ。ゴーン氏のようにとはいわないまでも、リーダーとして“大化け”すれば、ルノー・日産・三菱自動車によるアライアンスは、ビッグ3の一角に確たる地位を占めることは間違いないだろう。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)
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