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東京から桜が消える危機…一斉に寿命、巨額の維持コストと手間、花びらで事故も(Business Journal)
http://www.asyura2.com/17/hasan121/msg/106.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 4 月 14 日 01:17:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

         目黒川と桜並木(「Wikipedia」より/京浜にけ)


東京から桜が消える危機…一斉に寿命、巨額の維持コストと手間、花びらで事故も
http://biz-journal.jp/2017/04/post_18705.html
2017.04.14 文=小川裕夫/フリーランスライター Business Journal


 今年も桜の季節が到来した。東京都内の靖国神社や上野公園、隅田川、目黒川、飛鳥山公園といった桜の名所には連日、多くの花見客が押し寄せている。花見客のお目当ては当然ながら桜だが、一口に桜といっても樹種は多種多様だ。ダントツで人気が高いのは、ソメイヨシノだろう。

 江戸末期に誕生したといわれるソメイヨシノは淡い色合いが人気を呼んで、明治期に爆発的に全国に分布した。戦後、桜といえばソメイヨシノといわれるまでの存在になり、日本人の心とまで形容される。日本人の心を捉えて離さないソメイヨシノの美しさは、外国人観光客からも人気急上昇中で、最近はソメイヨシノを目当てに訪日する外国人も目立つようになってきた。

 そんなソメイヨシノだが、ここにきて異変が起きている。東京で咲くソメイヨシノは、戦後復興が一段落した昭和30年代に植樹されたものが大半だ。その寿命は約60年といわれており、仮に60年寿命説が正しいとなると、東京のソメイヨシノは間もなく一斉に寿命を迎える。そうした状況に直面し、東京都内の自治体は対応に追われている。ある自治体の公園担当職員は言う。

「東京で桜が植えられている場所は、大きく歩道や緑道といった街路・公園・学校敷地内の3つに分けることができます。そのうち、誰でも自由に桜を楽しむできる街路の桜は、住民からも人気です。ところが、街路などは自動車の往来が激しく排気ガスによってソメイヨシノが傷みやすい。そのため、街路に植えると定期的なメンテナンスが欠かせず、保守点検費用が莫大になるのです。

 また、ソメイヨシノはほかの桜と比べると花びらが多いので、散ったときの清掃にも手間がかかります。街路の桜は町内会や商店といった近隣の方々が自主的に清掃されているケースが多く、そうした場合は行政の金銭的な負担は軽くなりますが、自主的に清掃をしてくれる町内会や商店主は高齢者ばかりになってしまい、頻繁な清掃はキツいという声も聞かれるようになりました。そのため、老木化したソメイヨシを伐採し、新たに花びらの数が少ないコシノヒガンザクラなどに植え替えている自治体も増えています」

■ソメイヨシノとの共存は難しい

 高齢化した日本社会において、保守・管理が面倒というソメイヨシノは忌避される対象になりつつあるが、忌避される理由はそれだけではない。ソメイヨシノは地中に広く根を張る性質をもつため、植栽間隔を広く取らなければならない。だから狭い街路には、適さない。

 日本は人口減少社会に突入し、空き地は急増している。他方で東京都心部は過密化や高層化が進み、ソメイヨシノを植えられるようなスペースの余裕はない。そのほか、道路の拡幅や上下水道・ガス管の工事でもソメイヨシノは邪魔物扱いされやすい。さらに小池都政では無電柱化を推進しているが、無電柱化では電線類を地中に埋設するので、根を広く張るソメイヨシノは大敵中の大敵とされる。都市化した東京で、ソメイヨシノと共存することは難しいのだ。

 街路に植えられるソメイヨシノが保守・管理の問題から少しずつ姿を消そうとしているのと同様に、学校の校庭でも同様の異変が起きている。学校の場合、ソメイヨシノは校庭の隅に植えられるが、花びらは風に飛ばされて隣接した道路に散る。その花びらを放置すれば、自転車のスリップ事故などが起きる可能性が高くなる。責任問題になるため、行政はこれらを放置できず事故防止の観点から頻繁な清掃が求められる。清掃の費用は自治体や学校が負担することになるが、それが行財政を圧迫する。

 また、学校という特殊な事情もある。校庭では児童や生徒が走り回る。それらの踏圧によってソメイヨシノの根は傷み、短命化が加速する。ますます植え替えサイクルは短くなり、メンテナンス費用も含めてコストはかさむ。

■東京五輪とソメイヨシノ

 踏圧によってソメイヨシノが短命化しているのは、公園でも同様だ。今般、行政の懐事情は厳しくなるばかり。行政は街の緑化を奨励しているが、それはあくまでも低コスト・省力化が前提になっている。これはソメイヨシノに限らず、すべての緑にあてはまる。ある公園関係者は、こう話す。

「行政は街路や公園などに植える木や花について、コストパフォーマンスを重視する傾向が強くなっています。花や緑は街に潤いと憩いを与えると多くの住民は理解を示してくれますが、落ち葉で家の玄関口が汚れる、害虫被害などの苦情も絶えません。また、街路樹は事故を引き起こす要因になる場合もあります。だから行政は事故に神経を尖らせています。

 悩ましいのは、街路樹の清掃コストです。清掃回数を減らせば、管理コストは下がりますが、清掃を怠れば落ち葉によってスリップ事故が起きやすくなります。事故が起きたら責任を問われますので、最近は落ち葉が少ない樹木を街路に植えるようになっています。また、枝を広く張る樹種もドライバーの視界を悪くし事故を招くといった苦情が多くありますので、植え替えが推進されています」

 こうなると、もはや街に緑は不必要なのではないかという疑問も出てくるだろう。実際、東京オリンピックの関連工事を口実に、街路樹を軒並み伐採してしまう事例も出ている。

 そして、満開に咲いたソメイヨシノには多くの人が集まるため、問題も多い。ソメイヨシノ目当てに多くの人が集まれば混雑が起き、万引きや事故を誘発する。ゴミの問題もある。こうした問題も、ソメイヨシノが消える一因でもある。

 3年後には、東京五輪が開催される。現在、東京のいたるところで工事が進められているが、一連の工事でソメイヨシノが伐採されてしまう可能性は否定できない。今のところ、脱ソメイヨシノは東京だけで静かに進行しているが、東京からソメイヨシノが消えてしまえば、その余波は地方都市にも及ぶだろう。

(文=小川裕夫/フリーランスライター)

 

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