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6回目のジンクスに向かう世界経済 基本は油価 日経年末2万2千 バブル教訓 時短術 成果主義企業は失敗 会社と自分の価値
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/241.html
投稿者 軽毛 日時 2017 年 4 月 19 日 13:02:12: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

2017年4月19日 高田 創 :みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト
6回目のジンクスに向かう世界経済

筆者はグローバルな金融市場に40年近く従事してきた実務家として、日米欧の政策金利の引き上げの連動について「5回のジンクス」議論を過去10年以上にわたって行ってきた。米国がまず動き、欧州が続いて、日本は最後になり、日本銀行が利上げした翌年は、世界経済が同時に減速する――など、5点の共通現象がある。(みずほ総合研究所 チーフエコノミスト/高田 創)
利上げ、日本はいつも最後
翌年、世界経済は同時減速
 いまの局面で、日本の超金融緩和からの「出口」を展望するのはまだまだ先の話だろう。ただし、既に常に先頭ランナーであった米国が利上げで動き出したなか、二番手として欧州中央銀行(ECB)が動くかどうかが鍵になる。過去40年の金融市場の経験則は、欧州の動きが日本の前触れになっていただけに、仮にECBが出口に向かうと日本の出口に向けた観測が急に浮上しやすいことに市場参加者は十分に留意する必要がある。
◆「5回のジンクス」70年代以降の日米欧の政策連動
(1)1970年代以降、日米欧の中央銀行の政策金利引き上げサイクルは一致
(2)以上の連動サイクルで日銀は日米欧の中央銀行で常に最後の利上げ
(3)日銀の利上げの翌年は全て世界同時減速
(4)同時に、世界的な金融市場の変動が生じ、新興国問題も生じる
(5)以上の5局面はすべて原油価格の高騰期と一致
70年代以降、繰り返されてきた
「5回のジンクス」の歴史
 実際、過去の政策金利引き上げの局面を見れば、70年代以降、「5回のジンクス」が成り立っていたことがわかる(図表1)。舞台を、2000年代半ばに実現した5回目を振り返れば、まず2004年に米国準備制度理事会(FRB)が利上げを行い、次いで、2005年にECBが利上げを行い、最後に2006年に日銀が利上げを行った。その順序もそれまでの4回と同じく日本は日米欧のなかで最後だった。2007年にはサブプライム問題とした世界的な経済の同時減速が生じ、翌年のリーマンショックも含め世界的な金融市場の激震となった。しかも、2007年から2008年にかけて未曾有の原油価格の高騰も生じた。
 2000年代は米国のサブプライムローンによる住宅ブームと欧州のユーロ統合ブームに伴う投資拡大が生じたことで、金融による信用の膨張が従来になく大規模であった分、その後の調整も戦後最大規模、未曾有なものになった。その結果、以上、5回目のジンクスのどの項目も当てはまる完全成立となった。当時、日本は、1990年台以降のバブル崩壊後のバランスシート調整に漸く目処をつけつつあったものの、欧米の調整の大波に洗われ、再び深刻な悲観に陥ってしまった。
◆図表1:金融市場の「5回のジンクス」と6回目の展望
(資料)みずほ総合研究所 拡大画像表示
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米国の利上げで
新たな連動局面に突入
 こうした政策金利の連動は、1970年代に為替が変動相場制に移行し、日米欧の金融市場連動が強まったことや、世界経済全体のファンダメンタル(基礎的条件)がお互いが影響しやすくなるシンクロナイゼイションが生じたことが背景にある。そうした中で、為替や金融市場、実体経済を安定させるための制度的インフラとしてG7等での先進国中心の政策協調があった。
 今回の局面では、既に2015年12月から米国の利上げが始まっており、「6回目のジンクス」のサイクルに入ったといえそうだ。世界的にもこれまでの金融緩和一辺倒の動きが転換し、一部、新興国のなかには利上げに向かう国も見られるようになり、世界的な金融政策連動は緩和一辺倒から転換し、利上げも含め出口に向けたサイクルに入りかけている。
 最近のECBの動きを見ても、微妙に出口を模索する動きも見えだした。日本は1990年代のバブル崩壊以降の「失われた20年」の間、続けられてきた低金利政策からの出口戦略を米国の景気回復に後押しされて一気に行う必要がある。米国の回復が続くうち、すなわち、米国の利上げが続くうちに、なんとか早期にマインドを改善させて出口に向かう戦略を描かざるをえない。
 日本の出口戦略は、国債市場への影響も含め、金融機関の経営の健全性、財政の持続性、インフレなどの様々なマクロ環境を同時に目配せする対応が不可欠で、かつ国際的政策連動のなかで行う必要がある。前回の「5回目のジンクス」で、金融危機や米国のITバブル崩壊後からの出口が、結局、「あだ花」に終わってしまったのも、「5回目のジンクス」として国際連動の荒波に翻弄されたことによる。
欧州も「出口」を模索し始めた
日本の金利、ECBウオッチが必要
 日本が悪循環から脱するには、アベノミクスのフレームワークとして、円安−企業収益回復−株高の好循環と内需拡大の実現が必要になる。その目的に沿えば、まだ当面は金融緩和を継続して円安を実現し、同時に信用拡大に戻すことが必要だ。こうした状況を実現するにはまだ数年はかかることから、「結果として」、6回目も利上げは日本が最後になる可能性は高い。日本はバランスシート調整においては欧州に先行しているが、欧州は日本のようにデフレに陥って企業経営者や消費者の心理がが悲観的になりきっていない分、金融政策の出口に向かうハードルは低い。もとより、欧州はドイツの中央銀行のブンデスバンクの伝統に見られるように、インフレに対する不安を根強く持つだけに、引き締めに転じやすい性格を持っている。さらに、今日、ドイツはユーロ安で経常収支をため込んでいるという批判が米国からもあること、マイナス金利の継続に対し欧州金融機関からの不満も根強いことなどの要因があるだけにマイナス金利を正常化させる動きも生じやすい。
 現在の日本の状況だけを見れば、超金融緩和からの出口を議論することはいまだ夢物語の段階だ。だが一方、海外との政策金利の連動の観点から見れば、常に二番手で動いてきた欧州の動向は、日本の金利の動きへの大きな前触れになっていた。それが過去40年の歴史だ。それだけに、6回目のジンクスにおいても、欧州の動きに注目が必要だ。市場関係者とすれば、日本の金融政策に変化はなくても、ECBが出口に向かうことが日本の債券市場における金利観に大きな影響を与えることに留意する必要がある。今後、BOJウォッチャーにはECBウォッチが必要になってきた。日本の金利の動きを占う「炭鉱のカナリア」の役をECBが担っている。
 一方、日本が出口に向かうための絶対条件に、米国が利上げを続けるか、少なくとも利下げ局面にないことも認識する必要がある。すなわち日本が出口に向かう猶予期間は先頭の米国が下げに向かうまでの限られた期間になる。米国の利上げ観測は、年内に何回かということで、予想されている。利上げ継続がコンセサスであり、こうした傾向は2018年までは続くというのが、市場の大勢だ。しかし、2019年、20年まで利上げが続くかは見方が分かれる。もし仮に2020年ごろにかけて、米国が利下げに転じ、そこまでに日本が出口に向かっていない場合、「6回目のジンクス」が成立せず、日本は再度、米国が利上げに向かう次のラウンドまでは、利上げ・出口を待つ必要がある。ただし、日銀は4回目と5回目に出口を急いだ反省があるので、今回は出口を焦らないのではないか。その結果、日本の出口は今回の米国の利上げサイクルでは実現できない可能性もあると同時に、マイナス金利も含めた超低金利政策の長期化のリスク、「永遠のゼロ」リスクもある。

http://diamond.jp/articles/-/125304

【第60回】 2017年4月19日 宿輪純一 :経済学博士・エコノミスト
国際的な物価の基本は「原油価格」にある


 先日ワシントンのFRB本部、IMFや世界銀行のエコノミストと面談してきたが、そこで気がついたのは、原油価格の動きをかなり重視しており、物価の基本として見ていることだった。原油価格を重要なインフレの先行指標としているのである。もちろん、FRBは雇用を特に重視し、失業率よりも賃金上昇率を重視していたが。

 原油価格はWTI(West Texas Intermediate)という指標で見ることが多い。西テキサスは、米国映画でたまに見かける採掘機によって、近代的な原油採掘を始めた地域である(Intermediateとは中流の意味)。今はシカゴマーカンタイル取引所(CME)に買収されたニューヨーク・マーカンタイル取引所 (NYMEX)で取引されている。

 筆者はシカゴ駐在時より先物も専門の一つとしていたが、忘れもしないメガバンクの企画部経済調査室に勤務していた2008年7月11日、原油先物が1バレル(約159リットル)=147.27ドルまで上昇した。その時にはエコノミストのみならず、一般の方々まで皆、200ドルまで上昇するものと考えて、省エネが推進された。しかし、9月15日にリーマンショックが発生し下落。その後、WTIは昨年1月20日に最高値以降の最安値26.55ドルを記録した。最高値の2割以下に下落するなどと、誰が予想できたであろうか。

 資源価格において原油はその中心的な存在である。エコノミストになりたてのころ、原油価格が上昇するとブラジルの通貨や株価が上昇した。ブラジルは原油を産出しないので、なぜなのかよく分からなかったが、ブラジルでは鉄鉱石等の鉱物が採れる。鉱物などの資源価格は、原油価格にほぼ連動しているのである。確かに、原油だけでは製造業は成り立たない。

 時は経ち、最高値を更新していたころには実現するとは思わなかったことが起きた。シェールオイルの採掘開始である。頁岩(Shale)と呼ばれる泥岩の層に含まれている原油のことだが、強い水圧をかけることで採掘が可能になった。主として米国の北部と南部の山岳地帯で産出される。筆者の学生時代には考えられなかったことだが、今や米国が原油生産量1位である(2位はサウジアラビア)。さらにトランプ政権になって生産は増加する。オバマは環境を重視していたが、大統領がトランプになり、より環境負荷の高い掘削方式が許可された。環境よりも開発というわけである。

 その動きを見て、OPEC(石油輸出国機構)とロシア等の産油国が一足先に手を打ち、昨年11月30日に石油価格を上げようとして減産に合意した。OPECはまとまらない組織として有名で、15年ぶりの合意だった。彼らの共通の敵・米国の台頭によって、まとまることができたのである。その後減産目標を達成。特にサウジアラビアは目標以上に減産することで、合意を主導した。5月25日にはOPEC総会があり、サウジアラビアは減産の6ヵ月延長を要望するといわれている。しかし、最近の米軍によるシリア空爆等の中東情勢の悪化で、生産の問題を始めとして、地政学的リスクの高まりも絡まり、原油価格は予想が難しくなっている。

 原油先物にはWTIの他にブレント(Brent)というものもある。ブレントは英国や北欧諸国に囲まれた北海にある油田だ。ブレントは、現在は米国ICE(インターコンチネンタル取引所)に買収されたICE Futures Europe(以前のロンドン国際石油取引所)で取引されている。産地から見てWTIが米国産原油の代表、ブレントは欧州のそれにあたる。中東は地理的近さから言って、ブレントに入る。

 最近のそれぞれの価格の動きは、米国WTIは増産で価格下落、ブレントは中東減産によって価格上昇となっている。本稿で述べたように、原油価格の予想は非常に難しいが、このスプレッド(差)は広がる方向と考えられる。この差を利用したスプレッド取引が、最近の先物市場では盛んに行われている。

(経済学博士・エコノミスト 宿輪純一)
http://diamond.jp/articles/-/125302

 

2017年4月19日 ザイ編集部
日経平均株価は年末までに2万2000円を目指す!

投資のプロは北朝鮮リスクで一時的に株価下落しても好調な米国経済の影響で日経平均株価の高騰を予測!

トランプ氏のアメリカ大統領当選が決まった直後から顕著となった株価の上昇。日米でトランプ相場が到来したが、2017年以降の日経平均株価は一進一退の状態だ。為替が円高傾向となり、トランプ政権に失望する声も高まっている。さらに直近では朝鮮半島やシリアを中心とした政情不安もあり、NYダウにも不透明感が漂っている。
そうしたなかで今後の相場はどう動くのか? 「トランプと仕事をした投資銀行家」ぐっちーこと山口正洋さんと、「トランプ相場を的中させた」マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さんという気鋭の2人がズバリ今後の株式市場の行方を先読みする!(4月21日発売のダイヤモンド・ザイ6月号より先出し公開!)
12月半ばで日本株のトランプ相場は終わった!
威勢がいいだけで何も決められないトランプ大統領
──昨秋からトランプ相場と呼ばれる株価の上昇が続いてきましたが、足元で変調の兆しがうかがえますね。
山口 正洋(ぐっちー)さん
トランプと仕事をした投資銀行家。モルガン・スタンレーなどを経てブティックの投資銀行を開設。著書多数。
ぐっちー 実は、1980年代に仕事上でトランプ氏と関わったことがあって、とても実行力のある人物だという印象を受けました。ところが、3月24日にトランプ政権はオバマケアの代替法案可決に失敗してしまった。共和党が過半数を握っている議会において、公約の目玉を通せなかったのは大きな痛手でしたね。
広木 オバマケア撤廃でいきなりつまずいたことで、大型減税やインフラ投資などが先送りされかねないとの懸念が台頭してきましたからね。
ぐっちー 8年前にオバマ氏が大統領に就任した際には、矢継ぎ早に法案を可決させました。2008年9月のリーマンショックで金融危機が深刻化していたとはいえ、オバマ氏率いる民主党は議会で過半数を割っていた。そのことと対比され、トランプ氏は威勢だけはいいが、何も決められないとの烙印を押されかねません。
広木 大きく膨らんでいたトランプ氏への期待が急速にしぼんだ格好ですね。ただ、米国株と違って日本株におけるトランプ相場は、実質的に1ヵ月ちょっとで早々と終わっているんですよ。
 トランプ大統領の誕生決定直後から日米の金利差が拡大。そのためドル高・円安が加速しました。ですが、日米の金利差は12月15日にはピークをつけて、円安トレンドが終焉。以降の日経平均株価は2万円に到達できずに頭打ちとなっています。再びトランプ大統領の政策への期待が高まる可能性もありますが、少なくともトランプ相場の第1フェーズはもう終わっていると考えるのが賢明でしょうね。
若年労働人口も増加し、米国景気は絶好調!
米企業は2ケタ増益、良好な経済指標も続々
──だとすれば、トランプ氏が有言実行を果たすまで、相場は軟調だということでしょうか?
広木 隆さん/マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
アベノミクス相場を的中させた人気ストラテジスト。外資系運用会社やヘッジファンドでファンドマネジャーを歴任。2010年より現職。
広木 実際のところ、トランプ氏が打つ政策への期待感だけで株価が上昇したわけではありません。米国の景気がいいから、相場がそのことを反映してきたのです。
ぐっちー その点に関しては、私も大いに納得。失業率などいろいろな指標を見ても、米国経済に対して、ものすごく強気のスタンスです。
広木 トムソンロイターによると、S&P500採用銘柄の利益の伸びは2016年第4四半期が7.7%となった模様です(2月23日時点)。以降、四半期ごとに2ケタ増益が続く見通しで、米国企業の業績回復が株高の背景にあるのは間違いありません。
ぐっちー 米国は若年労働人口が増加。放っておいても経済が成長します。私は友人と米国でレストランチェーンを共同経営していますが、それは売上げが自然と右肩上がりで拡大していくからです。
広木 3月の消費者信頼感指数が17年ぶりの高水準を記録するなど、「○年ぶり」と表現される良好な経済指標の発表が続いており、足元の米国経済もまさに絶好調ですね。
米国の失業率は4.7%まで低下。ほぼ完全雇用の状況で、今後は賃上げ圧力が高まる可能性が高い。
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日本は本当に世界景気敏感株!?
最近は株価の“為替離れ”が進んでいる!
──米国経済の活況は日本経済にも好影響を及ぼしそうですが、その一方で為替がやや円高気味ですね。
広木 ドル/円と日本株は相関性が高いと言われていますが、局所的な動きは別として、株価の“為替離れ”が進んでいます。その背景にあるのは、上場企業の業績改善です。2017年3月期の業績は2期ぶりに最高益を更新する見通しで、円高の影響で売上高こそ減るものの、高付加価値の製品・サービスで採算が改善します。円高という逆風を跳ね返し、企業の稼ぐ力が高まっている格好です。
ぐっちー ただし、日本には約3600社の上場企業が存在するものの、その大半がローカル(内需系)なんですね。そういった企業もぬるま湯の国内にとどまっていないで世界に攻めていかないと、知らぬ間に茹でガエルになってしまいますよ。
広木 少子高齢化が進む日本で、もはや経済の自律的回復を望むのは難しい。すでに今日の日本経済を支えているのは、世界的な景気拡大です。言い換えれば、もっぱら海外で稼ぐグローバル企業が圧倒的に強くなっていくことを意味しています。
ぐっちー 岩手で学生を教えているんですが、優秀な子は公務員になっちゃうんですよ。市役所とか。本当にもったいないと思いますよ。
広木 なるほど。とはいえ、私のメインシナリオは、2017年の日本株に強気。2018年3月期の業績を織り込み始めれば、日経平均株価は2万円を目指す展開になるはずです。アナリストによる日経平均株価の予想EPSの平均値は1460円。PER13.7倍でも2万円で、年末には2万2000円も視界に入ります。
「北朝鮮」と「米国の金融政策」、2つのリスクに注意せよ!
──注視すべきリスク要因としては、どんなものが挙げられますか?
広木 欧州の選挙がショックを与えても一過性のものでしょうし、中国経済も安全圏にあります。
ぐっちー ただ、何かの拍子に暴落するというアクシデントは相場につきものです。先々でも待ち構えているでしょうし、私なら大きく下げたらすかさず米国株を買うスタンスで臨みます。
広木 依然として米国金利は歴史的に低水準。暴落してもリーマンショックのように完全に市場がクラッシュすることはないはずです。
ぐっちー それよりも、私が気掛かりなのは戦争。北朝鮮が切羽詰まって海以外にミサイルを放つ可能性は十分に考えられ、米国内ではその前に先制攻撃すべきだという議論も出てきています。
広木 一方で、仮に短期で日本の地政学的リスクが解消されるなら、日本株はいったん暴落したとしても間違いなく株価は爆騰しますね。一方、米国の金融政策については注視する必要があります。ただし、利上げではなく、4兆5000億ドルに膨らんだFRB(連邦準備理事会)のバランスシートの縮小開始です。
ぐっちー FRBのイエレン議長の任期は2018年2月まで。すごく責任感の強い人物であるだけに、在任中にバランスシート縮小を決意する確率は50%以上でしょう。FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録で言及していますし、他のスピーチでもさりげなくほのめかして伏線を張っているようにうかがえます。
広木 もはや打つ手が残されていないものの、2018年の4月には黒田日銀総裁も任期満了となります。長短金利の操作を行なう「イールドカーブ・コントロール」についての政策変更はあるかもしれません。それらのリスクを念頭に、暴落を待って仕込んでおきたいですね。
米国は金融危機以降、日本は安倍政権誕生後にマネタリーベースを拡大したが、米国はすでに縮小局面に。
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「成長株」「株主優待株」は、
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 今回紹介したようなリスクを踏まえたうえで、今はどのような銘柄を中心に物色すればよいのか。4月21日(金)に発売になるダイヤモンド・ザイ6月号は、今から10年以上は成長が見込める「超」成長株を選りすぐり!  これから世界が直面する3大テーマを解決しうる、IoTやエネルギー効率化、ヘルスケアといった7分野の株を紹介。トランプ相場のような短期的な相場に左右されない有望株を46銘柄も紹介しているので、ぜひチェックを。
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http://diamond.jp/articles/-/125033

 


今だから話せる「バブルの教訓」?熱狂の中心にいた二人の武勇と悔悟
あのカネは一体、どこに消えたのか
現代ビジネス編集部
プロフィール

2017年2月に刊行された横尾宣政氏の『野村證券第2事業法人部』は8万部突破、2016年の10月に刊行された國重惇史氏の『住友銀行秘史』も13万部と、大きな反響を呼んでいる。いずれもバブル期の金融機関の内実を当事者が実名で綴った話題作だ。

あのとき何があったのか。いま記憶にとどめるべき「バブルの教訓」とは何か。横尾氏と國重氏に本音を語ってもらった。

証券・銀行の「暴力の差」

――金融関係者の間では、「あれ、読みました?」と、両書を読んだかどうかが挨拶代わりになっていると聞きます。どちらもバブル期の金融機関の内実を当事者が実名で綴ったものですが、なぜ今、あの時代に関心が高まっていると思いますか。

横尾 國重さんの本も、私の本もそうですが、バブルがはじけたばかりの頃ではとても書けなかったと思います。バブルを煽った当事者たちに、どこかやましい気持ちもあって、なるべく真相を隠そうとしていたんです。

しかしバブル崩壊から25年以上が経ち、亡くなられた方やリタイアされた方も増えてきた。それでようやく、あの時、何が起こっていたのかを正直に話せる時期が来たということでしょう。

國重 確かに、時間が経ったことは大きいでしょうね。私はもうひとつ、2020年の東京オリンピックに向けて、今の日本経済にバブルが生まれつつあることも背景にあると思う。

金融機関の関係者をはじめ、現代の多くのビジネスマンは、東京五輪が終わればバブルは弾けてしまうと懸念している。その時が来たらどうなるのかを、過去の歴史から学ぼうとしているのではないでしょうか。

――お互いの著書を読んでの感想は?

國重 証券業界というのは大変な世界だな、とあらためて思いました。時にはお客さんが損をするとわかっていても、株を売らなきゃいけないんですから。

國重氏
横尾 私は就職する際、住友銀行の内定ももらっていたので、もし入社したらどうなっていただろうと想像しながら國重さんの本を読みました。やっぱり私には向いていない業界ですね(笑)。

國重 本を読んでよくわかったのは、ひとくちに金融業といっても、銀行と証券では違いが大きいということ。

私たち銀行マンは「減点主義」ですから、ひたすらお行儀よく、波風立てずに仕事をしなければいけない。対して証券業界、特に野村證券の場合は「とにかくカネを稼いできた奴が一番偉い」というカルチャーがあったのではないかと思います。

横尾 そうかもしれません。銀行マンのように慎重な人は野村にはひとりもいなかった。みんな気が短くて、アイディアを思いついたら即、行動に移す人間ばかりでした。

國重 銀行は、相手の将来性や担保など、会社が決めた規定に基づいてカネを貸せばいい。でも証券マンは株を売るために、自分でいろんな理屈を考えなければいけないんですね。

横尾 むしろ証券マンは、利回りが決まっている商品を売るのは苦手なんですよ。たとえば昔、「中期国債ファンド」という商品がありました。国債を中心に運用するので安全性が高く、元本割れしないというのが売りですが、そのかわり大きく儲かることもない。こういう「夢のない」商品は売りにくかったですね。

普通の株なら、「これからの日本の経済はこの分野が伸びる。だからこの銘柄がお勧めです」という具合に、ストーリーを自分で組み立てて売ることができるんですが。

横尾氏
國重 そんなこと言って、また損をさせるんじゃないですか(笑)。営業マン時代のえげつない話を読んで、「どれだけギラギラした人なんだろう」と思っていたんですが、本を読んで描いていたイメージとは違うのでホッとしました。

横尾 その言葉、そのままお返しします(笑)。

――それにしても、銀行と証券では同じ金融業と言っても、だいぶ違う。

國重 もうひとつ驚いたのは、かつての野村證券では上司が部下に暴力を振るうのが当たり前だった、ということです。横尾さんもずいぶん殴られたとか。

横尾 拳で思い切り殴られるのは日常茶飯事でした。怒った上司が電話機を部下に投げつけたり、ガラス製のテーブルマットをたたき割る、なんてこともありました。課長が部下の奥さんを呼びつけて「奥さん、こいつのせいでみんな迷惑してるんです。なんとかしてください」と怒鳴っているのを見たこともあります。

國重 当時はパワハラなんていう言葉もなく、住友銀行にも部下から「暴力部長」と呼ばれている人がいました。私はその部長が部下にマッチ箱を投げつけているのを見たことがあります。それで「暴力部長」ですから、野村に比べればかわいいものです。

横尾 部下のほうも黙って殴られているだけじゃなく、反撃するんですよ。

私も若いころ、一番怖いと言われていた常務に胸ぐらをつかまれて「お前、ぶち殺してやろうか」と凄まれたので「殺す勇気もないくせに、何言ってやがる」とやりかえし、4時間くらい口論したことがあります。

最後になぜか常務が大盛りのざるそばとかつ丼を注文して、「偉そうなことを言いやがって。これ食ってみろ」と言われて終わった。

國重 飯を食わせて和解するわけですか(笑)。

NEXT ?? 使えない社員を置くのは罪だ

「2、3億円損しても大丈夫」という客がいた

國重 横尾さんの本を読んでいてすごいと思ったのは「俺がスッた3億が、君の肥やしになったならそれでいい」と言ってくれるお客さんがいたということ。このお客さんは株じゃなく、「横尾宣政」という人間を買ってくれたのでしょう。

横尾 私が若いころに心がけていたのは「2、3億円損しても大丈夫」というお客さんを見つけることでした。いくら信用してもらっても、億単位のおカネを出してくれるお客さんはそうはいませんからね。これはという人のところには、2年でも3年でも通い詰めて、株を買ってもらうんです。

國重 3年も通い詰めるのは、なかなかできることじゃありませんよ。横尾さんは「野村證券で一番、稼いだ男」と言われたそうですが、本を読むとそれも納得できます。

「証券業界の内実をここまで書くのか…」と業界を震撼させた一冊(amazonはこちらから)
横尾 國重さんも、支店長時代にずいぶん預金を増やしたそうですね。

國重 渋谷の支店長を引き継いだ時、預金残高は50億でしたが、10倍の500億まで増やしました。その際、部下に「今度の支店長は、いずれ頭取になる逸材です」とあちこちで触れ回るようにさせた。その後で営業に行くと、みんなどんどん預金してくれるんです。コイツと付き合っておいたら後で得するかもしれない、と思いますから。

ただ、その話が行内でも有名になっちゃって、全国の支店長がみんな同じようなことをやりはじめたので、当時の住友銀行には頭取候補が100人もいた(笑)。

横尾 支店長にはどのくらいのノルマが課せられるんですか。

國重 当初は、預金と貸金の合計で500億にしてくれと言われていました。でも私は、どうせなら預金だけで10倍にしようと、厳しい数字を自ら課したんです。

横尾 國重さんは、同期で一番、最初に取締役になられたそうですが、やはり出世する人は業績を上げるんですね。

國重 ところが、そうとも限らないんですよ。証券会社と違うのかもしれませんが、銀行は支店で業績を上げなくても出世する人がいるんです。「あいつは本部向きだから」という理由で、経験を積ませるために支店長になったという人もいる。要するに管理部門の人間ですね。こういう人は、さしたる業績を上げなくても出世する。

横尾 証券会社では考えられませんね。特に野村證券は「ノルマ証券」とか「ヘトヘト証券」などと呼ばれるように、ノルマ至上主義。業績を上げなければ絶対に出世できないし、ノルマを達成できない社員は辞めざるを得ないように仕向けられる。たとえば3か月ごとに転勤させて、全国を転々とさせるとか。

國重 それ、完全にいじめですよ。成績の良くない部下の扱いは銀行とは正反対ですね。銀行の場合は、あまりに辞める部下が多ければ「上司の管理に問題がある」とみなされます。上司の責任が問われる。

横尾 それは野村證券では聞いたことがないですね。使えない社員を置いておくほうが罪だ、という企業風土ですから。

100億単位のカネを簡単に貸していた

――おふたりの現役時代はバブル真っ盛り。取り扱うおカネの量も、今とはケタ違いだったんじゃないですか。

國重 先日、『住友銀行秘史』の元にもなっている25年前につけていたメモ帳を改めて眺めてみたんですが、当時は1件あたり500億とか600億円という融資がしょっちゅうありましたね。今の時代なら、5億円程度でも、貸すとなれば銀行はかなり慎重になるでしょうが、当時は100億単位のカネを簡単に貸していたんです。

13万部を突破した、銀行マン必読の書(amazonはこちらから)
横尾 いちいち担保を取っていたんですか?

國重 取らないことも多かったです。企業に融資する場合は、プロジェクトの中身もろくに調べずに貸していました。私が役員になって支店長をしていた時代、ある会社に「裸」で4億ほど貸したことがあります。「裸」というのは無担保、無保証のことで、「何かあったら俺が責任を持つ」と言って貸した。ところがその会社は潰れてしまって、結局カネは返ってこなかった。

横尾 責任は取らされたのですか。

國重 副支店長以下、部下は減給とか戒告処分を受けました。ところが私には何の処分もなかったんです。なぜなのか人事部に聞いてみると、役員は処分しないんだ、と。「役員を処分すると、その人を役員に引き上げた経営会議のメンバーの能力が問われてしまうから」とのことでした。

横尾 億単位の焦げ付きを出してもお咎めなしですか。“カネ余り”の時代ならではの話ですね。私たちの業界だと、企業が信託銀行に資金を委託し、証券会社が売買を行う「特定金銭信託」――通称「特金」が、80年代後半の株価急騰で大流行しました。1984年3月末での残高が2兆5789億円だったのに対し、1989年9月末には46兆7737億円にまで膨れ上がった。

國重 5年ちょっとで20倍近く伸びたんですか。企業もカネが余っていたんですね。

NEXT ?? 「天皇」と呼ばれた人たち

釈然としない気持ち

――札束が飛び交うバブルの渦中にあって、このままでいいのかという疑問を感じることはありましたか。

國重 正直言って、当時はそんなことは思わなかった。むしろ、まだ日本円が過小評価されていたから、これからどんどん円高になって、私たちの生活はずっと豊かになるだろうと楽観していました。

横尾 私は懐疑的でしたね。本来、株というのはその企業の将来性を見て買うもの。ところがあの頃は、企業が優良不動産を持っているというだけで株価が上がった。証券会社も企業の将来性を調べず、その会社が持っている不動産の価値が高ければ買おうとなってしまった。

國重 そこは銀行も同じですね。不動産に投資するという話があれば、その土地の価値をろくに調べず、いくらでも貸し込んだ。

横尾 日経平均株価が3万3000円くらいまで上がったとき、私はすでに第2事業法人部を離れていましたが、かつての同僚たちに「これはおかしい。もうすぐ暴落するかもしれないから、株は一度、全部売ったらどうか」と提案したことがあります。ただ、その後もしばらくは株価が上がり続けたため、私の提案は却下されてしまいました。

――その横尾さんの予感は現実となります。1989年末に日経平均株価は過去最高となる約3万8900円を記録するものの、90年代に入ってバブルは崩壊し、株価は暴落。そして同じころ、住友銀行や商社のイトマンを舞台とする「イトマン事件」が起こりました。

横尾 「イトマン事件」については私も以前から関心を持っていましたが、水面下で何が起こっていたのかは知りませんでした。今回、『住友銀行秘史』を読んでみて、國重さんが重大な役割を演じていたことがよくわかりましたよ。

國重 あの頃、住友銀行はイトマンに対しては何の調査もせず、言われるままに数百億円単位でどんどん貸し込んでいた。他行も「住友が貸すならウチも貸そう」と、何も考えずに融資していたんです。

そんな状況に疑問を持った私は、行内のさまざまなルートを辿って調べてみたところ、融資したカネがイトマン経由で闇社会に流れていたことがわかった。「何とかしないと住友がイトマンに食い尽くされてしまう」との危機感から、マスコミにリークしたり、監督官庁の大蔵省に告発文を送ったりしたんです。

横尾 あの事件には、住友銀行の「天皇」と呼ばれた磯田一郎会長やイトマンの河村良彦社長、さらに伊藤寿永光氏や許永中氏などのバブル紳士、多くの人物が登場しますね。

國重 本の中でも120人くらい登場しますからね。それだけ多くの人間が関わっていたこともあって、事件の全体像は見えにくかった。2005年には河村氏、伊藤氏、許氏の判決が確定しましたが、イトマンに融資したカネが最終的にどこに流れたのかは結局、解明できなかった。釈然としない気持ちは今も残っています。

「投資信託って何ですか」と刑事は聞いた

――一方の横尾さんは2011年に発覚したオリンパスの「巨額粉飾決算事件」に巻き込まれ1・2審では有罪判決を受けました。

國重 横尾さんの本の後半に事件の詳しい経緯が書いてありましたが、「イトマン事件」に比べれば登場人物はずっと少ないけれど、スキームがすごく複雑です。

横尾 ごく簡単にいえば、オリンパスが90年代以降、投資で発生した損失を隠していたというものです。オリンパスで財務部長、副社長、監査役などを歴任したある人物が、独断で資金運用を行ない、莫大な損失を出したために起こった。

スキームが複雑に見えるのは、一貫した損失処理の方針がなく、そこにオリンパスのカネを預かる海外の銀行の思惑も絡み、その都度、その都度、場当たり的に処理してきたからです。

私は野村證券時代、この人物に「無茶な運用はおやめなさい」とさんざん忠告していたのに、彼は聞き入れなかった。そればかりか、後になって粉飾の「指南役」は私だったなどと事実に反する証言をしたために、私も逮捕されてしまったんです。

國重 これだけ入り組んだスキームを、捜査当局は理解できているんですか。

横尾 わかっていないと思います。最初に任意の事情聴取をした刑事さんから言われたのは「投資信託って何か教えてください」ということでしたから。

國重 裁判官もわかってないんじゃないかな。殺人とか単純な詐欺事件と違って、こんな複雑な事件をいきなり理解しろといっても無理がありますから。

横尾 捜査当局が用意した「ストーリー」に沿って判決が下されたとしか思えません。私は2年10ヵ月勾留され、他にも同じ会社の仲間2人も同じくらい拘置所に入れられた。

拘置所の方が「特捜案件で3人一緒に捕まって、2年も3年も勾留されているのに、誰1人仲間を売らない。そんな事件はない。普通は何もしていなくても、自分が罪を逃れるために仲間を売る」と言っていました。

取り調べでは、2人とも「お前が横尾を売ったら、すぐに出してやる」と何回も言われたそうです。でも、あまりに捜査当局の作りあげたストーリーが荒唐無稽で……。

國重 仲間を売るにも、売れなかった?

横尾 そういうことです。ですから、我々はあくまで最高裁で無罪を勝ち取るつもりです。

NEXT ?? バブルの教訓

どちらも質が落ちた

――「イトマン事件」「オリンパス事件」ともに、発生した背景にはバブルという時代がありました。あれから四半世紀が過ぎて、日本の社会はどう変わったのでしょうか。

國重 誤解を恐れずに言えば、事業の将来性などを見て、そこにおカネを貸していく以上、バブルというのは当然の現象なんです。担保なんてついでにあればいいよね、という感じで、まだ実態がないわけですから。

ところが、バブルが弾けた反動のせいで、今の銀行はとても臆病になってしまった。どんなに少額の融資の場合でも、必ず「担保はありますか」と聞くでしょう。これでは世の中にカネが出回らないし、景気も上向かない。

横尾 バブル後から現在まで「失われた20年」と言われますが、私は金融当局の責任も大きいと思う。

証券業界で言えば、不動産投資の相場がバブル崩壊で終わったなら、次の相場を作ればよかったんです。たとえば、「半導体相場」とか「IT相場」といった具合に、伸びる産業に資金が集まるような相場を作ればよかった。

ところが90年代に大蔵省は、証券マンが顧客に「推奨銘柄」を勧めることを禁じてしまった。証券マンがおすすめの銘柄を伝えないから顧客は株を買うことをためらい、株価は低迷した。そんな規制がなければ、今ごろ日経平均株価は5万円台まで上がっていたと思いますよ。

國重 今は、企業が「コンプライアンス」を気にしすぎているという側面もありますね。もちろん、バブル期のように何でも融資すればいいというわけじゃないけど、将来性のある企業に対しては、少しくらい担保が不足していても融資しようという気概をもった銀行マンが減った。

コンプライアンスが国を亡ぼすことにならなければいいのですが。

横尾 バブル後、証券マンの質も下がりましたね。顧客が何を求めているのかを理解できる人が少なくなった。全体的に能力が落ちているうえに、コンプライアンスでがんじがらめにされるから、新しい相場がなかなか生まれてこない。

――著書の発売後、おふたりにはどんな声が届いていますか。

國重 それがね、住友銀行時代の仲間をはじめ、誰も私に感想を言ってこないんですよ。おそらく読んだのでしょうが、「お前ばっかりカッコつけやがって」と思われているのかもしれない(笑)。毎年、銀行時代の先輩や同僚から年賀状が届くんですが、今年は1通も来なかったくらいです。

横尾 身近な人からは、「オリンパス事件の真相がわかった」と声をかけていただきました。あと本にも登場する方から、「これはリアルでいい」とメールをいただきました。

ただ、ネットの評判などを見ると、若い方からは手厳しいご意見も多いですね。「損をする株を売りつけるなんて信じられない」とか「証券マンは人間じゃない」とか(苦笑)。

國重 今の若い人の感覚から見れば、バブルの頃はめちゃくちゃに感じるかもしれません。でも、そういう時代が確かにあって、銀行マンも証券マンも自分の判断で融資したり、株を売ったりしていた。不謹慎かもしれませんが、面白い時代でした。

横尾 そうですね。先ほど國重さんがおっしゃったように、なんでもかんでも有担保主義になってしまって、日本経済に夢を語れなくなってしまった。これでは「失われた20年」どころか、30年、40年前の日本に戻ったのと同じです。

どの会社が10年後に伸びる、だからそこに投資しようというふうに切り替えないと。それこそがバブルの教訓だと思います。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51479

 


2017年4月19日 菊原智明 :営業サポート・コンサルティング代表取締役
残業しないトップ営業マンがやっている「超簡単時短術」


仕事がなかなか終わらない。ついついネットサーフィンなどをしてしまい、無駄な時間を過ごしてしまう――。そんなあなたは、少しでも仕事を効率的に進めるために、何かしらの時短術や仕事術を参考にしたいと考えるだろう。実は、多くの時短術・仕事術のなかでも、非常に簡単で誰でも知っているが、意外なほど活用されていないものがある。驚くほど効果が高い方法なので、ぜひとも試してほしい。(営業サポート・コンサルティング代表取締役、営業コンサルタント 菊原智明)

超簡単で効果が高い
「やることリスト」

 世の中にはさまざまな時短術や、仕事の効率アップのためのノウハウがある。「机の上を整理する」といった簡単なものから、体や生活のリズムを利用する(参考『残業しない「トップ営業マン」が実践する“3つのサイクル”』)といったちょっと難度の高いものまで。使うか、使わないかは別として「時短ノウハウ」は知らないよりは知っていた方がいい。実際に、残業しないで結果を出している人は、実にさまざまな工夫をしているからだ。

 このような時短ノウハウの中で「知っているけどやっていない」というものも、たくさんあるだろう。その代表といえるのが「やることリスト」ではないかと思う。

 実はこれが最も簡単で、しかも、ダイレクトに時間短縮につながる。現在、私は営業研修の他に「時間術」の研修もさせていただいている。時間術の研修の際、 参加者に向かって「やることリストを知っていますか?」と聞くとほぼ全員が手を上げる。さらに「やることリストを使うと効率的に仕事ができると思いますか?」という質問に対してもほぼ全員が手を上げる。

 やることリストの効果は、誰しも理解しているのだ。

 しかし、「では実行している人は手を挙げてください」と聞くと、途端に手は上がらない。時には一割以下になることもある。効果があるのは十分承知なのにもかかわらず、やっていないノウハウだと言えるだろう。これをやらない手はない。

4ステップで作成する
シンプルな方法

 やることリストの方法は、いろいろあると思うが、ここでは私が長年実行しているやり方についてご紹介させてほしい。この方法は簡単で、次の4ステップになっている。

 (1)前日に“やるべき仕事”と“時間が空いたらやりたいこと”をリストアップする
 (2)メモ用紙に優先順位順に書きこむ
 (3)会社に行ったら順番にこなしていく
 (4)終わったら斜線で消し、新たに思いついた項目を書き加える

 以上、非常にシンプルな方法だ。

 私のおススメは「時間が空いたらやりたいこと」を書くことである。仕事だけでなく、「将来のための本を買う」「週末の飲み会のお店をネットで調べる」といったことでもいい。ぜひ、試してみてほしい。これを書いておくと、仕事へのモチベーションが数段上がるのだ。

 私はメモ帳に書いているが、スマホやタブレットを使ってもいいと思う。実行しながら自分がやりやすい形を見つけてほしい。

やることリストで
無駄な時間が激減する

 やることリストの最大のメリットは無駄な時間が激減することだ。仕事が遅い人は決まってスタートが悪い。過去の私もそうだったのだが、出社してもなかなか仕事を始めない。

「まずはウォーミングアップだから…」と言い訳をしながら同僚との雑談や昨日のスポーツの結果確認などに時間を費やしてしまう。その後もコーヒーを飲みながらメールチェックからのネットサーフィン。気づいたらお昼近くになり《早めにランチを食べて午後から本腰を入れてやるか》となってしまう。こういった日は午後になってもエンジンがかからないのだが……。あなたも意味もなく、ネットサーフィンしたり、ユーチューブを30分も1時間も見てしまった、なんていう経験があるのではないだろうか。

 もしこの時、やることリストを活用していたらどうだろう。おそらく「無駄な時間」を過ごすこともなかったはずだ。「やること」が明確に決まっていれば無駄な時間を過ごすことなく仕事に取りかかれるものだからだ。

 “やることリスト”を活用しただけで無駄な時間が減り、自ずと残業時間も減っていく。ぜひ騙されたと思って実践してほしい。これを実践しても、残業になってしまう人は次の方法をお試しいただきたい。

 始業時間前の時間を活用する方法についてご紹介するのだが、おそらく《いったいこの時間帯の給料は誰が出すのか?》と疑問を持つ方もいるだろう。会社によっては「残業代は出すが、早出については対応していない」といったケースもある。会社が給料を払ってくれなかったとしても、この時間の仕事は価値があり、十分にリターンがある。やるやらないは別として、知っておいて損はないので、ぜひこちらも参考にしてほしい。

 以前、私が20代の営業マンに対して個人的にコンサルティングをした時のことだ。その営業マンの一番の悩みは、とにかく処理する仕事が多すぎることだった。計画通り仕事を進めていても、突然仕事が舞い込んで訳が分からなくなる。バタバタしているうちに仕事が溜まっていく。結果的に、ほぼ毎日が深夜までの残業になってしまうという。

 実は、私自身も住宅メーカーの営業マン時代に、この営業マンと同じような経験をした。《ミーティングが終わったら明日の資料を作ろう》とパソコンを開いた途端、お客様から「すぐ現場に来て!」という電話が入る。その後も本社から「今日中に書類を出し直してください」と言われたり、上司から予定外の仕事を頼まれたりする。

 予定通りに行く日の方が少なく、予期せぬ出来事が起こる日の方が圧倒的に多いのだ。バタバタと動き回り、やっとのことで手が空いた時は定時の時間をとっくに過ぎている。こうして深夜まで残業になっていった。

やることリストに加え
忙しい日だけ始業時間前出社


菊原智明さんの『残業なしで成果をあげる トップ営業の鉄則』(明日香出版社)が好評発売中。 231ページ、1620円(税込み)
 そこで、私はこの問題に対して「やることリスト」に加え、「忙しい日だけ始業時間前出社」を実行した。これで残業時間は劇的に減り、ついには定時帰宅が可能になったのだ。

 こういった経験もあったので、私はその営業マンに対し、まずは「やることリスト」の活用をおススメした。それに加え、仕事が多い日はだけは「10分でも20分でもいいので、早く出社して雑用を済ませる」ようにアドバイスをした。やり残した仕事をこの時間でしてもいいし、今日やるべき仕事を少しだけやってしまってでもいい。

 やり残した仕事を片づけると気分がいいし、やるべき仕事に少し手を付けただけでも《すでにひと仕事をした》といった優越感が味わえる。いいスタートを切れた日は間違いなくクオリティの高い日になっていくものだ。

 それから3ヵ月後――。その営業マンから「やることリストを活用し、さらに週に2日だけ早く出社するようにしましてね。そうしたら逆にやることがなくて困っていますよ」と報告を受けた。それを聞いた途端《時間の問題は解決したんだな》と確信した。その営業マンはよっぽどのことがない限り残業をしなくなったという。

 結果を出し続ける営業マンは、やることリストを上手に活用し、時間を効果的に使っている。仕事に追い回されたりせず、逆に仕事を待ち構えているものだ。

 残業を軽減するためのポイントは、出社したらすぐに始められるようにリストに書き込んでおくことだ。そして仕事に追いかけられるのではなく、意識的に仕事を追いかける形をつくること。

 このような状況になれば残業時間は劇的に軽減される。時間管理に困っている人はぜひ「やることリスト+忙しい日だけ時間前出社」を試してほしい。
http://diamond.jp/articles/-/125309

 

2017年4月19日 西尾 太
「成果主義」を絶対視する企業はなぜ失敗するのか


成果主義は重要だが、それだけを評価軸にするのはあまりに危険――。『人事の超プロが明かす評価基準』の著者で、人事コンサルタントの西尾太氏はそう警鐘を鳴らす。では、成果主義の問題点はどこにあるのか。

欧米型成果主義を導入するも
結果的にほとんどの企業が失敗

 個人的な主観に左右されない、最も公正な人事評価として考えられるのは、数字や売上などの「成果」のみで判断する評価方法でしょう。この発想に特化したのが、いわゆる「成果主義」です。これは、一般的には3ヵ月〜半年という短期間のスパンで目標を設定し、業績の結果のみで人事評価や報酬を決定します。

 バブル崩壊後の1990年代〜2000年代前半にかけて、多くの日本企業は、従来の年功序列型の報酬制度が維持できなくなり、欧米型の成果主義の導入が一大ブームになりました。

 ところが、業績を上げるために導入されたはずの成果主義は、結果的にはほとんどのケースが失敗に終わっています。

 売上以外は数値化できない「成果」というものの定義の難しさ。短期間の過酷な目標設定による過度のストレス。自己の成績のみに邁進することで生じる、人間関係の悪化。失敗を恐れて、無難な目標に走りがちになるチャレンジ精神の減退、および、社員のモチベーションの低下……、数々の問題点が浮き彫りになったのです。

 富士通や三井物産など、一度は成果主義を導入したものの、大幅な軌道修正や見直し、あるいは撤廃を余儀なくされた会社も少なくありません。

 ただ、その一方で、成果主義のブームから10年が経ち、「成果」を最も重視するという考え方は、日本でも広く定着してきています。

成果を重視するのは当然だが
数字だけを基準にすると危険


『人事の超プロが明かす評価基準』西尾太 著 三笠書房刊 1300円+税
 月刊誌『THE21』(2015‐4/PHP研究所)の特集記事「いつも評価が高い人vs.なぜか評価が低い人」のアンケート調査で、大変興味深い結果が出ています。

「あなたの会社の人事評価で最も重視されているのは何だと感じますか?」という質問に対して、評価「される」側の回答の1位は「個人の成果」(38・8%)。それに対し、評価「する」側が重視している項目の1位も、まったく同じ結果(38・8%)でした。

 さらに、「何を最も重視する人事評価制度だと、納得感が高いですか?」という質問に対しても、評価「される」側の回答のトップは「個人の成果」(39・8%)という結果になっていたのです。

 多くの企業の不明確な評価基準や、上司の好き嫌いによる不公正な評価などに対する不満が、自分の頑張った結果が公正かつダイレクトに反映される「成果を重要視する人事制度」を望む声になっているのかもしれません。

 成果を重視することについては、私も異論はありません。給与とは、会社に提供した価値の対価ですから、成果を重視するのは当然だと思います。

 ただし、数字や売上「だけ」を評価基準にしてしまうと、多くの危険を伴うことになります。

 ある企業の経営者から、こんな相談を受けたことがありました。

「うちの会社のある部署では、部下は軒並み評価が低いのに、その上司である課長だけが飛び抜けて評価が高くて、自分だけ多く報酬をもらっているんだ。部下の評価が低いのは、上司である課長の責任なのに、こんな状況はおかしい。そんなことにならない人事制度にしてほしい」

 調べてみると、この会社の人事制度は「売上」だけで評価される計算式になっていて、顧客からクレームが入ると、その人の評価は下がるという仕組みになっていたのです。

 つまり、部下はクレームの数で判断されるのに、上司は「売上」だけで評価が決まるので、いくらクレームがあっても「売上」さえ立っていれば、上司だけは高い評価を得られるというわけです。

 部下の評価は軒並み低くて、上司だけが高いなんて、あまりにもおかしな話です。

 売上「だけ」を評価基準にしてしまうと、このような事態が起こり得るのです。

成果主義は定性的評価を含めた
さまざまな評価軸の1つ

 成果主義の問題点が浮き彫りになった有名な例といえば、富士通や三井物産です。

 たとえば三井物産では、1999年に徹底した成果主義を導入しました。しかし2002年〜2004年にかけて、立て続けに大きな不祥事を引き起こします。

 短期的な成果・結果主義が引き起こした事案でした。もともと三井物産は、マニュアル化できないノウハウを先輩から後輩へ伝え育てる「人の三井」といわれ、それが強みでしたが、個人成果偏重の制度を導入してから、「業務知識や人脈を人に教えると損」などといい出す社員が出てしまい、「人の三井」の強みを急速に失わせてしまったのです。

 結局、同社では2006年に、チームワークや価値観の共有、人材育成といった定性的な行動を重視する制度に改めたのです。

 この事例にも象徴されるように、成果は重要な評価基準の1つですが、チームワークや人材育成、変革力など、“さまざまな評価軸のうちの1つ”と考えたほうがいいでしょう。

 企業は人なりです。結果や短期的な成果だけではなく、今すぐには儲けにつながらなくても、試験的、実験的、種まき的なチャレンジも評価される制度を築いてこそ、最も大事な資産である「人」が育ちます。やはり人事制度は、成果だけに特化しない、公正で「人を育てる仕組み」にすることが、社員にとっても、会社にとっても、幸せな結果を招くことになります。
http://diamond.jp/articles/-/124867

 


【第5回】 2017年4月19日 GAISHIKEI LEADERS/ISSコンサルティング監修
「会社の価値」と「自分の価値」を両方高める仕事のしかたとは?
真のグローバル経営を経験してきたビジネス・リーダーが、日本社会・日本企業の課題に対し『和魂洋才』の新たな視点から解決策を提案する「GAISHIKEI LEADERS」。そのメンバーが、経営のグローバル化と日本のユニークな強みを調和させた新しい「グローバル経営論」を解説するセミナー(共催/司会:ISSコンサルティング)の内容をダイジェストでお届けします。
今回のテーマは「会社の価値と自分の価値を両方高める仕事のしかた」。日本ケロッグ経営管理・財務本部長(CFO)の池側千絵さんに、ロクシタンジャポン代表取締役の西口一希さんとともに、ファイナンスの仕事を通じて企業価値を高めると、ひいては自分の価値を高める視点や行動にもつながるのはなぜか、語っていただきました。ダイジェストでお届けします。
なぜ日本企業の稼ぐ力が低いと言われているのか
池側(日本ケロッグ) こんにちは。まず簡単に自己紹介しますと、私は新卒でプロクター&ギャンブル(P&G)に入社して以来、日本マクドナルド、レノボ・ジャパン、現在のケロッグとファイナンス部門で働いてきました。
西口(ロクシタンジャポン) 今日はよろしくお願いします。私も簡単に自己紹介しますと、1990年にP&Gに入社して17年いた後、ロート製薬でマーケティングの責任者を8年務めました。その後に今のロクシタンで代表を務めていて、今年で3年目になります。

出所:「伊藤レポート」p37(「構成要素から見た低ROE:日米欧の資本生産性分解」)
http://diamond.jp/mwimgs/0/3/-/img_0369b927cf880419554beb3cd7228257246482.jpg

池側 自分が外資系企業に長らく勤めてきて、同業他社として日本企業をウォッチするなかで、稼ぐ力をどうすれば上げられるのか、ということに興味をもっています。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、近年そうした観点で話題になったのが“伊藤レポート”です(編集部注:経済産業省が取り組む「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係構築〜」プロジェクトの最終報告書。座長であった伊藤邦雄・一橋大学大学院商学研究科教授の名前を冠して、『伊藤レポート』と呼ばれる)。
 ここでも議論されたのですが(図表)、自己資本に対してどのぐらい稼げているかを示すROE(自己資本利益率;Return on Equity)が、日本企業の場合は非常に低水準にとどまっています。ROEは一般に10〜20%で「良い」と評価されます。ところが日本企業は2012年で少し古いデータなのですが5.3%となっており、直近でも東京証券取引所上場企業平均で7−8%程度になっています。この表だと同時点で米国は22.6%程度、欧州で15%程度あるわけです。ROEをさらに「利益率×回転率×レバレッジ」に分解して海外と比較してみると、日本は回転率やレバレッジに大きな差がない一方で、売上高利益率が低いことがわかります。
西口 企業のROEが非常に低いことは、大きな問題だと思います。資本主義的な側面はもちろんあるのですが、それ以上にそこで働く従業員自身が低いROI(Return on Investment:投資に対するリターン)に安住してしまって、仕事でブレークスルーを求めなくなり、ビジネスパーソンとして、成長できなくなる危機感を感じてます。
池側千絵(いけがわ・ちえ)さん
日本ケロッグ合同会社執行役員 経営管理・財務本部長。 新卒でP&Gジャパン(株)に入社して以来、一貫して外資系企業のファイナンス部門に勤務。日本支社全体の利益・資金管理・報告、経理、税務、アジアHQでの予算管理業務など幅広いファイナンスの専門業務も歴任。その後日本マクドナルド(株)でのフランチャイズ事業担当財務部長、レノボ・ジャパン(株)のCFOを経て現在に至る。同志社大学文学部卒。慶應大学院経営管理研究科・Executive MBA在学中。USCPA。中小企業診断士。
池側 たとえば私がいま勤めているケロッグ(世界全体)は売上高営業利益率について18%をめざしています。米国の同業他社では、なんと20%以上をたたき出しているところもあるので、18%実現に向けて全社でがんばっています。それでは日本の食品会社はというと、A社さんが昨年11%で今後15%を目指し、B社さんが昨年8%で今後10%以上を目指すとおっしゃっているなど優良ですが、一方で一桁パーセントにとどまっている会社さんも多数あります。ROEはよい会社で10〜15%と、国内では高水準ですが海外勢と比べるとまだまだ改善の余地があるように思えます。
 では、バランスシート(貸借対照表:BS)も見てみましょう。
 日本企業は無借金経営で自己資本が大きく、そのためもありROEが低く見える傾向にあります。ケロッグは純資産は結構小さくて、借り入れを利用して買収を含めた投資をしているためかROEが28%あります。これだけでどちらが良い悪いと判断できませんが、昨今は、自己資本だけでなく借入を有効に使って投資をして事業を拡大し、ROEを高めていくという戦略がひとつの大きな流れになっているようですね。ご自身で自分が属する企業や業界について財務情報を見てみていただくと、そうした流れも肌で感じていただけて面白いと思います。
西口 ROEを5%から10%に上げるというのは、ものすごく大変です。そのために、売上を上げるのか、利益率を上げるのか、キャッシュフローを改善するのか、それには新商品を投入すべきなのかコストを削減すべきなのか等、いろいろな選択肢を考えなければなりません。無理に思えるROEの達成を一生懸命考えるなかで、ありとあらゆる選択肢とアイデア、ビジネスモデルそのものまで考え付くし、その結果、個人もプロとして成長するのだと思います。
池側 本当にそうですよね。「企業全体」のROE/利益率向上というと、どうしても遠い話のように感じられるかもしれませんが、そうではないのです。そこで働いているみなさん個々人が、自分が関わっている事業においていかに利益率をあげるかということを意識することで随分変わるのではないかと考えています。
西口 日本企業の問題というよりも、資金調達プレッシャーがない環境の問題が大きいと思います。日本は、事実上、長年に渡ってゼロ金利なのでリターン自体が低くても問題になりにくい、株主にも突き上げられない。ROI、ROEが低くてもいい環境に慣れてしまっています。これまでの延長線上でそこそこ最適化して頑張っていれば、追いつめられることはない。でも何が起こるかといえば、ビジネスが陳腐化するスピード以上に、そこで働く従業員自身が自分の成長の機会を失ってしまう。
 外資系の多くでは、良くも悪くも、常にROI、ROEを厳しく問われるので、難しい状況であっても、どうすれば成長できるか、ROEを高められるか、厳しく寝る間も惜しんで考えさせられます。すると、個人も成長するし、結果として会社も成長するという好循環をうみだすんですよね。だから、欧米企業は短期的な利益を求めすぎる、日本企業は長期的視点でみているからROEの高さは問題じゃない、といった抗弁を聞きますが、人がビジネスパーソンとして生産性を向上させて、自己成長する環境かどうかの観点で考えれば、大きな問題だと思います。
自分の仕事でも「入ってくるお金」と「出ていくお金」を意識する
池側 もちろん、個々人が頑張るだけで会社全体の利益率が簡単に上がるわけではないでしょう。
 これだけ日本と海外の企業の利益率に差がある背景には、企業の組織の仕組みの違いも大きく影響していると思います。
 ひとつは、多くの日本の企業の場合では伝統的に、戦略策定を担う経営企画部門と、経理・財務部門がそれぞれ分かれた組織になっていることが挙げられます。外資系企業の多くは、この両方を「ファイナンス部門(CFO部門)」が睨みながら、経営陣を手助けしていく組織になっています。もちろん、ファイナンスの基本的な資金繰りや内部統制、予算管理、投資分析などをこなしたうえで、中長期的に会社がどういう方向に進むべきか、経営陣と一緒になって経営戦略を策定していくわけです。この点、日本企業でも、経営と数字の両方がわかるファイナンス部門(CFO部門)が、各事業部門と蜜に働いて、「稼ぐ力」を強化する方策を考えるべきではないでしょうか。
西口一希(にしぐち・かずき)さん
ロクシタンジャポン株式会社代表取締役。大阪大学経済学部卒業後、P&Gジャパン(株)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとしてパンパース他、数々のブランドマネジメントを担当。2006年にロート製薬(株)に執行役員マーケティング副本部長を経て本部長として入社。2015年4月より現職、ロクシタンジャポン株式会社にて代表取締役として従事。
西口 たしかにファイナンス部門であっても、たとえば経理志向が強すぎると締め付けにかかりやすくて、この経費もっと下げられませんか、ここ本当に必要ですか、と事業部門をつつきすぎて、疲れた事業部門側が前の年の焼き直しで済ませようとして本末転倒な結果をうんだりします。より戦略志向のファイナンスは、どうすれば売上や利益率が上がるかということを一緒に考えて提案できるような目線が必要ですよね。
 あとは私もさまざまな部門の方と働いてきて、それぞれで見ているところが全然違うんだなという点も実感しています。たとえば営業はトップライン(=売上高)しか見ていなくて、費用はあまり見ていない人が多い(笑)。
 対して、ファイナンス部門はトップラインとボトムライン(利益)を両睨みです。それも、単純に利益が出ればいいというわけではなくて、社員のモチベーション向上に役立つなら必要なイベントのためにバーンとお金を使ったり、減価償却が終わっていない設備でも老朽化がひどく事故につながる可能性があれば早めに入れ替えたり、事業の全体をみて必要なお金はどんどん投資します。それこそ、ビジネスパーソンに不可欠な“経営力”だと思いますね。
 私の場合は特に、PL(損益計算書)が読めることが大切で、売上高から利益に至る途中の足し算と引き算が「投資」「経費」としてそれぞれ正しいのか語れること、これこそ、リーダーになっていく人材として必要なスキルではないかと思います。
 簿記の本を読むとじんましんが出そうな方は、ご自身の会社の四半期決算書を読みこなして、他部署の方に説明できるぐらいまで自己トレーニングをされるといいです。PLが読めるよう一点突破を心がけると、BSやキャッシュフロー計算書も3点セットで読めるようになると思います。
池側 さて皆さん、会社は誰のものだと思われますか?
 議論があるところですが、ここでは基本的には株主のものという前提でお話しますね。会社としては、株主によって投資されたお金を増やしてあげられれば満足してもらえるということです。ごく簡単にいえば、企業としては入ってくるお金を増やして出て行くお金を減らし、株価が上がって配当が増えるように、会社の利益とキャッシュフローが増える策を考えなくてはなりません。
 一例として、ラーメン屋さんの店主になったつもりで考えてみてください。
 たとえば、入ってくるお金(収入)を増やすには、客数を増やし、客単価(商品単価×注文点数)が上がるように、魅力的な商品をつくる。出ていくお金(コスト)を減らすには、原料の調達を工夫して良いものを安く買ったり、お店が広すぎればもっと身の丈に合った大きさの家賃の安い場所を探す、従業員のシフトを工夫したり、電気代やガス代を節約する……など、いろいろ考えられますよね。同じように、みなさんの自分の仕事で、何をすれば入ってくるお金が増やせて、出て行くお金を減らせるか、みっちり考えていただくと、絶対に企業全体として良くなるはずです。
 会社の利益とキャッシュフローを改善することを意識して日々の仕事に取り組むことで、きっと個人の業績の成果が上がり、結果的に自分の価値が上がります。今、所属している部署が営業でもマーケティングでも、商品や業界に関する基本的な専門知識のうえに、リーダーシップやコミュニケーション力といったチームで成果を挙げるためのソフトスキルを身につけ、さらに今申し上げたような意識で、企業の価値を高めることを目標に個人としても動ける人材をめざしてください。必ず会社で必要不可欠な、もっといえばどこでも働ける人になるはずです。
「大・中・小」の視点からプロジェクトを考える
池側 もう少しファイナンスの仕事について、解説させていただきましょう。
 たとえば、新製品の開発や商品改良などのプロジェクトに参画するファイナンス担当者のミッションとしては、(1) 会社の価値を高めるプロジェクトにする。(2) プロジェクトチームメンバーの活動を効率よくする(適切なタイミングで目標設定をしてあげる)というものがあると考えています。商品案がほとんど決まってからPL計算をして目標利益構造に届かない場合、商品設計からやり直しになったり、または、目標利益構造に達していないのに商品を出すことになってしまったりします。ファイナンス担当者がプロジェクトの早いタイミングで参画して、適切に各担当者の数値目標設定をして進捗チェックをしてあげれば、やり直しなく、そのプロジェクトを成功に導くことができます。
 特にファイナンスの担当者は、「大・中・小」のそれぞれの視点からプロジェクトを見ていくのがおすすめです。
 「小さい視点」としては、商品そのもののフォーミュラと原価、容量(袋に何グラム入れるか)、パックあたり、キログラムあたりの売価、粗利益率、利益金額などの基準を細かく設定して、チームでその目標を達成していきます。次に「中くらいの視点」ですが、そのプロジェクトを今後数年のスパンで見て、投資対効果を検証したり、既存の商品とのカニバリゼーションを考慮したりします。また、「大きい視点」としては、事業部、会社全体に与える影響(売上、利益、利益率、キャッシュフローなど)を見ます。売上と利益の向上の両方の達成でチームに貢献できると、会議に「また呼んでもらえる」ファイナンスになれると思います。
 このようにファイナンスの人が事業部に入り込み、日々の業務の中で他部門の人たちと一緒に仕事をして、利益率やキャッシュフローを改善していく。また、他部門の人たちも、どうすればPL/BS/キャッシュフローを改善できるのかを知って日々の仕事に生かしていく。そうすると会社の利益率が改善し、ROEも目標に近づいていくのではないでしょうか。
 わたしが新卒で入社した外資系企業のファイナンス部門では、まずは事業部配属になり、マーケティングや営業、サプライチェーンの人たちと一緒に事業に携わりました。若いうちからビジネスを理解することができて効果的です。そのあとに経理財務や税務などのファイナンスの専門部門に行ったり、また事業部のファイナンスリーダーとして現場に戻ったり、2−3年のスパンでローテーションをして、早いスピードでCFOを目指しました。多くの企業でこの方法を取り入れていただきたいなと思います。
http://diamond.jp/articles/-/124420
 

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