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【第9回】 2017年3月22日 翁邦雄 [おきな・くにお]
米国金利が上昇傾向にあるなか
マイナス金利と銀行経営を考える
2016年1月末に日銀がマイナス金利政策導入を発表した際、銀行株が急落した。マイナス金利政策は、地銀などの経営や金融システムにどのような影響を与えるのか。長期金利上昇の可能性がささやかれるなか、あらためて検討してみる。
<詳しくは新刊『金利と経済』でご覧いただけますが、同書で取り上げたトピックに一部手を加えてご紹介していきます>
地銀で顕在化しつつあるマイナス金利のインパクト
地銀を中心とする地域金融機関が、統合による経営効率化を急いでいる。直近でも、3月16日に新潟県内最大手の第四銀行と同2位の北越銀行が経営統合の最終調整に入ったと報じられたほか、関西地銀3行(三井住友FG系の関西アーバン、みなとと、りそなHD系の近畿大阪)や、三重県内の三重銀行と第三銀行の統合方針が表面化している。
経営効率化への動きの背景にあるのは、日銀のマイナス金利政策により特に主力の貸出事業で利鞘が稼げなくなったことによる収益力低下である。地域金融機関はこれを補おうと必死だ。そうした努力の一環として、投資対象を国債から外債などよりリスクの高い資産へシフトさせてきた。
しかし、2016年11月の米大統領選前には1.8%台だった米国の長期金利は、トランプの当選後、2.6%台にまで急上昇してしまった。3月9日付の日本経済新聞朝刊は、米国の金利急上昇で、年間の利益の1.5倍の含み損を抱えている地銀もある、と報じている。こうした現状を金融庁も注視しており、遠藤俊英監督局長は3月9日、参院財政金融委員会で外債運用をテーマにした地域金融機関に対する検査を実施する方針を明らかにしている。
米国は想定どおり緩やかな上昇傾向にある
外債投資の例にみられるように、これまでのところ、地域金融機関のリスク性資産に対する積極的な投資スタンスは、基礎的な収益力の低下を補うよりは、経営体力低下を加速する方向に作用している可能性がある。マイナス金利のこうした銀行経営への悪影響は、日銀より先行してマイナス金利に踏み込んだECBのクーレ専務理事が2016年7月の講演中に指摘していた懸念材料である。その懸念が日本にも当てはまりつつある、と言える。
マイナス金利を先行導入したECB幹部の懸念
日銀が2016年9月に導入したイールドカーブ・コントロールは、長期金利を短期金利よりわずかに高くする、という関係を固定することを企図している。しかし、この政策の導入に先行する上記の講演で、クーレは、マイナス金利の導入について、短期金利と長期金利の関係を示すイールドカーブの傾きを維持した場合でさえ、マイナス金利の導入は、リテイルの預金に依存している銀行の利鞘を圧縮しうる、としていた。
理由はリテイルの預金金利は低くかつ粘着的な傾向があるうえ、銀行はリテイルの預金金利をマイナスにすることには消極的(ないし困難)だからだ。市場金利が低下するにつれ、銀行の資産からのリターンは減少するのに調達コストは変わらず、結果として利鞘が押し下げられる。このため、クーレは、現在および将来の利鞘の縮小は、将来の利益予想から算出される銀行資本を減らし、銀行のリスク負担能力を低下させ、信用供与を減少させる、と主張した。
このわかりやすい懸念は、日本の銀行にも当然に当てはまる。
だからマイナス金利導入のニュースで銀行の株価が急落したのである。むろん、銀行の運用・調達構造は、国や業態(例えば、地域金融機関とメガバンク)ごとに大きく異なる。一般に、変動金利での貸出の比率が高く、資金調達をリテイルの預金に依存する度合いが高いほど、利鞘は押し下げられやすいだろう。そのことは各国の金融機関経営ひいては、金融システムの安定性の違いにも大きく影響を与える。後述のように、残念ながら、日本の金融構造は副作用を大きく受けるものとなっている。
ところで、利鞘を圧縮された銀行はどう行動するだろうか。
それが、先の講演におけるクーレ専務理事の次の懸念につながる。それは、銀行が収益を高めるために、よりリスクの高い資産へポートフォリオを振り向けること(ポートフォリオ・リバランシング)や、利回りは高いが貸し倒れになるリスク(デフォルト・リスク)も高い中小企業へ貸出を集中させることなどの副作用である。
むろん、銀行の収益を悪化させ、より大きなリスクをとらざるを得なくすることこそ、金融政策の大きな狙いのひとつ、という考え方もある。この点について、クーレ専務理事は、それが金融緩和の目的のひとつであることを認めたうえで、これにより、銀行がプラスの価値を生み出さない投資にまで踏み込んでしまう「悪い」リスク・テイキングに追い込まれることに懸念を示していたのである。
貸出利鞘圧縮を受けたポートフォリオ・リバランスのその先は?
以上のクーレの議論をもとに、2016年10月に公表された日銀の「金融システムレポート」から邦銀、とりわけ地域銀行への影響を考えてみよう。
図表1 マイナス金利導入国における銀行の資金利鞘
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まず、レポート中の「マイナス金利政策実施国における銀行の収益構造」というコラムは、マイナス金利政策を先行導入した欧州諸国(ユーロエリア、スイス、スウェーデン)の銀行と邦銀の収益構造を比較し、マイナス金利政策の影響を検討している。欧州系銀行の資金利鞘(「資産運用利回り‐負債調達利回り」を使っている)をみると、マイナス金利政策の導入後に資産運用利回りは低下しているが、負債調達利回りも連動して低下し、資金利鞘は横ばい圏内の動きとなっている(図表1)。
図表2 銀行の調達構造
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欧州系の銀行の利鞘が横ばいで推移した点について、「金融システムレポート」は、(1)マイナス金利導入時点における欧州諸国の預金金利水準が高く、預金金利に下げ余地があった、(2)欧州系銀行は、スイスを除き、ゼロ金利制約の少ない市場調達の割合が大きい(預金の負債に占める割合が小さい)、という点を指摘し(図表2)、最近では口座維持手数料等によって実質的に預金金利を引き下げる動きもみられる、とした。
そのうえで日本では、低金利・ゼロ金利の継続期間が欧州に比べ長く、マイナス金利導入時点で銀行の預金金利はすでにきわめて低く、銀行の預金調達比率も高い。このため、マイナス金利が利鞘に及ぼす影響は、欧州系銀行よりも邦銀において、相対的に大きく表れやすい、と指摘した。
こうした利鞘悪化に直面した金融機関はどう動くか。レポート中の「地域金融機関の有価証券投資」という項では、地域金融機関が、収益のコアとなる貸出利鞘が趨勢的に低下するもとで、投資信託や外債などのリスク性資産への投資スタンスを積極化させていることを指摘している。
これはクーレが言及した、貸出利鞘圧縮を受けたポートフォリオ・リバランスへの動き、とみることができる。ただし、「金融システムレポート」の分析は、そのリバランスの程度が、各金融機関の基礎的収益力や経営体力によって異なることを指摘している。
具体的には、貸出利鞘の縮小に対して、自己資本比率が高く経営体力のある金融機関は、リスク性資産を増やす傾向がある。これとは逆に、経営体力に乏しい金融機関は、貸出利鞘が低下しても、リスク性資産を増やす行動には出ていない、というのである。
地域金融機関の多くは、現時点では自己資本比率が高い。しかし、基礎的な収益力は低下傾向が続いている。このことから、「金融システムレポート」は、地域金融機関が基礎的収益力低下を補うべく、リスク性資産に対する積極的な投資スタンスを維持していく可能性が当面高い、とした。しかし、長期的に基礎的な収益力の低下が長引き、経営体力が低下を続ければ、リスク性資産への投資を増やせなくなる先が増加する可能性がある、と予測していたのである。
地銀の外債投資による損失は、マイナス金利で利鞘が圧縮された焦りを反映したポートフォリオ・リバランスの失敗にみえる。マイナス金利の銀行経営への悪影響についてのクーレの懸念は、いずれも日本にも当てはまっていた、と言えるだろう。
問題は、この先、基礎収益力の低下が続いた時だろう。そのとき、地域金融機関は、金融システムレポートの分析が予測するように、リスク性資産への投資を増やすことをあきらめるのか、それとも起死回生を狙って経営スタンスを切り替えるのか。そもそも、それ以前に基礎的収益力を回復する道をさぐりあてられるか。こうした点は、銀行経営と金融システムの安定性、ひいては地域経済の動向を大きく左右しうるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/121811
Business | 2017年 03月 22日 19:11 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
機関投資家の議決権行使、個別開示を 金融庁・有識者会議が指針
[東京 22日 ロイター] - スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)を議論してきた金融庁の有識者検討会(座長=神作裕之・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は22日、現行コードの改訂案を取りまとめた。
改訂案は、機関投資家の活動の透明性を高めるため、株主総会での議決権行使結果を個別のケースまで開示するよう求めた。運用会社に対し、ガバナンス向上に向けて第三者で構成する委員会を置くことも要請した。
2014年2月に策定したスチュワードシップ・コードには、おおむね3年ごとに見直しを行う規定が含まれており、有識者検討会は1月から議論を進めてきた。コードの受け入れを表明している機関投資家は、信託銀行や生損保、投信・投資顧問など2016年末時点で214社。
スチュワードシップ・コードの改訂案には、議決権行使の助言会社に対し、利益相反管理の枠組みなどの開示を求めることも盛り込まれることになった。金融庁が22日に示した当初案では、議決権行使助言会社について「本コードが自らに当てはまることに留意して、適切にサービスを提供すべき」との表現にとどまっていたが、助言会社の社会的影響力が高まっているため、取り組みの開示を求めるべきだとの意見が一部の委員から出された。
また、改定案では、年金基金に対し、従業員や年金受給者の利益のために投資先企業との建設的対話に臨むよう要請した。議決権行使などを運用会社に委託する場合は、運用会社に実効的な議決権行使を求めるべきだとした。
金融庁は、取りまとめた改訂案への意見を募集し、6月までに新たなコードを確定する。多くの機関投資家は検討会の議論と並行して新コードへの対応を検討しており、6月の株主総会シーズンから改訂版のコードを踏まえた取り組みが出てくる見通し。
(和田崇彦)
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World | 2017年 03月 22日 17:38 JST 関連トピックス: トップニュース
台湾中銀、カストディアン銀行に資金流入の抑制を要請=関係筋
[台北 22日 ロイター] - 関係筋によると、台湾中央銀行は一部のカストディアン銀行に対し、金融市場への投資資金の流入を抑制するよう要請した。この動きは、今年に入って対米ドルで約6%上昇している台湾ドルの上昇圧力緩和につながる。
関係筋の1人は「あぜんとした。顧客はすでに株式を購入しているのに送金を認めないでどうやって取引を決済するのか」と指摘した。
この件について質問を受けた中銀当局者は、台湾は資本勘定を自由化しており、資本の移動は台湾株に投資する海外資金を含め自由だとしている。
台湾株式市場の加権指数.TWIIは、海外からの大量の資金流入を背景に1万の水準に迫っている。同指数は過去17年間、終値で1万台をつけていない。
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Business | 2017年 03月 22日 18:08 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
G20、日本の金融政策への懸念は米国含め皆無=黒田日銀総裁
[東京 22日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は22日、衆議院財務金融委員会に出席し、18日までドイツで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明から「保護主義に対抗する」との文言が消えたことについて、自由貿易主義から保護貿易主義に転換したとはみていないと述べた。さらに、日銀の金融政策については参加国から十分な理解を得られているとして、米国を含めてどこの国からも反論はなかったと言明した。
丸山穂高委員(日本維新の会)の質問に答えた。
同総裁はG20において「貿易については従来のコミュニケと書き方は変わっているが、それによりG20として自由貿易(主義)から保護主義に移ったものではない」との見解を示した。「個人的感想として保護主義に逸れていったという印象は持っていない」と述べた。
リーマン・ショック後に各国が保護主義に走りがちな傾向があった中で、G20声明において「保護主義に抵抗する」との文言を毎回盛り込んでいたことは、大規模な保護主義に走らなかったという効果があったとの見方を示した。
その上で「現時点では世界的に成長率が低くなっている中で、貿易を通じて成長していくことの重要性は皆が認識している」と語った。
また、日銀の金融政策について「G20では従来から中央銀行のマンデートと整合的な範囲で経済をサポートするという考え方が共有されており、日銀の金融政策についても、あくまでも2%の物価目標を実現するために実施していることに理解が得られている。参加者からそれに対するコメントはなかった」と述べた。「全ての国から日本への懸念を示す発言はなかった」と述べ、米国からも理解が得られたかとの問いには「その通りだ」と断言した。
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2017年3月22日 ロイター
G20、米政策洗練化への期待で「反保護主義」削除容認
3月20日、18日までドイツで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議では、ムニューシン米財務長官(写真)の物腰が柔らかく、ビジネスライクな姿勢に各国は一安心した。バーデンバーデンで18日撮影(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
[バーデンバーデン(ドイツ) 20日 ロイター] - 18日までドイツで開かれた20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、ムニューシン米財務長官の物腰が柔らかく、ビジネスライクな姿勢に各国は一安心した。米トランプ政権の強硬な通商政策の主張をどう取り扱おうかと戦々恐々だったからだ。
ただ結局、共同声明からは反保護主義の文言が削除され、気候変動対策の推進も盛り込まれずに終わった。
ムニューシン氏との協議に関わったG20当局者の話では、多くの国は保護主義を巡る言い回しでムニューシン氏に異議を唱えなかった。代わりに選んだのは、同氏とトランプ政権が6月のG20首脳会議までに通商政策の骨格をより穏やかな形にまとめ直してくれることを期待しようという方針だった。
実際、米財務省幹部の中で上院の承認を得ているのはまだムニューシン氏しかいない。トランプ政権としても、選挙中に約束した米国の貿易赤字削減や製造業雇用拡大の具体的な方策を決めるのはこれからになる。
欧州連合(EU)欧州委員会のピエール・モスコビシ委員(経済・財務・税制)は「ムニューシン氏は語り口が明確で、建設的かつ現実的な人物」と評価しつつ、合意点を見出すためにはさらなる取り組みが必要であり、今回はその準備が整っていなかったとの見方を示した。
麻生太郎財務相はムニューシン氏について経済および金融市場をよく理解している印象を受けたとした上で「だから一緒に良い仕事ができると思う」と語った。
G20の全体会合を通じてムニューシン氏が表に現れたのは1回きりで、声明を読み上げただけ。これに対して中国とフランスの財務相は反保護主義の表現を残すべきだと強く訴えた。
その舞台裏では米国の交渉担当者が「あらゆる保護主義に対抗する」という従来の文言はもはや受け入れられないと主張していた。
結果的に今回の声明は「経済への貿易の貢献度を高めるよう取り組む」という言い回しに改められ、一部の参加者は米国の通商政策における柔軟性が維持された、と受け止めた。
コーネル大学のエスワル・プラサド教授(通商政策)は「米国は他のG20諸国に自らの意志を押し付けることができたかもしれない。しかしその結果は、自由貿易推進や温暖化対策といった問題で米国の国際的な指導力低下を招いている」と指摘。声明の根幹部分の修正が米国の長期的な影響力低下を招きかねないとの懸念を示した。
一方、ムニューシン氏はトランプ政権が目指すより公平な貿易取引の実務的担い手としての地位を今回のG20で確立した、とカナダのシンクタンクCIGIのドメニコ・ロンバルディ氏はみている。
ドイツのショイブレ財務相はムニューシン氏が通商分野の交渉で明確な権限を与えられているのかどうか疑問を投げ掛けた。それでもロンバルディ氏は「ドイツや欧州はムニューシン氏の権限を疑うよりも、同氏との間で確固とした二国間関係を築く方が利益にかなう」と提言した。
(David Lawder記者)
http://diamond.jp/articles/-/122153
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