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トランプ大統領の言動に投資家はどう対応すべきか
トランプ氏がドル安誘導宣言の暁には「持ち株は全て売れ」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170406-00010002-moneypost-bus_all
マネーポスト2017年春号
米ドナルド・トランプ大統領の発言ひとつで、世界中の株式市場が反応する状況が続いているが、はたして投資家はどう対応すればよいだろうのか? かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍した赤城盾氏が解説する。
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世界中の大方の予想を覆して、2016年11月のアメリカ大統領選挙はトランプの勝利に終わった。1年前に共和党予備選挙が始まった時は、どうしてあんなヘンテコな候補の票が伸びるのだろうと仰天したものである。多くの人がトランプ大統領の誕生に同様の感想を抱いたのではなかろうか。
しかし、当選後の彼の言動は、案外、わかりやすい政治家の原理に貫かれているように思う。即ち、一、次回の当選を期すべし。一、己と知己とを儲けさせるべし。もともと、トランプ本人は、自身の悪評は、大手メディアの偏向報道によるものだと主張していた。たしかに、視聴率を競うテレビは、刺激的な暴言シーンを、前後の文脈から切り離して繰り返し放送する。
とはいえ、トランプが、女性やイスラム教徒や戦争状態にあるわけでもない他国民を公然と罵倒したことは紛れもない事実であろう。そういう人物が先進国の大統領や首相の座に就くことは極めて珍しい。というか、トランプの他にはヒトラーくらいしか例を思いつかない。
ただし、よく考えてみれば、そういう人物そのものは決して珍しいわけではないのである。自国の産物や慣習をやたらと称揚する輩や、外国人をこきおろして得意満面な顔をする者は、身近なところにも我が国の政界にも、いくらでも思い当たる。むしろ、いたって平凡な、ありふれた感性というべきであろう。
1946年にニューヨーク市の郊外に生まれたトランプは、ほぼ白人のみから成る男尊女卑のアメリカ社会で育ったことに、注意を促したい。私たち日本人は誤解しがちであるが、1965年に移民法が改正される以前のアメリカは、今日のように多種多様な移民を広範に受け入れてはいなかった。また、アメリカの名門大学はもともと男子校ばかりである。
ハーバードを例に取れば、1977年にラドクリフ女子大と合併して共学となった。アメリカを「ふたたび」偉大にするというトランプのスローガンの真意は、おそらく、経済成長の数値を高めることにはない。古き良きアメリカ、白人中心の男性社会への懐古ではないか。
そして、アメリカには、人口の多いベビーブーマー世代を中心に、活躍する女性や台頭する有色人種に対する暗い嫉妬を数十年にわたって積もらせてきた人々が、思いもよらないほどに大勢いた。その鬱憤を晴らしたことがトランプの最大の勝因であり、彼らの期待を裏切ればトランプの政治的な命運は尽きる。
メキシコ国境に壁を造ろうとしたり、イスラム教徒からビザを取り上げたりすることは、トランプにとっては再選に向けた重要な選挙活動なのであろう。
■中国、メキシコ、日本、ドイツに敵意を見せつける理由
一方、経済政策に関しては、余念なく私欲の追求に邁進している。まず、自らの属する富裕層の税負担を軽減し、リゾート開発の邪魔になる環境規制を緩和する。もちろん、国務長官をエクソンモービルから迎えるほどに知己の多いエネルギー業界への配慮でもあろう。
あれだけ「ヒラリー・クリントンと癒着している」と攻撃していた、庶民に評判の悪いウォールストリートに対しては、早速、大盤振る舞いの規制緩和に乗り出した。銀行は、トランプの事業にとっては何よりも大切な金主であるから、最初から分かりきっていた行動ではあるが。
減税や壁建設に要する財源については、今のところ、低所得者層を犠牲にする公的医療保険の廃止の他に提案はない。WTO(世界貿易機関)のルール違反の疑いが濃厚な実質的な輸入関税の強化を目論んでいるようであるが、それはドル高を招いてアメリカの製造業の競争力を低下させる。
いずれ、共和党主流派と折り合いをつけて、国債増発によるバラマキ公共事業を言い出す腹づもりかもしれない。それにしても、富裕層以外の一般的なアメリカ人にも明らかな恩恵が見込まれる経済政策は、ただ公共事業のみである!
アメリカの製造業を復興して雇用を増やすと大見得を切ったのは、選挙用のリップサービスに過ぎなかったのではあるまいか。実際のところ、目下のアメリカ景気は好調で、放っておいても雇用は増える。
問題は、公共事業のカンフル剤がうまく効いたとしても、次の大統領選が行なわれる2020年まで景気拡大の寿命が持つかどうかである。トランプが、個別の企業の工場立地に文句をつけたり、貿易収支の赤字が大きい中国、メキシコ、日本、ドイツに対して常軌を逸した敵意を見せつけるのは、米国民受け狙いに加えて、景気が停滞した時に備えたスケープゴート作りに励んでいるのではなかろうか。
それは、私たちにとって、決して気分のいい話ではない。しかし、人格高潔なオバマ大統領の下でも、アメリカは、リーマン・ショック後の不況から脱するために、FRB(連邦準備制度理事会)による量的緩和という強烈なドル安政策を採った。トランプであれば、自分の手柄にするために、ドル安誘導を宣言してくるであろう。その時は持ち株すべてを売ればいい。
投資家にとって油断は禁物ながら、当面は、トランプの奇矯な言動はあまり気にかけずに、日米中の景気や企業業績の数字を地道に追っていけばいいのではないかと思う。そして、彼の者が、ニクソンのように国際金融秩序をひっくり返したり、ヒトラーのように軍隊を動かしたりすることだけはなからんよう、それぞれの神に祈ろう。
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