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FX Forum | 2017年 04月 21日 18:32 JST 関連トピックス: トップニュース
オピニオン:
見えてきた「トランプリスク」
武田洋子三菱総合研究所 チーフエコノミスト
[東京 21日] - 医療保険制度改革法(オバマケア)代替法案の採決見送りはトランプ米政権の政策実行能力に疑問符を投げかけたが、米経済の行方を左右する真の正念場は、夏にかけて本格化するとみられる税制改革議論だと、三菱総合研究所・チーフエコノミストの武田洋子氏は指摘する。
仮にオバマケア同様、税制改革法案で議会との調整に手間取り、年内成立のめどが立たなくなれば、大統領選以降、消費者や企業経営者、投資家のマインドを支えてきた景気刺激策への期待が剥落し、米経済成長見通しの修正が必要になる可能性もあると説く。
同氏の見解は以下の通り。
<大盤振る舞いとは真逆のリスク>
メインシナリオは短期押し上げ、中期下押し――。トランプ政権の経済政策(トランプノミクス)効果に関し、以前よりこう述べてきた。
周知の通り、トランプ政権は、保護主義的な通商政策に加えて、大胆な経済対策を公約して誕生した。トランプ大統領が選挙期間中に掲げていたような大規模減税や巨額インフラ投資が実行に移されれば、短期的には景気を押し上げるが、長期金利上昇に拍車がかかり、経済に負の影響を与える可能性がある。
今のところ、こうした見通しを修正する予定はないが、3月末のオバマケア代替法案の採決見送りが、トランプ政権の政策実行能力に疑問符を投げかけたのは事実だ。共和党が上下両院で多数を占めるとはいえ、ホワイトハウスと議会の隔たりは思いの外に大きく、年内にスケールダウンした景気刺激策すらまとまらない可能性には、注意が必要になってきたかもしれない。
米消費者の間では、トランプ大統領が選挙期間中に公約した減税に対する期待が依然として根強い。大統領選後の消費者のマインドを示す指標は大幅に改善し、ITバブル期の2000年12月以来の水準に達している。
米経済における所得減税効果の大きさは、前回のブッシュ減税(2001年と2003年の2度にわたってブッシュ政権が実施した大型減税)で示されている。消費への寄与度を試算すると、2002年は2%程度押し上げられたとみられる。しかし仮に、年内に税制改革案がまとまらない可能性が見えてくれば、消費者や企業経営者のコンフィデンスが冷え込む可能性には警戒が必要だ。
ムニューシン財務長官らが主張するように、富裕層向けの税額控除縮小などを通じ、税収中立を極力目指す形での中間層に手厚い所得減税は、議会も比較的通りやすいはずだが、複雑な国境調整などの法人税の改革に関して意見がまとまらない可能性はある。
<外政で得点稼ぎを急ぐリスク>
経済対策でスケールダウンを余儀なくされれば、外政で巻き返そうとするのではないかとの見方もある。北朝鮮やシリア情勢など安全保障問題に限った話ではない。例えば、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉や対日・対中の2国間経済対話で成果を急ぐリスクだ。
米国では、米通商法301条に基づく制裁課税など2国間の通商問題に対する政策アクションについては、議会の同意を得ずに大統領令で実行に移せるものが多い。一方、議会承認を経て1994年に発効したNAFTAの再交渉は、さすがに大統領権限のみで進めることはできないが、すでに議会への働きかけは開始されているとの見方は多い。
国内経済政策の迷走を覆い隠すために保護主義政策の実行を急ぐようなことになれば、「短期押し上げ・中期下押し」どころか、「短期・中期とも下押し」となる。保護主義的な通商政策は、1)輸入物価を通じた消費者の負担増、2)世界経済の成長下振れ、3)他国の報復措置など、主に3つの経路を通じて米経済の下押し圧力ともなる。
第1の消費者負担は、トランプ氏を支持した低中所得層への影響が大きい。所得階層別に消費に占める輸入財の割合をみると、高所得層に比べ低中所得層で高いためだ。
第2の世界経済への影響に関しては、応用一般均衡モデル(GTAP)を用いた当社の試算では、米国の輸入関税率が10%引き上げられた場合、景気刺激策により米国の内需が1%増加したとしても、前者のインパクトが後者を上回り、世界各国にはマイナスの影響が及ぶ。
第3の報復措置の影響を定量化するのは難しいが、トランプ大統領の保護主義的政策がこうした流れを加速させる可能性がある。世界の保護主義化の流れはトランプ大統領誕生前から強まっているためだ。独立系の通商政策監視機関グローバル・トレード・アラート(GTA)によれば、2016年の20カ国・地域(G20)諸国による保護主義的措置は約350件と2015年の約250件を大きく上回った。
もっとも最近では、トランプ大統領の口から、中国やメキシコに対する関税大幅引き上げ発言があまり聞かれなくなった。これは、ワシントンでは、強大な政治影響力を持つといわれる小売業界のロビイストたちが議員のもとを訪れ、保護主義的政策のデメリットを説明して回っていることも影響している可能性がある。共和党議員も来秋の中間選挙を意識すれば、消費者に近い産業の声を無視することはできないだろう。
NAFTAの一部修正や2国間交渉の要請など、外政で「象徴的なエピソード」をつくることにより得点稼ぎを急ぐリスクは高まっているものの、トランプノミクスは案外、財政の大盤振る舞いもなければ、保護主義的政策も「実態」としては軌道修正されていく可能性はある。
財政規律に目配りした所得減税が実行に移され、そして過激な保護主義的政策の採用が見送られれば、米経済は2%台前半の成長を維持し、政策金利の引き上げも長期金利の上昇も緩やかなペースにとどまる可能性が高い。それが米経済、ひいては世界経済にとって最良のシナリオとなろう。
*武田洋子氏は、三菱総合研究所のチーフエコノミスト。1994年日本銀行入行。海外経済調査、外国為替平衡操作、内外金融市場分析などを担当。2009年三菱総合研究所入社。米ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
(編集:麻生祐司)
*本稿は、武田洋子氏の個人的見解に基づいています。
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Business | 2017年 04月 21日 18:53 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
焦点:外債投資に悩む国内投資家、新年度は3兆円売り越しスタート
[東京 21日 ロイター] - 2017年度は外債投資の運用スタンスをめぐって国内機関投資家が悩みを深める年となりそうだ。
日本の低金利環境が続くなかで、外債中心の投資となる見通しだが、中核的な位置を占める米国債の利回りが期待ほどに上昇せず、各社の対応はバラバラ。運用担当者の腕が試される「難しい局面」となるなか、期初は3兆円の益出し売りから始まり、「安全志向」の国内勢の本音が見えた格好だ。
<珍しくない「期初の売り」>
財務省が発表する対外・対内証券投資では、国内居住者による中長期債投資は、今年4月の第1週(2─8日の週)が2兆1757億円の売り越し、第2週(9─15日)が7962億円の売り越しとなった。
4月はいわゆる「期初の売り」から始まることは珍しくない。2013年からのアベノミクス相場では、4月1・2週はすべて売り越しだ。「新年度の最初に一定の利益を積んでおくと安心できる」(国内投信)という国内系ファンドマネージャーの心理が、そこに反映されているとみられる。
実際、16年半ばまで金利が低下(債券価格は上昇)し続けたアベノミクス相場では、4月後半にかけて買い越しに転じた年が多い。
16年も4月1・2週で2.7兆円売り越した後、3・4・5週で3.2兆円買い越した。「今年は期初の調整売りが、まだ一巡していないのかもしれない」(国内証券)との見方も出ている。
<ヘッジコスト上昇に警戒>
だが、今年は外債投資の環境が、いつになく厳しい。トランプラリーで上昇した米国債利回りは早くも失速。10年米国債利回り(長期金利)US10YT=RRは、下限とみられていた2.3%をあっさり割り込んだ局面があった。
一方、超低金利の日本国債に替わり、代替商品として為替ヘッジ付外債が注目された場面もあった。特に米国債は人気があり、公式データはないものの、保険業界では「各社各様ながら、16年は全体としてヘッジ比率が前の年に比べて高まった」と、フィッチ・レーティングス・ジャパンのダイレクター、森永輝樹氏は指摘する。
しかし、為替ヘッジのためのドル調達コストが昨年後半に上昇。ヘッジ付米国債の「手取り収益」が目減りし、投資妙味が薄くなってきた。
足元では、昨年末よりやや低下しているが1.5%付近で「仕上がり」のリターンは1%を下回る。この先、米連邦準備理事会(FRB)は2回の利上げを想定しており、短期金利が上がれば、ヘッジコストも上昇する。
ヘッジ付き外債のヘッジ部分は、数カ月ごとに付け直される。ヘッジコストが足元で落ち着いた動きだとしても、再び上昇するリスクを踏まえれば「いかにヘッジコストを抑えていくかは課題」(大手生保幹部)との声もある。
ユーロのヘッジコストは、ドルほど上昇していない。しかし、欧州の政治リスクがくすぶるなかで「リターンが高いからといって、フランスやイタリアの国債などに投資するのは難しい」(中堅生保の運用担当者)という。
<オープン外債は「両刃の剣」>
そこで一部の生損保の運用担当者は、オープン外債に目を付けている。為替ヘッジコストが不要なため、2%超の米国債の利回りがそのまま手に入る。円安(ドル高)になれば、為替差益も期待される。
ある大手生保関係者は「ドル高になる場合、米金利が上昇(債券価格は下落)し、ヘッジ付外債にキャピタルロスが出る可能性があるが、オープン外債を買っておけば、ドル高による為替差益でヘッジ外債のヘッジになる」と話す。
実際、期初のマーケットでは「早々にオープン外債の打診買いや、ヘッジ付き外債のヘッジ外しの動きが見られた」(国内金融機関)との声が相次いだ。
三井生命保険が20日発表した2017年度の運用計画では、外国債券のうち、為替ヘッジ付き外債を数百億円程度減らす一方、ヘッジなしのオープン外債を1000億円以上増やすことを明らかにしている。
とはいえ、オープン外債は円高(ドル安)になれば、為替差損が発生する「両刃の剣」。欧州の政治リスクや北朝鮮を巡る地政学リスクが顕在化すれば、一段の円高が発生する可能性もある。
ドル/円JPY=が反発するタイミングを見極められるか──。各運用担当者の腕が試されそうだ。
(平田紀之 編集:伊賀大記)
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