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日本人はすでに先進国イチの怠け者で、おまけに労働生産性も最低な件 そんなに休んで、どこへ行く?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51507
2017.04.24 週刊現代
「働きすぎは悪」「仕事よりコンプライアンス」――日本全体がそんな方向に進んでいる。しかし、本当にそれでいいのか。誰も頑張らないし踏ん張らない、そんな国に未来があるのか。
モーレツがそんなに悪いのか?
興味深い数字がある。『データブック国際労働比較2016』を見ると、'14年の週労働時間(製造業)で日本人はG7(先進7ヵ国)の中で労働時間がかなり短いほうなのだ。
厚生労働省が調べた日本の週労働時間(製造業)は37.7時間。調査対象に各国でバラツキがあるため、一概には言えないが、米国の42時間や英国の41.4時間、ドイツの40時間より少なく、フランスの37.8時間、カナダの37.1時間と変わらない水準なのである(イタリアの数値は未掲載)。
日本人がどんどん働かなくなっている。
バブル直後には2000時間を超えていた年間の総実労働時間は少なくなり続け、'14年には1729時間にまで減少している(OECD調べ)。
それでも日本政府は、日本人は今でも働きすぎだと主張し、繁忙期の残業時間を月100時間未満にするなど、長時間労働の規制を含む「働き方改革」を推進しようとしている。安倍晋三総理も「働き方改革実現推進室」で「『モーレツ社員』の考え方が否定される日本にしていきたい」と明言した。
だが、ちょっと待ってほしい。
今の日本の豊かさの礎を築いたのは、長時間労働を物ともしない高度経済成長期の「モーレツ社員」たちではなかったか。それを否定することは日本のさらなる成長をあきらめることにつながらないだろうか。
元松下電器社員で東海大学経営学部元教授の小野豊和氏が、当時の日本人の勤勉さを語る。
「私が松下電器に入社したのは、'71年。ニクソン・ショックで日本経済は一時的に混乱していましたが、長い目で見ると高度経済成長期に本格的に突入しようとしていた時期です。入社式には創業者の松下幸之助さんの姿もありました。
人事部に配属されましたが、多忙な時期は徹夜なんか当たり前で、残業時間が月100時間を超えることはザラでした。本社になると月の労働時間が400時間を超える人間も当たり前にいて、残業代だけで15万円ももらえたという話を聞いてうらやましく思ったものです。初任給は4万2000円でしたから。
残業は苦ではなかったし、そのために体調を崩すこともなかったですね。仕事や会社が生活のすべてで、仕事が楽しくて、もっと働きたいと思ったものです」
後に小野氏は広報部の勤務となり、'90年に大阪で行われた「国際花と緑の博覧会」の広報を担当した。その際の労働時間は月に400時間近く。そんな激務も苦とは思わなかったという。
「さすがに労働組合からクレームが出て、サービス残業となったりもしましたが、嫌ではなかったですね。皇太子殿下がいらっしゃる時があり、会社側から残業時間は気にせずに頑張れと励まされたこともありました。
創業者の松下幸之助さんも体は決して強くありませんでしたが、気になることがあると夜中だろうと関係なく、時間を問わず部下に指示を出していたと聞きます。
あの頃は多くの人が仕事に対してやりがいを感じ、それがまた社会のためになるという思いがあり、生きがいとなっていた。そんな日本社会の雰囲気が高度経済成長の原動力になっていたのは間違いありません」(小野氏)
官僚や学者に言われたくない
もちろん、本人の意にそわない長時間労働を会社が強いることは問題だ。だが、寝食を忘れて仕事に没頭したい労働者がいることも事実。
政府が提唱する長時間労働の規制は、仕事に燃える人間の労働意欲を制限するもので、やる気を確実に削ぐ。
これでは「働き方改革」ではなく、「働かない改革」だ。
リクルートでトップセールスマンとして注目され、独立して人事戦略コンサルティング会社「セレブレイン」を創業した高城幸司氏が言う。
「仕事で高い成果を出したいなら、人よりたくさん働くべきである――。
今の会社でこんなことを言い出したら、『時代遅れ』と糾弾されそうですが、'80年代まで会社のために働く『企業戦士』という言葉は自虐ではなく、誇り高いものとして語られていました。
それを象徴するのが、『24時間働けますか』というキャッチコピーでおなじみのCMです。
私も当時、リクルート社に勤務していて、長時間労働を厭わないワークスタイルで働いていました。終電なんて気にしない。会社は不夜城のように夜中も照明がつきっぱなし。それが異常な状態だとは、まったく気がつかない環境でした」
だが、時代は変わった。今では残業をしていると「早く帰りなさい」と上司が声をかけるように。照明も一定時間を過ぎると消灯する会社も多い。社員に過重労働を強いるとブラック企業と批判されかねない。
だからといって、ハードワークは絶滅していいのだろうか?と高城氏が疑問を呈する。
「長すぎる残業がいいとは思いません。一方で、若手のことを考えると心配もあります。
社会人になって『企業戦士』になる時がせめて一時期くらいはあってもいいのではないでしょうか。
若い頃のハードワークで築いた対人関係や業界の知識こそが、第一線で活躍するための財産になったと自負する人も少なからずいるのも事実です」
今時の若者は「企業戦士」になることを敬遠し(あるいはそもそもそんな言葉を知らない)、政府も「ワーク・ライフ・バランス」を大事にしましょうと囁き、会社に人生を捧げるような生き方を完全に否定する。
何も一生涯すべてを会社に捧げろという話ではない。人生の限られた一時期に周囲を顧みずに仕事に没頭する時代があってもいいではないか。
しかも、現在の「働き方改革」を進めているのは安倍総理という3代にわたる世襲政治家で、かつて神戸製鋼所でサラリーマン経験があると言っても所詮は政治家になる前の「腰掛け」に過ぎなかった人物だ。
働き方改革担当大臣の加藤勝信氏も官僚出身で民間企業がビジネスの最前線で血の滲むような努力をしている姿を知らないだろう。
働き方改革実現会議のメンバーに名を連ねる学者たちにしても、もちろん知識はあるのだろうが、実際の「商売」の現場を熟知しているとは到底思えない。
それを下支えする官僚たちも予算を獲得し、国民の税金を消化するのが主な仕事で、民間ビジネスの現実など知っているはずがない。
要は、働いてカネを稼ぐことの本質がわかっていない人間が机上の空論を振りかざして、汗水たらして働く労働者たちの人生を決めようとしているのだ。
そんな人間たちに、「モーレツ社員は時代遅れ、ほどほどに働いて人生を楽しみましょう」などと主張されても、何の説得力もない。
政府が進める「働き方改革」の末路に待っているのは、日本の衰退だ。
元東海銀行専務で、名古屋大学客員教授の水谷研治氏が先行きを憂う。
「働く人の立場からすれば、労働時間を減らしてほしいというのはわかります。誰だって楽をしたいですから。
ただ、そこで考えてほしいのは、働かないで豊かさだけを得ることができるのか、ということ。豊かさはいらない、自分の時間がほしいというのなら、それでいいでしょう。
しかし、働くのは嫌だけど、豊かな生活がほしいというのは、虫がよすぎます。
仕事の時間を減らすべきだと考える人は、今の日本の豊かさが今後も続くと考えているのかもしれません。しかし、現実はそれほど甘くない」
世界は必死に働いている
日本の「一人当たり労働生産性」はOECD加盟国中22位で、G7では最下位だ。もはや日本は世界に冠たる技術立国ではないことは、昨今の東芝の迷走を見ても明らかだろう。
水谷氏が続ける。
「すでに日本の国際的な地位は急速に低下しています。かつては大きく引き離していた中国などの新興国にも追い上げられている。彼らは必死に働いています。気がついたら、日本が後進国になっていたということもないとは言えません。
ただでさえ、日本ではさらなる少子高齢化が進み、経済力が低下することは避けられない。その上に、一人ひとりが働かなくなれば、坂道を転げ落ちることは目に見えています。むしろもっと働いて、技術を磨かなければいけない時なのです。
いったん楽を覚えてしまった人間は、頑張りたくても、いざという時に体力も知力もなくなってしまっている。そうなったら手遅れです」
かつて日本人の「勤勉さ」は世界に誇るべきもので、それこそが戦後の奇跡的な経済的復興を支えてきた。しかし、いつから日本人は仕事を嫌う人たちの集まりになってしまったのだろうか。
城南信用金庫元理事長の吉原毅氏がこう話す。
「私も若い時は残業や休日出勤も相当しました。肉体的には大変でしたが、その分、仕事を成し遂げた時の達成感や、成長したと感じられる満足感も大きかった。なので、長時間労働も苦ではなかったですね。
私にとって仕事は楽しいものですから、それを国に制限されるのはどうかと思います。
労働時間を短縮しろというのは、仕事は楽しくない苦役だから減らしましょうという思想だとしたら、仕事を再び楽しいものに戻すことが『働き方改革』の目指すべき方向性なのではないでしょうか。
ではなぜ、仕事が楽しいものではなくなってしまったのか。一つは職場の人間関係がギスギスしたものになってしまったこと。
もう一つは仕事の目的が儲けることだけになって、本来の目的である社会の役に立つという部分が希薄化してしまったからです。
利益を出すことは企業の大切な目的ですが、それは社会の役に立つことが大前提。こうした前提を欠いたまま、残業時間だけを減らしたとしても、根本的な問題解決とは言えません」
また、労働時間の制限は、若手社員の成長を阻害する危険性もある。
楽ばかり求める若者たち
前出の小野氏が言う。
「'80年代は日本人の年間の労働時間が2100時間くらいあり、世界の平均は1800時間程度だったので、日本人は働きすぎだとバッシングを受けました。
そこで労働省(当時)が音頭を取って、半ば強制的に年間労働時間を1800時間に近づけました。ちょうど韓国のサムスンやLGが台頭し、日本の家電産業が衰退し始める時期と重なります。
さすがに高度経済成長期のがむしゃらな働き方が人を幸せにするとは言いませんが、現状の残業時間の規制には問題が多いのもたしかです。
人生に目標を持たず、仕事は生活のための手段に過ぎず、より福利厚生が充実していて楽なほうの仕事を選ぶ若者が増えている時代において、労働時間を規制してしまえば、これからの時代が求める人材を育てるのは容易ではないでしょう」
労働者の賃金をカットし、働きたくない若者を増やす――政財官が結託して進める「働き方改革」は、まさに亡国の政策なのである。伊藤忠商事元会長で中国大使も務めた丹羽宇一郎氏は現状の日本人の働き方に対して、こう言い切る。
「もっと昔のように汗を出せ、知恵を出せ、もっと働けと言うしかない。それに尽きます」
かつての日本人たちが寝食を忘れて働いた末に今の日本の繁栄がある。それにあぐらをかいて、「これからは一生懸命働かないようにしよう」などと言っていれば、あっというまに三流国に転落する。
政府の言うことに踊らされて、やれプレミアムフライデーだ、ノー残業デーだなどと浮かれる前にやるべきことがある。
働かざる者食うべからず。
この言葉を忘れると、日本人の末路は本当に哀れなものになるだろう。
「週刊現代」2017年4月29日号より
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