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銀行が「捨てられる」時代、悲惨な運用を避けるたった2つの原則
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51658
2017.05.10 山崎 元 経済評論家 現代ビジネス
日本の資産運用の問題点
これからお金の運用を始めようという読者、特に、退職金の運用などを考えておられる読者に、是非読んで欲しい本を一冊ご紹介しよう。
『捨てられる銀行2 非産運用』(橋下卓典著、講談社現代新書)は、前著「捨てられる銀行」が話題となった著者が、日本の資産運用の問題点を、主に金融庁の森信親長官の視点から論じた本だ。
「非産運用」という見慣れない言葉は、少々凝り過ぎの造語のような気もするが、日本の運用業は「資産運用に非ず」という意味と、顧客にとって「悲惨な運用」であるという意味の二点を含んでいる。
特に、第1章、第2章では、金融機関の窓口担当者が、手数料の高い商品数個の説明を暗記して売っているだけであったり、資産運用会社が親会社であると同時に商品の販売チャネルでもある大手金融機関にすっかり従属していることの問題点などがはっきり書かれていて、銀行や証券会社の窓口に不用意に近づいて、勧められる商品を買うことがいかに愚かかがよく分かる。
特にダメな商品として取り上げられているのは、貯蓄性の保険(一時払いの終身保険や個人年金保険。最近は外貨建てのものが多い)、毎月分配型投資信託、ラップアカウント(主に投資信託で運用する「ファンド・ラップ」)の3商品だ。
言わば、金融庁認定の3大ダメ商品と言っていい。これらのどこが問題かは、金融庁が発表した「金融レポート」(2016年9月)にも書かれているが、官僚言葉で書かれた報告書よりも、ジャーナリストが書いた新書の方が読みやすいので、一般の方にはこの本をお勧めする。
ここに書かれていることに付け加えるなら、金融機関の中でも、特に、銀行で資産運用商品を購入するのはまずい。
銀行は、口座のお金を動きを通して顧客のことを知り過ぎているし、現にそこにお金があることを知っていてセールスして来るので、何とも手強い相手だ。
例えば、退職金が振り込まれると、早速電話を掛けてくる。そして、銀行員が窓口で売ろうとする商品の中には、資産運用に適切だと言える商品が皆無であるからだ。
「フィデューシャリー・デューティー」とは何か
現在の金融庁が、特に日本の資産運用業の改善を目指す上で重視している概念が「フィデューシャリー・デューティー」(以下「FD」)だ。日本語では「顧客本位の業務運営」という言葉が充てられている。
今や、金融機関の経営者ともなると、自社のFDについて最低30分間くらいは言葉を切らさずに喋り続けることができなければ一人前ではないというくらいのものだ。しかし、顧客である一般投資家は、金融機関のFDについて知らなくてもいいし、あてにしてはいけない。
FDの理想に従うなら、金融マンは、ほぼ誰に対してもカテゴリー別に手数料の最も安い商品を二、三組み合わせて売る事が適切になる。
違いは、運用する金額と、リスクのある資産にどれだけ投資するかだけだ。お金の運用の目的は、効率的にお金を増やすこと以外にあり得ないから、実は同じでいいのだ。
無論、金融機関は、そのような商売をすると儲からない。そこで、FDの原則の一つを悪用して、顧客の属性や、資金の運用目的によって、顧客別に適切な商品が異なるかのように振る舞って、手数料の高い商品を売りつけているのが現実だ。
FDの原則は7つあるが、その第6番目にある「金融業者は、顧客の資産状況・取引経験・知識及び取引目的、ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである」という原則は、金融論的な詰めが甘い。
なお、FDは罰則を伴わない「プリンシプル・ベース」の行動原理であり、各社がこれに沿った取り組みを競う中で、淘汰が進む事を、金融庁は期待しているようだ。
これで、上手く行かない場合、「ルール・ベース」の規制強化を行う余地を残すという考え方のようだが、これは些か寛容に過ぎる方針だろう。現在及び近い将来の金融消費者を、殆ど結果が見えている実験に付き合わせるのだから、気の毒でもある。
金融・運用業界としては、お題目として「FD」を唱えていれば時間稼ぎができるだから、FDの流行を本音では大歓迎しているにちがいない。
バンガード対その他金融機関
『捨てられる銀行2 非産運用』の第5章では、内外の、複数の金融機関の「FD的」取り組みについて取り上げられている。
これらの中で、真に立派なのは、米国のバンガード社だけだ。バンガードは、インデックス・ファンド運用の大手だが、自社が運用するファンドが自社の株主になる構造を作り、資産運用残高が拡大すると、運用管理手数料を下げて株主でもあるところの顧客のメリットを拡大する仕組みを作り上げた。
筆者は、個人的に同社の「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」(ニューヨーク市場に上場されていて、ティッカーコードは「VT」)という世界の株式に広く投資する商品を持っているが、この商品も、資産の拡大と共に運用手数料を下げており、年率で、一昨年17ベイシス、昨年14ベイシス、今年は11ベイシスにまで手数料が下がった(1ベイシスは百分の1%)。
日本の金融機関、運用会社もそれなりに努力しようとしているのだが、バンガードとの差はあまりにも大きいと言わざるを得ない。
「悲惨運用」を避ける2原則
さて、個人が自分のお金を運用しようとする時に、「悲惨」な目に遭わないようにする方法は無いものか。
あれこれ、考えてみたところ、簡単な方法を思いついたので、お教えしよう。以下の2原則を守るだけでいい。
【原則1】運用の手数料が運用金額に対して年間0.5%以下のもの以外に絶対手を出さないこと。保険のように実質的な手数料が分からないものは全て避ける。
【原則2】商品を売ったり仲介したりする相手に、お金の運用について一切相談しないこと。
原則1は、要は、100万円の運用に対して、年間5千円以上の手数料を払わないことを固く決意すべし、ということだ。お金を増やすことが運用の目的なのだから、お金を直接減らす手数料支払いを引き下げるのは当然のことだ。
本当は「0.3%」くらいまで基準を上げたいところだが、通称「イデコ(iDeCo)」こと個人型確定拠出年金などの手数料を考えると、現時点では少々厳しい。
イデコは、課税される所得がある60歳未満の方は是非利用した方がいい制度だが、「外国株式(先進国株式)のインデックス・ファンド」で運用することをお勧めする。
口座管理手数料と運用残高100万円に対する外国株式インデックス・ファンドの運用管理手数料の合計が5千円に収まる金融機関を探すといくつか見つかるはずなので、そうした中から利用する金融機関を選ぶといい。
リスクを取る運用の対象としては、はっきり言うと、内外の株式のインデックス・ファンド以外のものを検討しなくてもいい。
大凡半々くらいに組み合わせるといいのだが、敢えて凝る人には、外国株6に対して日本株4くらいを勧めることが多い(機関投資家の平均的なリスク、リターンの仮定から計算した結果だ)。
リスクを取りたくないお金は、個人向け国債変動金型10年満期と普通預金(1人1行1千万円の預金保険の上限を守ること)でいい。
また、どのみち手数料を稼ぐために投入したにちがいない新しい商品やサービスにいちいち関心を持ったり、無料だからといって「相談」に出掛けたりすることが、個人客としては特に良くない。金融マンの時間を使うということは、時間分以上の手数料収入を狙われるということだ。
金融マンを敵視する必要は全くないが、彼らとは関わりを持たない方がいいのだと理解しよう。特に高齢の方に申し上げるが、彼ら、彼女らに、「構って貰いたがる」ことは、大人としてまことに見苦しく、同時に経済的には危険なことでもある。
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